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日本銀行記者会見2019年9月4日片岡剛士, 審議委員

片岡審議委員記者会見(2019年9月4日)要旨

全文

§1Question

本日、金融経済懇談会が開かれまして、地元の行政・経済関係者の方とどのような議論をされたのかという中身について教えてください。また、こちら北海道の景気認識についてお聞かせ頂きたいのですが、いま日韓関係の悪化で韓国人客が減少していたり、10月の消費増税で消費の冷え込みというところが懸念されているのですけれども、その辺りも踏まえて、北海道の景気についてお願いします。

§2Goushi Kataoka

本日の懇談会では、当地を代表する行政や経済・金融界の方々から、道南地域の金融経済情勢などについて貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策につきましても、有意義な意見交換ができたのではないかと感じています。改めて、ご多忙の中、本日ご出席頂きました皆様には感謝を申し上げたいと思います。懇談会の議論につきまして、私が印象に残った点を中心にお話をさせて頂ければと思います。まず、観光業については、クルーズ船の来航が増加するなど、インバウンド観光が盛り上がっているほか、市内に多くのホテルが新設され、観光施設への入込みも総じて好調だというお話を伺いました。建設業については、北海道新幹線の札幌延伸工事もあり、公共工事が持ち直しているものの、引き続き地域経済活性化のためにインフラ整備が必要だというお話を伺いました。水産加工業については、ごく足許では明るい兆しもあるようですが、これまでのスルメイカやホタテの不漁に伴って原材料価格が上昇するなど、総じてみると厳しい状況が続いているとのご意見を頂きました。こうしたもとで、養殖や稚魚の放流など海を積極的・能動的に活用する取組みを増やしていきたいとの前向きなお話も伺っています。金融界からは、低金利環境のもとで金融機関の収益にはマイナスの圧力がかかっており、金融政策運営に当たっては金融機関経営への影響もしっかり考慮してほしいといったご意見を伺いました。

§3Goushi Kataoka

他方で、こうした厳しい環境の中でも、金融機関からは地元企業の課題解決に向けて提案力の強化に取り組んでいるというお話も伺いました。このほか、多くの方々から、当地の人手不足を指摘する声が聞かれました。少子高齢化と人口の域外流出が続く中で、中長期的なビジネスの継続への不安を感じている先も少なくないということでした。一方で、AIやICTを活用して労働生産性の向上を図る試みもあると伺いまして、大変心強く感じた次第であります。日本銀行としましては、今後とも、当地の金融経済情勢を丹念に分析しながら、中央銀行の立場から地域経済の活性化に向けた取組みに貢献していきたいと考えています。道南経済の現状については、日本銀行では、水準としては弱めであるものの、方向としては持ち直しつつあると判断しています。観光関連では、北海道新幹線の開業当初の盛り上がりこそ一巡しましたが、北海道を周遊するインバウンド客が当地を訪問することが増加してきた中、誘致活動や埠頭の整備を進めてきたことからクルーズ船の来航も増加し、インバウンド需要が堅調に伸びています。また、建設関連でも、足許では公共投資が持ち直している中、北海道新幹線の札幌延伸関連工事や函館市内でのホテル建設工事が、受注をある程度下支えしていると認識しています。

§4Goushi Kataoka

一方、水産加工関連では、スルメイカやホタテ等の不漁に伴って原材料価格が上昇する中、全体としては厳しい状況が続いています。もっとも、最近、一部にはブランド力のある商品を中心に販売価格の引き上げに成功しつつあるというお話も聞いています。韓国の影響についてですが、当地の場合は韓国からの観光客のシェアはあまり大きくないということです。もちろん、今後の展開は非常に心配な側面もありますが、今のところあまり影響はないという話を聞いています。

§5Question

挨拶要旨の 8 ページの 5 番の脚注ですが、「フラット化した現在のイールドカーブを念頭に置くと、短期政策金利のマイナス幅を拡大させることで、イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させる」ことができるということですけれども、短期金利のマイナス幅を拡大させることでイールドが立つので、結果的に緩和的になるということなのか、緩和的なイールドカーブの形状というところを、もう少し説明頂きたいです。また、7月の会合の際に、片岡委員は、「短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましい」という理由で、現状維持に反対されたと思うのですが、現下の経済・物価情勢を考えると、正式な短期金利の目標の引き下げを提案するということを今月にも検討すべきなのか、その辺りのご意見をお願いします。

§6Goushi Kataoka

前回の政策決定会合では、私自身は、その時点のイールドカーブの形状を前提とすると短期金利の引き下げが適当であると主張しました。これは、短期金利の引き下げ自体が経済・物価に対して最も効果的であると個人的に判断したためです。「物価安定の目標」の達成・維持は道半ばではありますけれども、その過程で生じている好循環の勢いを途切れさせないように、「物価安定の目標」を早期に達成・実現することが非常に重要なことだと考えていますので、引き続き政策委員の1 人として最大限の努力をしていきたいと考えています。議案を提出しないのかといった点については、前回の金融政策決定会合では、先程申し上げたことは意見として申し上げ、議案を提出する必要はないと考えました。ただ、先行きの政策運営にあたっては、毎回の金融政策決定会合までの経済・物価・金融情勢を十分に検討したうえで、適切に判断していきたいと思っています。この際、副作用やリスクについても様々な観点から検討していきますし、賛否や議案提出の有無などについては、そうした検討を進める中で判断していくことになると思います。

§7Question

イールドカーブの形状ですけれども、どういう形になると緩和的なのでしょうか。

§8Goushi Kataoka

どういう形になれば良いのかということについては、政策決定の鍵になるところですので、この場で申し上げるのは適当ではないと考えます。ただ、一般論として申し上げれば、イールドカーブの形状については、水準・傾き・たわみの 3 点からみて、どういう形状が緩和的なのか、2016年9月の「総括検証」でも分析されていると思います。その辺りを基準にしながら、どういう形状が良いのかをみていくことになるのではないかと思っています。

§9Question

世界経済の不確実性という観点でお伺いしたいのですが、今まさに進んでおりますブレグジットを巡る混乱について、合意なき離脱ですとか議会の解散総選挙といった可能性も出てきていまして、昨日・今日でマーケットも為替や国債で反応が出ています。この一連のブレグジットを巡る情勢が経済に与える影響をどう認識されているのでしょうか。また、ブレグジットとあわせてなのですが、挨拶要旨でも指摘されていますけども、8月以降、米中貿易摩擦も激化していて、これに加えて香港や日韓の問題も出てきています。物価の安定目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まっているのではないかと思うのですけれども、これについて現状どう認識していらっしゃるでしょうか。

§10Goushi Kataoka

英国のEU離脱交渉につきましては、英国とEUの双方が新たにどのような経済関係を築いていくかという点が、当事国・地域のみならず日本を含む世界経済にとっても非常に重要であると考えています。英国のEU離脱交渉の展開や、それが世界経済および国際金融市場に及ぼす影響につきましては、不確実性が高い状況が続いています。日本銀行としては、海外の中央銀行を含め、国内外の関係者とも連携しながら英国のEU離脱交渉の展開やその影響について引き続き注視をしていきたいと思っています。米中貿易摩擦や昨今拡がっている現象についてどのように考えているかというご質問を頂きました。米中貿易交渉につきましては、帰趨がなかなか読めないところではありますが、現状米中双方で関税率が引き上げられるという状況になっていますので、こうした影響というのは一部顕在化しつつあると考えています。その後の展開次第では、更に悪化する可能性も当然あると思っています。こうした状況の中、世界経済の動向について私自身としては、挨拶要旨でも申し上げましたが、 IMFの世界経済見通しも下方修正が続いているような状況ですから、先々について当初ほど経済成長が高まってくるような環境にはないという見方が拡がっているのではないかと理解しています。それから、物価のモメンタムが損なわれる惧れが高まった場合というご質問についてです。

§11Goushi Kataoka

物価のモメンタムについては、私自身は、基本的にまず 2 つの指標を基に判断する必要があると思っています。1 つはGDPギャップ・需給ギャップの動向で、もう 1 つは予想インフレ率の状況です。需給ギャップは需要超過の状況が続いていますが、一頃とは違って需給ギャップの拡大基調が、横ばいと言いますか、プラスではあるがプラス幅を拡大させるような状況ではなくなってきているのではないか、そういう惧れが強まっているのではないかとみています。予想インフレ率については、横ばいの形で弱めの動きが続いていますので、こうしたところをみると、私は、物価のモメンタムについて、政策委員の中では非常にネガティブにみている方かと思います。要は、モメンタムが 2%に向けて高まっているとはあまり考えていないということです。

§12Question

政策対応についてですけれども、挨拶要旨でも今日触れていらっしゃいますが、追加緩和が必要だということについて、改めてどうしてなのかをお伺いしたいのと、7月以降、特に 8月の国際情勢を踏まえて、7月の会合時点と現在で追加緩和についてのお考えについて変化はありますでしょうか。

§13Goushi Kataoka

私自身、就任して 2年超経ちますが、一貫して追加緩和を主張し続けてきました。基本的には現行の政策で当初は 2年程度という話がありましたが、2%の「物価安定の目標」に向けて物価が高まっているとなかなか判断しづらいことがまず起点にありました。そのような状況を前提としますと、日本銀行の対応としては、現行よりも更に追加的な金融緩和策をとっていくことが必要なのではないかという認識をもって、ずっと主張しているわけです。そうした意味では、別段、今回に限った話ではなく、2%に向けてできるだけ早期に政府との約束を果たすという観点において、なかなか現状の物価はそうはなってはいませんから、何かしないといけないという考え方は基本的に変わっていないということです。足許の経済動向については、2018年の後半以降でしょうか、やや世界経済が緩やかながらも製造業を中心に悪化の方向に向かっている状況の中で、リスク要因が高まりつつあるというのは事実であると思います。ですから、私個人としては、従来にも増して政策対応の必要性は出てきているのではないかと認識しています。一方で、世界各国の中央銀行は、――これは主要国だけではなくて、アジアの国々を含めた各国もそうですけれども、――金融緩和の方向に舵を切っており、一定の効果を世界経済にもたらし得ると考えています。

§14Goushi Kataoka

そうしたところも含めて、9月の金融政策決定会合でどのような判断をしていくか改めて考えていきたいと思っています。

§15Question

一貫して就任以来、追加緩和を主張されてきたということですが、今までの発言をみていくと、どちらかというと長期金利の低下であるとか、その誘導目標をより下げていくべきだといった方向で緩和を考えられていたところが、7月の金融政策決定会合で、短期の政策金利、マイナス金利の深掘りに手段として着眼されたのは、今までのところからするに、そういう観点を変えられたのは何か意味があるのでしょうか。また、マイナス金利の深掘りというのは、冒頭の道内の金融機関の話にもあった通り、当然、反対意見というか慎重論というのも根強いかと思うのですが、副作用といったところに関してどのようにお考えなのか、お聞かせ頂ければと思います。

§16Goushi Kataoka

マイナス金利について、どのようになぜ変えたのかというご趣旨かと思いますが、現状、金融政策の枠組みの中で日本銀行が行っているイールドカーブ・コントロールでは、その当時のイールドカーブの状況にあわせて、どういう形で形状を変化させれば緩和的になるのかという観点で長期金利を下げるべきなのか短期金利を下げるべきなのかといった判断をしています。ですから、私自身が7月の金融政策決定会合の際に主張を変えたというのは、7月の金融政策決定会合の時点に成立していたイールドカーブをみて、そのように判断したということです。副作用についてですが、基本的には金融政策運営について毎回の金融政策決定会合の中で、経済・物価の情勢を踏まえて適切に判断していくことになりますので、この場で、どういうことをするべきなのかといったことを予断をもって申し上げることはできないと考えています。ただ、仮にですが、新たに政策を緩和的なものにしていくということになるのであれば、もちろん、そのときに生じる様々な影響について、好影響も副作用も含めて、緻密に注意深く判断していくことが必要だと思います。そういった中で、問題があるのではないかということになれば、そのときの状況に応じて適切に判断していくことになると思っています。

§17Question

イールドカーブの形状をみながら判断されていくということだと思うのですけれども、足許でいいますと、例えば 10年の長期金利は過去最低の水準に近づいてきて、日銀の実際の買入れでも少しずつ買入れの金額を減らしたりもしているかと思うのですが、日銀としては以前総裁が仰っていた±0.1%の倍程度といった誘導の変動幅の下限にかなり接近してきている、そこの下限がみえてきていると認識されているのか。また、挨拶要旨の中で先制的に政策対応をしていく必要があるということだったのですが、繰り返しになってしまうかもしれませんが、例えば次回の金融政策決定会合等で何かしらの政策対応をしていくべきだというような意図をもってこうした発言されているのか、その点をよろしくお願いします。

§18Goushi Kataoka

長期金利にある程度の変動幅を許容しているのは、金利形成の柔軟性を高めることを通じて、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減して、政策枠組みの持続性を強化することを狙ったものですので、金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はないのではないかと思っています。日本銀行としては、こういった趣旨を踏まえて、その時々の市場の状況を勘案しながら適切に金融市場調節を行っていく方針であるということには変わりはないと私も認識しています。先制的な政策対応については、私自身、何か特段の思い入れをもって先制的と言っているわけでは決してなく、金融政策の要諦というのはフォワードルッキングな政策対応というのが基本ですので、この線に沿って政策運営をしていくべきではないかということを申し上げたということです。世界経済の状況をみていきますと、様々な意味でリスク要因が増していますし、そのことによる影響も一部では顕在化しつつある状況です。そうしたような状況というのは、日本経済に対して一部波及してきているところもあると私自身は認識していますが、そういった状況になってくると判断されれば、当然、遅行指標である物価に影響が及ぶのをみてから行動していては、結果的に経済が悪化したことを確認してから行動することになってしまいますので、そうではない形で先んじて行動を起こさないと難しいのではないかということです。

§19Goushi Kataoka

それから、フォワードルッキングな政策対応の重要性に関して言えば、金融政策というのは、政策を決定する際のラグ、時間的な遅れは比較的短いと思いますが、金融政策が実体経済に波及するラグは、他の政策と比べても長いということがよく言われています。この政策の波及ラグを前提とすると、悪くなったことを確認した後で行動していては、政策が後手後手に回ってしまいますので、金融政策運営上好ましいことではないというのが私の意見です。

§20Question

今現在、道南エリアでは、主要産業である水産加工業がかなり低迷を続けていて、厳しい状況が続いています。今年に入ってからも、4 件ほど水産加工業の倒産が相次いでいるというような厳しい状況になっている中で、またその一方で、観光業は盛り上がっているのですけれども、どうしても日韓関係とかもありまして、観光だと水物と言いますか、かなり世界情勢に影響される部分があると。この道南エリア、函館市も含めて人口減少がかなり、年間3,000 人というペースで減っていく中で、経済が盛り上がっていくために地元がどうしていくべきかというのを、お考えを少しお聞かせ願えたらと思います。

§21Goushi Kataoka

非常に難しい問題だと思いますし、函館市をはじめとする公共部門、企業部門、地域のボランティア的な取組みもそうかもしれませんが、色々な方がご努力されておられるのではないかと思います。人口減少は、函館、道南地域に限った話ではなく、各地に共通した点だと思いますが、一方で当地は、私がみる限りでは、他の地域と比較しても、豊富な水産資源や日本有数の観光資源に恵まれていますし、北海道新幹線、函館港、函館空港といった陸・海・空の3 つのインフラがコンパクトにまとまっていることが非常に大きな利点だと思います。こうした3 つのインフラがコンパクトにまとまっているということを活かしながら、交流人口の増加に取組み、域外からの需要を一層取り込んでいくことが重要ではないかと感じています。私どもとしても、函館支店を含めて、そうした取組みを最大限サポートさせて頂ければと感じています。

§22Question

最大限のサポートというところを、もう少し具体的に、例えばどういった支援ができるのかといったところについてお答え頂ければと思います。

§23Goushi Kataoka

今のご質問については支店長からお答えさせていただきます。(井上支店長)私ども函館支店としましては、道南経済の活性化に向けて様々な取組みを後押ししてまいりたいと思っています。具体的な姿の1つとしては、日本全国における地域経済活性化に向けた取組み、その中でも特にビジネスモデルという意味で当地と関連性があるエリアにおける例を紹介することなどを通じて、当地における活性化に向けた色々なアイデアを作り出していくうえでの 1 つの触媒機能を果たせればということを考えています。単一の、これだけをやれば良いというものでないのは確かですので、私ども自身も、地域経済のためにどういったことをすれば貢献できるのかを色々と考えてまいりたいと思っています。

§24Question

今日、工藤市長や振興局長ともお話しされたと思いますが、地元からどういった要望が出たのかということだけ、お願いします。

§25Goushi Kataoka

詳細は控えさせて頂きますが、色々な形で要望を頂いています。要望ということで言えば、やはり日本銀行の情報、先程、支店長が申し上げたような形で、他地域の事例を紹介したり、色々と相談に乗ってもらいたいといったお話を頂いたと認識しています。

§26Question

細かいところ、教えて頂けないかもしれないのですが、仮に現状の経済・物価・マーケットの状況が続くとすると、短期金利、マイナス金利をどの程度下げるべきとお考えになっているのかというのと、マイナス金利のみで十分だというようにお考えになっているのかという点をお願いします。

§27Goushi Kataoka

最初の質問についてはお答えしかねます。金利をどう設定するのが望ましいかについては、日本銀行の政策決定に関わることですから、主な意見や議事要旨といった公表資料をご覧頂くしかないと思います。二つ目の質問については、私自身、従来から、特定の政策手段のみでデフレから完全に脱却することができると申し上げているわけではありません。イールドカーブの緩和的な形状変更に加えて、フォワードガイダンスの修正、それから財政政策・金融政策を含めた政府との適切な連携といったものをやっていくことが特に重要です。物価を 2%に安定化させていく責務、目標を私どもが負っている以上、そうした政策も含めて行動していく必要があると思っています。

§28Question

物価についてのリスクについて、為替の逆風というのを挨拶要旨の中で仰っていますが、どの程度いま懸念されているのか教えてください。

§29Goushi Kataoka

為替相場については、長い目でみれば昨年の夏辺りから緩やかな円高方向になっています。これは、他の事情を一定とすれば、当然海外からわが国に物価下落の圧力がかかっているという状況です。特定の為替水準にコミットするというわけではありませんが、今目標を達成できていない状況ですと、やはり円高は、産業、特に製造業に悪影響を及ぼすところがあると思いますが、そうしたところを通じて、日本銀行の物価安定に対しても一定の障害になり得るのではないかと思います。

§30Question

消費税について、一般論でも結構なのですが、北海道経済に対してどのような影響を与えるのかというところで、もしお考えがあればお聞かせください。

§31Goushi Kataoka

来月の消費税率引き上げの影響については、前回の 2014年度の引き上げ時と比べると小幅にとどまる可能性が高いのではないかと考えています。この理由としては、まず税率の引き上げ幅が前回よりも小さいこと、それから、飲食料品を中心に軽減税率が適用されること、そして、政府の方で、幼児教育・保育の無償化や消費者へのポイント還元策、住宅ローン減税の拡充措置等があわせて実施される予定であることです。こうした要因もあって、判断が難しいところではありますが、現状駆け込み需要も限定的になっているのではないかと、そういう可能性もあるということが言えます。ただ、消費税率引き上げの影響自体は、その時々の消費者マインド、雇用・所得環境、物価、内外経済情勢等によって変わり得るものです。消費者マインドを反映する消費者態度指数は、足許悪化しています。2014年の消費増税の半年前、ちょうど 2013年の後半と比較しても現状の水準は悪化していますので、私自身、駆け込み需要があまり生じていないと考えられる理由の中に、そもそも足許の消費があまり強くない可能性も一定程度あります。ですので、消費者マインドの悪化には留意する必要があると思います。足許の消費について更に申し上げれば、日本銀行が公表している消費活動指数をみますと、タバコや衣料品を中心とした非耐久財消費が、前回増税以降低迷した状況から戻っていません。

§32Goushi Kataoka

こうした状況が続くもとでは、消費税率引き上げの個人消費への影響というのは、楽観視することはできないと考えています。それから、道南地域への影響度ということですが、こうした影響が全国的にもありますので、道南地域を含め、経済への影響は注意深くみていく必要があると考えています。そのうえで、道南経済の活性化に向けたポイントというところで申し上げますと、豊富な水産資源、有数の観光資源、そして陸・海・空の3 つのインフラがコンパクトにまとまっているといった強みを活かして、前向きに経済を運営していくという試みが必要になってくると感じた次第です。以上