鈴木審議委員記者会見(2019年8月29日)要旨
全文
§1Question
まず、先程の金融経済懇談会ではどういった意見交換がなされたのでしょうか。併せて、その意見交換の中で熊本経済を改めてどのように感じられたか。この二点をお尋ねしたいと思います。
§2Hitoshi Suzuki
まず、記者会見に皆さん集まって頂きまして有難うございます。本日の金融経済懇談会には、熊本県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題について、お話や日本銀行の金融政策運営に関する貴重なご意見を頂きまして、大変有意義な意見交換ができました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。懇談会の場では、多岐にわたるお話を伺いましたので、全てをご紹介することはできないわけですけれども、私なりに席上で伺ったことを整理して、印象・感想を申し上げたいと思います。第一に、熊本地震からの復旧・復興が着実に進展しているという点です。私も一昨日熊本に入りまして、昨日は被災の場所等を色々と拝見し、阿蘇・上益城地域の復旧・復興が今なお続いていることを私も確認してきたわけですが、県全体としてみれば、官民双方の懸命の取組みや緊密な協力のもと、地震からの復旧が進んでいるということを伺いました。また、当地では、中心市街地での大型複合施設の建設計画、あるいは熊本駅を中心とした再開発が進められているほか、「創造的復興」として、八代港の整備や阿蘇くまもと空港の運営民営化事業が進められているなど、陸・海・空それぞれの玄関口の整備が行われていることも伺いました。私も一部を除いて拝見してきました。
§3Hitoshi Suzuki
第二に、当地の景気については、特に製造業において、米中貿易摩擦の影響が大きなリスク要因となっており、今後の生産活動への影響を懸念するお話を伺いました。また、人口減少に伴う人手不足の深刻化、それから中小企業を巡る経営環境の厳しさについてのお話も伺いました。一方で、秋以降に開催が予定されていますラグビーワールドカップ 2019 や女子ハンドボール世界選手権大会等を通じて、外国人観光客の更なる増加を期待するお話も伺いました。第三に、金融環境面については、低金利環境の長期化に伴って、厳しい経営環境が続いているというお話を伺いました。こうした中、震災から3年余りが経過し、企業の事業の復旧をサポートする段階から、生産性の引き上げに向けた取組みをサポートする段階に局面が変わってきており、そのために様々な取組みを行っているというお話も伺いました。私どもとしましては、こうしたお話も踏まえつつ、熊本県の金融経済情勢について、今後も熊本支店を通じて、極めてきめ細かいモニタリングを続け、中央銀行の立場から経済の持続的成長の実現や金融システムの安定性の確保を図りながら、熊本県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくようサポートしてまいりたいと思っています。
§4Hitoshi Suzuki
加えまして、昨日は複数の企業を訪問させて頂きまして、企業経営者と懇談もさせて頂いたのですが、複数の企業の訪問に際しましては、様々な困難がある中で、非常にチャレンジをされて、実績を上げ、更にまたこれから大きく拡大をされていくということが、非常にみえているような、お話を伺っていて非常に元気づけられる、このような動きが日本経済全体にわたっていくと良いのではないか、そういった印象も頂いたということであります。熊本県の景気の現状についても色々と伺いまして、基調としては緩やかに拡大しているものの改善の動きには一服感がみられている、というお話や、最近の米中の貿易摩擦の影響もビビットに出てきているというようなお話がございました。県内の景気は熊本地震を受けて落ち込んだものの、早い段階で底入れをし、震災から半年後には持ち直しに転じたわけでありますが、最近では、復旧需要の減少や海外経済の減速もあり、一服感がみられていますが、基調としては緩やかな拡大を続けています。先行きについては当面改善のテンポは鈍化した状況が続くと予想されるものの、基調としては緩やかな拡大が続くと考えております。そのうえで、先行きの留意点としましては、海外経済の動向、米中の貿易摩擦の影響、それから 10月の消費税率引き上げの影響などについて注視をしていく必要があると認識しているところです。
§5Question
今日も 10年債の金利が-0.285 を一時つけまして、日銀が政策のもと許容している倍程度というレンジの下限を下回っているのかどうかという問題が市場でも意識されていますが、鈴木委員からご覧になって、今の水準は下限を下回っている、何らかの対応が必要とお考えなのか、それとも柔軟に運営するという観点から、さほど問題視する必要はないのか、その点、ご意見を伺いたいというのが一点目です。二点目は、講演全体を読むと、随分副作用について、やっぱり意識されているというふうに私には思えたのですけれども、それでも海外経済を中心とするリスクが顕在化した場合は、物価にも相応の影響が及ぶと。つまりは、追加緩和の可能性も今後出てきた場合、この副作用とのバランスをどう取ったら良いのか、何らかの緩和をする場合は、そういった副作用を軽減化するための措置と組み合わせて緩和するべきなのか、その辺りについてお考えをお願いします。
§6Hitoshi Suzuki
日本銀行は、金融市場調節方針において、長期金利の水準は、経済・物価情勢に応じて、ゼロ%程度から上下にある程度変動し得るとしているわけであり、また、その変動幅については、昨年7月末の記者会見で総裁から説明がありましたように、概ね±0.1%の倍程度ということを念頭に置いています。このように、金利のある程度の変動を許容しているのは、金利形成の柔軟性を高めることを通じて、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減し、現在の政策枠組みの持続性を強化することを狙いとするものです。この点を踏まえますと、金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はないと、これは先月の総裁の記者会見でもお話があったと思います。ただし、今おっしゃられたように、-0.285%ということで、±0.1%の倍程度ということよりも、更に下がっているというような範疇にあるとは思います。ただ、この背景として考えられることとしますと、例えば 10年物国債の購入を行う人は、まず原則的には、それを買って満期まで保有し、確定利付債券、フィックスト・インカムということで、その固定した利回りを利益として追求しようという人でありますが、そうした人は最初からマイナスが確定しているものを買うという経済合理性はないことになります。
§7Hitoshi Suzuki
もう一つの投資家というのが、更に金利が下がり価格が上昇する、そのために今買って将来売れば利益が得られるかもしれないということで購入するという投資家、トレーディング等ということになります。それから第三というのは、裁定取引ということで投資をします。現状は、ご案内の通り、昨年の秋に3.23%程度までいった米国の10年債利回りが1.5%程度になっているほか、ドイツの国債も以前は 0.8%程度あったものが-0.7%程度という中において、そうした通貨を保有している投資家が為替市場を使って裁定取引という格好で投資を行うと、マイナス金利の 10年物国債でも利益が出でくるということで、そうしたものが流れているということです。ただし、先程申し上げましたように、本源的な投資家というものは、満期まで保有してそれを投資するという方ですので、これ以上金利が下がっていくということの見通しがなくなった場合、あるいは裁定取引の妙味がなくなった場合に、そうした取引がなくなる、ちょっと端折りましたけれども、欧米発のそうした金利低下と、日本においても同じようなことが起こるということと、裁定取引のチャンス、これによって金利が低下していると認識をしているのですが、そうしたことの見通しが変化した場合にはもう少し正常なものに戻る可能性があるということです。
§8Hitoshi Suzuki
そうした意味において、過度に厳格にみることなく、場合によっては、今、少し行き過ぎているのかもしれないということではないかと考えています。それから、副作用と追加緩和ということで、日本銀行は、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるということを前回の公表文に出しています。それから、総裁もいつも申していますように、手段には四つありまして、一つ目が短期政策金利の引き下げ、二つ目に長期金利操作目標の引き下げ、三つ目に資産買入れの拡大、四つ目にマネタリーベースの拡大ペースの加速、こういった様々な対応があり、かつこれらの組み合わせや応用といったことも考えられるということです。いずれにしましても、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを前提に、実質金利、資産価格のプレミアムを通じて、政策効果が発揮されるように考えていくと、そうした際に、今ご指摘もありましたように、私の挨拶要旨の中にもありますが、金融政策の効果がもたらされる時間軸だけでなく、その副作用が累積していく時間軸も踏まえつつ、金融システムの不安定化を未然に防ぐ観点からも、政策の効果と副作用をこれまで以上に慎重に比較衡量することが必要です。
§9Hitoshi Suzuki
公表文に発表しておりますように、モメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には具体的な検討をするのですが、現時点においては追加緩和の必要はないと私は考えており、実際に必要があると考える場合には、現時点で具体的な議論がされているわけではありませんので、どのような複雑な組み合わせがあるかどうか分かりませんが、やはりそれが副作用を上回る効果があるという前提でやるべきであると考えているところです。
§10Question
今の講演録でもあったように、効果に対して副作用をかなり列挙されておられて、預金金利がマイナスになってしまう可能性ということにも言及されていたと思うのですが、現時点で言うと、マイナス金利を深掘るということに関しては、これは副作用を上回る効果というのは現時点ではないと委員はお考えだということでよろしいのでしょうか。
§11Hitoshi Suzuki
ご質問は、仮に将来マイナス金利の深掘りを行う場合に、それは効果が副作用を上回ると考えているか、ということでしょうか。
§12Question
そういうことです。
§13Hitoshi Suzuki
まず、先々の金融政策について、仮定の話として現時点でどうかということは難しいということです。そのうえで、マイナス金利の深掘りというのは、今申し上げた四つの選択肢のうちの一つにあるわけで、それを行う場合、副作用を上回る効果があるかどうか、これは非常に慎重に検討する必要があるだろうと思いますし、そういうものがある場合には、それだけをもってその効果が副作用を上回るという形になるのかどうかというのは疑問があるのではないかと考えております。
§14Question
「リバーサル・レート」についても言及されていますが、もう既に今の-0.1 というのは、だいぶ近いところまで来ているというふうにお考えなのか、まだそこまでは距離があるけれども、追加的な緩和をするとそこにぶち当たってしまうという可能性、懸念があるというふうにお考えなのか、教えてください。
§15Hitoshi Suzuki
ご案内の通り、いわゆる金融機関の貸出という観点で申しますと、このところ一時期よりは少し減速傾向はあるかもしれませんが、大体 2%台程度の貸出の伸びがあり、これは大手金融機関や地域金融機関によって比率が変化しておりますが、いずれにしましても、貸出は伸びています。それから、よく総裁始め、皆申し上げておりますが、現時点において、資本・流動性において、マクロとしては大きな問題はないということです。こうした点において、現時点において「リバーサル・レート」に達しているということではないということになるかと思います。そのうえで、例えば地域金融機関の公表データを基に、いわゆる、平均の貸出レート、そこから平均の調達のコスト、それに金融機関の経費を貸出規模で割って比率にする、こういうものを控除した数字を計算致しますと、新規実行の貸出レートの利鞘がどんどん減少していて、足許では相当程度ゼロに近付いているということをみることが可能かと思います。それに対して、今後、金融緩和が金利を低下させて、それが金融機関が使用する顧客との取引に基づく貸出のベースレートに連動して低下していく、そうした場合には、同じスプレッドを適用すると逆鞘になる可能性が出てきます。逆鞘になる可能性が出てくる場合には、これは顧客との交渉の中で、スプレッドを上げていくと金利が下がらないということが起き得ます。
§16Hitoshi Suzuki
そうしますと、「少し金利が下がらないとか上がってしまうのであれば、借りない」という形で貸出の伸びが減速するというようなことがあれば、それは「リバーサル・レート」の兆候の一つになるということだろうと考えています。従いまして、将来そういうことに達する可能性があり、それがいつかというのは非常に推測することは難しいわけですが、それほど遠い将来ではない可能性もあるということだと思っています。
§17Question
せっかくですのでローカルの質問をさせて頂きたいと思うのですけれども、先程米中の関係については、輸出等の話がありましたけれども、ここ熊本、特に九州全体そうかと思いますけれども、日韓関係、かなり今、目が離せない情勢が続いています。この日韓関係がローカルに与える影響、そして今後の見通し、その辺をちょっと教えて頂ければと思います。
§18Hitoshi Suzuki
現状日韓関係は、私も報道等で拝見している通りで、日韓関係が今こういう難しい状況になっているということが、熊本県経済にどのような影響を与えているかということについては、若干支店長にも補足してもらうかもしれませんが、私自身伺っていますのは、熊本県に限らず、今までインバウンドで韓国からの旅行者の方が多く来ていたところが、目に見えて減少しているということです。従って、こうしたことが長引けば、その影響が具体的に無視できない数字であらわれてくる可能性はあるだろうとは思っています。(中村支店長)委員のお話にも今ありました通り、特に九州は韓国からの旅行客の方が多い地域ですので、実際、足許、例えば飛行機の便も含めて影響が出てきている部分があります。それが実体経済面にどういう影響をこれから生じさせていくかということについては、私どもとしても今後注意してよく確認していきたいと思っているところです。
§19Question
今日の意見交換の中で、熊本県経済の実態についてのお話はあったかと思うのですけれど、日本銀行の政策に対する熊本県内の企業・経済界の方からご意見とかご要望とか、こういったものはなかったのでしょうか。
§20Hitoshi Suzuki
本日、金融経済懇談会でそれぞれの方々がお話をされた後に自由な懇談が行われました。全て列挙することは致しませんが、例えば、私どもは 2%の「物価安定の目標」を掲げているわけですが、今熊本県の中では比較的、大手企業より中小・中堅企業が多い状況にあって、2%の「物価安定の目標」ということに対して、それを上回るような賃金の上昇がなければ従業員の方にとってはしんどい状況があるということです。その一方で、人手不足がある中において、新規で採用される方の賃金は上げていかないといけない、そのように非常に厳しい状況の中において、ストレートな言い方をすると、2%の「物価安定の目標」をあまり厳格におっしゃらないで頂きたい、といったようなお話が一つございました。それから金融システムということで、私の話にもかかりますけれども、経済団体のトップの方からも、特に熊本は震災の影響がまだ残っている状況、かつ、震災に関係して、半年後くらいにいったん盛り上がりを示しましたけれども、その後また、色々なマクロの状況から厳しい状況になっているわけです。そうした中において、やはりまだビジネスのうえではリスクがあるものの将来性があるような企業にしっかりとリスクマネーを供給してもらいたい中、地域金融機関の収益がどんどん減少することで体力が低下するようなことにならないようにして頂きたいと、そういったような話がございました。
§21Hitoshi Suzuki
(中村支店長)日本銀行の政策面に対し、直接言及されるコメントというのはなかったと認識しております。今、委員のお話の中で、震災後の経済の状況の話が少しありましたが、若干補足させて頂くと、皆さんよくご承知の通り、震災後半年くらいは、ストックが破損されたということで経済が大きく落ち込んだのですが、その後しっかり持ち直してきたということなのだと思います。ただ、足許の状況というのは、震災から 3年余りが経過する中で、そうした復旧・復興の需要というのは、だんだんとこれから減少していくことはみえているので、そういう意味では、私どもの景気判断もそれなども踏まえて、また海外経済の影響なども踏まえて、一服感があると評価をさせて頂いていますが、地元の経済界の方々も、これから先そういう状況の中で、どのように新しい需要を掘り起こしていくかを見つけて、生産性をどう高めていくかという問題意識を持っておられて、私どもも共有したところでございます。
§22Question
先程、マイナス金利の深掘りの話がちょっとありましたけれど、関連するような形で、先日サンフランシスコ連銀がエコノミック・レターの中で、日銀のマイナス金利の導入について触れて、インフレ期待を押し下げたというような、若干マイナス金利政策の効果に疑問を呈するような内容になっていたと思うのですが、これについての考え方、見解について教えて頂けないでしょうか。
§23Hitoshi Suzuki
そのペーパーが出ているということについては報道で認識しておりますが、原文はまだ読んでおりませんので、その内容に対しての具体的なコメントは基本的には差し控えたいと思います。一点認識しておりますところでは、よくBEIと呼ばれる Breakeven inflation rate というのがございますが、これを基にして分析をされているということのようなのですが、わが国においては物価連動国債というものは必ずしも流動性が十分高くない、あるいは、投資家層が限られているということで、それのみをもって中長期の予想インフレ率の推定を行う場合には十分慎重にその数字を扱う必要があると認識しております。仮にその分析がその点を使ってマイナス金利政策の後に中長期予想インフレ率が低下したというような結論に導いているとすると、やや幅を持ってよくみる必要があるのではないかと考えております。
§24Question
副作用の三点目として挙げられている、金融機関が預金に手数料を賦課し、預金金利を実質マイナス化させることも考えられますというふうに指摘されていらっしゃいますけれど、これに達する蓋然性というのは、今現在どの程度高まっていて、今後どうなっていくとみていらっしゃるのでしょうか。
§25Hitoshi Suzuki
現在、民間金融機関の経営のご判断や、そういったことについての検討を、具体的に伺ったり調査しているということではありませんので、あくまで可能性としてということを申し上げたということです。ご案内のように、形態は違いますけれども、欧米の国においては、預金の手数料というものがある場合があると思います。例えば皆様におかれましても、クレジットカードでゴールドカードであれば年会費がかかるということがありますが、一定の残高未満、あるいは上回る場合に、色々な形で手数料がかかっているものがあることと思います。加えて、例えば欧州においては、法人の預金には、手数料ではなく、具体的にマイナスの金利が適用されている、あるいは最近の報道でもありますけれど、一部の欧州の国では、個人預金にもマイナスの金利が適用されている、そういった流れにあるわけです。そのような欧米諸国の動きの中においては、本邦の金融機関もそういったことを検討するということはありますし、確か一週間くらい前の新聞報道の中にも、一部の金融機関が休眠口座に対して手数料を賦課するという話があったと思いますが、その辺が更に拡大する可能性ということを申し上げています。
§26Question
先程「リバーサル・レート」のところで、お客さんとの交渉の中で金利逆鞘にならない程度のところで、金融機関が金利を提示し、お客さんが借りないということになれば、それは証拠の一つということでしたけれど、このほか、金利を深掘りするに当たって兆候的なものがあるとすると、どういったことが考えられるでしょうか。それから、地域金融機関は、マイナス金利政策で収益力が相当落ちてきています。特に、余資運用、有価証券運用のところでマイナス金利の影響を相当受けていると思いますが、こういったものをどういうふうに今みていらっしゃいますでしょうか。民間金融機関出身ということで、一言ご意見をお願いします。
§27Hitoshi Suzuki
マイナス金利に関するこれから先の影響という話であって、あくまで仮定の話ということですが、金利が大きく低下するというような場合に、例えば貸出金利が、欧州ではマイナス金利というのもあるようですけれども、マイナスになるという場合に、法的な枠組みや会計といったことの対応がないとなかなか現実的には難しくなるといったことがありますので、そうした実務的な問題というのもあり得ると思っています。有価証券運用等での問題ですが、バブル崩壊以降、正確にいつからということは難しいですが、金融機関全体の中で、貸出を預金が上回るという預金超過の状況というのがスタートしていて、そうした中において、従来は安全性の高い国債、それに加えて一部社債、それから海外の有価証券、そうしたことでリターンを上げるということが補完的に行われていて、しかも、徐々に預金超過が大きくなると、それが非常に大きな業務の柱ということになっていたわけです。現状はそれが非常に厳しい状況になっており、金融機関にとっての収益の厳しさの源泉がそうしたところにあるということで、挨拶要旨にもありますように、ここ何年かは、金利が低下傾向にある中において、有価証券で含み益が出たものの益出し、あるいは、経済が良くなっていったという中において、与信費用の戻りが発生しているという、そうした二つの面が決算の最終利益のところの底支え要因になっていたわけです。
§28Hitoshi Suzuki
しかし、そのうえでの有価証券の含み益というのが相当程度なくなっている可能性がある、あるいは、最近の決算では、与信費用の計上サイドがやや増えてきている、ということがありますので、そうしたことが更に悪化すると、地域金融機関を始めとした金融機関の経営が金融システムに悪影響を与えていく可能性があるということだと思います。以上