総裁定例記者会見(2014年11月19日)要旨
全文
§1Question
今日の決定会合の決定内容について、背景となる景気判断も含めてご説明をお願いします。
§2Haruhiko Kuroda
本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という前回会合で決定した金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産について、前回会合で決定した買入れ方針を継続することを賛成多数で決定しました。わが国の景気については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響から一部業種で在庫調整の動きが続いており、7~9月期の実質GDP成長率もマイナスとなりましたが、雇用・所得環境は着実に改善しており、個人消費における駆け込み需要の反動の影響も、全体として和らいでいます。また、企業は、収益が改善するもとで、前向きな投資スタンスを維持しています。このように、家計部門・企業部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムは、しっかりと作用し続けていると考えています。従って、景気の総括判断としては、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けている」としました。海外経済は、新興国の一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復しています。
§3Haruhiko Kuroda
輸出は、弱めの動きが続いていましたが、最近では横ばい圏内の動きとなっており、先行きは、海外経済の回復や円安による下支え効果などを背景に、緩やかな増加に向かっていくとみられます。設備投資は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあります。公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっています。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられます。住宅投資についても、駆け込み需要の反動減が続いていますが、下げ止まりに向けた動きがみられています。鉱工業生産は、弱めの動きが残っていますが、先行きは、以上の内外需要や、在庫調整の進捗を映じ、緩やかな増加に復していくと考えられます。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にあります。企業の資金調達コストは低水準で推移し、企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾向が続いています。そうしたもとで、銀行貸出残高は、中小企業向けも含め緩やかに増加しています。物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、 1%程度となっています。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇していると判断されます。
§4Haruhiko Kuroda
わが国経済の先行きについては、緩やかな回復基調を続け、駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくと考えられます。物価面では、消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、2015年度を中心とする期間に 2%程度に達する可能性が高いとみています。リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、先般、その拡大を決定したこともあって、デフレマインドの転換は着実に進んでいくと考えられます。日本銀行は、今後とも、 2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。
§5Question
前回の追加緩和決定後の金融市場の動向についてお伺いします。株高・円安傾向が進むとともに、長期金利はいったん下落した後上昇する局面もありましたが、総じて値動きが大きいような印象も受けています。こうした金融市場の受け止めを、総裁はどのように評価していらっしゃるでしょうか。
§6Haruhiko Kuroda
個別の市場動向について具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、「量的・質的金融緩和」は、主たる波及経路として、1 つは、強く明確なコミットメントにより予想物価上昇率を引き上げると同時に、巨額の国債買入れによって金利に低下圧力を加えることで、実質金利の低下を促し、民間の需要を刺激するということ、さらには、ETFやJ-REITなどのリスク資産の買入れにより資産価格に働きかけることを想定しています。先般の「量的・質的金融緩和」の拡大は、こうした波及効果を一段と強化するものであると同時に、「物価安定の目標」実現に向けた日本銀行の強く明確なコミットメントを改めて示すものです。拡大した「量的・質的金融緩和」を推進していくもとで、今後も、経済・物価情勢が改善を続け、金融市場でもそれを反映して前向きな動きが続いていくことを期待しています。
§7Question
安倍総理大臣が昨日、消費税率の10%への引き上げを 1年半先送りすることを表明致しました。国内景気への影響や財政の信認の観点からの影響について、あらためて総裁のご所見をお伺いします。
§8Haruhiko Kuroda
以前から申し上げている通り、消費税率の引き上げについては、政府・国会において、経済状況等を総合的に勘案して判断されるものと認識しています。その上で、一般論として申し上げれば、国全体として財政運営に対する信認をしっかりと確保することが重要です。この点、政府は、「中期財政計画」において、数値目標とその達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。税制や歳出のあり方など財政運営の内容について私の立場からコメントすることは差し控えますが、こうした計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待しています。
§9Question
先程の質問に関連して、政府と日銀の共同声明の有効性についてお伺いしたいと思います。消費増税の先送りが昨日首相により表明され、10%への引き上げが1年半先送りされることが決まるわけですが、日銀は追加緩和をし、一方で政府は先延ばしするということは財政規律が失われているということにならないのでしょうか。いわゆる共同声明が空文化しているのではないかという指摘もあろうかと思います。かねて総裁は、財政再建が大事だとおっしゃっていたわけですが、2020年度のプライマリー・バランスについて、何ら裏打ちがない状態の中でも財政規律が保たれているとお考えなのかお尋ねしたいと思います。また、もし財政規律が失われた場合、金融政策の有効性が問われる状況になろうかと思いますが、そういったご懸念は一切ないのでしょうか。
§10Haruhiko Kuroda
ご指摘の共同声明は、昨年1月に政府と日本銀行が示した共同声明ですが、その中で、日本銀行、政府は、お互いの役割を明確に認識した上で、それぞれが取り組むべきことをはっきりと示しております。そのもとで、日本銀行は 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、ご案内のように最大限の努力をしています。政府も機動的な財政政策や、成長力・競争力強化とともに、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するとした上で、中期財政計画を策定し、財政健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを明確に示しておられます。日本銀行としては、こうした計画に沿って、持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待している次第です。また、後段で述べられた財政規律の問題というのは、極めて重要な点であります。この点については、今申し上げたような共同声明、さらに中期財政計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に進めるということが、財政規律を保つために極めて重要であると考えています。
§11Question
昨日、増税の先送りとともに、12月に総選挙が行われる見通しとなりました。今回はアベノミクス2年間の評価が焦点になると思いますが、経済情勢をみると、GDPは2 四半期連続でマイナスであり、これは 2年前と概況としては同じ状況となっています。この2年間をどう評価されているのかお聞かせ下さい。併せて、総裁はまさに第1 の矢を担ってこられたわけですが、その観点からすると、先程も指摘がありました通り、株高・円安といったかなりの状況変化があります。逆にいうと、今のアベノミクスというのは第1 の矢にかなり依存している部分があるのではないかという指摘があると思うのですが、そういう評価については、どうみていらっしゃるのでしょうか。
§12Haruhiko Kuroda
アベノミクス全体の評価というのは、私から申し上げるのは僭越ですので、金融政策の観点から2年間の評価について申し上げたいと思います。もちろん経済政策全体として経済に影響を与えていますので、金融政策だけの影響・効果というのを分析するのは必ずしも容易ではありませんが、「量的・質的金融緩和」を導入して以来申し上げている 2%の「物価安定の目標」を実現することに対する明確かつ強いコミットメント、それを裏打ちする「量的・質的金融緩和」、さらには前回の決定会合で決定したその拡大といったことの波及メカニズムは、先程申し上げたようなことです。そうしたことに沿って、物価上昇期待も長い目で見れば全体として上昇してきています。大量の国債買入れによって、イールドカーブ全体を押し下げる圧力を加えるということも効果を上げており、その結果として実質金利が低下しています。一部では実質金利はおそらくマイナスになっていると思いますが、そうしたことを通じて内需に対するプラスの影響というものが明らかに出てきています。そういった意味で「量的・質的金融緩和」は所期の効果を上げています。実際、「量的・質的金融緩和」を導入する前の昨年の3月には、生鮮食品を除く消費者物価の前年比上昇率がマイナス0.5%だったわけですが、それがプラスに転じ1%台になり、現時点で 1%程度というところに来ているわけです。
§13Haruhiko Kuroda
なお、政府の機動的な財政運営や、あるいは競争力・成長力強化といったことのプラスの影響もそれなりに出ていると思います。たとえば雇用が増加しているとか、さらには長きにわたって行われていなかったベアも今年の春には実現し、足許で名目賃金あるいは雇用者所得の増加もみられており、デフレ脱却に向けて一定の効果を上げてきているように思います。先程申し上げたように、主として日本銀行の金融政策を中心にこの 2年間の、あるいは「量的・質的金融緩和」を導入して以来1年半の政策効果について申し上げました。第 2 の点は、金融政策というのは、極めて機動的・弾力的にそもそも運営されるものですから、それがまず効果を上げるということは当然であると思います。他方で第3 の矢といわれる競争力・成長力の強化というのは、様々な構造改革・規制緩和その他であり、それ自身にもある程度時間がかかりますし、それが経済に効果を及ぼすのにもやはり時間がかかります。そういう意味では、特に第 1 の矢だけに依存しているというようには思っていませんが、3つの矢のうち金融政策が最初に効果を発揮するということは、金融政策の特徴としてあるのではないかと思っています。
§14Question
総裁はかねてから、消費税率が予定通り引き上げられることを前提に政策運営を進めておられるというご説明をされていたかと思うのですが、今回、総理が先送りを表明されたことで、今実施している金融緩和の効果に変化が出るのか、または日銀の経済・物価見通しに変化が生じるのか、についてどうお考えかということと、本日そうした議論がなされたのかどうか教えて下さい。
§15Haruhiko Kuroda
ご承知のように、展望レポートの経済・物価見通しは、一昨年の夏に成立した法律に基づいて、2015年10月に消費税率を 2%引き上げることを前提に作成しています。またそうした見通しを踏まえて、 2%の「物価安定の目標」の達成を確かなものとするために、「量的・質的金融緩和」の拡大を先般決定しました。従って、今回の追加緩和は、あくまでも「物価安定の目標」を達成するために必要な調整として決定したものであり、消費税率の引き上げについては、先程申し上げた通り、政府・国会において議論し、決定されるものと認識しています。なお、今後の展望レポートあるいは中間評価については、当然のことながら、今後の経済動向、さらには政府・国会の決定等を適切に反映して、必要に応じて調整されていきます。あくまでも、経済動向をみてやっていくことになると思います。
§16Question
成長率についてお伺いします。7~9月期の実質成長率が予想外のマイナスになったことを受け、民間では 2014年度を通してもマイナス成長になるのではないかという見方も出てきています。日銀では、先行きの経済見通しについて潜在成長率を上回る成長を続けるとしており、マイナス成長に陥った場合は、そうしたシナリオが崩れる可能性があると思います。マイナス成長になるリスクとその際に必要になる政策対応について、どのようにお考えかお聞かせ下さい。
§17Haruhiko Kuroda
既に政府も述べられていますが、7~9月の実質GDP成長率は、駆け込み需要の反動あるいは天候不順の影響もあって、個人消費あるいは住宅投資が弱めであり、そうしたもとで、在庫調整の動きが続いたことで、全体でも前期比年率マイナス 1.6%となったのであろうと思います。ただ、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、個人消費における駆け込み需要の反動などの影響は全体として和らいでいますし、先程申し上げたように、住宅投資についても下げ止まりに向けた動きがみられています。また、企業は、収益が改善するもとで、前向きな投資スタンスを維持しています。このように家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと作用し続けており、その意味では、最初に申し上げた通り、我が国の景気が基調的には緩やかな回復を続けているとの判断には変わりはありません。成長率の見通し云々については、先程申し上げた通り、その時点時点の経済指標等を踏まえて、展望レポートあるいは中間評価等で議論していくところではありますが、基本的な前向きの循環メカニズムは持続していると考えていますので、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるのではないかと予想しています。
§18Question
総裁はかねてより、消費再増税が先送りされた場合のリスクとして、可能性は低いけれども、仮に金利が上昇してしまうと政策対応が困難になるということをおっしゃっていたと思います。実際に、総理が再増税先送りを表明された今、そのリスクについてどのようにお考えでしょうか。またもう 1 点、日銀が大規模な緩和によって金利を低く抑えていることで、かえって政府の財政規律を弛緩させているのではないか、という指摘があります。この点についてもお考えをお聞かせ下さい。
§19Haruhiko Kuroda
第 1 の点については、以前、記者会見で聞かれた際に申し上げた通り、かつて点検会合の場で消費税率を引き上げた場合と引き上げない場合のリスクについてご質問されましたので、引き上げた場合のリスク、先送りした場合のリスクについて申し上げました。そうしたリスクはあり得ると思いますが、後者のリスクはその時点でも申し上げた通り、小さいと思います。何よりも重要な点は、財政規律を守るという政府のしっかりした対応であると思います。政府も、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための努力、そのための取り組みを着実に推進していくとした上で、「中期財政計画」を策定し、そこに健全化に向けた数値目標も掲げられ、その達成に向けた取り組みを明確に示していますので、日本銀行としては、こうした計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に進めていくことが極めて重要ではないかと思っています。
§20Haruhiko Kuroda
また財政規律の問題は、もちろん政府・国会の問題であり、財政の規律が失われ財政の問題が生じてくると、財政の最も重要な機能である公共サービスの提供が難しくなってくる、あるいは所得再分配という重要な機能も障害を持ってくる、さらに言えば、景気調整機能にも影響があり得るわけで、財政についてはそうした様々な問題が生じ得ますので、財政規律は極めて重要であり、しっかりと確立し、守っていかれることを強く期待しています。
§21Question
増税先送りのリスクに対して対応が困難であるというご趣旨の発言に関連して、今、リスクは小さいとおっしゃいましたが、今後そのリスクが顕在化した場合、やはり対応は困難な状況なのか、何らかの対応ができるとお考えなのかということと、先般の「量的・質的金融緩和」の拡大については、ある程度増税も前提にされていたと思うのですが、増税が先送りされるのであれば、追加緩和も先送りすれば良かったと後悔なさっていないでしょうか。
§22Haruhiko Kuroda
前者については、以前から申し上げている通り、そういう事態が生ずる確率、可能性は非常に小さいけれども、それが実際に起きてしまった場合には、対応は極めて困難であり、そういう意味ではリスクが無視できるほど小さいとは思いません。ただ、そういうことが実際に起こる確率は非常に低いと思っています。しかも、財政規律の観点から、共同声明にも述べられている通り、さらには政府の中期財政計画に示されているような形で、財政を持続可能な構造にしていくということが着実に進められれば、そういった確率もより小さくなるとは思います。いずれにせよ、財政規律の点は極めて重要であると思います。また、この点については、昨日の安倍総理の記者会見でもかなり明確に述べられていたと思います。追加緩和については、あくまでも2%の「物価安定の目標」の実現を、より確実にするために行ったということであり、消費税率再引き上げの 18 か月延期により、追加緩和をやったことが間違っていたとか、あるいはもっと待つべきだったというようなことは、全く考えていません。政策委員会全体としても、そういう考えはないと思います。
§23Question
物価についてお伺いします。総裁は、7月15日の会見で 1%割れすることはないとお話しされていましたが、原油価格の値下がり等も含めて今は1%近傍にあり、もしかしたら割れるかもしれない状況にあると思います。そうした中であらためて、1%を割れることについて、また、それがいつぐらいまで続きそうかについてご見解をお願いします。
§24Haruhiko Kuroda
これは見通しについてですので、様々な状況によって変わると思います。確かに足許は、原油のみならず、様々な一次産品価格がかなり低下しましたので、そうした影響が既に現れていると思います。そういう意味では、 1%を割る可能性はあると思います。ただ本日の公表文でも申し上げている通り、現在 1%程度になっていますが、このような物価の状況は当面続くのではないかと見ています。1%程度の状況がいつまで続き、さらにいつ頃から加速していくかは、様々な状況によると思いますが、1%を割る可能性も含めて、1%程度が当面続くであろうと思っています。ただ、いずれそういった影響を超えて、国内のGDPギャップの縮小あるいは予想物価上昇率の上昇といったことを通じて、物価上昇率は再び加速していくと思っています。そして、2015年度を中心とする期間に 2%程度に達する見込みが高いと考えています。
§25Question
先程の幾つかの質問と関連しますが、増税が先送りされた場合のリスクについて、政府・日銀とも対応のしようがないということになりかねないと、確率は非常に低いとおっしゃっていますが、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味ではリスクが大きいとおっしゃっています。今回ともかく増税が先送りされたことで、リスクはやはり出てくるのではないかと思います。日銀が追加緩和に踏み切ったことで、年間に発行されている国債の発行量のほぼ全額を日銀が買い取ることになり、その結果、増税が先送りされても長期金利は引き続き低い水準にとどまっています。結局、長期金利の低さが財政の規律を弛緩させているという指摘は結構強くあります。もし、対応不可能になるようなリスクが顕在化した場合には、黒田総裁、そして日銀はどのような責任をお取りになるつもりなのか、まずそれをお聞きします。もう1 点、これも先程質問がありましたが、今年度の成長率はマイナスになる可能性が高いとの見方が専らです。日銀が次回の中間評価で下方修正すると 5 回目になります。昨年4月4日に黒田総裁は、2年で 2%の物価目標を達成するために必要な措置は全て決定したと高らかに宣言されましたが、つい最近 10月31日には追加緩和に踏み切りました。
§26Question
結局、QQEは円安をもたらして物価をその面から押し上げる効果があったとしても、景気を良くする力はほとんどなかったということ、これはお認めになった方が良いのではないかと思うのですが、如何でしょうか。
§27Haruhiko Kuroda
後段のご質問については、全くそのように考えていません。公表文や展望レポート等で政策委員会の支持を得て示されている通り、「量的・質的金融緩和」は、景気あるいは物価に対して所期の効果を発揮していると思います。もとより、世界経済の回復がもたついていたとか、あるいは最近時点では、商品市況、特に原油価格がかなり大幅な下落をしているなど様々な要因が景気や物価に影響していることは事実ですが、経済見通しはその時点でのあらゆる情報を総合して、そしてその時点で最適と思われる政策をとり、その後、結果がどのように出るかに応じて、上下双方向のリスクを点検して、必要があれば躊躇なく政策を調整するということでやってきています。「量的・質的金融緩和」が所期の効果を発揮していることは間違いないと思っています。なお、財政規律の問題については、政府・国会の責任であり、中央銀行が責任を取るといった問題ではありません。あくまでも中央銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することが課せられた課題であり、それに向けて着実に前進するということが何よりも重要であると思っています。
§28Question
2 つあります。増税延期による経済・物価見通しへの影響については、今後精査されるということですが、イメージとして、成長率もしくは物価に対する影響は、上の影響なのか下なのかを伺ってもよろしいでしょうか。例えば総理のブレーンの本田先生はBEIが下がっているから延期するので、これでBEIが上がるという理屈なのですけれども、ご所見をお伺いします。2 つ目は原油価格下落の影響についてです。総裁が着任されたばかりの頃に、中国のスローダウンなどで一次産品が下落しても「物価安定の目標」達成は大丈夫ですか、と質問させて頂いた時に、日本は世界から孤立して 15年間デフレだったので、世界の商品市況の動きとは割と独立に、デフレ脱却し2%を達成できる、というような解説をされたかに記憶するのですが、それと現在との整合性をお願いします。
§29Haruhiko Kuroda
1 つ目のご質問については、私の個人的な意見を申し上げても意味がありませんので、今後とも政策委員会で足許の経済状況を十分踏まえながら、先程申し上げたように、展望レポートを必要に応じて修正するとか、あるいは中間評価の段階で必要があれば調整することもあるかもしれませんが、基本的には展望レポートで、そういったことも踏まえて示していくということになろうかと思います。それから、以前にどういうことを申し上げたか、今のご質問では必ずしもはっきりしませんが、私が従来から申し上げていたのは、中国から安いものが入ってくるとか、あるいは日本が少子高齢化しているとか、そういったことが原因でデフレになっており、金融政策では如何ともしがたいといったような議論がかつてありましたが、それはおかしいのではないかということです。中国から物をたくさん買っているのは日本だけではなく、米国あるいは欧州、アジア諸国もそうです。それから少子高齢化となっている国は、日本だけではなく、欧州にもたくさんありますし、実はアジアにも他にあります。そうした中で、世界で唯一 15年続く日本のデフレを、今言ったような国際化あるいは少子高齢化とかで、説明するのは無理なのではないかということです。
§30Haruhiko Kuroda
様々な事情で、物価押し上げ圧力あるいは押し下げ圧力は色々あると思いますが、そうしたもとで、やはり物価を安定させる責務が、中央銀行にあるのではないかということです。その点は、今でもそのように思っており、そうした観点から「量的・質的金融緩和」を導入し、拡大をしたと、私自身も理解しております。
§31Question
消費税率引き上げの延期を受けて、海外大手格付け会社のフィッチは日本国債の格付けを年内に見直すという報道がされています。また、日本の格付け会社である、R&I、格付投資情報センターも、ソブリンの格付けは変えないけれども、財政再建に一段の懸念があるといったコメントを発表しています。こうした格付け会社のコメント、考え方について何かお感じになることがあればお聞かせ下さい。また、今回、消費税率引き上げを先送りしたことで、海外の政府とか中央銀行から意見とか、評判とか、何か総裁のお耳に入っていること、気になるコメントなどがあれば併せてお聞かせ頂けないでしょうか。
§32Haruhiko Kuroda
格付け会社による国債の格付けについて、私から何か申し上げる立場にないと思います。国債を発行しているのは、日本政府ですので、むしろ日本政府に聞かれることが正しいのではないかと思っています。それから、今回の消費税率引き上げの 18 か月延期について、外国その他から私に尋ねられたということはありません。18 か月延期ということが総理によって示されたばかりであり、その後、私自身が国際会議等に参加する機会があったわけでもありませんので、今のところないということに尽きます。
§33Question
GDPは 2 期連続のマイナス成長となり、総裁は先程、日本経済はまだ引き続き回復基調にあるとおっしゃっていましたが、改めてその強気の根拠と、2014年度の経済見通しについてお聞かせ下さい。
§34Haruhiko Kuroda
様々なデータやその他と比べて、特に強気なことを言っているつもりはありません。企業をみると収益は極めて良い状況が続いており、そのもとで、日銀短観や様々な調査で示されている通り、少なくとも設備投資はかなり強めの計画が出されています。そうした企業収益の改善もあって、先程申し上げた通り久方振りに――10 数年振りと思いますが――今年の春闘でベアが決定され、かなり多くの大企業、さらには中堅企業も含めてベアが行われたことで明確に所定内賃金も上がってきていますし、ボーナスも増えて名目賃金が増え、さらに雇用も増えて、家計にとっての雇用・所得環境は改善が続いています。従って、消費をみても、消費税率引き上げの駆け込みと反動減の影響がやや長引いて消費が弱めであったことは事実ですが、耐久消費財を除けばその影響も和らいでいますし、耐久消費財についても、自動車等でみられるような下げ止まりの動きが出てきています。基本的に、企業・家計の所得から支出へという前向きな循環メカニズムはしっかり働き続けていますので、基調的な景気回復はやはり続いているとみています。
§35Question
2 点お伺いします。1 点目は、財政と消費増税の延期の影響の関係です。総裁のスタンスとしては、総括すると、消費増税が延期されることで、財政健全化に与える悪影響について、政府がどのような具体的な策で埋め合わせるかということをまずは見守りたいということなのでしょうか。2 点目は、追加緩和についてです。10月31日の緩和の時点で反対した委員が 4 名いらっしゃいました。今回、木内委員が 31日以前の金融政策が望ましいと反対されていますが、残りの3 名の委員についてどのような理由で賛成に回られたのかということについて、お伺いします。
§36Haruhiko Kuroda
何度も申し上げている通り、消費税率の引き上げについては、経済状況等を総合的に判断して、政府・国会において議論し、決定されるものと理解しています。その一方で、先程来申し上げている通り、共同声明でも、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続的な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するとされており、中期財政計画を策定して、財政健全化に向けた数値目標とその達成に向けた取り組みを明確に示しておられますので、日本銀行としてはこうした計画に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められていくことを期待しているということに尽きると思います。何度も申し上げますが、財政の健全化、持続可能な財政構造の確立ということは、何よりも財政にとって不可欠であると思っていますし、経済にとっても極めて重要であると思っています。それから、4 人の前回反対された方のうち、3 人の方が今回賛成したのはなぜかということですが、これらの委員の方々は、政策委員会としていったん決定した政策について短期間で変更することは、日本銀行の政策運営に対する信認を損なうものである等の理由で今回賛成されたものと理解しています。
§37Question
今回の消費増税の 1年半の先送りと出口戦略との関係についてお伺いします。市場では、消費増税の時期が 2017年4月になったということで、またその時に景気の下押し圧力がかかるということで、日銀としてはそれまで出口の議論がなかなか進められないのではないかとの見方も出ていますが、こうした見方についての考え方を教えて下さい。
§38Haruhiko Kuroda
前から申し上げている通り、あるいは、今回の声明文でも申し上げている通り、足許、消費者物価上昇率は 1%程度になっており、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられます。展望レポート等でも申し上げている通り、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いということであり、ご指摘の消費税率の再引き上げが 2017年4月になることとの具体的な関係はありません。いずれにせよ、以前から申し上げている通り、2%の「物価安定の目標」の達成に向けて最大限の努力をしている最中であり、かつまだ途半ばですので、具体的に出口戦略について云々申し上げるのは時期尚早ではないかと思っています。以上