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日本銀行記者会見2014年2月6日岩田規久男, 副総裁

岩田副総裁記者会見(2014年2月6日)要旨

全文

§1Question

宮崎県金融経済懇談会ではどのような意見交換が行われたのでしょうか。

§2Kikuo Iwata

本日の懇談会では、宮崎県の各界を代表する方々から、地域の金融経済の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話やご意見等を数多くお聞かせ頂き、非常に有意義な意見交換ができたものと認識しています。まずは、ご出席いただいた方々や、関係者の皆様に深くお礼を申し上げます。本日の懇談会では、ご意見が多岐に亘ったため、全てを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げます。宮崎県の景気に関しては、観光客が口蹄疫前の水準まで改善しているとか、あるいは公共投資の増加により、関連業種では非常に繁忙感が強いなど、持ち直しの動きがみられているとのお話がありました。その一方で、日本経済が緩やかに回復している中にあっても、当地経済や中小企業への波及が実感されるまでには、まだ時間がかかっているという話も聞かれました。また、当地の主力産業である農業を中心に、為替等の影響を受けて、原油や資材、飼料などの価格が上昇しており、収益的には依然として厳しいとの話も聞かれました。こうした中で、東九州自動車道の宮崎・延岡間開通など交通インフラの整備に対して期待する声が聞かれたほか、産業、金融、行政一体となって、当地の強みである農業や観光分野、さらに医療・福祉分野を強化する取組みが行われているという非常に心強いお話も伺いました。

§3Kikuo Iwata

また、アジアを中心とした海外の需要を取り込もうとしていることも伺いました。私どもとしては、宮崎県内の金融経済情勢について、鹿児島支店・宮崎事務所を通じて今後もきめ細かくモニタリングを続け、中央銀行の立場から経済の持続的成長の実現や金融システムの安定性の確保を図りながら、宮崎県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へと繋がっていくようサポートしてまいりたいと考えています。

§4Question

宮崎県の金融経済情勢についてどのように認識しているのかお聞かせ下さい。

§5Kikuo Iwata

宮崎県の景気は、持ち直しの動きに拡がりがみられている段階と認識しています。観光が緩やかに改善の方向にあるなど個人消費の一部に明るい兆しがみられているほか、住宅投資や公共投資は増加しているなど、内需は総じてみればしっかりとしています。また、企業の生産動向についても、電子部品・デバイス関連をはじめとした幅広い業種で生産水準が上昇しています。そうした下で雇用環境も改善の動きがみられています。今後、こうした動きがより確かなものとなり、企業の設備投資の拡大や、企業収益、所得環境の改善という生産・所得・支出の好循環の影響が徐々に波及していくことを期待しています。先行きも、宮崎県の景気は、持ち直しの動きが続くと見込まれます。消費税率引き上げに伴う影響や海外経済の動向といったリスク要因はありますが、県内をみると、東九州自動車道の宮崎・延岡間開通や宮崎・台北線の増便など交通インフラ整備に伴うビジネスチャンスの拡大や観光需要の改善が期待されます。

§6Question

市場では、消費増税後の追加緩和観測が広がっているようです。副総裁は増税後の追加緩和が必要になる可能性についてどのように考えられているのでしょうか。

§7Kikuo Iwata

講演でも申し上げましたが、日本銀行は、2年程度を目途にして出来るだけ早期に 2%の物価安定目標を達成すると申し上げており、そのシナリオは順調に現在まで続いていると思いますので今の政策を続けていくのが基本です。ただ、経済では将来色々なことが起こり得ますので、上下双方のリスクに対しては適切な政策をとっていく姿勢に変わりがないということです。

§8Question

新興国経済の不透明感に端を発して市場が動揺していますが、足もとのマーケット動向をどう受け止めていますか。また、日銀が描く景気回復シナリオに影響はありますか。

§9Kikuo Iwata

先月末頃から金融資本市場が少し動揺しているということですが、その原因はもう少し分析してみないとはっきりはわかりません。私は基本的には、米国の経済指標が予想よりも少し悪いということ、あるいは、中国でもちょっと弱い指標が出てきたこと等が投資家のリスクテイク姿勢に影響して、少しリスクオフになり、そのことが、金融資本市場の動揺を生んでいると思っています。米国の量的緩和縮小の影響に関しては、量的緩和縮小は、昨年12月にFOMCで決まっていますので、市場が動揺するのであれば、そのときから動揺しているはずです。先月末から金融市場が動揺しているのは、むしろ米国や中国の経済指標が悪いので「大丈夫かな」と投資家が少し不安になっているということだと思いますが、米国の経済指標が少し弱い部分は、寒波が大きい要素だと思います。米国の実体経済が急に何か悪くなることはやはりあり得ないので、何か突発的な他の要因があったと考えるのが普通だと思います。米国経済は、順調に回復してくると思います。米国経済では、消費と住宅投資が非常に重要な要素です。これが上向いている原因、あるいは長期的にも堅調に行くだろうという原因は、家計の過剰債務が解決しつつあることだと私は見ています。米国の消費や住宅投資は堅調であり、米国経済はそれほど心配ないと思います。日本の経済政策、金融政策に関しては、今の立場を堅持していけばいいと思います。

§10Question

何点かお聞きします。まず最初に、講演録の 11 ページに、「消費者物価の前年比上昇率が 2%に達したとしても、その水準が先々も安定的に 2%近辺にとどまるという見通しが立たない限り、急に金融緩和をやめてしまうということにはならない」とあります。急にやめないというのは、どれくらい続くということでしょうか。例えば、2006年3月の量的緩和では、コアCPIが 0%以上になるまで続けると言っていたが、2~3 か月プラス水準になっただけで量的緩和をやめてしまい、その後改定されたCPIは実はマイナスだったということも起こりました。そのときには、おそらく岩田先生もかなりきつく批判されてらっしゃったと思います。この急にやめないというのは、数か月でやめるということではなく、少なくとも1年ぐらいは、2%に達した後も「量的・質的金融緩和」が続くと考えていいのかどうか、これが1問目です。次に、毎月の長期国債の買入れ額についてです。昨年4月4日の決定以来、月7 兆円強を上回るペースで買われてきましたが、昨年12月、今年1月と 2 か月連続して 7 兆円を下回っています。

§11Question

このことから、ご指摘のあった色々な観測が発生していると思いますが、もともと昨年4月4日から9か月で50兆円増やしてきたわけで、今年は 12 か月で 50 兆円増やすと、おのずと毎月の買入れ額グロスも減ってくるというのが自然ではないかなと思います。だからこそ昨年12月、今年1月と 7 兆円を割っているということだと思います。ただ、昨年4月4日の声明文に 7 兆円強という注意書きが脚注とはいえ書かれています。それとの整合性をどのようにお考えになりますか。しかも、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を打ち出した時には、新規国債発行額の7割を買っていくとも表明されています。それとの整合性も出てくると思います。仮に、1年間で50兆円だから、 12か月で割って、毎月の買入れ額が7兆円強よりも下回ってくるのであれば、昨年4月4日に出された「量的・質的金融緩和」のステートメントは、若干過大広告であったのではないかととれる点については、如何でしょうか。3 問目は、1年近く前に、岩田副総裁は、就任される前後に、2年で 2%を実現できなければお辞めになる、それくらいの覚悟がおありだとおっしゃいました。伝え聞くところによると、既にトーンダウンされているのではないかということです。

§12Question

例えば、リーマンショックのようなショックがあれば、その実現は難しいということかもしれませんが、白川前総裁などに対して「リーマンショック後の対応が足りない」、「金融緩和が十分ではない」と、岩田先生も含めて、かなりきつく批判されていました。そういう意味では、何が何でも 2年で 2%実現する、出来なければおやめになると宣言される方が期待への働きかけという意味で言うと、より効果があると思いますが、如何でしょうか。

§13Kikuo Iwata

まず、2%の物価安定目標を安定的に持続するという場合の具体的な期間の長さについてのご質問だったと思います。これは、その時々の経済指標に応じて、安定的ということを判断するために必要な期間は違ってくると思いますので、今から何か月ですということはなかなかお答えできないと思います。その時々の上下双方のリスクを見ながら、安定的かどうかを判断するということに尽きると思います。それから、長期国債の買入れの毎月のペースです。もともと残高でマネタリーベースを増やしていく、その手段として長期国債をネットベースで 50兆円買入れるということを申し上げていて、そのことに色々と誤解が生じているのではないかというご指摘だったと思います。残高でマネタリーベースを増やしていくという考え方は、基本的に、日本銀行が、長期国債の残高としてどれだけ持っているか、そしてその残高がどれだけのスピードで伸びていくかということが、金融政策の効果を決めるという考え方に基づいているわけです。日本銀行が持っている残高がどれだけか、そしてそれがどれだけ増えているかが金融政策の効果に影響を与えるもので、グロスベースの買入れ額ではないと考えているわけです。したがって、ネットベースで残高を維持するためには、日銀が持っている国債の償還分を再投資することになり、グロスベースでは、再投資額の分が振れるということになります。

§14Kikuo Iwata

このことが、ご指摘のような色々な誤解を生むとまでは当時考えませんでしたが、ネットベースを目標にすると、グロスベースはどうしても償還額によって変化することになります。あるいは年間では、昨年1~3月はもう与えられたものなので、そこを調整して全体を年間に直さなければならないということも、それは別に隠すわけでもなく、当然そのようなことだったわけです。日本銀行として、誤解を招くかもしれないとの配慮が足りなかったかもしれないのですが、色々な報道等も踏まえて、その真意をもう一回伝えたいということで申し上げています。「量的・質的金融緩和」の規模を大きく見せて効果を狙おうというような意図があったわけではございません。それから、2%の物価安定目標を達成しない場合についてですが、副総裁としては、物価安定目標の実現に向けて全力を尽くすということです。現在、順調に目標実現に向けた道筋を辿っているので、実現できない場合の責任の取り方を今ここで語るということは、必ずしも適当ではないと思います。今のところ、できるだけ早く 2年をめどに 2%の物価安定目標の達成に全力を尽くしているという段階です。

§15Question

2 点ございます。まず、今日の金融経済懇談会における挨拶の中で、増税の影響について、基本的に、これまでの総裁の発言に沿っていますが、可処分所得が減る可能性について、総裁より少し多めにメンションしているのではないかと思います。また、輸出の減少についても、ASEANが厳しいのではないか、ASEANなどちょっと下向きではないかというように書かれています。先行き、少し下振れのリスクを危惧されているようにお見受けするのですが、副総裁ご自身として、展望レポートのシナリオに比べてどうみているのか教えて頂きたい。それから、期待インフレ率を示すBEIについては、16 回債と 17 回債でちょっと動きが変わっており、16 回債は、今年に入って突然上がり出して、17 回債はここ数日急落しております。これをどう解釈されているかお聞かせください。

§16Kikuo Iwata

挨拶の中で、増税の影響とか、可処分所得とか輸出のこととかに関して色々触れたことが、「下振れリスクを心配しているのではないか」ということですが、そうではなくて、「下振れリスクが小さい」と言っているということです。下振れリスクについて大きく考える方もいますが、私は、比較的小さいと考えており、そのことを説明するために触れています。例えば、輸出に関しては、ASEANは弱いですが、米国をはじめ、日本、欧州、中国も回復していくにつれて、ASEANにはよい影響が出てきます。そして、ASEAN向けの輸出も、ASEAN経済の回復につれて出てくるであろうと思っています。少し時間はかかるけれども、決して下振れリスクが大きいと言うために触れたのではございません。逆です。むしろ、下振れリスクは小さいと考えています。それからBEIに関するご質問は、5年物と 10年物との違いということだと思います。10年というのは少し長く、そんなに長い予想というのはちょっと無理なところがあって、5年くらいのスパン、あるいはもっと短いところから5年くらいの指標の方を、私自身は重視しています。最近、これが非常に順調に実は上がっています。いつ頃から順調になっているかというと、これは昨年12月中頃からです。2%くらいまで上がってきていますが、昨年5月下旬にだいたい 1.8%くらいであった。

§17Kikuo Iwata

ご指摘のあった 10年物、17 回債のように短いデータでは、何が要因でこうなっているかというのは経済的に分析するのは難しいです。5年物は、2009年6月頃から最近まで長いデータを得られます。このデータを用いて、予想インフレ率がどのように変化しているのかについて、最近、分析しました。就任前から申し上げているように、マネタリーベースと予想インフレ率の関係は、依然として非常に安定してあることが確認できました。ただ、予想というものは、色々なことに影響されます。例えば、日本銀行がインフレ目標にどれだけコミットしているかを市場がどう判断しているか、というようなことが影響します。例えば、昨年の 1月末の政府と日本銀行の共同声明において、日本銀行は 2%インフレ目標にコミットしています。そういうものが予想インフレ率を引き上げるということに影響する、あるいは、米国の量的金融緩和の縮小に対して、市場が動揺してしまって、先行きがよく分からなくなると、それは予想インフレ率に影響します。あるいは、ユーロの金融が安定すれば、リスクを取りやすくなり、安全資産である日本円に誰もが逃げ込むというようなことはなくなり、リスクオンになります。その結果、日本経済に対する刺激も大きくなるであろうということで予想インフレ率が上がります。そうした色々な要因で予想インフレ率は上にいったり、下にいったりしています。

§18Kikuo Iwata

12月中頃からの動きの背景としては、米国の量的金融緩和縮小の効果を市場が消化してきたことが大きい要素だと思います。予想インフレ率は、アベノミクスから始まり、昨年4月4日の「量的・質的金融緩和」の決定を経て、昨年5月22日まで非常にスムーズに上がった後、上がったり下がったりしましたが、その変動がおさまってきて、 5月22日前ぐらいのトラックに入ってきています。金融市場がだんだん安定しているという効果があると私は思っています。いずれにしても、予想インフレ率というのは色々なイベントにどうしても左右されて上下します。人々の予想ですから、安定はしないですが、マネタリーベースを日本銀行が増やしているという政策は、予想インフレ率に働きかけるという意味で、基調的にきちんと働いています。この関係をやはり維持していきたいと思っています。

§19Question

賃金の先行きの動向についてお尋ねします。先程のご挨拶の中でも、2年程度で 2%の物価目標を達成するために、生産・所得・支出の好循環が必要であるとおっしゃっていました。今春闘が行われていますが、組合側はベアを要求していますが、経営側は、多様な賃金のあげ方を提案しています。副総裁の立場で、物価目標を達成するために必要な賃上げのあり方は、ベアなのか、それともベアでなくてもよいのか、が 1 つ目の質問です。また、消費増税の分も加えた物価上昇率に満たない賃金の上昇であった場合、日銀の経済・物価見通しのシナリオに何か修正がありうるのか、影響があるのか、について教えてください。

§20Kikuo Iwata

1 点目ですが、基本的に需要が増加していて、物価が上がっているのだと思います。円安効果で上がっているだけだとおっしゃる人もいますが、円安効果というコストプッシュだけであれば、実体経済で何が起こるのかというと、物価が上がると需要が減って、生産が減少します。今起きていることはそうではなく、円安になっていることはありますが、物価が上がりつつ、生産も増えており、それは需要が増えていることを意味しています。ということは、需給ギャップが縮まっていることがベースにあるということです。そういうことが続くと、雇用は逼迫して、賃金に上昇圧力がかかってきます。この上昇圧力の受け方は、企業の規模によっても違うので、色々な賃金の上がり方があると思います。もちろんそれはベアでも、ボーナスでもいいです。もっと需要が出てくると、残業しなければいけないことにもなります。非正規雇用も増えて、その賃金も上がってくると思われます。このように、賃金が上がる要素は色々ありますが、いずれにしても賃金が上がるので、十分効果があります。全体として需給ギャップがオントラックで縮小するにつれて、賃金上昇が予想されるようになります。例えば、デフレの中では、賞与を期待できる状況ではなかったのが、賞与もある程度安定して期待できることになります。

§21Kikuo Iwata

そのように色々な意味で、所定内給与、所定外給与に関わらず、全体としては賃金が上がっていくという期待が出てきますが、それが実際にも実現される経済とは、2%の物価安定目標を達成した経済ではないかと考えています。2%の物価安定目標というのは、今申し上げた状況を達成可能にするような経済的な基礎を創るという政策です。ご指摘のように、物価の上昇が少し先行して賃金が上がるのが遅れる場合があるので、そのときには実質賃金は下がりますが、需給ギャップがどんどん縮まってくる場合には、生産性が上がってきます。そのために、賃金の上昇が追いついてきます。それが行き過ぎると、今度は生産性の上昇を伴わずに、賃金の方が先に上昇してしまう状況が出てきます。そういう生産性の上昇を伴わない賃金と物価のスパイラル的な上昇局面に入っていくときには、金融は緩和しすぎたというシグナルになります。そういう意味で、もう少し見ていただければ、実質賃金が上がってくるというフェーズに入っていくと思っています。

§22Question

先程、消費増税の影響について、リスクは低下しているという考えを聞かせていただきましたが、安倍政権はこの年末にかけて今度は 8%から 10%へ上げるかどうかを検討する考えです。現時点で副総裁のお考えとしては、リスクは低下しているので順調に予定通り上げるべきかとお考えなのかどうかを確認させて下さい。

§23Kikuo Iwata

もともと昨年4月4日に現在の政策を導入した時は、消費税の増税が 2段階で行われることは織り込み済みです。その場合には、この程度の金融緩和政策、量的金融緩和が必要だと思って打ち出したものです。その時の考えに今も変わりはありません。以上