森本審議委員記者会見(2015年2月9日)要旨
全文
§1Question
3 点質問させて頂きます。まず、1 点目ですが、本日の金融経済懇談会で、色々なお話があったと思いますが、地元各界からどのような意見、要望があったか、お聞かせ下さい。続いて 2 点目ですが、千葉県の景気の現状について、本日の金融経済懇談会における各界からの発言も踏まえ、どのような見解を持ち、今後の金融政策運営にどのように活かしていくつもりかをお伺いしたいと思います。最後に 3 点目ですが、地方創生の総合戦略案に、本社機能の地方移転・新設に対する税の優遇措置が盛り込まれていますが、そのことを踏まえ、経済機能の東京一極集中解消の観点から、首都圏に位置する千葉県の経済の役割について、どのようにみておられて期待されているか、お聞かせ下さい。
§2Yoshihisa Morimoto
まず、1 点目の今日の金融経済懇談会で地元からどのような意見、要望が出されたかという点については、本日の懇談では、千葉県の経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状・課題に関する貴重なお話や、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見等を数多く頂き、極めて有意義な意見交換ができました。まずは、ご出席頂いた方々や、関係者の皆様に深くお礼を申し上げたいと思います。本日の懇談会では、色々ご意見が出ていました。全てを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げたいと思います。まず 1 点目ですが、足許の千葉県の景気情勢については、全体としては緩やかに回復しているとのことでした。企業活動の面では、行政の支援もあって、設備投資の動きがみられ、それに伴う資金需要もみられるとの指摘も聞かれました。また、雇用・所得面ですが、有効求人倍率が改善傾向にあるほか、冬季の賞与も前年を上回ったということでした。2 点目は、ただ、こうした前向きな動きが企業全般に波及しているわけではなく、地域経済を支える中小企業を中心に、依然として景気の回復を実感できない先がまだ多いということでした。具体的には、為替円安に伴う原材料価格の上昇により、販売価格への転嫁が難しい内需型の中小企業を中心に収益が圧迫されているとの指摘が聞かれたところです。
§3Yoshihisa Morimoto
この間、今春の賃上げ交渉に向けた動きについては、企業側の方々からは、中小企業を中心に一律のベアは難しいという声も聞かれたところです。3 点目は、中長期的には少子高齢化・人口減少が避けられないとの認識のもとで、当地経済のさらなる飛躍に向けた様々な取り組みが行われているということでした。行政では、高速道とか、空港などのインフラ整備を進めるとともに、地域経済を支える産業の育成・振興などに注力しているとのお話を伺ったところです。この中では、建設コストの上昇に対する懸念も聞かれました。また、人手不足に関する声も多い中、女性、高齢者の活用を図りつつ、成長分野の振興に取り組まれているとの話が聞かれたところです。私どもとしては、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや金融システムの安定性を確保することを通じて、当地関係者のご努力がより大きな実りへとつながっていくようサポートして参りたいと思っています。2 点目の千葉県の景気の現状ですが、今申し上げた点と若干重複する点はありますが、足許の千葉県の景気動向については、これも先程申し上げたように、全体としては緩やかな回復を続けているということでした。需要項目別にみると、個人消費は、雇用環境が緩やかに改善する中、基調的に底堅く推移しています。
§4Yoshihisa Morimoto
また、住宅投資も、持家を中心に減少傾向が続いていますが、マンション等の分譲住宅が足許前年を上回るなど下げ止まりつつあるということです。さらに、設備投資は、各種アンケート調査等でも、非製造業を中心に前年を上回る計画となる中で持ち直しているということです。輸出も増加しています。以上の内外需要のもとで生産も持ち直しつつあるように窺われるということでした。本日の懇談会の出席者も、景気の現状について、大体このようなところであったと思っています。これを金融政策運営にどう活かしていくかということですが、私どもとしては、引き続き地域経済の現状把握に努め、本日頂いたお話も含めて、得られた情報を十分に活かしながら、経済の好循環のもとでの物価安定を目指し、適切な政策運営を行って参りたいと考えているところです。3 点目の千葉県経済にどのような役割を期待しているかというご質問ですが、千葉県では、近年、圏央道の整備が進められているほか、成田国際空港でも競争力強化に向けて施設の充実が色々図られています。こうしたもとで、主要産業である観光業では、県が「第 2 次観光立県ちば推進基本計画」を策定され、振興に取り組んでおられるほか、最近では大型商業施設の新増設・増床も相次いでいるところです。
§5Yoshihisa Morimoto
また、製造業の分野でも、産官学共同の取り組みが数多くみられており、研究・開発拠点としてさらに発展していくことも期待されているところです。本日の懇談会でも、今後も当地経済が発展していくためには、こうした行政、民間の様々な取り組みを続けていくことが不可欠であるとの声を伺ったところです。私としては、そうした取り組みによって当県の経済が今後とも益々発展し、ひいては日本経済全体の成長力強化につながっていくことを期待しています。日本銀行としても、中央銀行としての使命をしっかりと果たし、当県の取り組みを応援して参りたいと考えています。
§6Question
懇談会の中でも述べられていた 2%の「物価安定の目標」に関しては、「2015年度を中心とする期間」という見方を持っていらっしゃると思います。また、それとは別にコアCPIも目先上がっていくという見通しですが、具体的に森本委員のイメージとしてどれくらいのタイミングでコアCPIが上がっていくとみているのか、またコアCPIに先行してコアコアCPIがどのくらいのタイミングで上昇していくとみているのか、お伺いしたいと思います。
§7Yoshihisa Morimoto
物価見通しに関するご質問ですが、原油価格の先行きの見通しの想定が、非常に難しいという状況はご承知の通りです。そうした意味で、物価の先行きについても、原油価格の動向が大きく作用すると思っています。先般の中間評価においても、政策委員の原油価格の想定を揃えまして、ご承知の通り、足許の状況からみてドバイ原油で 55 ドルくらいを出発点として、先行きの見通し年度の終盤にかけて 70 ドル程度に上がっていくという、緩やかな上昇を見込んだもとで、私どもとして物価見通しを想定したわけです。そういう中で、2015年度の物価見通しは、10月の展望レポート時の+1.7%から1月の中間評価は+1.0%と下振れたわけです。ただ、これは原油価格の影響について、公表文で示したように、2015年度について単純に機械的に試算しますと、-0.7~-0.8%ポイント下振れるという影響があったかと思います。そういう中で、物価の見通しについて大変重要なことは、今おっしゃったように基調だと思っています。この基調を規定する要因としては、以前より申し上げている通り、需給ギャップと予想物価上昇率がどうなっていくかということが大変重要だと思っています。
§8Yoshihisa Morimoto
そういう意味では、需給ギャップについては、足許長期的な平均であるゼロ近傍になっていますし、これから原油価格の低下等も経済に好影響で効いてきますので、そういう意味で潜在成長率を上回る成長を期待し、見込んでいるところです。そういう中で、需給ギャップも改善していくものとみています。それから予想物価上昇率ですが、これはどういうデータでみていくのか、本当に難しいわけです。我々としては、企業、家計、それから市場、こういうところの色々なデータを総合して、判定していきたいと思っています。家計については消費動向調査とか、生活意識アンケート調査、企業については短観もあります。それからエコノミストについてはESPフォーキャスト等、色々出ていますし、市場としてはBEIがあります。そういう中で、今、BEIについては、世界的にもこの原油価格の影響のもとで、足許若干低下している状況は事実だと思います。ただ、そのほかの色々なデータをみますと、やや長い目でみると先行き上昇していくという傾向は維持されているのではないかと思っているところです。
§9Yoshihisa Morimoto
また、賃金の動向をみても、連合で2%のベアを要求しているとか、賃上げについて前向きな動きがありますが、こういった点、また企業の価格設定行動についても変わってきていますので、そういった色々な意味で、予想物価上昇率についても先行き上がっていく状況が確認されるのではないかと思っています。そうした中で、基調的には物価は緩やかに上昇していくと考えています。そこで、先程申し上げた原油価格について、これは見通しが難しいのですが、先行き緩やかに上がっていくという前提に立ちますと、少しずつこの影響も剥落していくところです。この辺の影響が剥落するとともに、年度後半にかけては結構押し上げ効果が出てくるのではないかと思っています。特に、この原油価格の見方については、世界的にも色々あり難しいのですが、今の需給両面からみて、年後半ぐらいに来るとある程度需給面で変化が出てくるのではないかという見通しが多いようです。私自身もそういう見方をしているわけですが、そういう中で需給ギャップ、そして予想物価上昇率が堅調なもとで、原油価格の影響も剥落していくという前提に立ちますと、年度後半にかけてはある程度上がって、2%の「物価安定の目標」に近づいていくのではないかと思っているところです。そうしたもと、我々としては基調的な動きの中でコア指数をみているわけですが、当然ながらコアコア指数もみていくという形になろうかと思います。
§10Question
2 点お伺いします。1 点目は、追加緩和について反対されていて、その理由を公の場で言及されたのは今回が初めてだと思いますが、もし当時追加緩和の議論がなくて、足許のこの経済状況で、今初めて追加緩和の議論が金融政策決定会合で出ていたら、今でも反対していたか、それとも今ならば賛成していたか、お聞かせ下さい。2 点目は、審議委員のあり方についてですが、宮尾審議委員の後任に原田早大教授が濃厚になっています。森本審議委員も 6月で満期を迎えられるということで再任も含めて色々あると思いますが、まず一般的に、森本審議委員としては、審議委員という役職に就く人間についてはどのような素質が必要だと考えておられるか、そして、もしお答え頂けるようであれば、ご自身が再任されないという場合、後任にはどのような人物が就くことが望ましいとお考えでしょうか。
§11Yoshihisa Morimoto
1 点目に関しては、昨年10月時点では、私自身色々議論した中で、反対票を投じたわけですが、このときの反対理由については皆さん議事要旨の中でお読みになっていると思います。私自身もこれは同じような考え方でして、当時、原油価格の下落により、先行きの物価見通しのリスクが大きくなっていたことは認識していました。ただし、そういう中で「量的・質的金融緩和」については、累積的に効果が出てきますので、所期の効果を発揮し、経済・物価の前向きの循環メカニズムは維持されているとみていました。また、原油価格の下落についても、短期的には物価の下振れ要因となりますが、やや長い目でみて経済・物価に好影響を与えると考えていました。こうした状況のもとで、拡大措置による効果はある程度限定的ではないかという一方、市場機能の低下リスクとか、実質財政ファイナンスとの見方をされるリスクが高まる可能性があるなど、副作用への懸念が大きいと考え、反対したわけです。期待される効果として、金利については、先行きも一段と低下すると見込まれるわけですが、既に歴史的な低水準にありましたし、実質金利も大幅マイナスになっていました。また、買入れの効果も先程申し上げましたが、これからも累積的に高まっていくほか、期待への働きかけという面では、導入当初に比べ、効果はかなり限定的ではないかと考えていました。
§12Yoshihisa Morimoto
こういうもとで、私としてはこれまでの方針を継続することが適当で、特にその段階での拡大措置は必要ないと考えていました。そのときはそういうことですが、今の原油とか経済の状況の中で、追加緩和の議論が出てきた場合はどうかというと、仮の質問なので非常に答え難いのですが、今申し上げましたような状況をみますと、原油価格については当時から一段と下落していますが、それ以外の状況については、私としてはそんなに大きく基調としては変わっていないと考えています。原油価格の下落により、短期的には物価は一段と下振れになると思いますが、基調は私自身は変わっていないのではないかと判断しています。それから、原油価格の下落についても、日本はご承知の通り原油輸入国ですから、交易条件が非常に改善されるわけです。そういう意味で、景気についても好条件になるというのが先程申し上げたようなことだと思います。そういう意味では、仮にあの時ではなくて、今提案されたらということについては、多分色々条件を比較してみると、判断についてはあまり変わらなかったのではないかと思います。厳密に申し上げれば、当時やらなければデフレマインドの転換が遅れるのではないか、その為の予防的な措置と言っていますが、それがどういう形で働いたかについては検証が難しい面があります。私としてはあまり基調の動きとして大きく変わっていないのではないかと思っています。
§13Yoshihisa Morimoto
2 点目の審議委員の後任の件につきまして、これは両議院の同意を得て、内閣が任命することになっていますので、色々と申し上げるのは控えさせて頂きたいと思います。私としては、任期満了までその責務を果たすべく、全力投球したいと思っているところです。どういう人物が適切かは、日銀法に書いてある通り、経済・金融について高度な識見を持っている人ということが例示されているわけでして、そういった人を対象にして選ばれていくのではないかと思っています。
§14Question
2 つお聞きします。1 つは、挨拶要旨の6 ページ~7 ページにかけて「消費者マインドについては、足許小幅の改善はみられますが、慎重さが残る点はやや気掛かりです。急速な円安もあり」と、以下一部を省きますが、「家計には負担感がより強く意識されているとみられ、今後の動向を注視したい」と述べています。この円安が消費マインドをやや慎重にさせているのではないかと推測できるようなご発言ですが、昨年10月の追加緩和によって 10 円内外の大幅な円安がもたらされたと多くの人がみているわけですが、10月の追加緩和は、結果としてはこういった消費者マインドを悪化させる要因になったのではないかとお考えなのかどうか、それがまず第 1 点です。もう 1 つの質問は、やはり10月の追加緩和についてですが、先程反対された理由として、副作用やコストとして市場機能の低下リスクや実質的な財政ファイナンスとみなされるリスクを高めてしまうのではないかと挙げられました。今、昨年10月の追加緩和から 3 か月、4 か月経とうとしていますが、実際にこういった副作用やコストは出てきているとお考えなのかをお答え頂きたいと思います。
§15Yoshihisa Morimoto
まず、1 点目の昨年10月時点で、追加緩和により結果として円安方向に振れたということで、それが消費者マインドに影響したとみているのかどうかについて、為替水準そのものについては様々な要因によって左右されますので、水準についてはコメントを控えたいと思いますが、いずれにしても一般論として、ご承知の通り、円安については、輸出企業にとっては輸出の増加ということで好影響がありますし、グローバルに展開する企業は企業収益という面でもプラスです。また、資産効果という面でもプラスであろうかと思っています。一方では、いわゆる内需型の非製造業ですとか、規模の小さい中小企業にとっては、輸入価格の上昇、これをどう価格転嫁するかといった面でなかなかつらい面があり、そういう企業にとっては影響があるでしょう。また、家計にとっては、やはり実質購買力という面で食料品等に影響があるのは事実だと思います。一般的にはこういう影響はあろうかと思います。そういうことで、我々としても、為替の動向については、しっかり見守っていきたいと思っています。
§16Yoshihisa Morimoto
景気ウォッチャー調査とか、消費者態度指数、こういうところに円安が直接的に影響しているのかどうかという点については、なかなか定量的にチェックするのは難しいのですが、ただし、先程申し上げた通り、家計の実質購買力に影響を与えているのは事実なので、そういう意味では、影響がないことはないと思っています。そういう意味で、影響も少しあったのではないかと私としては考えています。次に、副作用で市場機能低下リスクと実質財政ファイナンスとみられるリスクを代表例として挙げているわけですが、今、それがどうなのか、というご質問です。この市場機能の低下について、これも皆さんもご承知の通り、まず国債市場の流動性低下リスクについてですが、これが特に今、何か重要な問題が起きているとは思っていません。ただ、市場の流動性が極端に低下した場合は、何らかのショックをきっかけに金利が非連続的に変動する可能性が高まるので、それが顕現化した場合は、市場の不安定化を通じて実体経済とか、金融システムに悪影響が及ぶことにつながりかねないわけです。また、金利の低下に伴い資産運用が困難化するリスク、あるいは金融機関の収益が低下すること等を通じて、金融仲介機能に与える影響も懸念されるということもあります。
§17Yoshihisa Morimoto
いずれにしても国債の需給に影響を与えることでイールドカーブ全体を引き下げ、金利低下を促すことを狙った政策ですので、私どもが「量的・質的金融緩和」を導入した当初から市場に影響を与えることは十分認識していたところです。そうしたことで、導入当初の公表文でも色々明記しているように、買入れを進めるに当たっては、市場参加者との間で、市場調節ですとか市場取引全般に関して密接な対話を行ってきました。また、オペ運営も柔軟化していますし、国債補完供給制度の実施条件を緩和するといった対応を行ってきています。これからも新たに実施する債券市場サーベイを活用するとか、債券市場参加者会合を定期的に開催していくとか、そういうことで対話をより密にしたいと思っています。まずサーベイで市場をより詳細に分析、点検して、対話もより深めていきたいと思っています。そうしたもとで、国債市場の流動性について、特に取引量も含めて、流動性が極端に低下している状態とは思っていません。それから、金融仲介機能ですとか、資金運用の問題についても、何か大きな問題が起こっているとはみていません。
§18Yoshihisa Morimoto
いずれにしても、私も本日の懇談会の中で申し上げたように、こういったリスクの顕現化を止める、あるいは最小化する努力は、我々としては、全力でやらないといけないと思っていますので、今、そういったことで、市場の分析ですとか、対話をより密にしていきたいと努力をしている段階です。
§19Question
挨拶要旨の 12 ページの「原油価格の下落が続くもとで、月々の消費者物価指数の動きに注目が集まる傾向がみられます」以降の部分で、総合的に色々みていく必要があるということをあえて強調されています。昨年10月の緩和の際は、デフレマインドの転換が遅くなるリスクを予防するために緩和をするという建て付けだったと思うのですが、その際、実体経済全般に目を配ったり、判断できていなかったといった見方をされているのでしょうか。
§20Yoshihisa Morimoto
私がここであえて書かせて頂いているのは、やはり先行きの物価を色々みるうえで大事なことは、月々の動きではなくて基調の動きということをより強調したかった、まさにそのことに尽きます。それが、昨年10月時点で行われていなかったかというと、それは行われていたと思いますが、それにもかかわらず、やはり世界的な外生要因である原油価格の下落状況というのは、政治的要因等、色々な要因も重なっていますので、先行き非常に想定し難いという状況があり、その時に世界的にみても大方の見方は、この下落というのはしばらく底打ちが難しいという見通しでしたので、そうしますと――これはよく言われていることですが――、中長期的な予想インフレは、諸外国はアンカーされているのに対して、日本の場合は15年間のデフレを経験してきたわけですので、実績に影響される度合いが強いのではないかという危惧が非常に強かったと思います。従って、そういう意味で、原油価格の下落に応じたものではなくて、実績によって、デフレマインドの脱却に向かっているところが転換が遅れるというリスクを何としても予防したいという気持ちが強いのが賛成された方々の想いでして、ここは非常に大事な点と認識されたのだと思います。
§21Yoshihisa Morimoto
ある程度基調としては維持されているとしても、デフレ脱却という大事なステップにおいて、ひょっとするとデフレマインドの転換が遅れるかもしれないという点をどの程度重要視するかによって判断が分かれたと思います。私自身としては、経済物価の前向きな循環メカニズムは維持されていますし、基調自身は維持されているので、そういう中で原油価格の下落についても、短期的には確かに下落しますが、これが経済に悪い影響を与えるわけではないので、そういうことを考えると措置は必要ないと当時考えた次第です。
§22Question
2 点お伺いします。まず、コアCPIの先行きですが、原油価格次第ではありますが、春以降、マイナスに転じる可能性があるというエコノミストの方もいらっしゃいます。マイナスに転じる可能性があると今みておられるのか、もしマイナスになった場合に――今のところ物価の基調は維持されていると森本委員はおっしゃっていますが――、そうした物価の基調が崩れたり、あるいは期待インフレ率が下振れしたりするリスクがあるのではないか、そこまで見通されているのか、その場合に政策対応はどういうものが必要だと考えているのかお伺いします。もう 1 点ですが、賃上げについて、連合が2%以上求めるとか、政労使の合意とかについては今日の懇談会でも触れていらっしゃいます。今後、物価感を支えるのは賃金の動向だとは思うのですが、この物価の基調が崩れないために必要な賃上げの程度、レベル、水準等について、森本委員が頭の中にお持ちのイメージがあれば教えて下さい。
§23Yoshihisa Morimoto
コアCPIの指数が、先行き、例えば春先にはマイナスに突っ込むのではないか、といった見通しもあるようです。そういう中で、私自身としては――これは繰り返し申し上げることになるのですが――、基調的な上昇率は着実に少しずつ高まっていくと考えています。そういう中で、原油価格の下落は、直接的に石油関係、あるいは電気・ガスにといった格好で効いてくるわけですが、そういう影響を受けてプラス幅が縮小していくのは事実だと思います。ただ、CPIの色々な品目をみても、今上昇している品目の方がずっと多いですし、基調の様々な動きをみると、特にコアコアCPIの指数をみても、これからさらにマイナスに突っ込んで下がっていくとは私個人はみていません。と言いますのも、いわゆるガソリン価格等についても、日本の場合は税のウエイトが高いので影響が薄められますし、電気・ガスについても、天然ガスもご承知の通り、フォーミュラが色々になっていますが、大体 3 か月前の原油価格に連動したり、燃調条項でタイムラグがあったりして遅れてくるわけです。エネルギー関係についても、そういった要因がありますし、コアコアCPIの指数をみても、さらにマイナスに突っ込んでいく状況とは思っていません。従って、コアCPIがマイナスに突っ込んでいった場合、さらに下振れの懸念については、答えを控えさせて頂きたいと思います。
§24Yoshihisa Morimoto
2 点目の賃上げについては、2%の「物価安定の目標」のためにどのくらいの賃上げレベルが必要かという質問についてですが、昨年は好調な企業収益の下で、労働需給環境は非常に好調でしたので、中小企業も含めて、しかもベア+0.4%を含めて+2.2%ぐらいの賃上げが実現されたわけです。ただ、そういう中でも、消費税の増税がありましたので、これをプラスしますと実質賃金という意味では、残念ながらマイナスという状況であったわけです。これが来年度になると、当然ながら消費税の影響は消えてきますので、その物価と賃金ということになってくるわけです。今色々な取り組みをみると、政労使会議でも、経済界は賃上げに向けて最大限の努力をすることが確認されていますが、それが中小企業にどう波及していくのかという点で、やはり中小企業は輸入価格等の転嫁は難しいとか色々厳しい状況もあります。そういう意味では中小企業にも波及していくように、仕入先の価格転嫁についても配慮、協力、支援をするといった確認もされているわけですし、中小企業にとっては、人手不足の状況が相当ありますので、優秀な人材確保の面でも、収益が許す範囲においてそれなりの対応をすると思っておりますし、また大企業等からの好影響の波及も期待したいわけです。
§25Yoshihisa Morimoto
春闘がこれから本格化してくるわけで、これは動向を見守るしかないのですが、私としては、去年の実績とか今置かれている様々な状況等をみると、賃上げがある程度行われる環境条件がそれなりに揃っているのではないかと思っています。そうしますと、去年の実績等を考えても、物価上昇と賃金の状況をある程度みると、実質賃金もプラスになっていくということを期待している状況です。以上