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日本銀行記者会見2014年9月16日黒田東彦, 総裁

総裁記者会見(2014年9月16日)要旨

全文

§1Question

先程まであった地元の関西の経済団体との懇談会において、色々なご要望やご質問がありましたけれども、それらを踏まえた率直なご感想をお願い致します。

§2Haruhiko Kuroda

懇談会でも申し上げたことですけれども、関西の経済界を代表する方々から、日本経済全体あるいは当地の経済・金融の現状と課題について非常に興味深いお話を伺いましたし、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望を頂きまして、大変有意義な意見交換ができたと思っております。頂いたご意見、ご要望については、席上でお答え申し上げましたけれども、特に強く印象付けられたことを申し上げます。第1に、昨年もこちらに参って経済界の代表の方々とお話をしましたが、関西経済は、昨年と比較しても明るい話題が増えたという印象を持ちました。特に本年は、大型ランドマークの開業に加えて、大型レジャー施設における新しいアトラクションのオープンなど、全国的にみても明るい話題が多く、国内外からの観光客、特にインバウンドの観光客が非常に増えているということを色々な方がおっしゃっておられました。これは非常に明るい話題だと感じました。こうした中で、消費税引き上げの影響も濃淡はありますが、総じて徐々に消化されてきているという声が多かったように思いました。第 2 に、関西経済活性化に向けた取り組みということも着実に進展しているという印象を持ちました。特に本年3月の国家戦略特区に指定されたことを契機に、関西では、医療、再生エネルギー、農業といった分野で、特区を活かした取り組みが進められているというお話を何人もの方から伺いました。

§3Haruhiko Kuroda

こうした取り組みは、もちろん関西にとってよいだけでなく、日本経済全体の活性化につながるという面もありますので、今後の進展に期待しております。以上のような明るい話が聞かれたわけですが、他方で、人手不足とか、地政学的リスクの影響とか、さらには為替の安定とか、適切な価格転嫁の重要性といったことに関するご意見も頂きました。それから、金融面では、特に何人もの方から、成長産業の育成に必要な資金が十分に行き渡るように後押しして欲しいというご意見も頂きました。日本銀行としては、こうした意見等を踏まえて、引き続き適切な政策運営に努めていくということを、改めて申し上げたいと思います。

§4Question

明るい話題が増えたということですが、先程の懇談会でのやり取りの中では、昨日は、あべのハルカスに行かれたというお話もありました。今のお答えと重複する点があるかもしれませんが、関西経済の現状と先行きについてどのようにみていらっしゃるか、ということをお聞かせください。

§5Haruhiko Kuroda

そもそも色々な指標とか、あるいは日銀の短観などでも、一定の期間、関西経済の回復が、日本経済全体と比べて若干遅れているという感じがありましたが、ここにきて、そういった遅れは取り戻して、全国の平均と同様な回復を示しているというのが関西経済の景気の現状だと思います。もちろん、この景気については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動というものもみられており、一部に弱い指標もありますが、全体としてみると、基調としては緩やかに回復していると判断しています。それから、関西地域では、輸出がかなり重要ですけれども、この輸出が増加傾向にあります。内需についても、設備投資計画も積極的であるなど、全体として堅調さを増しているのではないかと思います。先程申し上げましたように、全国対比回復が遅れている面が、例えば賃金などでもあったわけですが、これも 4か月連続でプラスということで、色々な面で関西の景気が全国と比較して遜色ない状況になっていると思います。その背景について、特徴的な点を 2 つ申し上げたいと思います。第1に、主力産業である電気機器の競争力が回復してきていることです。実際、輸出の動きをみると、全国が弱めの動きで推移している中でも、関西の輸出は電気機器を中心に増加傾向にあります。

§6Haruhiko Kuroda

この背景には、世界的なスマートフォンの需要が拡大するもとで、高性能化を進める中国メーカーからの新規受注などを上手く取り込んでいるということ、それから電気自動車向けの電池についても輸出が増加しているというようなことがあります。そのもとで、近畿の製造業の設備投資が 4年ぶりのプラスになる計画になっており、電気機器の競争力の回復ということが、プラスになっていると思います。第2 に、先程も申し上げましたが、関西を訪れる観光客、いわゆる外国人観光客、インバウンドの観光客が急増していまして、これが幅広い業種に恩恵を与えているということです。聞くところによりますと、関西への外国人の入国者数というのは、関西空港でのLCCの増便効果ということもあって、昨年以降、全国平均をかなり上回る伸びを示しているわけです。その結果として、この大阪府内の百貨店、あるいは家電量販店、ドラッグストアなどでは、外国人売上の比率が上昇しており、消費を下支えする要因ともなっています。それから、これも先程申し上げたように、本年度は、大型レジャー施設の新アトラクションがオープンしたといったようなこともあり、色々な形で観光客が増えており、ホテル・外食を始めとした幅広い業種へプラスの効果を与えていると思います。

§7Haruhiko Kuroda

今申し上げた 2 つの点、主力産業である電気機器の輸出競争力の回復、それから関西を訪れる内外観光客、とりわけ外国人観光客が急増して幅広い業種へ恩恵を与えていることが特徴であると思います。先行きについても、緩やかな回復を続けていくとみていますが、消費増税の反動からの回復については、関西のみならず、日本経済全体をみる上でも重要なポイントであり、引き続き様々なデータとかヒアリング等を、丹念に点検していきたいと思っております。

§8Question

午前中に甘利大臣の記者会見で、消費増税の反動減からの回復が長引くという懸念も一部にある中で、政府としては消費マインドを冷やさないような何らかの政策、考えを示すかのようなご発言がありました。これに対して、財政との両輪である金融政策も、というような文脈での話はあり得るのか、これまで毎月何兆円も買い続けておられるので、これは主に財政、成長戦略の話と解釈すべきなのか、ご所見をお聞かせ下さい。

§9Haruhiko Kuroda

大臣のご発言の趣旨について、私が解釈して申し上げるというのも僭越ですので控えさせて頂きます。金融政策としては、昨年4月に導入しました「量的・質的金融緩和」を続けていますし、2%の物価安定目標の実現を目指して、しかもそれを持続的に安定的に続けられるようになるまで、「量的・質的金融緩和」を継続するとはっきりとコミットしています。この「量的・質的金融緩和」では、毎月毎月大量の長期国債、更にはETFやJ-REITといったものを購入することを通じて、金融緩和をしており、この累積的な効果が出てくるということです。足許、私からも申し上げた通り、消費税増税の駆け込みの反動減の影響が、一部の耐久消費財とか住宅投資に出ていますし、また、天候不順が、西日本を中心に、7月、8月の上旬などに消費に若干の影響を与えているのではないかと言われていることも事実です。こういったことも十分点検しつつ、私どもとしては、当然のことながら、「物価安定の目標」に向けての道筋について下方リスクがあるということであれば、躊躇なく今の金融政策の調整を行うということは前から申し上げておりまして、この考え方には全く変わりがありません。

§10Question

総裁は、以前の会見等で、円安は日本経済にとって悪いとは思わない、という趣旨のご発言をされておりました。一方で、本日の会場などからは、ネガティブなインパクトへの懸念の声ですとか、長期的な安定を求める声が強かったような印象を受けましたが、円相場の、特に円安の日本経済への影響について、これまでのご意見等に変わりはありませんでしょうか。

§11Haruhiko Kuroda

変わりはありません。為替レートはもちろん安定することは望ましいですが、それはあくまでも経済のファンダメンタルに則して安定するということです。行き過ぎた円高が是正される、それから米国経済の順調な拡大のもとで、米国の金融政策についてテーパリングが最終局面に入っており、いずれ金利も上がっていくというような状況のもとで、ドルが高めになり、円が若干安めになったということ自体はある意味で自然なことで、それが特に日本経済にとってマイナスになるということはないと思います。為替については、もちろん注視していくことが必要ですが、今の時点で円高が是正されていく、あるいは米国の経済や金融情勢を反映して自然な形でドル高が進んでいくということが、日本経済にとって特にマイナスになるということはないと思います。

§12Question

先程の質問のお答えの中に、今の緩和を続けていくなかで累積的に緩和効果が強くなっていくという点があるというお話がありました。一方で、今日の懇談会の中でも、企業マインドが下振れる懸念があるのではないかという商工会議所会頭からご指摘があって、必要なら追加緩和をというご要望があったわけです。昨今出ている追加緩和の声というのは、今の緩和が若干もう打ち止めになっているというようなイメージもあるためではないかと思います。今の緩和が累積的に緩和効果を強めていくというメカニズムがある一方で、例えば、物価についても、1%台前半で止まっている状態になっています。また、期待インフレ率についてもどんどん上がっていくという状況ではさすがにないのではないかと思います。今の緩和を続けていくことの累積的な効果というのをどうみていくのか、それはどこかの時点で、目に見えた効果として出てくるものなのか、その点について教えて下さい。

§13Haruhiko Kuroda

現在の「量的・質的金融緩和」というのは、ご案内のようにマネタリーベースを年間 60~70 兆円増加させるというものであり、そのために長期国債を年間 50 兆円買い入れるというペースで、金融緩和を進めるということです。毎月毎月、長期国債、ETF や J-REIT を購入しており、金融については、通常、そういったことが続けばストックの効果が出てきますので、順次累積的に金融政策としての効果は強まっていくと言っていいと思います。他方で、物価の上昇率については、当面、1%台前半で推移すると前から申し上げています。それは、GDPギャップが縮小していく、あるいはインフレ期待が高まっていくということで物価を押し上げていく効果と、昨年の原油価格の上昇などいわゆるベースイヤーエフェクトというか 12 か月前との比較で物価上昇率を押し下げる効果と、両方が丁度打ち消し合って、概ね 1%台前半で当面推移し、今年度の後半からまた次第に加速して、来年度を中心にする時期、政策委員会のステートメントの言い方を借りれば、2014年度から 16年度の見通し期間の中盤頃に 2%に達する可能性が高いということです。足許、1%台前半で推移しているのは、それ自体として何か金融政策の効果が弱まっているとかそういうことは全く意味していないと思っております。

§14Question

為替について改めてお伺いします。為替相場が安定するということと、日米のファンダメンタルズを反映して若干円安になるということは若干矛盾するような感じがするのですが、どちらがより望ましいという風にお考えでしょうか。

§15Haruhiko Kuroda

為替の問題は、何をどういう風に言うかということで、かなり違うように聞こえるのかもしれませんが、基本的には同じことを言っているわけです。安定ということについて、何か特定の水準でずっと為替レートが変わらないことをもって、それが安定して望ましいかと言われても、経済の実態、ファンダメンタルズが変わっていった時にそれとそぐわないことになっても困るし、あるいは、そのファンダメンタルズがある程度緩やかに変わっていく時に、為替レートが 1日で大きく上がったり、下がったり変動してもまた困ります。ですから、あくまでも経済・金融の実態に則した形で為替レートが緩やかに変動していくということは、非常に自然であるし、特に問題はありません。それを超えて、経済の実態を離れたところに為替レートがあることはよいことではなく、今の動きというのは、何回も申し上げますけれども、行き過ぎた円高が是正されてきたという局面のなかで、米国経済が順調に成長を加速させており、そのもとで米国の金融政策が、テーパリングがもうすぐ完了し、マーケットの人達は、来年のいずれかから政策金利も上がっていくだろうとみている状況にあります。そういうもとで、ドルが緩やかに円に対して上昇していくこと自体は、特に日本経済にとって好ましくないということはないと思います。

§16Haruhiko Kuroda

米国経済も順調に拡大し、そういった金融政策の調整が行われていくということは、何ら日本経済にとってマイナスになることはないと思います。

§17Question

最近日銀の短国オペでマイナス金利が頻発しているようですが、これをもって、「量的・質的金融緩和」の効果が発現していると捉えることができる一方で、買入れが順調にできるのかという点について、市場では疑問を呈する見方があるようです。これについて、総裁ご自身は、どのようにお考えでしょうか。

§18Haruhiko Kuroda

何か非常に重大な問題が起こっているとは思っておりません。マーケットの状況を常によく注視しておりますし、買入れがやり難くなったとか、そういうようなこともございません。冷静に市場の状況は把握しておりますので、先程申し上げた通り、金融政策としては、「量的・質的金融緩和」は、毎月毎月、大量の国債、あるいは長期国債等を買い入れることによって、緩和効果が累積的に強まっていくと考えております。

§19Question

本日の講演でも、日本の輸出の先行きに対して、海外経済の持ち直しに沿って輸出が回復していく、というシナリオをとっていらっしゃいます。10月の展望レポートに向けて、まだちょっと時期が早いですが、昨日、OECDが世界経済の見通しを下方修正して、IMFもここ 2年か 3年、連続して成長率を下方修正しています。そのなかで、海外需要が持ち直して日本の輸出が増加していくというシナリオが、果たしてそのままでいいのかどうか。民間調査機関でも、先日のGDPを受けて、大体 0.5%近辺に今年度の成長率を下方修正しています。次回、10月31日の展望レポートで見直すということを言われるとそれまでですが、世界経済の回復と日本の輸出、日本の成長率の先行きを下方修正するような材料が出ていると思います。それらに関して、現状でどう思っているのかお伺いしたいです。

§20Haruhiko Kuroda

10月末の金融政策決定会合における政策委員の見通しというものについては、当然、その直前までの様々な経済データ、その他を勘案して各委員が見通しを出されて、それをアグリゲートした形で発表するということになっていますので、今の時点でどうこう言うことはできませんし、差し控えたいと思っています。なお、世界経済の見通しについては、IMFも世銀も、定期的に見通しの改定を行っております。そういった状況ももちろんよくみておりますが、先程、懇談会で申し上げた通り、成長率の見通し自体は、2013年度より 2014年度、2014年度より 2015年度が上昇していく、という見通しになっています。そうした、米国、その他の先進国を中心に、世界経済が成長を加速していくという状況の中で、日本の輸出も、緩やかに上昇していってもおかしくない、おそらく緩やかに上昇していくだろうとみています。かつてのような急速な伸びとか──そもそも世界貿易の伸びがリーマン・ショック後鈍化しており──、日本の輸出だけが急速に伸びることは、なかなか期待し難いと思いますが、先程申し上げたような世界経済の回復の状況を踏まえると、緩やかながらも日本の輸出が伸びていくのではないかと、私どもは現在も考えております。以上