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日本銀行記者会見2014年5月29日白井さゆり, 審議委員

白井審議委員記者会見(2014年5月29日)要旨

全文

§1Question

2 点お伺いしたいと思います。まず初めに本日の金融経済懇談会でどのような意見交換がなされたのか伺いたいと思います。また、折角の沖縄での会合ということで、沖縄の金融経済の現状と今後の見通しも併せて以上 2 点お願いします。

§2Sayuri Shirai

本日の金融経済懇談会では、沖縄県の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見を数多く頂き、極めて有意義な意見交換ができました。改めてマクロ的な観点に加え、地域でどのようなことが起こっているのかという、ミクロ的な観点からも重要な示唆が得られたと感じています。こうした機会に恵まれ、本日ご出席頂いた方々や関係者の皆様に深く御礼申し上げます。本日の懇談会の場では、多岐に亘るご意見を伺いましたため、全てを網羅的にご紹介することはできませんが、私なりに席上で伺った点を整理して申し述べたいと思います。まず、当地の景気情勢については、人口・世帯数の増加が続いている中、航空便数やクルーズ船寄港回数の増加等により国内・国外から観光客が増加していることもあって、個人消費、建設関連が堅調に推移しており、総じて県内景気は拡大しているとのお話が多く聞かれました。もっとも、大企業と中小零細企業との格差は依然大きく、必ずしも中小零細企業の隅々まで景気拡大の恩恵が及ぶに至っていないとのご指摘や、燃料・原材料価格および人件費の上昇による収益の圧迫といったお話も頂戴致しました。

§3Sayuri Shirai

また、沖縄がアジアに近いという利点を活かした成長戦略や、人材不足が強まる中での人材の確保や育成の課題等についてのお話や、港湾・空港等の産業インフラ整備を早急に進めていく必要があるとのお話がありました。このほか、金融機関からは、県内景気の拡大につれて、住宅関連以外の幅広い業種でも貸出が伸長しているとの話がありましたほか、今後の沖縄経済の成長に向け、コンサルティング機能を発揮しながら地元企業等の前向きな資金需要の掘り起こしや経営改善支援等にも積極的に取り組んでいくといったお話を頂きました。私どもとしては、こうしたご意見を踏まえつつ、当地の金融経済情勢について、那覇支店を通じて引き続ききめ細かくご意見を伺い、中央銀行の立場から、沖縄県経済の発展に向けた皆様の前向きな取組みに対して、積極的にサポートして参りたいと考えております。2 つ目の質問にありました沖縄県の金融経済の現状および先行きの見通しについてということですが、まず沖縄県内の景気は、那覇支店が判断しているように、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調としては全体として拡大していると考えています。4月以降、個人消費を中心に消費税率引き上げ後の反動がみられますが、人口増加や観光客の増加に伴い早期の持ち直しが見込まれているほか、観光、建設関連も堅調さを維持しています。

§4Sayuri Shirai

雇用者所得は、現時点では一進一退の状態にありますが、労働需給は改善しています。沖縄県の新規求人倍率は、2014年1月に既往ピーク、1.08 倍を記録するなど上昇傾向にあります。今後、こうした労働需給のタイト化が、賃金の上昇に繋がり、ひいては堅調に推移している個人消費の持続性が明確になっていくかを注視しています。こうした中で、先行きも、沖縄県の景気は引き続き拡大する可能性が高いと考えられます。なお、沖縄県内の金融動向をみると、預金、貸出ともに前年を上回って推移しています。この間、当地の金融機関では、相応の経営体力を維持されており、現状特に問題はないと聞いております。

§5Question

先程ご説明されたことの関連なのですが、今後の県経済の拡大に向けて、課題とアドバイス等がありましたら教えて下さい。

§6Sayuri Shirai

今回実施した幾つかの場所への視察や色々な方々との懇談の機会を通じて得た率直な感想は、沖縄県は非常に沢山の成長できるポテンシャルを持っている所だということです。まず美しい自然資源と独特の歴史的・文化的資源を有していること、もう一つは東アジアに非常に近いということで、これから沖縄が観光だけではなく物流の拠点としても更に発展していけると思っています。今までの沖縄は、どちらかというと物資は県外あるいは海外から買い入れる、あるいは県外から観光客の皆様が来るという一方向の流れが多かったかと思いますが、これからは、東アジアに非常に近く、またジャパンブランドがアジアで非常に高く評価されていますので、沖縄で作られた物だけではなくて、本土で作られた物も沖縄を拠点にしてアジアに輸出していくという、新しい物の流れを作ることができると思います。更に、大変素晴らしい水族館があり、研究者の方も沢山おられ、国際的な議論や会議を行う素晴らしい会議施設もあります。これらを活かして是非、沖縄の持続的な成長が可能となるよう、観光、物流、それから各種の研究を更に発展させて頂きたいと思います。あとは、やはりインフラです。港、空港、それから県内の色々な道路等の整備を是非進めて頂きたいと思いました。

§7Question

関連してもう一点だけお願いしたいのですが、挨拶要旨にも書かれていました通り、国家戦略特区に国際的な観光拠点として位置付けられましたが、そのあたりについて今後の見通しとか、どういったものが出てくれば良いといったアドバイスを下さればと思います。

§8Sayuri Shirai

第 1 弾として 6 つの特区の 1 つに認定され、この国家戦略特区として国際観光というものを沖縄のハブ機能も活かしてやっていくということで、色々な期待が地元の皆様からも高まっていると聞いています。その際に、繰り返しになりますけれども、アジアにこれだけ近いところですから、観光だけではなく物流の拠点となり、沖縄の発展だけではなく、日本全国の発展にもなるように、全国で作られた色々な物を、沖縄ハブを通してアジアに紹介していくといった場になると思います。また、自然資源があるところですから、そういった研究がもっと進んで、世界の優秀な研究者や労働者が集まってくると、素晴らしい発展の機会があるのではと思っています。

§9Question

2 つお聞きします。まず 1 つ目は、挨拶要旨の 4 ページで「量的・質的金融緩和」の継続期間に関して、「2%が安定的に持続すると判断するには、2 回目の消費税率引き上げ後の動向を確認する必要がある」とおっしゃっています。その後、ご自身の経済・物価見通しというのは、「量的・質的金融緩和」が「2015年以降も継続されるということを前提にしています」とおっしゃいました。2 回目の消費税引き上げ等の具体的なイベント、経済的なイベントに関連付けて「量的・質的金融緩和」の継続期間ということに言及されたのは、おそらく政策委員の中でも初めてではないかと思います。今のところ日銀は今年末、2014年末までしか政策の手段であるマネタリーベースの残高見通しを示していません。白井委員のように来年以降も続けると、しかも来年10月に実施される 2 回目の消費税率引き上げの影響まで見なければいけないとおっしゃっているということであれば、来年以降のマネタリーベース残高の見通し等も示すのが筋ではないかと思います。あるいは、示すよう政策委員会の議論の中で提案するなり促すなりということが行われて然るべきではないかと思うのですがいかがでしょうか、というのがまず 1 点です。

§10Question

もう 1 点は、日銀の中心的な見通しとしては、消費者物価指数前年比が目標である 2%に達するのは、2016年度までの見通し期間の中盤頃というふうになっている訳ですけれども、白井委員の見通しは、4 ページの初めの方に書かれているように、それよりもほぼ1年後ずれするという見通しでいらっしゃって、中心的見通しに対して反対意見までお出しになっていらっしゃいます。黒田総裁は、かねがね日銀の中心的見通しがずれてしまう場合、見通しから経済・物価が外れていく場合には、躊躇なく金融緩和を行うというふうにおっしゃっています。白井委員のこの見通し自体は、中心的な見通しとは随分かけ離れている訳でして、既にこの中心的な見通しから外れているという見方が妥当だと思います。だとすれば、なぜ追加緩和というものを主張されないのかというのが 2 番目の質問です。もともと去年4月4日の「量的・質的金融緩和」導入時、2年で 2%を目指すということに白井委員も賛同されていらっしゃいます。そこで、2年で 2%が難しいというにも拘わらず、何故追加緩和をしないのかということです。去年4月4日に木内委員は 2年で 2%に反対されています。賛成されていらっしゃいます佐藤委員は、賛成はしていますけれども、これ以上の追加緩和は副作用が大きいとの考え方でいらっしゃいます。したがって追加緩和は必要ないと、お二人ともそういう考えだと思います。

§11Question

白井委員は去年4月4日の 2年で 2%には賛成していらっしゃいます。それにも拘らず追加緩和を主張されないということは、佐藤委員と同じように追加緩和の副作用が大きいというお考えなのか、あるいは、去年4月4日の「量的・質的金融緩和」導入時の 2年で 2%という約束は、それほどしゃかりきになって守る必要のないようなものであるというふうにお考えなのか、その辺りをお聞かせ頂きたいと思います。

§12Sayuri Shirai

非常に沢山のご質問を一気に頂いたと思いますが、私なりに理解したところから順々に説明させて頂きたいと思います。まず、2%を安定的に持続するのに必要な時期についての判断に関しては、 2 回目の消費税率引き上げの影響を見た方が良いというところに関しては、私たちは、物価の見通しを出す際に、消費税の影響込みのものと除いたものを出しています。しかし、これはあくまで機械的なもので、例えば 5%から 8%に消費税率が引き上げられたときには、ざっくりみて 2%のCPIの引き上げになるとみています。来年10月から 2 回目の消費税率の引き上げがある場合には、その影響は年度を通せば 1.4%とみられますが、ちょうど 2015年度に半分ですから 0.7、 2016年度に残りの半分で 0.7という形で、その分をCPIの見通しから除いています。しかし、実際には消費税率引き上げは、実体経済の消費や設備投資に影響しますから、間接的な効果がある訳です。そのような間接的な影響も踏まえて、私たちが、2%が安定的に持続していると判断するには、消費税率引き上げが終わった後の影響をみる必要があり、それは 2016年10月からなので、そこを見極めた方が良いのではないかということを申し上げた次第です。

§13Sayuri Shirai

それから、今回私が 2016年度までの見通しを出す時に、「量的・質的金融緩和」の継続を前提としているのならば、なぜマネタリーベース等の残高の増加額なりを示さないのかとのご質問だったと思います。ご質問の趣旨は、私自身も理解できます。しかし、今私たちは、対外的には 2014年12月までのマネタリーベースの増加額と、それを達成するための国債を中心とする資産買い入れの増加額を明確に示していますが、2015年1月以降のことはまだ明確に対外的に示していません。したがって、私は今回は明確に示していませんが、私の個人的な考えとしては、適切な時期に明確にすることになるのではと思っております。私は、これまでは 2015年度末にかけて 2%程度に近づいていくというように申し上げてきて、2%に達するというようにみていると申し上げたことはないです。今回 2016年度までの見通しを新たに出すにあたり、私はその辺を明確にする必要があると思い、「見通し期間の終盤にかけて 2%に達している可能性が高い」という表現は、従来からの見方が変わった訳ではないですが、より明確に示したということです。

§14Sayuri Shirai

この私の見通しを立てる際に、「量的・質的金融緩和」がストップしているということは考えづらく、──もともと私たちは、去年4月4日に2%を目指し、それを安定的に持続するのに必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するということに合意しておりますから──、その前提が私の見通しに必要であるため、今回明確にしました。それがどういう金額なのかどういう内容なのかについては、先程申しましたように、まだ日本銀行として対外的に明確にしていない以上、私自身の考えはありますが、それを明確にする時期ではないと判断しました。日本銀行が明確に示す際に、私自身の見解を申し上げたいと思っております。これが 1 つ目の質問だったと思います。2 つ目についてですが、私自身はまず、昨年1月の 2%の「物価安定の目標」を実現するために「量的・質的金融緩和」を通して最大限の努力をすると、その際に政府と共同声明を出しておりまして、政府には成長戦略や中期的な財政再建を確りやって頂く下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最大限の努力をすることにコミットしております。その上で、昨年4月4日の公表文をご覧頂ければ、──少しそこに誤解があると思いますので申し上げますと──、2 つの時間軸表現があります。時間軸表現とは、我々の金融政策の将来の方向を示すものでフォワードガイダンスと言いますが、 2 つ書いてあります。

§15Sayuri Shirai

まず、「2%の『物価安定の目標』を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」というのが第 1 の表現です、そして第 2 の表現は、「『量的・質的金融緩和』は、2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する」というものです。私は去年から意見を全く変えていませんし、それをお伝えしてきたつもりでいますが、1 つ目の 2年程度を念頭において早期に実現するというのは、どのインフレーション・ターゲティングを採用している国も全く同じで、出来る限り 2年程度を念頭においてインフレ目標を達成するという考えから 2年という数字があると思っています。そういう意味で、努力はやっていくつもりでおります。但し、我々は、その 2%の達成を目指すときに、他のインフレーション・ターゲティング国と同様、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングというものを採用しています。フレキシブル・インフレーション・ターゲティングとは、何が何でも、絶対に 2年で 2%を達成するということではありません。

§16Sayuri Shirai

どんなインフレーション・ターゲティングを採用している国も同じですが、無理なく、経済成長の持続性も考えながら、最終的に物価安定目標を達成するというのがフレキシブル・インフレーション・ターゲティングですから、企業や家計に過大な負担を与えることなく達成するという意味で「2年程度」に合意している訳です。ですからもともと期間は「2年程度」です。私は当初から、「程度」には幅をもってみるという意味で賛同しております。また、無理なくやるべきであるという意見をずっと伝えてきましたし、今もそのつもりです。ですから、無理なくやるという視点から、2%が達成している可能性が高いとみるのが、私自身は予てから申し上げているように、見通し期間の終盤にかけてというところに当たると思っています。その上で、追加緩和というのはまた違う話だと思っています。追加緩和というのは、人それぞれで違う意味で使われているようにも思いますが、もし、今年のマネタリーベースに上乗せするという意味であれば、私自身は、今申し上げている見通しを示している訳ですけれども、その見通しが今の私が持っている全ての知識を持ってみると、2%を達成しているという可能性が高いという時期は、見通し期間の終盤というふうに思っています。

§17Sayuri Shirai

そのうえで、この見通しが、もし下振れる場合、この見通しが仮に何か想定違いなどがあって、下振れる場合は、その時はどういう原因かをまず追究しなければいけないと思います。その下振れる理由が、何らかの突発的なテールリスク的なことが起きているのか、あるいは、私たちの見通しの前提そのものが何か違っていたのか、色々な事情があると思います。それを見ながら、あくまでも重要なのは、この 2つ目の時間軸の表現である、2%を安定的に実現するのに必要な時期まで金融緩和をするということです。これが昨年1月に私がコミットした 2%の「物価安定の目標」の実現ですから、これが最も重要な訳です。この 2%を無理なく実現し、それを安定的に持続するために必要なシナリオを考えていますから、それがもし下振れる場合があれば、その時には金融政策の内容の再検討が必要な訳で、その時もし追加緩和によって、その見通し、──2%を無理なく実現し、安定的に持続するのに必要な道筋──、にプラスになると判断すれば、私はそれを否定するものではないと思っています。私は、1月のシンガポールの講演でも申しましたように、追加緩和は、見通しが下振れる場合には検討し得るが、その際に、企業や家計に無理な負担が掛からずに 2%を安定的に実現できるかとの視点で金融緩和を考えるべきだと、そのような文脈において否定するものではないと考えています。

§18Question

最初の質問について、今年末までしか示していないマネタリーベースの残高見通しを、何故来年以降もお示しにならないのかというふうに聞いた訳です。日銀が示していないから示さないというのはある種、これは鶏と卵と言いますか、白井委員ご自身が 1 票持っていらっしゃる訳であって、白井委員が属される政策委員会が政策を決める訳でいらっしゃるので、日銀と白井委員が別人格であると語られるのはちょっとおかしいと思います。つまり、私が言いたいのは、何故そういうふうな主張をされないのかということで、主張して提案しないのかということです。もう一つ、何が何でも 2年で絶対に 2%を達成するという訳ではないとおっしゃいましたけれども、少なくとも我々が黒田総裁がおっしゃっている話を聞く限りにおいては、そのように主張されていると思います。白井委員はそうでないとおっしゃるのであれば、何故それに対して黒田総裁、あるいは、日銀の中心的な政策・考え方に反対しないのかということです。

§19Sayuri Shirai

1 つ目の質問は、これは色々な考え方があると思いますが、私は今の2016年度までの見通しを立てるに当たり、「量的・質的金融緩和」の継続は必要だと、その前提の上でないと見通しが立たないと思いましたので、それを明記しました。更にその具体的な内容を申し上げるかどうかも考えましたので、ご質問の趣旨は分かりますけれども、それは日本銀行が明確に示す際に、私の見解を申し上げます。2つ目の2%を何が何でも実現するということが黒田総裁のご意見かどうかは黒田総裁にお伺い頂きたいですが、私自身の理解では、何が何でも実現するというよりも、2%を無理して達成して、その次の年に出来なくなるというようなことは避けると、つまり安定的に実現することが最大の重要目標ですから、その中で無理なく実現していくことだと思っています。ですから、私は、無理して多大な負担を家計や企業にかけてするということではないと理解していますし、またそういう理解で常に自分の考えを申し上げています。

§20Sayuri Shirai

今の私の見通しは、新しい追加情報があれば変わり得ることを前提で申し上げますが、今私が得ている情報と分析をもとにしますと、この挨拶要旨に書いてあるように、今のところ横這いとなっている家計のインフレ期待がこれから徐々に上昇していくのではないかとみていること、それから 2 点目は、昨年6月に漸く物価上昇率がプラスになってきた訳ですから、家計が緩やかなインフレに慣れてくるのにはまだ時間がかかると思っており、そういう中で、国民の皆様が、所得、成長期待を高めながら名目賃金が上がっていく中で、緩やかなインフレが徐々に容認されていくということ、それから 3 点目は、企業が価格の引き上げに慎重なところもありますから、企業の物価感や価格設定行動に変化が出てくるには時間がかかること、それらのことを考えますと、やはり見通し期間の終盤にかけて緩やかに物価が上がっていくというふうに考えるのが、私自身は妥当とみています。

§21Question

3 ページのところに言及されている、1月から白井委員が反対意見を表明されてきた所得・雇用の部分についてですけれども、ここによると展望レポートの中にも消費税引き上げの影響という中で消費マインドの変化とか所得・雇用について言及されているので、敢えて反対を示さなくてもということだったと思うのですが、ただレポートをみるとあくまで一般的な言及に止まるようにも見えて、この程度の認識の上で中盤頃に達成するという見通しを出されているということについて、改めてご見解を伺いたい。また、今回の挨拶要旨でも下振れのリスク要因を引き続き意識する必要があるというようにおっしゃっていますが、特に雇用について人手不足ということが言われ始めているのですが、実際に本当に雇用の状況が改善されているのかどうか、下振れリスクについて特に消費・雇用というところについての認識を改めてお聞かせ頂ければと思います。

§22Sayuri Shirai

まず私が 1月から 4月まで公表文に対して反対表明をしてきた理由は 2つあります。私は去年の 4月に実は 1 回、金融政策決定会合で議案を一旦出しています。その 1 つの理由は、当時はまだ消費税率引き上げについて国民の方で十分にご存知ない方もいらっしゃるようだったので、今年の 4月に消費税率が引き上げられると、急に物価が上昇してサプライズとなり、もしかしたら消費が急減するリスクがあるかも知れない、あるいはもし消費税率引き上げが周知されたとしても実質所得が目減りすることによって消費が減退する可能性があるのではないかと考えたのですが、そうしたリスクに対して、去年4月の展望レポートの書きぶりは非常に少ないのではないかと思い、議案を出しました。私の考えではこうした私の懸念も反映され、去年10月の展望レポートでは大変詳しくこの辺について書かれています。その時の展望レポートでは、経済の見通しの下振れリスクとして、「家計の雇用・所得動向」と、「消費税の影響」の 2つに分けて書いています。これはよく読んで頂きますとお分かりのように、1 つに纏められる内容ですが、いずれにしても家計の雇用・所得ということを非常に重視していました。

§23Sayuri Shirai

それにも拘わらず今年1月の公表文からは当面のリスク要因として、その部分にあたる記載がなく、海外の動向だけが書いてありましたので、それはどうなのかなと思い、皆様の関心もそこに集中しておりましたので、雇用・所得の改善ペースは書いた方が良いのではないか、というのが 1月からの私の反対の趣旨でした。こうした私の懸念も反映していると考えておりますが、4月の展望レポートでは、10月の展望レポートで 2 つに分けて記載していた当該部分を 1 つに纏めたものと私は理解しておりますが、引き続き「消費税率引き上げの家計支出への影響は、その時々の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得るため注意が必要である」と明記されたのです。私自身が今まで重視していたのは、家計サーベイ調査によると、去年の末から一貫して消費者マインドは悪化し続けているということと、今のところ先行きの収入が上がっていくという期待が確認できないということです。4月の展望レポートには、消費者マインドという新しい言葉も入りましたし、私の懸念が反映されたと思っています。そこをリスク要因として、日本銀行もみているということが確認できたというのが第 1 点です。

§24Sayuri Shirai

もう 1 点は、どれくらいのベアの上昇になるかが、次第に分かってきたこと、今年の夏はボーナスも対前年比で上昇が見込まれること、それから公務員の給与減額措置が終了することもあって、名目賃金は上昇の方向を向いていることから、足許ではどちらかというと、さほどリスクとしては大きくないのかなと、思います。それからもう 1 点申し上げると、パートを中心として女性あるいは高齢の方が沢山労働市場に参加しているので、共働き世帯になって収入が増加する世帯も増えておりますし、また高齢者の方も追加収入が増えているということで、そういう収入が増えておりますので、そのようなプラスの効果が今は出ていると思います。そのような面で今喫緊のリスク要因としては、ややリスクの度合いは下がったかなと思っています。しかし、やや長い目で見ますと、消費税込みの物価上昇率は高く、2016年度まで実質賃金そのものは下落していくことが見通せると思いますので、果たして来年も名目賃金が上がるのか、家計マインドはどうなるのか、家計の収入期待・成長期待はどうなるのか、といったところで下振れリスクはあるかなと意識しております。ですから当面の問題としては大きくないという意味で今回は反対表明をしなかったということです。

§25Question

今のご発言をお伺いしておりまして 2 点ほどお伺いします。まず、委員の中で、いつ 2%を達成すべきか、あるいは達成するであろうという見通しに違いがあると、今の段階で追加緩和は必要かという議論がうまく噛み合わないのではないかと思われます。もう 1 つは、何が何でも 2%ではないと、それと無理なくということを強調されました。そしてコミュニケーションの大切さもおっしゃっている訳でして、もし分かり易いということでは 2%がピンポイントではなくて、ある程度レンジを持つべきだということで数字を出しても宜しいのではないでしょうか。もし出さないにしても、白井委員の中で 2%というのは何%から何%というレンジが想定されているのでしょうか。

§26Sayuri Shirai

まず、最初の 2%を達成するという見通しと追加緩和がかみ合わないということですが、私がコミットしているのは昨年1月の、2%の「物価安定の目標」の実現です。政府とそれぞれがやるべきことをやるという前提の下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最善を尽くすことにコミットしております。それで、それに相当する時間軸の表現は何かといえば、昨年4月4日の公表文の「『量的・質的緩和』は 2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで継続する」というところです。これが最も重要だと思っています。その上で、もちろん出来るだけ早く目標は実現した方が良いですし、インフレーション・ターゲティングを採用している国は通常 2年程度というようにしていますから、そういう気持ちに変わりはありません。もちろん、企業や家計がそういう新しいインフレ環境に慣れていき、販売価格の設定行動を今までのやり方から変えていくというような状況が次第に出てくれば、無理なく出来る訳ですけれども、今私は漸くその兆しが出てきた段階だと思っています。ですから、無理なく実現するということを考えれば、私の場合は見通し期間の終盤にかけて 2%に達している可能性が高いと、その後に 2%を安定的に持続する時期に移行していくように思われるとみています。ですから、それがまず一番大事な見通しです。

§27Sayuri Shirai

追加緩和という話は、今私たちが明確にしているマネタリーベース目標に対する更なる上乗せという意味でおっしゃっているのであれば、今はこの見通しの下で 2%を達成している可能性が高いと見通している訳ですから、今決めていることを粛々とやっていくということです。しかし、今後新しい情報が入ってきます。消費税の影響も想定内という意見が大半でございますし、多くの経営者からもそういう意見を伺いますが、やはりデータで確認していく必要がありますし、それから物価の上昇率も、私は夏場にかけて、若干下がるかも知れないと思っていますが、1%以上は維持するとみています。そして、10~12月期は、物価上昇率は徐々に上がっていくとみています。私は、中心値よりも若干ゆっくりとしたペースで上がっていくと思っていますが、いずれにしても 10月から 12月にかけて、物価上昇率は対前年比の裏の影響で、結構上昇率が低くなりそうな状況になるところを、それを需給ギャップの改善やインフレ予想の改善で上げていくという見通しを立てている訳ですから、それが確りそうなっていくか見ていきたい訳です。そういうものを見ながら、もしかしたら今私が想定しているようにならない可能性が出てきた時には、企業や家計に多大な負担を与えることなく無理なく 2%を達成し、その後に安定的に実現するという見通しが変わる可能性があります。

§28Sayuri Shirai

その時にどういう金融緩和政策が必要かについては、当然見直す必要が出てくる訳で、その中でもし追加緩和をすることで、何らかのプラスになるのであれば、私は否定しないと言いましたが、あくまでも、無理なく 2%をまず達成し、そして安定的に実現するという道筋が大事なので、その中で金融政策として何が出来るかということを考えていくべきだと、昨年からずっと考えており、そのような情報発信をしております。レンジに関しては、私はかつて意見申し上げたのですが、例えばイギリスとかカナダとか先進国で、インフレ目標を明確にしているところもありますし、インフレーション・ターゲティングを採用していなくても、類似したような政策として、2%のロングラン・ゴールを提示しているアメリカもあります。2%あるいはその近傍という表現をしているECBもありますように、各々がだいたい 2%のあたりで目標を立てている訳です。だからといって、そういう先進国の物価上昇率が毎年2%かというとそうではありません。これは前に黒田総裁もおっしゃったと思いますが、物価は、日々燃料価格が上がったり天候の変化があったりして変動し得る訳ですが、長い目で均してみると、平均して 2%ぐらいになっている、というのがインフレーション・ターゲティング、あるいはそれに類似した政策をしている国がやっていることです。

§29Sayuri Shirai

そういう社会を目指そうと言っている訳ですから、そこでわざわざレンジにする必要があるのかと言えば、今の段階では必要ないと思っています。まして、今そのレンジを言うことによって、私たちが去年1月にコミットしている 2%の「物価安定の目標」から、それを取り止めたいかのような、何か弱さを示す誤解を与えてしまう状況があるのであれば、レンジの採用を今検討するべきではない、と前にも申し上げたことがあります。2%というのはインフレーション・ターゲティング、あるいはそれに類似しているシステムを採用している欧米も同じ意味で、2%を目指していますので、誤解を与える可能性があるのであれば、レンジというものは考える必要はないと思います。

§30Question

先程と関連し、確認に近いと思うのですけれども、白井委員が見通し期間の終盤にかけて、日銀の中心的なシナリオよりもやや遅い段階で 2%を達成するというシナリオでテールリスクとか突発的なリスクが発生しなければ追加緩和は必要ない、追加緩和しなくて現状の金融政策を続けていけば良いというお考えでらっしゃるのかということと、見通し期間の終盤にかけてというのは、もう少し具体的にもし時期を明確化できるようでしたら、例えば 2016年度の後半と思ってらっしゃるのか、もしくは 2016年度中なのかという辺りを少し詳しくお聞かせ下さい。

§31Sayuri Shirai

テールリスクがなければ追加緩和しないのかと言えば、私は必ずしもそういうことではなく、やはり重要なのは 2%の「物価安定の目標」を実現することだと考えています。それはどういうことかというと、2%を安定的に実現するというのは、企業や家計や様々な人達の長期インフレ予想を 2%程度に安定させるということです。それがあると、例えば、現在、先進諸国の実際の物価上昇率は目標である 2%を下回って推移していますが、長い目で見ると、彼らの企業や家計のインフレ予想は 2%程度で安定しているので、2%に向けて戻っていく訳です。日本でもそういう社会を実現したいと思っている訳で、それが大事なことなのです。2%を安定的に実現する社会を目指す上で、追加緩和をすることがプラスになるのであれば、私は否定をしないと申し上げている訳です。そして、達成年度ですが、これも挨拶要旨に書いてあるように、昨年4月以来、2015年度の末にかけて 2%が見通せるかどうか、という考えを申し上げてきました。そこからみれば、「達している」というのは 2016年度ということで、現在の私の情報と分析を基にしますと 2016年度内に 2%に達している可能性が高いとの判断になっております。

§32Question

大方重複してしまって恐縮なのですが、先程の消費税の 2 回目の関係なのですけれども、物価 2%が安定的に推移しているかどうかは 2 回目の増税後の動向をみないと分からないということは、その後の反動減とその立ち上がりということを踏まえて考えると、安定的に判断できるのは早くとも2016年以降、または 2016年度以降となってくるということで宜しいのでしょうか。その関連で、物価が見通しに沿っていれば安定的に 2%という判断にならなくても、来年2015年については今の資産買い入れを続けるという、所謂オープンエンドなので、安定的という判断がつかなくても物価が見通しに沿って推移していれば、そこは追加緩和ではなくて今の資産買い入れをオープンエンドで続けるという理解で良いのかということです。

§33Sayuri Shirai

私たちは、企業や家計に過大な負担をかけることなく 2%を達成すること、そしてその後に 2%を安定的に持続する時期を実現することを目指しています。その「安定的に持続する」時期に掛かる判断は、消費税率引き上げによる、消費や設備投資や住宅投資への間接的な影響がない状況で判断しないと、安定的に実現したかどうかの確認は難しいのではないかと思います。ですから、消費税率の 2 回目の引き上げが 2015年10月とすれば、その前年比でみた影響は2016年9月で剥落しますから 2016年10月以降のデータを確認したいというふうに申し上げた訳です。それから、もう一つだけ追加したいのですが、私が今回見通し期間の終盤にかけて 2%に達している可能性が高いと申し上げた理由は、一つは自分の見通しが今までは2015年度の末にかけて見通せるかどうかと言ってきたものが、見通し期間が 2016年度までとなったため、そこをより明確にする必要があると判断したということもそうですし、もし2%が2016年度内ということであれば、私たちが 2013年1月にコミットしたのは「2%程度」ではなく「2%」の物価安定目標ですから、そうであれば終盤にかけてという表現にした方が良いというのがまず私の考えです。もう一つは、中心的なシナリオとしてもこの表現が適切ではないかというふうに申し上げた訳です。

§34Sayuri Shirai

なぜならば、通常日本銀行は、中心的な見通しを示す時はだいたい政策委員見通しの中央値で説明する傾向があります。その中央値で見ますと、2015年度は平均で 1.9%ですから、もちろんその年度末にかけて 2%に達するかもしれませんが、数字上は明らかになってない訳です。数字が明らかに 2%を超えるのは 2016年度ですから、物価目標は 2%なので、中心的なシナリオの表現としても、やはり「見通し期間の終盤にかけて 2%に達している可能性は高い」と言う方が良いのではないかということで「程度」を取っている訳です。繰り返しになりますが、私自身の見通しを明確にするということと、中心的なシナリオの表現としてもこの方が明確ではないかとの 2 つの理由から提案しました。

§35Question

一点大事なことなので教えて下さい。今、2 回目の消費税率引き上げ後の動向を確認することが必要であるとおっしゃった時に、 2015年10月から始まるので1年間影響が出るため2016年10月以降のデータをみる必要があるとおっしゃったかと思います。これはつまり2回目の消費税率引き上げは来年の10月、それは 1年間影響があるので、持続的に安定するかどうか判断するためには、その1年間が終わった後の影響をみる必要があると、そういうことでしょうか。

§36Sayuri Shirai

私が申し上げたいのは、それも含めてという意味です。つまり 2%を安定的に実現するという判断は、もちろん消費税率引き上げの導入中にも判断することは可能かも知れません。しかし、少なくとも私としては、まず無理なく、企業や家計に過大な負担を与えることなく 2%を達成できる時期は見通し期間の終盤にかけて、と申し上げております。それ以上の細かいことは申し上げることは難しいですけれども、その上で私としては、今回のこの政策の目標は、きっちりと 2%の「物価安定の目標」を実現するということですから、そういうことから考えれば、もちろんその前に判断することも有り得るとは思いますが、消費税率引き上げの物価への影響について、導入期間が終わる以降も確認したいと申し上げている訳です。以上