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日本銀行記者会見2014年4月30日黒田東彦, 総裁

総裁定例記者会見(2014年4月30日)要旨

全文

§1Question

展望レポートで示された経済・物価見通しを含めて、今回の決定会合のポイントをお聞かせ下さい。

§2Haruhiko Kuroda

本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 60~70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。本日は、「展望レポート」を決定・公表しましたので、これに沿って、先行きの経済・物価見通しと金融政策運営の基本的な考え方について説明します。まず、わが国の景気ですが、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。4月入り後、個人消費を中心に駆け込み需要の反動がみられていますが、国内需要が総じて堅調に推移するもとで、雇用・所得環境の改善を伴いながら、景気の前向きな循環メカニズムはしっかりと作用し続けています。先行きも、国内需要が堅調さを維持し、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれることから、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えています。このため、わが国経済は、2 回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想しています。

§3Haruhiko Kuroda

具体的な実質GDP成長率の見通しを申し上げますと、2014年度は 1%程度、2015年度は 1%台半ば、2016年度は 1%台前半と、潜在成長率を上回って推移するとみています。次に、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた物価情勢の先行きですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向を辿り、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である 2%程度に達する可能性が高いとみています。その後は、中長期的な予想物価上昇率が 2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移するとみています。今回の見通しを 1月の中間評価と比べますと、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れています。一方、物価の見通しは、概ね不変となっています。これは、第 1 に、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向は先行きもさらに強まっていくこと、第 2に、中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられること、によるものです。

§4Haruhiko Kuroda

以上のように、わが国経済は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断しています。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。なお、展望レポートについて、佐藤委員、木内委員それぞれから、消費者物価の先行き見通しについて、「2%程度に達する可能性が高い」との記述に対する反対提案が、また白井委員からは、2%に達する時期について「見通し期間の終盤にかけて」とする案が提出され、否決されました。詳細については、次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧下さい。

§5Question

今回、2013年度、2014年度の成長率を下方修正しましたが、先行きのリスクが顕現化する惧れが強まっているのかという点と、追加緩和の必要性を現時点でどのように考えているか、お聞かせ下さい。

§6Haruhiko Kuroda

先程申し上げた通り、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れていますが、物価の見通しは、労働需給の引き締まりや予想物価上昇率の高まりを背景に、概ね不変としています。すなわち、わが国経済は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断しています。従って、金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していくことが重要であると考えています。その上で、展望レポートでもいくつかのリスク要因を列挙していますが、今後、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針に変わりはありません。

§7Question

今回のレポートで、2016年度の物価の前年比は 2.1%と、目標をやや超えている数字です。経済成長率も、2015年度に比べればやや下がりますが、潜在成長率を上回る数字になっています。そうした中で、この 2%の物価の数字自体を、日銀が言う安定的に持続と受け止めてもよいのではないかとの声もあると思うのですが、そうした声をどう思うかお聞かせ下さい。また、これに関連して、金融政策については、安定的に持続するために必要な時点まで続けるとのことですが、今回のレポートをみて、総裁は、そういう時点は 2016年度までの間に訪れる可能性はあると思っていますか。この 2 点につきお聞かせ下さい。

§8Haruhiko Kuroda

度々申し上げている通り、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することとしています。その判断にあたっては、当然のことながら、その時点までの物価上昇率の実績だけでなく、予想物価上昇率の動向、さらにはそこから先の経済・物価の見通しがどうなっていくかを見極める必要があります。その上で、「物価安定の目標」を安定的に持続するような政策運営を具体的に検討することになります。従って、現時点の見通しをもって、出口の時期を特定することは時期尚早であると思います。足許の物価上昇率をみると、3月は全国の除く生鮮食品で 1.3%、除く食料・エネルギーはもう少し低い水準ですが、いずれにしてもまだ道半ばです。また、先程申し上げた通り、現在の「量的・質的金融緩和」を継続し、2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続できるようになることが一番重要であり、先程申し上げた理由から、現時点の見通しをもって出口の時期を云々することは、時期尚早であると思います。

§9Question

物価上昇率 2%の達成の時期についてですが、今回の展望レポートでは見通し期間の中盤頃と示されています。この時期について、もう少し具体的にお考えをお聞かせ下さい。また、これまでのご説明にあった 2014年度の終わり頃から 2015年度にかけてという目標達成時期の見通しから何か修正があるのかどうかについてお聞かせ下さい。

§10Haruhiko Kuroda

今回の見通し期間は、ご承知のように 2014年度から 2016年度までの3年間ですので、序盤と終盤の間である「中盤」とは、当然、2015年度を中心とする期間を考えています。ただ、具体的にどの時点で消費者物価の前年比が2%に達するかは、政策委員の間で見方が若干異なるところもあるので、「中盤頃」と、ある程度幅を持った表現としています。いずれにせよ、2015年度までの今回の物価見通しは、政策委員の見通し計数をみても分かる通り、従来の見通しから全く変わっていません。そういう意味で、2%の達成時期が後ずれしているということはない、従来と変わらないということです。

§11Question

今の点と関連して、もう 2 点お伺いします。達成時期について、これまでの会見等での総裁のご発言では2014年度の終わり頃から2015年度にかけて 2%程度に達するとお話をされていましたが、今のお話だと、もう少し幅が出たような言い方に聞こえますけれども、変化があるのかどうか、あと変化があるとすれば、多少意見の相違があるということがありましたので、そういったことが影響しているのかどうか、というのが1つです。関連して今回物価の見通しをみると、政策委員の間で相当幅があって、特に 2016年度にかけては下がるという見通しを示している方もいらっしゃる。中心値としては 2.1%となっていますが、2016年度は、これだけ幅があると、見通しの蓋然性に疑いを持つ方も出てくると思うのですが、その点についてどうお考えなのかというのがもう 1 つです。あともう1点は、細かいですが、消費増税から1か月経ちましたので、色々なデータが入ってきていると思いますけれども、現時点での景気への悪影響についてどうお考えなのか、追加の措置が必要なのか、改めて伺いたいと思います。

§12Haruhiko Kuroda

先程申し上げた通り、 2%の「物価安定の目標」の達成時期が後ずれしているということは全くありません。これは参考で示している政策委員の大勢見通しの数字を見て頂いても分かるように、 2014年度の見通しが消費税率引き上げの直接的影響を除くものは 1.3%ということで、従来の見通しと全く変わりませんし、2015年度は 1.9%ということで、これも従来の見通しと全く変わっていません。従って、2%の「物価安定の目標」の達成時期についての考え方、見方が変わったということは全くありません。先程申し上げたように、見通し期間が 2014年度から 2016年度までの3年間でありますし、政策委員の間で若干の見方の違いもありますので、それらを含めて中盤頃といった言い方をしたというだけで、大勢見通し自体は、全く変わっていません。さらに 2014年度と 2015年度について、中央値以外に幅を示していますが、むしろ 1月の見通しよりも 2014年度も 2015年度も幅が狭くなっており、この 1.3%、1.9%という見通しについては、より確度が高いとみているということを示していると思います。なお、2016年度はさらに先であり──中央値は 2.1%ですが──、見通しについて幅があるのはその通りです。3年後ということで、今の時点では見通しに幅があるということだと思います。

§13Haruhiko Kuroda

これはある意味で自然なことではないかと思います。4月の消費税率引き上げ後の状況については、反動減の影響は概ね想定の範囲内で、消費の基調的な底堅さは維持されていると思います。より詳細に申し上げると、乗用車や家電などの耐久消費財を中心に相応の反動減が続いているわけですが、その影響は概ね想定の範囲内だという声が聞かれています。また、小売業界のいくつかの先からは、反動減の影響が徐々に和らいできているという指摘もあります。また、駆け込み需要の影響を相対的に受けにくい外食や旅行等のサービスでは、消費税率引き上げ後も基調に特段の変化はなく、底堅い動きが続いているという声が多いようです。いずれにしても、消費税率引き上げ後の経済・物価への影響については、今後とも様々なハード・データが必要ですし、また、それだけでなくヒアリング情報も含めた、利用可能な情報をできるだけ活用して、予断を持つことなく情勢を丹念に点検していきたいと思っています。

§14Question

展望レポートでは、需給環境が改善していくということを今後の物価上昇要因に挙げておられますが、仮に今後輸出が伸びないという状況になって、成長や物価が思うように上がってこない場合は、需給ギャップがプラスの領域に入っていく中でも、追加緩和を検討されることはあり得るのでしょうか。また、追加策に限らず、そういった需給環境の中で、今後、現行政策を継続していくことによる国内景気の過熱リスクみたいなものをどのようにお考えか、教えて下さい。

§15Haruhiko Kuroda

この点については、今回の展望レポートの中でも触れていますが、最初に申し上げた通り、2014年度、2015年度、2016年度といずれも潜在成長率を上回る成長が見通されており、そうしたもとで、徐々に、しかし着実に物価上昇率が 2%の「物価安定の目標」に向けて上がっていく姿を予想しています。そのもとで、当然ながら、上下双方向のリスクは常に考えているわけで、この点も、昨年の 4月に「量的・質的金融緩和」を導入して以降、毎回申し上げている通り、上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うということです。先程申し上げたように、2%の「物価安定の目標」に向けた見通しに変化が生じて、目標を実現するために必要だということになれば、躊躇なく調整を行う方針に全く変わりはありません。

§16Question

展望レポートに関して 1 点、その他 1 点お伺いします。物価は順調に2%へのパスを辿っている見通しになっていると思いますが、成長率をみると、1%台の前半という見通しになっています。物価に比べて成長率の伸びが弱いというのは、いわゆる生活者からすると物価だけ上がっている状況に今後 3年間なるのではないかとも受け取れます。日銀としては、やはり成長率の引き上げということも重要だと思うのですが、総裁は実質GDPの見通し 1%台前半という見通しについて、これが日銀の目指すべき成長率なのかどうか、もう少し高めていくようなことを考える必要があるのかどうか、この辺を 1 つお伺いしたいと思います。もう 1 点は、最近、債券市場で取引が低迷しておりまして、特に 4月14日はかなり久しぶりに新発 10年物国債の取引が 1日中成立しないということもございました。この債券市場の動向については、やはり機能不全に陥っているのではないかという見方も強いのですが、債券市場の動向の現状について、総裁の今のご認識をお伺いしたいと思います。

§17Haruhiko Kuroda

まず、第 1 点の成長率についてですが、今回の展望レポートでも示している通り、2014年度の成長見通しは若干下振れていますが、2015年度は従来の見通しと変わりません。そして 2016年度も 1%台前半の成長で、いずれも潜在成長率を上回っており、需給ギャップが縮小し、賃金・物価を引き上げていく状況になっています。その上で実質成長率がもっと高い方が望ましいのではないか、ということだと思いますが、それはその通りだと思います。現に政府でも、中長期的な実質成長率を、現在、潜在成長率として見込まれている 1%以下から、2%程度に引き上げていくことが成長戦略の大きな柱になっているわけです。そういった意味で成長戦略その他、特に民間の企業の設備投資というのが、これまでやや低迷していたわけですが──このところは設備投資が少しずつ出てきていますが──、こういったことも潜在成長率あるいは労働生産性の上昇率を引き上げるファクターになると思いますので、そういったことを十分私どもとしても注視していきたいと思っております。債券市場の取引については、色々な指標──流動性であるとか、その他──を常にみています。

§18Haruhiko Kuroda

特定の日に取引がなかったことはありましたが、ご承知のように、その前後の日をみても先物にしても現物にしても非常に大きな取引が行われており、債券市場の流動性が極度に低下しているとか、取引が低迷している、停滞しているという状況にはなっていないと思います。ある特定の日に、市場参加者の金利見通しが同じになりますと取引が行われないということであり、1日の特別な例外的な事象だったと思っております。

§19Question

2013年度のコアCPIが0.8%と日銀の見通しを上回ったにも拘わらず、今回の展望レポートで、3 人の委員が時期にしても水準にしても、物価の見通しに反対したことについて、詳しい議論は議事要旨でみることになると思いますが、どういう点で物価見通しに相違があるのか、議論の中身をお話になれる範囲で教えて下さい。また、4月の東京都区部の物価はコアで 2.7%と、日銀が試算している消費増税に伴う影響 1.7%を除けば、3月の 1.0%と同じでした。実質賃金が下がっていく中で物価が上がっていくことで、今後、個人消費に対する影響をどのようにみていますか。この 2 点をお願いします。

§20Haruhiko Kuroda

第 1 点ですが、詳細については、次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧頂きたいと思います。先程申し上げた通り、佐藤委員、木内委員は消費者物価の先行き見通しについて、「2%程度に達する可能性が高い」との記述に反対をしていますが、これは前回も同様です。それから、白井委員からは、2%に達する時期について、展望レポートでは「見通し期間の中盤頃」と記述していますが、もう少し明確に「見通し期間の終盤にかけて」とする方がよいとの意見を言われ、そういう案が提出されましたが、佐藤委員、木内委員また白井委員からの提案については、否決されたということです。第 2 点については、ご承知の通り、消費税率が 5%から 8%へ 3%引き上げられました。それによる消費者物価への影響は、基本的には 2%程度とみていますが、4月については電力料金や電話料金等に調整を行うことが適当なものがありますので、1.7%くらいの影響があるとみています。いずれにせよ、この部分は税負担ということです。従って、税である以上、所得税であれ、法人税であれ、消費税であれ、負担がそれなりにある、一定の税負担が帰着することは否めないと思います。もっとも、今年の春闘は、まだ完全には終結していませんが、今までの状況をみると、久方ぶりにベアを含めてかなり高い名目賃金の上昇になっています。

§21Haruhiko Kuroda

また、雇用が引き続き改善していますので、名目賃金と雇用を掛け合わせた雇用者所得もさらに伸びていますし、今後とも伸びが期待されます。基本的には、実質賃金の伸びは労働生産性の伸びあるいは実質成長率の伸びに規定されます。そうした意味でも、規制緩和あるいは設備投資の促進、あるいは様々な形での雇用を伸ばす政策など、そうした成長戦略が非常に重要になっていると思います。

§22Question

2 つ質問がございます。2014年度の見通しで経済成長率が若干下振れていますが、この先も仮に経済成長率がやや下振れても、物価の上昇率が見通しのパスの上に乗っている限りは、現行の政策を維持するという理解でよろしいでしょうか。2 つ目は、この先のことですが、これだけ見通しに沿って物価が上がっていくのであれば、長期金利も現在の 0.6%というのは如何なものかと思います。やはり、物価に合わせてそれなりの上昇をみるべきなのか、現在の見方を教えて下さい。

§23Haruhiko Kuroda

従来から申し上げている通り、私どもの金融政策は物価安定が最大の使命です。具体的には、2%の「物価安定の目標」を 2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現しようということで、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。その際にも申し上げている通り、この政策は 2%の「物価安定の目標」を実現し、それを安定的に持続できるようになるまで継続します。それとともに、上下双方向のリスクを点検し、必要があれば調整を行うということですので、「物価安定の目標」に向けての道筋から外れるようなことがあれば、当然調整が行われるということです。これまでのところ、全体としてその道筋を着実に辿っていますが、道半ばですので、今後ともよく状況をみて、必要ならば調整を行うということだと思います。経済成長率がどうなるかということは、物価上昇率への影響もあり得ますので、私どももみています。先程来申し上げている通り、2014年度、2015年度、2016年度とも、潜在成長率を上回る成長が続き、基調としてそういった成長が続く中で、需給バランスがさらに改善していって、物価が次第に上がっていくという姿が描かれています。それに沿っていくということであれば、現状の金融政策を続けますが、リスク要因から「物価安定の目標」の実現に対して変化が出てくるということになれば、躊躇なく政策を調整していくということです。

§24Haruhiko Kuroda

長期金利については、展望レポートの中にも示しているように、経済成長あるいは物価上昇についての見通しを決める際、「各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。長期金利について、市場は、見通し期間を通じて、低位で推移すると予想しているが、これには市場参加者の物価見通しが展望レポートに比べ低いことが影響している。各政策委員は、こうした市場の見方を踏まえ、物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している」ということです。従って、単純な回答は今申し上げた通りで、これ以上にどういった長期金利経路を見通しているかというのは、個々に申し上げることもできませんし、委員会としてどのように見通しているかということを申し上げるのも、僭越かと思います。

§25Question

成長率については、13年度、14年度とも下方修正されています。一方で、物価については、ほぼ前回と変わらない見通しになっていますし、先々は 2%で安定するとみていると思います。成長率が下方修正されても、物価は市場の見通しに比べて高い。これは単純に考えると、ゼロ%台半ばとみられている潜在成長率は、もしかしたらもっと低いのではないか、そういう可能性もあるのではと思うのですが、展望レポートでは全く言及されていません。総裁は、前回会見の頃から、需給バランスについて、GDPギャップは概ねゼロに近付いているのではないかと言われています。そういうことを考えると、潜在成長率が、もしかしたら趨勢的に下がっているかもしれない点についてどのようにお考えかお伺いします。もう 1 点は、1 つ前の質問にあった長期金利に絡みますが、展望レポートの 2 ページ目の注に書かれていることを先程ご説明されました。委員の長期金利に関する見通しは、物価見通しの違いも勘案して先行きを想定されており、市場の見通しは、物価見通しが展望レポートに比べて低いことが影響しているとのことでした。これは、論理的に考えると、物価は市場の見通しよりも日銀の見通しの方が高いので、長期金利の先行きの想定も市場の想定よりは高いと考えてよろしいのでしょうか。

§26Haruhiko Kuroda

いずれも難しい質問でして、ごくシンプルにお答えしたいと思います。1 点目の潜在成長率については、その計測方法は色々あり、それによって少し違った数字が出ますので、もともと、ある程度の幅をもってみなければいけないと思っています。現時点で、私どもはゼロ%台半ばとみていますが、ゼロ%台の上の方とみる人もいますし、ゼロ%台半ばより下の方とみる人もいるかもしれません。いずれにせよポイントは、成長率はやや下振れましたが、今回の景気回復が内需中心、非製造業中心に進んでおり、ご承知のように非製造業は労働需要を誘発する効果が大きいセクターですので、労働市場はよりタイトになってきているということです。潜在成長率が現時点でどのくらいになっているかは、色々な計測があり一概には言えないと思いますが、ご指摘のように、潜在成長率が全然変わらないということはなく、労働力の伸びや資本ストックの伸びなどにある程度影響されることは事実です。私どもは従来から申し上げている通り、まず潜在成長率を計算してというよりも、労働市場あるいは資本の稼働率などをみて、そこから判断をしているわけでして、より実務的、実践的な形でみています。現に、労働市場は非常にタイトになり、名目賃金も上がってきています。潜在成長率がどのくらいであり、これをどのように引き上げていくかについては、まずどのくらいであるかは、色々な指標があります。

§27Haruhiko Kuroda

また、どのように引き上げていくかについては、基本的には、やはり成長戦略といいますか、供給力をどのように伸ばしていくのか、労働力をどのように増やしていくのか、資本ストックをどのように増やしていくのか、あるいは技術革新をどのように促進していくのか、にかかっていると思います。2 点目の長期金利については、展望レポートの注にある通りであり、これ以上でもこれ以下でもありません。

§28Question

前回の総裁会見の時に、追加緩和の質問に対して、黒田総裁はかなりはっきりと「現時点では考えていない」とおっしゃって、それが結果的に円高・株安になりました。今回、色々追加緩和の質問は出ていますが、その発言をされないということは、市場に対して配慮しているのか、あるいは考えが少し変わったのか、教えて下さい。

§29Haruhiko Kuroda

これはなかなか微妙なご質問ですので、お答えもやや微妙になりますが、私は、一貫して、2%の「物価安定の目標」へ向けての道筋をこれまで順調に辿っているとはいえ道半ばであり、上下双方向の様々なリスク要因、特に海外要因等がありますので、それを毎回、金融政策決定会合毎に十分点検し、必要あれば躊躇なく調整をするということを申し上げており、今回もその旨を申し上げたわけです。

§30Question

今回の展望レポートには、「2 回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される」と書かれていますが、2 回目の消費増税が日本経済にとってどのくらいのインパクトがあるのかということは、結構警戒する方も多くいます。消費増税が 2 回続くというこの事態を、総裁はどのくらい警戒しているのか、実際ここに書かれているようにあまり大きな景気落ち込みのリスクとはみていないのか、その辺の見解をお聞かせ下さい。

§31Haruhiko Kuroda

消費増税自体がどのように行われるかということは、政府・国会がお決めになることですので、私からとやかく申し上げませんが、私どもの金融政策あるいは経済・物価見通しに関しては、既に一昨年の法律で、2014年の 4月に 3%、2015年の 10月に 2%、消費税率が引き上げられることが定められていますので、それを前提にしています。その上で、先程申し上げたように、2014年度の成長率の見通しは 1%程度、2015年度は 1%台の半ば、2016年度が 1%台の前半ということになっており、いずれも潜在成長率――色々な計測方法がありますが――を上回る成長が続くと見通しています。以上