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日本銀行記者会見2014年4月10日宮尾龍蔵, 審議委員

宮尾審議委員記者会見(2014年4月10日)要旨

全文

§1Question

3 点伺います。まず、1 点目は、岡山県経済の印象についてお聞かせ下さい。また、2 点目は、本日の懇談会でどのような意見、要望が地元からありましたでしょうか。また、3 点目は、金融政策について、本日の挨拶要旨の中でも、経済回復を強力に後押しする効果を挙げられていましたが、地方ではまだ実感に乏しい感もあります。政策効果の地方への波及についてのご見解を、本日の懇談の中身を踏まえてお聞かせ下さい。

§2Ryuzo Miyao

最初に、2 点目の、本日の金融経済懇談会における意見交換の内容について申し上げたいと思います。本日の懇談会では当地の経済界や金融界を代表する方々から、地域経済が直面する課題や、日本銀行の金融政策運営に対する貴重なご意見を頂きました。大変有益かつ示唆に富む意見交換ができたことについて、懇談会にご出席頂いた方々に改めて感謝を申し上げたいと思います。懇談会でどのような話があったかという点については、全てを網羅できませんが、席上聞かれた話を整理して申し上げます。まず、当地の景気については、堅調な内外需を背景に、自動車や鉄鋼を中心とした製造業が高操業を続けています。また、公共投資や住宅投資の増加から建設業でも繁忙度が高まってきています。更には、消費者マインドが改善するもとで、個人消費についても堅調に推移しています。このため、「全体としては緩やかに回復している」という意見が聞かれました。こうした基調的な変化に加えて、業種、あるいは時期のばらつきはみられますが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要により、3月末にかけて売上が大きく増加したという声が多く寄せられました。この点、4月に入ってからは、予想された売上の反動減がみられているという指摘が聞かれました。

§3Ryuzo Miyao

もっとも、その程度については、「確かに反動減は出ているものの、駆け込みの強さから考えればさほど落ち込んでいない」とか「反動減は限定的なのではないか」など、今のところ予想していたよりも小さいという声が、住宅、耐久消費財、小売、サービスなどについて聞かれました。先行きについて、反動減が終息する時期は、夏場以降ではないかという事前の予想に対して、「もう少し早く終息するのではないか」という声も聞かれました。また、地元のトピックスとしては、岡山駅前に建設中の「イオンモール岡山」開業による当地経済への影響についての話が多く聞かれました。中四国全域を商圏とする集客力へ大いに期待するという声とともに、既存の周辺小売業へのマイナス影響に対する懸念の声もありました。この点について、当地では、道路整備や周辺の小売業の連携強化などを通じて、回遊性を高める街づくりに取り組まれているということでした。金融面に関しては、岡山県内の銀行貸出残高が足もと着実に前年比プラスを続けているということ、この改善には病院などへの事業性貸出も寄与しており、日本銀行の貸出支援基金による低利貸出制度も役立っているといった声がありました。また、日本銀行に対しては、「量的・質的金融緩和」の効果が低金利、円安、株高、マインド改善などを通じて着実に出てきており、引き続き強力な金融緩和を進めて欲しいという声が多く聞かれたところです。

§4Ryuzo Miyao

続いて、当地、岡山県の印象についてですが、まず岡山県は「晴れの国」といわれるように、晴天が多く温暖な気候であると同時に、地盤が強固で災害リスクが少ない、中四国の結節点として交通利便性が高い、などの地理的な優位性がある、という印象を持っています。このため、例えば桃やブドウなどの豊かな農産物、生産拠点や物流・データセンターなどの誘致、太陽光発電施設の建設、あるいは中四国全域を商圏とした大規模商業施設の整備など、地の利を活かした経済発展を遂げてこられたと理解しています。そのうえで、さらなる発展を遂げるためには、産・官・学の英知を結集して、当地が持つポテンシャルを一段と発揮することが重要だと思いますし、こうした前向きな動きを金融機関などが下支えしていくことが重要だと思っています。3 点目の、政策効果の地方への波及についてですが、わが国全体としては、生産・所得・支出という前向きの循環メカニズムを伴いつつ、緩やかな回復を続けています。一方で、都市部と地方では、経済構造の違いや、直面する需要が異なることなどを背景に、改善ペースにばらつきがあるというのも事実かと思います。私どもが 1月に公表した地域経済報告、いわゆる「さくらレポート」における景気判断は、全ての地域で「回復している」あるいは「回復しつつある」という状況になっており、景気回復の裾野が着実に広がってきているとみています。

§5Ryuzo Miyao

今後、基調的には、景気が緩やかな回復を続け、日本経済全体が好転していくもとで、当地にも政策効果が波及していくと考えています。日本銀行としては、今後も、地方経済について、本支店の調査機能などを十分に活かして、引き続き、きめ細かく点検しながら、適切な金融政策運営に努めて参りたいと思います。

§6Question

2 点あります。1 点目は、本日の講演要旨を読ませて頂くと、非製造業と消費中心の今回の景気回復の持続性に自信をお持ちであるようにお見受けしますが、このシナリオ通りだと、現在の異次元緩和についても、ビルトインスタビライザー的な効果もあって、このまま自然に物価上昇率 2%を安定的に達成するというシナリオが、以前に増して確度が高まっていると発信されたいのかということを確認させて頂きたいと思います。2 点目は、逆方向ではありますが、世界経済をみると色々とリスク要因があり、本日も中国の輸入の指標が随分と悪かったということで金融市場が動いています。中国経済について、現時点の気になる点をお伺いできればと思います。

§7Ryuzo Miyao

まず、1 点目ですが、講演では、消費あるいは非製造業を中心とした、景気回復の持続性に関して、メカニズムとして、次のような点が重要であると申し上げました。すなわち、まず、供給面では、非製造業を中心に様々な潜在的需要の掘り起こしが進み、成長力あるいは収益力が高まってきています。それから、労働面、雇用・所得面では、企業は、持続的に新しい取り組みを進めるうえで、沢山人を雇わなければならないということで、労働需要が増える一方、家計も、より主体的な理由も含めて、積極的な労働供給を増やしています。そういった中で、労働市場はタイト化して、賃金は上昇し、雇用者数も増え、雇用者所得もしっかりと増えてきているということで、雇用・所得環境が持続的に改善してきています。最後に需要面としては、新しい需要の掘り起こしが進み、雇用・所得環境が持続的に改善する中で、消費支出が基調的に高まっています。このように、供給、雇用・所得あるいは労働、そして需要といった 3つの面から、景気回復の持続性が高まっており、メカニズムとして働いてきているのではないかといったことを申し上げました。

§8Ryuzo Miyao

こういった私の説明が、先々の経済・物価見通しに与える影響については、前回の、昨年秋の金融経済懇談会でも述べていますが、私どもが描いている、2%の「物価安定の目標」に向けて、着実に近づいていくという経済・物価の見通しに対して、確度を高める 1 つの要因になるのではないかと考えています。そう申し上げたうえで、毎回の金融政策決定会合では、そういった中心的なシナリオあるいはリスク要因について点検していきます。特に、今月末には、新しい展望レポートをお示ししますので、先行きの経済・物価情勢、メインシナリオとリスクバランスについて、しっかりと点検していきたいと思っています。その際に、今申し上げたようなメカニズムを踏まえたうえで、どういった評価になるのか、分析・点検していきたいと思います。2 点目ですが、中国経済の現状は、基本的に、堅調な内需を背景に、安定した成長が続いているとみています。生産等の一部の指標には、成長のモメンタムが幾分鈍化しているという面も窺われますが、一方で、中国当局は、必要な構造調整を推進しつつも、景気への配慮を続けるという方針にあると思います。具体的な景気下支え策も発表されたと聞いています。こういったことを踏まえると、中国経済は、今後も概ね現状程度の安定した成長が続くのではないかとみています。

§9Ryuzo Miyao

このように申し上げたうえで、中国経済は、資源国や他の新興国をはじめとして、海外経済全体、あるいはわが国経済に及ぼす影響が非常に大きいだけに、リスクの評価について引き続き丹念にみていきたいと思います。

§10Question

2 点伺います。1 点目は、本日の講演の中で、2014年度、2015年度に関して実質成長率も物価も想定通りとおっしゃっていますが、昨年度に関して言うと、成長率の見通しが+2.7%ということですので、これはどう考えても下振れるかなと思います。一方で、昨年度の物価見通しの+0.7%というのは確実に達成されるかと思いますが、昨年度の景気の下振れが、2014年度、2015年度の成長率の見通しにどう影響するのでしょうか。もう 1 点は、昨年度に関して、成長率は下振れているけれども物価はオントラックという点についてです。日本銀行では、物価を説明する要因として、需給ギャップと期待インフレ率と輸入物価を挙げていますが、そうした要因との関係で、どういった分析、または理解をされているのか、お伺いします。

§11Ryuzo Miyao

まず、1 点目の、2013年度の実質GDP成長率が仕上がりとして下振れた場合に、その後の 2014年度、2015年度の経済・物価見通しにどういう影響を及ぼすのかという点です。そこはまさに、今月末の次回展望レポートでしっかりと考えていきたいと思います。今のところ私自身は、この講演で強調したような「景気回復の持続性」といった観点から、消費や非製造業主導の景気回復のメカニズムが働くということを盛り込んだうえで、どうなるのかということを考えていきたいと思います。最終的な経済・物価見通しの値がどうなるのかということは、9 人の政策委員の中央値という形で出てきますので、事前に数値について申し上げることは不可能ですが、やはりメカニズムが重要だと思っています。景気回復の持続性、内需を中心とした前向きな循環メカニズムが今後もしっかりと働いていくのかどうかということを、点検していきたいと思います。2 点目の、2013年度の成長率がやや下振れる一方で、物価はオントラックだということをどう考え方として整理するのか、ということについてです。物価を説明する要因としては、需給ギャップ、予想インフレ率、それから輸入物価という 3 つの主だった経路があります。

§12Ryuzo Miyao

内需主導、消費主導の回復のもとで、特に生産要素の稼働状況から推計される需給ギャップは順調に改善を続けており、日本銀行の推計値では、ゼロという水準に近付いているという結果も得られています。もちろん需給ギャップの推計値は幅をもって理解されるべきですが、方向としては改善の方向が、少なくとも生産要素の稼働状況という観点からは見受けられます。そういったところが起点となって、景気回復が持続するという見通しが徐々に広がる中で、企業も、生産コスト等を販売価格によりストレートに反映させる形で、価格設定行動を前向きに変化させているという兆し、可能性も窺われるということかと思います。いずれにしても、2013年度のGDP成長率と物価については、次回の展望レポートで考え、あるいは数値等でお示ししますが、メカニズムとしてはそういった理解が可能ではないかと思います。

§13Question

物価についてお尋ねします。2%の「物価安定の目標」の実現のタイミングについて、黒田日本銀行総裁は常々、2014年度終わりから 2015年度にかけてと発言していますが、宮尾委員は同じ考えをお持ちでしょうか。また、到達後は 2%で安定推移すると考えているのか、到達後について描かれているイメージがあればお願いします。

§14Ryuzo Miyao

まず、2%の「物価安定の目標」の達成時期について、現時点では、2014年度の終わりから 2015年度にかけて 2%に近付いていくのではないかという見通しであり、これは展望レポートで、全体の意見を集約する形でお示ししている考え方ですが、私自身もそれに違和感はありません。ただ、何度も申し上げているように、この点については、今月末の展望レポートで、どういった先行きの経済・物価見通しになっていくのかということを入念に点検していきたいと思います。「物価安定の目標」の達成後に、その水準で安定するかどうかという点についても、次回の展望レポートでは 2016年度までの姿を示すことになろうかと思います。これまでは 2015年度までしか示していませんので、そこからさらにもう 1年見通し期間が伸びるということです。2014年度、2015年度の物価見通しを前提として、2016年度の物価が 2%で安定するというような形で見通しを描けるのかどうか、あるいはそれに関わるリスクはどうなのかという点については、次回の展望レポートで、全員でしっかりと議論していきたいと思います。

§15Question

本日の講演の中で、「リスクは概ねバランスしているとみています」とおっしゃいましたが、昨年11月の時点では、若干、下方向のリスクを意識されている発言だったと思います。先ほどの、消費ですとか非製造業の動向というのも 1 つの理由だと思いますが、なぜリスクがバランスしているとみられているのか、もう少しご説明頂けますでしょうか。

§16Ryuzo Miyao

リスクバランスについて、大きく海外要因と国内要因に分けて考えると、まず海外要因は、講演でも、新興国・資源国の動向、欧州債務問題の動向、そして米国経済の回復ペース、といった項目を挙げています。そうした中で、特に先進国で一番重要な国である米国では、この間、財政を巡る不確実性は大きく後退してきました。また、金融政策面でも資産買入の減額をスタートしました。こういった動きは、昨年秋、11月の半ばには、まだみられなかった状況であり、財政をめぐる不確実性が大きく後退し、また金融政策の運営面で、資産買入の減額をスタートしたことからも、海外要因の不確実性、リスク要因は相応に低下してきたのではないかと思います。一方、国内経済要因では、足もとの駆け込み需要とその反動減の大きさをどうみるかという問題がある一方、本日の講演でも強調したように、労働需給が一段とタイト化する中で、雇用・所得環境は想定よりも上振れて推移する可能性も考えられます。こうした海外要因、国内経済要因を総合して、現時点の判断としては、リスクは概ねバランスしていると評価しています。ただ、これに関しても、繰り返しですが、4月の展望レポートでしっかりと点検していきたいと思います。

§17Question

今、国内について、「上振れ要因」とおっしゃいましたが、そこについて、もう少し詳しくお聞かせ下さい。今まで、日本銀行の展望レポートその他でも国内の「上振れ要因」というのはそれほど指摘がなかったと思います。これは、最近、新たにお感じになったということでしょうか。

§18Ryuzo Miyao

労働需給が一段とタイト化する中で、雇用・所得環境がよりしっかりと改善していくのではないか、という点については、本日の講演、あるいは前回の金融経済懇談会の講演でも多少言及しましたが、メカニズムとして、私はかねてから注目していたものです。そのメカニズムが、よりしっかりと働くということであれば、想定している以上に雇用・所得環境の改善の勢いが増すと思いますので、回復のペースが速まるということも可能性としてはあるのではないか、という意味で申し上げました。

§19Question

今のは、国内経済について、ということですね。一緒に物価も上振れる可能性があるということでしょうか。

§20Ryuzo Miyao

景気に関するリスクバランスは、国内、海外、全て総合して、概ねバランスしていると判断していまして、その結果、実体経済との関係で推論される物価に関するリスクも概ねバランスしていると考えています。また、物価固有の要因では、予想インフレ率の立ち上がり方がどうか、あるいは、企業の価格設定行動、つまり価格転嫁の進み具合ということですが、これについても、上振れる可能性と下振れる可能性が概ねバランスしていると考えています。

§21Question

本日の岡山県金融経済懇談会の内容については、最初にお話頂きましたが、雰囲気として和やかだったのか、それとも厳しい口調もあったのかどうかなど、屋敷支店長も含め、感想をお聞かせ下さい。

§22Ryuzo Miyao

大変活発なご意見を頂き、総じて前向きで、色々な新しい取り組みを進められているというお話を多数頂きました。また、先ほど申し上げたように、駆け込み需要はかなり明確にみられたものの、その反動減については懸念したよりも限定的なものに収まるかもしれない、という声も聞かれるなど、私の受けた印象は前向きで活発なものでした。(屋敷支店長)審議委員と全く同様の印象で、金融経済懇談会の雰囲気は、非常に和やかでした。ご発言の内容については、審議委員から申し上げましたとおり、駆け込み需要の反動減については、想定どおり減少にはなっているが、その程度は駆け込み需要の大きさと比べると小さく、反動減から回復する時期についても、やや想定よりも早まるのではないかという声も一部で聞かれたということです。総じていうと前向きで、やや明るめの内容であったと思っています。

§23Question

「想定」というのは、地元の経済界の想定という解釈でよろしいですか。参加された方々が予想していたよりというような意味でしょうか。(屋敷支店長)おっしゃるとおり、参加された方々が思っている想定に比べてという意味です。以上