木内審議委員記者会見(2013年2月28日)要旨
全文
§1Question
神奈川県の金融・経済の印象について教えて下さい。また、この度の金融経済懇談会でどのような話題が出たのかについても、併せて教えて下さい。
§2Takahide Kiuchi
2 つの質問に併せてお答えします。本日の金融経済懇談会では、神奈川県の行政、財界、金融を代表される方々から、非常に貴重なお話、地域経済の現状・課題、あるいは日本銀行の政策運営に対する色々なご意見、貴重なお話を多数頂きました。非常に有意義なディスカッションができたのではないかと思っています。その点については、まず本日ご参加頂きました皆様に感謝申し上げたいと思います。最初にご質問頂いた、経済・金融の印象については、第一には、やはり存在感が非常に大きい地域であるということだと思います。県の経済規模は、県内総生産でみると全国 4 位、県民所得でみると全国 2 位と、非常に大きな県だといえます。さらに、製造業でいいますと、イノベーションに非常に前向きに取り組んでいる県だと聞き及んでいます。本日の金融経済懇談会でも、これに関連した課題、将来に向けての色々な取組みなどについて、多くの貴重なご意見を頂きました。一方で、製造業が海外に移転する空洞化の問題といった厳しいお話もありましたが、その跡地を有効に活用する―― 例えば商業施設や物流施設、研究施設、住宅――という動きもあり、逆境はもちろんあるわけですが、それを好転させるような非常に前向きの試み、姿勢があり、経済環境の変化に対して柔軟に取り組むという姿勢に感銘を受けました。また、神奈川県は、非常に地理の変化に富んでいるという印象があります。
§3Takahide Kiuchi
箱根、鎌倉、そしてこの横浜と、非常に観光資源にも富んでいます。さらに、人口が非常に多い、集積している首都圏に位置しているという優位性を確保しながら、観光客の増加を図っている点にも活力を感じています。このほか、観光資源だけではなく、文化、芸術といった面でも全国をリードしていこうというようなお話もお伺いし、非常に強い気概を感じました。今後については、2014年度中にさがみ縦貫道路の全面開通が予定されているということで、経済の発展にさらに寄与するようなインフラが強化されていくということであります。金融界、企業、行政、それぞれが様々な力を発揮して、尐子高齢化やグローバル化といった、日本全体が抱えている非常に深刻な問題があるわけですが、それを乗り越えてさらに発展していくというポテンシャルや強い気概も感じ、そうした全国の取組みのいわばモデルになっていくような動きになっているのではないかと感じました。2 番目の質問の本日の会合での話題については、大きく4 点申し上げたいと思います。第 1 点目、実体経済については、引き続き厳しい状況が続いているというお話がいくつか聞かれました。
§4Takahide Kiuchi
観光面でみると、例えば、ホテルの稼働率が過去最高水準になっているとか、外国クルーズ船の来航数が増えているといった明るい話題があった一方、特に中小企業で、非常に厳しい経営環境が続いている、価格競争も依然として厳しいといった話も聞かれています。中小企業の経営との関連では、本年3月末の中小企業金融円滑化法の終了が非常に大きな話題の一つになり、行政、金融機関、経済団体などが、それぞれの立場から取り組み、連携しているといった話が聞かれました。第 2 に、金融市場の動きですが、足許での円安方向への為替の修正、株価の上昇といったことが、景気回復期待と相まって、企業の景況感の改善につながっているという話もいくつか聞かれました。一例としては、先日の春節の時、中華街は例年にない賑わいであったということが、紹介されました。ただ、一方で、円安というのはマイナス面もあり、企業にとっては、原材料のコスト高になっているという指摘もありました。つまりプラス面だけではないというご指摘もあり、やや総括的に考えると、為替市場の安定というのが重要だというようなメッセージを頂いたように思えます。
§5Takahide Kiuchi
3 番目は、国による特区指定のもとで、県、市が連携して取り組んでいる、ライフサイエンス、ロボット関連のプロジェクト、それ以外にも道路網、鉄道網の一段の整備といったプロジェクト、これがさらに進展する、そしてその成果が地域の活性化に及んでいくといった点も多く議論されました。国際会議の誘致といった議論がされた一方で、尐子高齢化への取組みといった厳しい政策、問題もあるといったことも話題になりました。最後の 4 番目に、デフレ脱却に向けた、日本銀行、あるいは日本銀行を含む政策全体の取組みに対する強い期待感ということも聞かれました。ただ金融緩和を進めて欲しいということだけでなく、その副作用、例えば、金融機関の収益に与える影響、金融システムの安定性に与える影響、こういった副作用にも十分に目配せをして、政策運営を進めて欲しいという意見が複数聞かれました。こういった点も踏まえ、日本銀行としては、物価安定のもとでの持続的な経済成長を目指すということに加えて、金融システムの安定確保といった点にも十分配慮をして、政策運営をしていきたいと思っていますし、本日お聞きしたような、当地の関係者の方の努力が、より大きな成果を上げていくように、サポートさせて頂ければと感じた次第です。
§6Question
2 点伺います。まず物価目標2%の導入に関して、委員は1月の決定会合で反対され、本日の挨拶要旨でも容易ではないという考えを示していますが、その考えについて改めて教えて下さい。また、「アベノミクス」に関しては懐疑的ということなのでしょうか。「アベノミクス」が唱える、デフレからの脱却に対する良い面と悪い面などの評価を教えて下さい。
§7Takahide Kiuchi
1 つ目の質問については、挨拶要旨において、かなり細かく説明しましたので、要点だけ簡単にお話ししたいと思います。まず、1月の決定会合では、2%の「物価安定の目標」の導入には反対しました。これには主に3 つの理由があります。1 点目は、望ましい物価の水準、つまり、持続可能な物価の安定の水準というのは、企業・家計の物価観の大きな影響を受けると考えています。この 1年間を考えると、この物価観に大きな変化がないということです。それを踏まえると、2%というのは従来の私どもの持続的な物価安定の考え方からするとやや飛躍があり、高過ぎるのではないかと感じたという点です。2 点目はこれと関連しますが、もちろん高い目標を掲げることによって強く期待に働きかけるというのは重要な点かもしれませんが、高過ぎるということになると、期待に働きかけるプラスの効果もあまり大きくないのではないかと思います。それを達成するための道筋について、説得力をもって強く説明するのは容易ではない、と感じた次第です。3 点目は、2%の目標実現には成長力強化に向けた幅広い主体の取組みが必要であると私どもは謳っていますが、それはこれからの話です。
§8Takahide Kiuchi
その実現には不確実性が伴うと思われるため、その実現にかかる不確実性が高い現段階で、それを前倒しして物価目標に反映させると、金融政策に対する信認が毀損されてしまうのではないかという点にも配慮しました。これらの 3 点から、現状では当面1%の物価上昇率の目標を掲げ、その実現に全力を尽くすといった姿勢を維持した方が、結果的に政策効果が大きいのではないかというのが反対した理由です。一方で、2月の政策決定会合では、2%の物価安定の目標を含む対外公表文に賛成しました。挨拶要旨にありますが、2%の物価安定の目標の実現というのは容易ではないという考えに変わりはなく、先ほどお話した、持続的な物価安定水準を大きく規定していると考えられる国民の物価観も、依然として大きな変化はないと考えています。しかしながら、この2%の物価安定の目標を導入したことが、金融市場の期待にかなり強く働きかけたことは確かです。金融市場に既に反映されたという点を踏まえると、それは尊重すべきではないかと思います。
§9Takahide Kiuchi
さらに2%と掲げたものをまた 1%に戻すということになると、政策に対する信認が損なわれるというマイナス面も大きいと思いますし、引き続き反対を示した場合には、どこかで2%の物価目標が覆るのではないかという考えが金融市場に拡がり、私どものデフレ脱却に向けた姿勢がむしろ弱いのではないか、政策効果が逆に弱まってしまうのではないかと考え、2%の物価安定の目標に賛成しました。2 つ目の質問の「アベノミクス」に対しては、政府の経済政策に関することですので、直接的な意見は差し控えたいと思いますが、今後進められるであろう構造改革については、非常に前向きな期待をしています。つまり、それによって生産性が上がってくる、成長力が強化されてくることが、日本経済の改善につながることになりますし、さらに言うと、2%の物価安定の目標を後押ししてくれるという点で非常に期待しています。加えて、安定的に金融緩和政策を運営する上で重要な、財政の健全化については、政府は中期的な財政の健全化という姿勢を既に示していますが、今後も引き続きそれを維持・強化して頂くという点に期待したいと思っています。
§10Question
本日、国会に日銀総裁・副総裁の人事が提示され、アジア開発銀行の黒田氏が総裁候補として提示されました。黒田氏は2%の物価目標の達成時期について「2年ぐらいが適切だ」と発言していますが、これについては現実的だとお考えでしょうか。また、ご自身も改めて2%の目標については、「1%に戻すのは良くない」というような趣旨の発言がありましたが、実際に2%の物価目標が実現するにはどの程度の期間が必要だとお考えでしょうか。
§11Takahide Kiuchi
2%の物価目標の達成については、既にお話しているように、容易ではないということです。さらに加えて、私どもが展望レポート・中間評価で示している消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで見た消費者物価の上昇率は、2014年度の中央値で+0.9%となっています。それを踏まえると、2%というのは決して容易ではありませんし、短期間で達成できるというよりは、相応の時間を要するものではないかと思います。この点については、私どもから何度も説明していますが、拙速に物価を目標値に近づけていくというのは、私どもが掲げている「物価安定の目標」ではないということです。私どもが目指しているのは、あくまでも長い目で見た経済の安定と発展ということです。物価の安定というのは非常に重要ですが、仮に短期間で物価を非常に押し上げることができたとしても、例えば物価が上がって賃金が上がらないという状況になると、それは結局、所得環境を悪化させ、消費を悪化させて、2%を比較的短期間で達成できたとしても、長い目で見ればそれは一時的でしかない、ということになります。そういう点で考えると、物価を機械的に誘導するのではなく、成長力の強化、特に生産性が高まるということが重要で、これについては日本銀行も努力し、政府あるいは企業の各主体の努力の累積によって実現していくものだと思っています。
§12Takahide Kiuchi
そのもとで、日本銀行の金融緩和も後押しし、物価と賃金、成長率がバランスよく高まっていくことで、非常に安定した形での物価目標が達成できることになるのではないかと思います。先行きについては、不確実性が高まるので、「いつまでに」と設定をするのは妥当ではないと思いますし、これは日本銀行だけではなく、現在、物価目標を導入している世界の中央銀行のほとんどが、時期を特定していないという点からすると、比較的、国際的な基準に沿った判断ではないかと考えています。
§13Question
足許の国債市場は、日銀による国債の買入れが相対的に市場の中で大きくなってきたことで、需給がひっ迫して短期ゾーンを中心に金利が著しく低下してきていますが、足許の状況が続くと基金の順調な積上げが難しくなる、との指摘も出てきています。委員が講演の中で述べられた「着実な買入れ」を続ける上で、今の状況を懸念すべきではないと考えているのか、そのあたりのご認識を教えて頂きたいと思います。また、対応策として何か考えられていることがあれば、教えて頂ければと思います。
§14Takahide Kiuchi
先行きの具体的な政策については、差し控えたいと思います。オペの状況は、様々な要因で決まります。現状では、例えば金利が下がっていくのではないかという期待で、オペの応札状況が良くないという事情もあるでしょうし、あるいは、もう尐し長い目でみると、日本銀行が資金をどんどん供給していく中で、金融機関の資金需要自体が弱まっていくということが応札意欲を低めていく、ということもあろうかと思います。こうした様々な要因があるとは思いますが、一時的な要因というよりは、今、2 番目にお話ししたような、構造的な――私どもが金融緩和を進めていけば、どうしても避けられない――問題点が浮かび上がってきているということを考えながら、今後の政策運営をしていく必要があるのではないかと思っています。現状では、例えば、固定金利オペでは期間を調整するという工夫をしています。オペの期間や、額、タイミングといった様々な手法を用いながら、安定したオペが実現するように、現状では努めています。今後については、私は、やはりこの資産の買入れが、金融政策の中核、包括緩和政策の中核であると思います。
§15Takahide Kiuchi
これが何らかの理由で行き詰まってしまうということが仮にあると、これは既に金融市場に約束したことを違えてしまうことになりますし、あるいは金融政策の限界とも捉えられると、金融市場参加者のセンチメント、企業・家計の景況感に非常にマイナスの影響を与える可能性があります。これを勘案すると、今の資産の買入れの持続性を高めることが非常に重要なのではないかと思っています。さらに言うと、資産の買入れは、現在確かに残高の額にコミットしているわけですが、究極的には、資産を買い入れることによって金融市場の価格――これは金利水準であったりリスクプレミアムだったりということですが――に前向きに働きかけることを目指しているというのが、包括緩和の基本的な考え方であるということです。政策の持続性を確保するということと、いたずらに額を増やしていくのではなく、政策効果を高める――この資産を買えば、より市場の価格に影響を与えることができる――ということの、この 2 点が重要だと思います。具体策についてはお話しできませんが、やはり重要な点としては、資産の買入れという緩和策の中核を今後もしっかりと維持していくという持続性、そして政策効果を高めるということ――効果のある政策をしっかりやっていくということ――が、政策に対する信認の高まりにつながったり、政策効果を高めるといったことにつながっていくと思います。
§16Takahide Kiuchi
こうした点にも配慮しつつ、様々な工夫をしながら、今後も資産の買入れを続けていきたいと考えています。
§17Question
4 点あります。まず、本日の挨拶要旨の中で、「資産買入等の基金」の運営に関する論点ということで、3 点あります。1 つは、付利の撤廃の話であるとか、買入れ対象となる国債の残存期間の伸長といったところを挙げておられますが、それぞれに対して委員ご自身としてはどのように考えていらっしゃるのか、もう尐し教えて下さい。2 点目は、景気の認識のところで、下振れリスクを割と大きめにみているように思いますが、本日、鉱工業生産も発表になって――またプラスになっていますが――やはり、景気は下げ止まっているという認識から、やや上向きになってきているのかどうか、考えをお聞かせ下さい。3 点目は、先ほど新総裁の人事案が国会で提示されましたが、副総裁として提示されている岩田先生は、「資金の供給量を増やせば」という理論に立っていると思っています。その点について、委員はどうお考えか教えて下さい。最後に、講演の中で、「財政ファイナンスであると、市場から見られないように」という点を指摘されていると思います。その点でいうと、「資産買入等の基金」に関して、日銀券ルールの問題が残っていると思うのですが、日銀券ルールがどういう存在で、今後どうしていくべきかという点について、ご回答をお願いします。
§18Takahide Kiuchi
第 1 の点で、個人的にどう考えているかというのは差し控えますが、既に挨拶要旨の中に書かれている範囲内で言うと、色々な政策オプションが議論されていますが、それぞれコストとベネフィットを勘案しながら実施していくことが重要です。資産の買入れについては、先ほども申しましたが、持続性と政策効果の 2 点を重視しながら、政策の対象を考えていくという姿勢が重要だと思います。ただ一方で、その結果として、より年限の長い国債を買う場合には――これは 4 番目の質問と関連してきますが――財政ファイナンスと捉えられるリスクが高まる可能性がないわけではありませんので、こういったコストの面にも注意しながらやっていく必要があると思います。付利金利の引下げについては、そのデメリットというのは、総裁の記者会見などでご説明しているのですが、例えば、市場機能が低下してしまうという面がありますし、金融機関の収益が悪化すると、私どもの政策効果が減じられてしまう可能性もありますので、それもコストの一つだと思います。そして、私が一番コストとして感じているのは、資産の買入れという政策自体の運営をやや難しくしてしまう面があるのではないかという点です。資産の買入れの裏側には、当座預金の積上げあるわけですが、付利金利を引き下げると、金融機関が当座預金を持つインセンティブが低下してしまうことになります。
§19Takahide Kiuchi
そうなると、オペによる資金供給が、将来もしかしたら難しくなる――難しくなるかどうかはわからないのですが――リスクを幾ばくか上げてしまう可能性があると思います。それが、コストということだと思います。一方、ベネフィットについては、金利を下げる方がいいということで、これは明らかではないかと思います。リスク性資産の買入れについては、色々な金融市場に対して、期待に働きかけるのがプラス面、つまりベネフィットということですが、一方で、マイナス面としては、バランスシートを毀損してしまうと、日銀の健全性というものが通貨価値の安定と関わっているため、それを損なうというリスクを考えなければいけないということだと思います。それぞれコストとベネフィットがありますので、それを勘案しながらやっていくということになりますが、私の基本的な感覚としては、この挨拶要旨に書いた通りで、資産を買い入れることが重要で、持続性と政策効果の面から工夫していくことが必要であると思っています。
§20Takahide Kiuchi
そして、これらの政策を運営する上では、政府との協調が必要であり、政府が財政健全化という方針をより強化していくということであれば、日本銀行がより資産を買う余地が高まっていく、あるいは長めの年限の資産を買っても財政ファイナンスと誤解されるリスクが下がっていくという点からすると、政府との協調強化は、私どもが今後金融緩和を進めていく上で非常に重要な要素ではないかと思っています。3 番目の人事に関するご質問にはお答えできません。資産買入れの考え方については今お話した通りであり、「行き詰ってしまっては大変だ」という思いがありますので、限られた中でも、持続性と政策効果がしっかり出るような形で、資産の買入れを進めていく、ということが重要ではないかと思っています。4 番目の日銀券ルールについては、これも具体的な政策についてお話できないのですが、仮に年限の長い国債を買っていくということになると、やはり、今の基金を通じた買入れと、いわゆる輪番オペを通じた国債の買入れとの境目が不明確になってしまうので、将来的には何らかの工夫が必要だと思います。その際には、日銀券ルールについて、何が適切であるかを見直していくことも、検討課題になるかもしれない――これについて正直にいうと、差し迫った課題ではないように思いますが、将来的には課題になってくると思います。
§21Takahide Kiuchi
ただ、日銀券ルールは、ある意味、「財政ファイナンスではない」ということを担保しているルールですので、そういった重要性にも配慮しながら、将来適当な時期に慎重に判断していきたいと考えています。
§22Question
新しい正副総裁がまもなく決まり、日銀に 3月半ばから来るわけですが、安倍総理の「次元の異なる金融緩和」という重い課題を背負っておられる方々なので、包括緩和政策という枠組み自体も、色々な意味で見直すという可能性もあるかと思います。その一環として、一応、政策の目標というのは、資産買入等の基金の残高ということになっているわけですが、目標のターゲットを、例えば、量的緩和政策の復活となる当座預金にするとか、マネタリーベースにするとか、もう尐し範囲の広い「量」をターゲットにするとか、という政策のコスト・ベネフィットについて、お話し頂けますでしょうか。
§23Takahide Kiuchi
将来の政策がどう運営されていくかということについては、もちろん、政策委員も入れ替わるので分からないというのが正直なところです。当座預金をターゲットにすることついては、まさに量的緩和政策に戻るということですので、2001年から 2006年までとられた量的緩和政策の評価に関わるということだと思います。その際の評価としては、当座預金を積み上げるということだけで、経済・物価に好影響を与えたという証拠はなかなか得られなかった、ということではないかと思います。現在の資産の買入れというのは、量的緩和政策の評価や経験も踏まえた上で実施されているわけです。当座預金というのは、日本銀行のバランスシートでいうと、負債サイドになるわけです。しかし、私どもが現在重視しているのは、資産サイドであり、どういった商品、金融資産を買うかであります。それは、バランスシートを増やすこと、当座預金を増やすことが目的ではなく、市場価格に影響を与えることが目的です。実は、これは日本銀行だけではなく、FRBあるいはBOEも、バランスシートを増やしていく、リザーブを増やしていくことを目標にはしておらず、何を資産サイドで買い、それを通じて経済にどういうプラスの効果を働かせるか――米国でいうと、国債とMBS を両方合わせて買うことで、主に住宅市場にプラスの効果をもたらそう――といった考え方をとっています。
§24Takahide Kiuchi
従って、「資産を買う」という点で言うと、量的緩和政策と今の包括緩和政策は似ているわけですが、考え方としてはかなり違うということですし、海外の中央銀行の政策などをみても、量的緩和というよりは、やはり、今の包括緩和に近いような考え方で政策運営が行われているということではないかと思います。ただ、結果として、当座預金は急速に増えており、既に量的緩和政策で当座預金を目標にしていた時よりも、かなり高い水準まできています。さらに今後、買入れを進めて、年末に 101 兆円、2014年度については 111 兆円というところまで買い進める過程では、当座預金の残高自体は、非常に大きく膨らんでいくので、それを目標にするか否かは別として、結果的に、当座預金の水準、あるいは、バランスシートがさらに大きく増えていくというのは、既に私どもがコミットしたこと、つまり約束したことであるかと思います。以上