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日本銀行記者会見2016年8月31日布野幸利, 審議委員

布野審議委員記者会見(2016年8月31日)要旨

全文

§1Question

まず今日の懇談会の内容に関して、特に地元の経済界からの声について、日銀の金融政策に対して何か意見ですとか、要望があったのかも含めてお尋ねします。もう 1 点が、新潟県経済界についてどういった印象を持たれたのかを、新潟の経済動向と先行き見通しも含めてお聞かせ下さい。

§2Yukitoshi Funo

本日の懇談会では、当地の各界を代表する方々に多数お集まり頂き、極めて有意義な意見交換ができたと思っています。会合では、地域経済の現状や課題、それから日本銀行の金融政策に対するコメント等も頂くなど、話題は多岐にわたりましたが、私なりにかいつまんで申しますと、まず当地の景気については、日本経済全体の動向を映じて、全般としては緩やかに回復しているが、細かくみると業種であるとか会社によってばらつきがみられる、言い様によっては二極化の様相を呈している面もあるというご指摘を頂きました。特に、中小・零細企業の中には、やはり人手不足であるとか事業の継承といった面で問題に直面しているという会社も多々あるというご指摘も頂きました。それから、特に行政を代表する方からは、特区を活用するなどいろいろな取り組みを通じて当地の付加価値を上げるべく努力しているというご意見を頂きました。金融政策につきましては、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が金融機関の収益にマイナスの影響を与えているという意味で心配だというご指摘を頂いたのですが、それと同時に、そうした中にあっても、金融仲介機能の発揮に当たり、競争が厳しくなる中で様々な工夫や努力を続けているという前向きの話も頂きました。

§3Yukitoshi Funo

日本銀行では、こうした地方の色々な問題・課題を伺い、それを私なりに頭の中に織り込みながら金融政策運営に取り組んでいくことを通じて、地域の発展を支援していきたいと考えています。それから、新潟県の印象ですが、私は、江戸時代でいう雄藩というか、大変立派な県であるとの印象を強く持ちました。例えば、食品、繊維製品、金属製品、そういった業種が力強く経済を支えています。また、県内人口が 200万人超ということにも驚きました。新潟県は大都市圏を除く都道府県の中で上位の有力県ではないでしょうか。こうした強みをお持ちの県なので、それを今後一層いかして、是非持続的に大きく成長を遂げて頂きたいと、私は期待しているところでございます。

§4Question

日銀は 7月の会合でETFの買入れ額を倍増したのですが、それについて 2 つ伺います。まず 1 つ目ですが、7月金融政策決定会合における主な意見の中に以下のような発言がありました。「ETF買入れ増額は、政策の限界を一層明確に意識させるほか、政策の逐次投入とみられ、際限ない催促相場に陥るリスクがある」。このような意見に対して、委員はどのようにお考えになるのか。賛同するところもあるとお考えになるのか、あるいは、いやそんなところはないとお考えになるのか、これがまず 1 点です。もう 1 つは、委員はトヨタ自動車のご出身でいらっしゃいます。日銀のETFの買入は、日経平均株価とか東証TOPIXのインデックスに連動するように行われているわけですけれども、買入れ額がかなり大きくなってきていることで、日本の大企業の実質的な大口の株主になりつつあるという指摘が最近出ています。トヨタ自動車に限らず、そういった日本を代表する企業の実質的な大口株主に日本銀行がもう既になっている、あるいはなりつつあるという事態は、歓迎すべきことなのかどうか、その点についてご意見をお聞かせ下さい。

§5Yukitoshi Funo

「量」・「質」・「金利」の3次元の金融緩和政策を展開するに当たって、おっしゃるように 7月の会合においては、「質」の面であるETF買入れ額を年間 3.3 兆円から 6 兆円に増やしたわけですけれども、私はこれが限界を示すというようには全く思っていません。限界論としては、「ETFにおいて限界」とか、「量が限界なのでETFに」とか、いろいろな指摘があるように思われますが、私は、「量」・「質」・「金利」ともに、今の段階で限界がみえているのかと問われれば、私はみえていないと思っています。その下で、それぞれの施策を何処まで進めていけるかということについては、毎回の会合で、いわゆるPDCAを回しつつ行っていくということと認識していますので、今日現在で、それぞれ3次元の施策の方向性について限界が間近にあるとは思っていません。それからETFを買うことによって、日本銀行による株式保有比率の上昇が特に大企業で生じている、という指摘がありますが、私は、歓迎もその逆もなく、ニュートラルの立場です。特に、ガバナンスの面で云々という話も雑誌等でみますけれども、日本銀行がETFを購入し、株主権で株主総会の審議事項に投票するような制度上の枠組みにはなっていませんので、私はそういう面での影響は全くないと考えています。

§6Question

今、限界はまだみえていないというお話でしたが、その中で特に「量」について、国債を年間約 80 兆円ずつ残高が増加するように買い続ければ、今日明日に限界というわけではないとはいえ、いずれは買えなくなるときが来るはずですけれども、今のところですね、その「量」の限界というものをどれくらいのスパンで考えてらっしゃるのか、この 1~2年位は大丈夫とみていらっしゃるのか、相当先の問題と考えていらっしゃるのか、その辺りについての見解を頂きたいということと、限界のどの程度手前で、修正なり方向性の転換なりを考える必要があるのか、ぎりぎりまでやれば良いというお考えであるのか、その辺りのお考えをお聞かせ頂ければと思います。

§7Yukitoshi Funo

どれだけ現行の政策を推進できるかという事については、学者の方々や研究機関が試算や意見を出しておられるのは認識しているのですけれども、私自身は今行われているオペレーションの中で、毎回のオファーの度にどの程度の応札倍率になったのかを常にウォッチしています。このほかにも、金融機関との意見交換が行われていますので、そういう意味では、アプリオリにというか、予めこのくらいが限界だと定めるよりも、その時点時点で、色々なところ――例えば流動性の観点であるとか――を真摯にみながら進めていくことでよろしいのではないかと思っています。どこまでいけるかというのはそれらの結果として自ずから明らかになってくる、そういう意味で、先入観を持って限界論を考える必要はないのではないのかというのが私の考えです。

§8Question

限界論のお話、3次元の緩和に関して、手法についてはまだ限界はみえないというところだったと思うのですけれども、効果について、もう 3年以上大規模金融緩和を続けているものの、2%の「物価安定の目標」が非常に遠いという中で、金融緩和の効果に限界があるのではないかという見方に対してはどのようにお考えかということと、マイナス金利を含めて金融緩和の副作用について、金融機関から非常に厳しい意見が出たり、年金の運用も厳しくなってきているという問題がありますけれども、こうした副作用についてのお考えと、2 点お願いします。

§9Yukitoshi Funo

2%の「物価安定の目標」を掲げて、それを実現すべく政策展開していますが、その実現に向けては、日本銀行の金融政策だけではなく、財政ファクター、民間企業の戦略、消費者心理等、ありとあらゆる要因が影響しています。原油価格を持ち出すまでもなく、要因は多岐にわたる中で、2%に今日現在達していないから、そこから単純に金融緩和は効果が無いという結論は導き出せないと思います。振り返って、効果があったのかどうかという点についてですが、1月のマイナス金利導入時には、リスクの顕現化を未然に防止すること、そして 7月会合でも、特に英国のEU離脱問題が背景となってコンフィデンスが失われ、経済の好循環の停止ないし逆回転に繋がることを防止すること、こうした観点から政策を打ったわけですが、そこに限定してみますと、私はそれなりの効果が出ていると思っています。今日現在においても、経済の好循環が、ゆっくりとではあっても続いていることに対して、私は自信を持って、金融政策がそれなりの貢献をしてきたとみています。副作用というのは、どのような政策にも当然あるもので、実はあまり言われていないことですが、成長戦略にも副作用がみられます。

§10Yukitoshi Funo

具体的には、成長戦略は構造変革ですから、会社の中で構造変革が起きれば社員の中には職場が変わらざるをえない人がでてくるかもしれないし、仮に別の会社に移るということになると、転職のための一時的な失業が生じます。経済を前進させる政策について、メリットと副作用の両方を睨みながら取り組んでいく必要があるという整理の仕方を私はしています。それに基づいて金融政策をみると、副作用よりプラス効果の方が大きいと私は評価しています。

§11Question

まず、今日の懇談会の中でお聞きになった意見とか要望の点について、改めてもう少しお聞かせください。特にマイナス金利に関して、今日は地元の銀行業界等からの出席者もおられたと思いますので、具体的にどういった意見、要望などがあったのか、お聞かせ下さい。さらに、委員は、今回そういった意見を、来月の総括的な検証にどう反映させていくのか、ご意見をお聞かせ下さい。

§12Yukitoshi Funo

お聞きのポイントは、いわゆる金融機関の収益力への影響に関する事項と思われます。収益力については、利ざやの縮小を受けて大変ですという意見を頂きましたが、深刻さの度合いについては、金融機関がそれぞれご努力しておられますから、それによりマイナスインパクトが相応に吸収されている面があるので、そこについては非常に感謝しています。さはさりながら、収益が悪化する状態が長く続けば、やはり問題が起こり得るのではないかとの示唆も頂きましたので、あまり私としても先入観を持たずに、金融仲介機能が毀損するような状態は、中央銀行として望むところではないので、そこについては、きっちりとウォッチしていくということと、私は考えています。

§13Question

今の流れのところで、中央銀行としても、金融仲介機能が果たせなくなることについて危惧するところがあったのではないかと思うのですが、一方で、今日の挨拶でも述べられているとおり、「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元の緩和手段を全て動員して、確りと金融緩和を推進していきたいということを述べておられます。今回聞かれた声を、来月の検証の中で、どのように反映させていきたいと考えていらっしゃいますか。

§14Yukitoshi Funo

来月の検証では、何をやるのかということについて申し上げますと、3年前に、2%の「物価安定の目標」を 2年以内に実現するという旗印を掲げて出発したわけですが、今現在 3年経って目標を実現できていないので、そこについて、どういうファクターがどういう形で作用したのかを洗い出すということです。事業経営に携わった者の観点から言いますと、物価の動向に影響を与えるファクターには、アンコントローラブル・ファクターとコントローラブル・ファクターがあります。アンコントローラブル・ファクターの代表的なものは原油価格でして、これを日本銀行は上下に動かすことはできない。金利をはじめとする 3 つの次元は、コントローラブル・ファクターです。物価を取り巻く要因をコントローラブル・ファクターとアンコントローラブル・ファクターに分け、その中で日本銀行のツールでこれまで行ってきたことの効果とかその度合いとか、そういったものを虚心坦懐に分析し検証する、過去に学んで将来に資する、ということに尽きると思います。

§15Yukitoshi Funo

その際に、一言申し上げておきますと、方法論として、2%の「物価安定の目標」を取り下げたほうが良いのではないかというご意見をお持ちの方もいらっしゃるというのは認識していますが、私はむしろ、過去を振り返って、将来に向けて 2%の「物価安定の目標」を達成すべく、どのような政策が最も効果的かといった観点で検証していく方向であろうと思っています。

§16Question

本日の挨拶要旨の中で、「企業収益から雇用者所得への波及は維持されており、賃金の上昇を伴いながら、物価上昇率が緩やかに高まっていくというメカニズムは引き続き作用している」とおっしゃっていますが、ちょうど今おっしゃっていた日銀がコントロールできない要因として賃金が挙げられます。以前は、インフレ期待に影響を与えるということが言われていましたが、結局、日本のインフレ期待は実際の物価の影響を受けており、実際の物価が弱いと期待のところもなかなか上がってこない状況です。そうした中で、2%の「物価安定の目標」を諦めるということではなく柔軟化することに関して、委員はどのように思われているのか。また、先ほどおっしゃっていた、日銀としてコントロールできない要因が例えば賃金等いろいろみられる中で、柔軟に2%を目指す姿勢について現状どう思っているかお伺いします。

§17Yukitoshi Funo

私はその柔軟化の中身が、どういうことになるのかということについて、ご指摘のような観点も含めて検証すべきであるというご意見を否定するものではありません。ただ、「物価安定の目標」を 2%の代わりに 3%にするとか、2%の代わりに 1%にするといった議論はないだろうなというように思っています。

§18Question

金融緩和手段でお伺いします。昨日(8/30日)、浜田宏一内閣官房参与が通信社のインタビューにおいて、円高の回避という面も含めて、日銀の追加緩和の手段として外債購入も選択肢というように発言されました。これについて、まず外債購入というのは、通貨政策にも関係することと思うのですけれども、これを日銀独自の判断で決めることができるとお考えなのかということと、それを踏まえて、追加緩和手段として外債購入の是非というものについて、委員のお考えを教えてください。

§19Yukitoshi Funo

為替介入というのは、財務大臣の専管事項です。私は外債は日銀が金融会合で決定すれば、購入できると思います。ただ、それは、為替を動かすための政策というたてつけになっていないので、私は、現在の政府と日銀の制度的な枠組みを考えると、為替介入をできなかったら外債を買うというのは、理論としては考えられるとは思いますけれど、実際に政策として遂行できるかということについては、難しいのではないかと思っています。日銀は、あくまでも物価安定のために政策を行っているのであって、為替とか株式市場の水準を動かすために政策を行っているのでは決してないということです。

§20Question

マイナス金利政策の導入後も据え置かれたままとなっている、短期プライムレートの水準について、中小企業を中心に金利低下の恩恵が届きにくいという指摘がある一方で、銀行側からすると簡単には引き下げられないという声も聞きますけれども、ご認識をお伺いします。

§21Yukitoshi Funo

私は、日本銀行の当座預金に対する付利の政策を踏まえて、その下で、それぞれの機関において、制度上のガバナンスの構造を踏まえて、適切なプロセスを経て、レート水準がどのようになろうとも、ひとたび日本銀行としてやるべきことをやった以上、そこにどうこうという考え方は私自身は持っていません。ただ、短プラの話がでましたけれど、例えば住宅ローン金利一つとっても、いろいろな形で民間金融機関が設定しておられるので、それについては、それぞれの関係される方々が適切にやって頂いているのではないかと思っています。以上