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日本銀行記者会見2019年9月25日政井貴子, 審議委員

政井審議委員記者会見(2019年9月25日)要旨

全文

§1Question

本日の懇談会では、三重県の経済についてどのような意見を聞き取られて、どのように受け止められたのでしょうか。

§2Takako Masai

本日の懇談会では、当地の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状や直面する課題に関する貴重なお話を伺うとともに、日本銀行の金融政策運営に対する貴重なご意見も頂きました。大変有益かつ示唆に富む意見交換ができ、懇談会にご出席頂いた方々にはこの場をお借りして深く御礼を申し上げたいと思います。席上、色々なご意見を頂いたので、私なりに整理して、いくつかご紹介したいと思います。まず、当地の景気については、製造業と非製造業の双方で力強い成長を続けてきた、というお話を伺いました。2016年の伊勢・志摩サミット以降、直近にかけて当地の経済が一段と成長することができたのは、宿泊、飲食業や林業、水産業を含む幅広い業種で一丸となって地域活性化に努めてこられた成果だ、ということでした。全体として三重県をはじめとする東海3県の景気は「拡大している」という私どもの名古屋支店の判断を裏付けるようなお話だったかと思います。一方で、海外経済に関する先行きの不透明感が高まっている、との指摘が数多く聞かれました。こうしたもとで、中小企業の中には、先行きの受注が鈍化することを懸念して、設備投資を躊躇する先がみられる、とのことでした。

§3Takako Masai

また、当地は伊勢・志摩をはじめ、観光資源が豊富な地域でいらっしゃいますが、まだ、世間に知られていない、地元の良品の知名度を高め、更に多くの人に当地に足を運んでもらいたい、というお話も伺いました。金融界の皆様からは、低金利環境の長期化を背景に厳しい環境が続いている、という声を伺いました。そうした中でも、県内の地域金融機関が連携して事業継承のプラットフォームを提供するなど、様々な面から地元経済の活性化に取り組んでいるとのお話も伺っています。私からは、エネルギッシュな知事のリーダーシップのもと、三重県経済が今後も発展を続けていくことを期待している、とお伝えしました。また、本日の懇談会は参加者 13 名中の 4 名が女性という極めて女性比率の高い会合でした。当地では、「女性の活躍」ではなく、「女性の大活躍」を推進されていますが、忌憚のない意見交換を通じて、誰もがやりたいことに挑戦できる社会の形成に尽力してまいりたい、という考えをお伝えしました。三重県経済の現状については、私どもの名古屋支店が今月発表した「東海3県の金融経済動向」において、当地の景気は、「中国経済減速の影響が一部にみられるものの、堅調な内需を背景に拡大を続けている」との判断をお示ししています。

§4Takako Masai

企業部門では、能力増強のための工作機械設備の増設には慎重になっているものの、それ以外の省人化投資ですとか物流関連の投資は極めて積極的で、工作機械の設備投資の減速を補っている形となっています。また、家計部門では、良好な雇用所得環境が続いており、今年の夏季賞与は、非製造業がけん引する形で前年並みの妥結額となっています。こうしたもとで、個人消費は緩やかに増加している、と判断しています。先行きについては、東海経済の拡大ペースは年度前半よりも幾分緩やかになる可能性があると思っていますが、景気拡大のメカニズムは引き続きしっかりと作用していくというようにみています。今後も、企業部門と家計部門の双方において、所得から支出への前向きな循環が続いていく、と考えています。

§5Question

講演では、効果と副作用について慎重にみていくというお話をされていたと思うのですが、先般、マイナス金利の深掘りについては、全銀協の会長が色々な副作用対策を総動員してもオフセットできないような副作用があるというお話をされていて、これはあくまで銀行界の意見だと思うのですが、委員として、現時点でこの副作用を確実に上回る効果がマイナス金利の引き下げに期待できるか、見込めるかどうか、という点についてのお考えを教えてください。

§6Takako Masai

まず、現在私どもが行っている金融緩和の枠組みは、長短金利操作スキームの調節方針と、ETFなどをはじめとする資産の買入れ、そして政策に関するフォワードガイダンスなど、全体のパッケージとして運営しています。マイナス金利は、短期金利に付利している政策金利ですが、全体をパッケージとして政策を遂行していますので、一つの部分だけを取り出してその是非を論じるということ自体があまり適切ではないのかな、というように私自身は考えています。しかしながら、仰る通り、マイナス金利を 2016年に導入して以降──それまで数十年間に亘り趨勢的に我が国の短期金利は低下してきており、2016年の総括検証時にもその考えを総括したわけですが──、幾分その下落の速度が大きくなったということはあったと思います。したがって、そうしたメリットとデメリットを勘案し、その後、例えば、政策の運営の柔軟化であったり、そのほか多くの施策も勘案して、現在の緩和政策を、持続的に息長く強力な緩和を続けることが出来ることを常に検討し、実行してきているということになります。

§7Question

講演で、モメンタムについて再び強まる兆しがみられると感じています、というお話だったのですが、この間の会合では、モメンタムが失われる、損なわれる惧れについてより注意深くみていく必要があり、次回の会合で点検します、ということでした。この字面だけ見ると、モメンタムは大丈夫だというようにも読み取れますが、この意図は、政策対応は現時点で必要ないというふうにご判断されているのか、それともこの勢いを止めないためにも予防的な対応というものが必要になってくる場合もあるというふうに判断されているのか、これはどちらなのでしょうか。

§8Takako Masai

まず、私自身が物価のモメンタムを見定めるということに当たっては、基本的に労働ですとか資本の稼働率を示すマクロ的な需給ギャップの傾向は無論のことですが、これは一定の前提のもとで算出される推計に頼らざるを得ないということもありますので、リアルタイムでの把握も非常に難しいと言いますか、できないものです。そこで、例えば企業の生産性向上に向けた取り組みですとか、企業の価格の設定スタンス、風下へのコスト転嫁の進捗度合といったことや、家計に近いところでは、賃金や雇用情勢や、人々の物価感に変化がみられそうか、などといったことを、ミクロ、マクロ合わせて総合的に丹念に確認したうえで、モメンタムの判断をしていくということだと思っています。そのうえで、講演でも申し上げました通り、いわゆる肌感覚では、この春先頃からじわりとモノの値段が上昇してきているように感じています。身近なところで例を申し上げれば、この春には 27年ぶりに塩が値上げされるなど、食料工業品の幅広い品目で価格改定の動きがみられています。こうした点は講演でもご指摘させて頂きましたが、消費者物価の品目やスーパーなどのPOSデータを利用して算出している一橋大学の消費者購買単価指数や日経CPINowのT指数でも確認できるところかと思います。

§9Takako Masai

また、サービス分野でも、例えば、ネット配信のストリーミング料金が値上げした、というように、価格上昇の傾向がみられています。また、各種の消費関連のマインド指標が、このところ低下気味なのは望ましくはありませんが、その背景の一つに価格上昇が挙げられることが端的に示している通り、やはり、生活実感としてのモノの値段は、じわりと上昇しているのだろうと思っています。更に、ややテクニカルになるのかもしれませんが、このところの地価の上昇基調に下支えされ、長らく恒常的に物価を押し下げる方向に寄与していた物価における「家賃」も、東京都区部の消費者物価に対しては、昨年半ばごろからプラスの寄与に転じており、全国の消費者物価でみても、足許は、マイナスの寄与度が縮小してきています。もちろん、エネルギー価格の変動や、いわゆるセクターショック的な通信費の引き下げの影響を受け、ヘッドラインの指数は、足許低下気味ではありますが、いわゆるコアコアの指数は、比較的しっかり気味に推移しているというようにみています。このように、色々申し上げてきたような状況を積み上げ、総合的に勘案すると、物価のモメンタムは、再び強まる兆しがみられていると感じています。もっとも、ただ物価だけが上がっていく姿では、決して望ましいとは言えません。

§10Takako Masai

予て申し上げている通り、日本銀行の目指す物価安定の目標とは、企業収益や雇用・賃金の増加を伴いながら、実体経済がバランス良く改善するという好循環の中で達成されるべきものだということも、改めて、申し上げておきたいと思います。この点、講演の中でも触れましたが、日本銀行スタッフが試算した家計の値上げ許容度は改善傾向にあり、その背景としては、6年連続のベア実現ですとか、26 四半期に亘る名目雇用者所得の前年同期比増加、といった家計にとっての所得が増加するという経験を重ねてきているからではないか、と思っています。このように、望ましい循環が生まれつつあるのではないかと感じており、こうした好循環の流れを大切に育てていくこと、サポートしていくことが重要な局面である、というように捉えています。

§11Question

先ほどの話で、中小の企業が、先行き不透明感で設備投資を躊躇する動きがあるといったご指摘があったと思うのですが、三重県は中小企業がかなり数を占めている中で、特にサプライチェーンなども多いので、海外の景気動向によってはそういったところに一番影響を受けやすい部分もあるのかなと思います。その点も含めて、三重県経済の今後の見通し、特に中小に関してどのようにお考えか、お聞かせ頂いてもよろしいでしょうか。

§12Takako Masai

本日、懇談の時には、各地域の商工会議所の皆様から、今ご指摘があったようなお話を伺いました。目先の問題としては、世界経済の不透明感が高まるもとで、今までのところは良かったのですが、先々のことを考えると、だいぶ不透明感が増してきていますし、業種、商品ないしは機械によっては、だいぶ受注の鈍化もみられるようなお話も伺っています。こうした動きは、私どもが把握している日本経済全体の、例えば外需を起点とした貿易量の低下に伴う一部セクターの成長の鈍化のようなものと、ある種整合的な動きなのでは、というようには感じています。そのもとで、更に地方においては、人口減といった問題が足許でも大きく意識されているところですし、三重県は事業継承といった切り口からも、全国でもやや高めのニーズがあるやに伺いました。そうした背景としては、中小企業を中心とした、そういった事業の皆さんの危機意識が高いというあらわれでもあるというように思いました。その上で今後の見通しですが、大まかな流れとしては、日本経済全体としてみられている傾向と沿う形での、例えば製造業を中心とした不透明感の高まりですとか、そのような部分に関しては共有しているように感じましたし、非製造業で言いますと、例えば、都市によっては、大型の駅前の開発の話が進んでいるなど、そのような部分も全国的な流れの中での低金利環境を映じたものであるように感じました。

§13Takako Masai

またインバウンド関係でも、冒頭のご挨拶でもお伝えしました通り、よりニーズを探していこう、高めていこうという努力をされるという動きがあり、製造業、非製造業で中小企業の皆さまのスタンスには違いはあるとは思うのですが、懇談を通して全体の機運として感じましたのは、こうした難しい人口減ですとか、地方独特の色々な課題があるとは思うのですが、皆さん前向きに、知事、地方自治体も含めて、金融機関、官民皆さんが、力を揃えてなんとか成長を確保していこうという、そういう前向きな動きが全般としては強く感じられた、というように思っています。

§14Question

午前の講演で、物価に対する影響というところで、為替や国際商品市況の急激な変動ということをリスク要因として挙げていらっしゃいます。それに関連する質問として、今、日銀、金融庁、財務省で国際市場に関する情報交換会合というものをやっていますが、私から見ていまして、最近その三者会合の意義が少し薄れてきているのではないかというように感じるのですが、例えば、為替相場が急変した時にすぐ会合を開催しているか、あるいは会合を開催する際に、金融庁の遠藤長官が出席していらっしゃらないとか、改めて意義が問われているのかなと思うのですが、三者会合の意義について、政井委員はどういうふうにお考えでしょうか。

§15Takako Masai

日本銀行と政府は、2013年1月に「共同声明」という形でデフレからの完全脱却を目指すことを声明として発表しています。既に 6年も経ってはいるのですが、この声明に関してはまだ十分機能していると思っています。同様に、三者会合も、その時々の情勢に合わせて、日本銀行と金融庁、財務省がきちっと情報交換をしているという姿、危機意識を見せることによって、市場とのコミュニケーションを図るという側面もあると思いますし、私自身は意義が薄れているとは感じておりません。

§16Question

銀行の口座維持手数料について、取材していますと、日銀がマイナス金利の深掘りをどんどんするようであれば、銀行としても口座維持手数料を導入しなくてはいけないという声を聞くのですが、政井委員は、今、物価上昇に関してモメンタムで良い状況が出始めているというふうにも仰ってますが、口座維持手数料が普及すると、消費者のマインドというのでしょうか、せっかく物価上昇に対して耐性ができてきて、物価上昇を許容するムードが出来つつあるなかで、かえって水をさすといいますか、好循環が絶たれてしまうのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。

§17Takako Masai

金融機関が提供するサービスの対価として、具体的にどのような手数料を徴取するのか、といったことについては、各金融機関のいわゆる経営判断に関わることだと思いますので、私からこの場でコメントすることは適切だとは思いませんので、差し控えさせて頂けたらと思います。その上で、一般論として申し上げれば、我が国の金融機関の基礎的収益力は、低金利環境の長期化に加え、人口や企業数の減少から趨勢的に低下してきており、収益力の向上に向け、既に様々な工夫はされてはいますが、一層の向上に向けた取り組みが重要と思います。こうした観点から、例えば顧客ニーズを的確に捉えた質の高い金融サービスの提供をするといった取り組みの中で、新しい視点も織り混ぜつつ、非金利収入の拡大を更に図っていかれることなどは重要な取り組みであると思っております。

§18Question

間もなく、消費税の 10%への引き上げが迫っております。取材していますと、今回の増税の前には、それほど駆け込み需要は起こっていないと、これは、駆け込み需要のボラティリティを抑える政府の施策が功を奏しているという見方がある一方で、購買力がそんなに高くないからではないかという見方もあります。そこで伺いたいのですが、10月1日の消費税率引き上げ後の消費について、どのように推移していくとみていらっしゃるのでしょうか。

§19Takako Masai

7月の展望レポートでは、消費税率引き上げ前の需要増については、個人消費の一部で需要増がみられ始めているものの、前回引き上げ時よりも小幅なものにとどまっているというように評価しています。そのうえで、経済の中心的な見通しに対するリスク要因の一つとして、消費税率引き上げの影響を列挙していたのですが、これについては、消費者マインドや雇用所得環境、それから、その時の物価動向などによって変化し得る、というように展望レポートでもお示ししています。私自身、本日の講演時に、中心的な見通しの不確実性について、特に海外経済および消費税率引き上げの影響について留意しているとお伝えしたのですが、海外経済や海外情勢が国内の個人消費の見通しに与えるリスクについて、特にマインドの悪化に繋がらないかといった点をしっかりとみていきたいと思っています。

§20Takako Masai

例えば、このところの中東情勢をはじめとする地政学リスクの一層の高まりが消費者マインドに負の影響を与えないか、また、長期化しつつある保護主義的な動きの帰趨の影響が国内の製造業にも徐々に浸透してきて指標にもあらわれてきていますので、そのような足許の影響は、今は一部のセクターに止まってはいますが、全体の雇用への広がりがないか、この流れが深化・拡大して我が国の雇用所得環境全体に影響を与えて消費マインドを大きく毀損しないかという観点で、しっかりと10月以降もみていく必要があるというようには思っています。もっとも、ご指摘の通り、今回の消費税率引き上げについては、過去との対比で申し上げれば、負担額という面での違いが挙げられます。2018年4月の展望レポートにおいて家計のネットの負担額をお示ししたのですが、税率引き上げによる過去の家計におけるネット負担増加額を試算してみると過去 2 回の引き上げ時に比べれば、今回は小さいということです。これは軽減税率であったり、年金生活者支援給付金といった複数の負担軽減措置や、教育の無償化といった恒久的な措置の効果も織り込んだ結果です。また、海外の事例として、例えば、欧州での過去の事例をみますと、雇用環境が良いときに付加価値税率を引き上げた場合には、消費に与える影響が軽微にとどまるといった傾向もみられたということもあるようです。

§21Takako Masai

足許の我が国の雇用環境は引き続き引き締まった状況が続いていますので、こうした事例にはやや幾分かの心強さも感じているところです。であればこそ、今後も、こうした良好な雇用所得環境が維持されるかどうかといった点をしっかりとみていきたいと思っています。

§22Question

昨日、黒田総裁が大阪の会見で、追加緩和を行う場合は短中期金利を引き下げる一方で、超長期金利はあまり下がりすぎないようにすることが必要という趣旨の発言をしておられまして、政井委員は、仮に追加緩和を検討される場合ですが、中短期金利を引き下げることの政策上の有用性ですとかイールドカーブがどのようにあるべきかということについて、どのようにお考えか、所見をお願いします。

§23Takako Masai

まず、仮の話に対して回答するのは適切ではないのではと思いますが、私としては、追加緩和の手段については、これまで説明させて頂いてきた通り、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速、といったものなど様々あり、組み合わせも色々考えられるというように考えています。いずれにせよ、主として、実質金利や資産価格のプレミアムを通じて、政策効果が発揮されるという現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みに変わりはないと思っています。また、2016年9月の総括検証時に得た様々な知見も、現在でも妥当だというように私自身も考えています。いずれにせよ、政策のベネフィットとコストをしっかりと検討したうえで、最終的には政策の持続性を強化することになる、適切な措置を実施することが重要だというように考えています。総裁も、こうした現在の政策運営の考え方について、一般論を申し上げられたのではないかと思っています。

§24Question

この間のECBの緩和の話ですが、フルパッケージに近いような緩和策を出してきたわけですが、それに対するマーケットの反応というのは、必ずしもと言いますか、たぶん期待していたようなものではなかったと思うのですが、悲観と楽観が目まぐるしく入れ替わるという、政治リスクが非常に強いなかで、中央銀行の金融政策の影響力・有効性が、企図した通りにまわっていかないリスクというのが非常に高まってると思います。更に言えば、その影響力が薄れてきていると思うのですが、そういう霧が晴れない、米中の摩擦など、ほとんどアンコントローラブルな問題があるなかで、それでも、そういうものに対しての有効性がなかなか分からない中で金融政策を運営する難しさ、または、だからこそ待ったほうが良いとか、そのあたりの委員の所感をお聞かせください。

§25Takako Masai

まず、日本銀行を含めてどの国の中央銀行も自国の経済・物価の安定を実現することを目的として、それぞれ置かれた立場・状況に応じて最も適切な政策運営に努めている、というように認識していますので、先日のECBの決定も、それに沿ったものというように理解しています。その上で、政策のことを考えるときに、ご指摘にあったような政策効果云々というのは、時間軸であったり、各々の皆さんのお考えになる、想定する時間軸ですとか、見ている視点みたいなもので変わり得るというように思いますので、私自身が今具体的にここで何かお答えするというよりも、今、私が考えていることを若干付言させて頂きます。このところ、講演でも申し上げた通り、極めて政治的な色彩が強い要因によって、市場自身も楽観と悲観とが目まぐるしく入れ替わるというような状況が続いているというようには認識しています。その上で、今後の、世界経済の状況を考えますと、先程来申し上げている通り、製造業を中心として、世界的にもセンチメント、マインド、企業のマインド、製造業のマインド、また生産そのもの、それから一部我が国でもそうですけれども、雇用面でも、そうしたセクターでは伸びの鈍化がみられ始めているところです。

§26Takako Masai

したがって、例えば、昨年の今頃であったり、今年の初めぐらいの展望レポートで、我が国の経済・物価情勢を判断、検討したときに比べれば、確実に状況としては良くなっているというわけではなく、むしろ懸念が高まっています。これは 7月の展望レポートでも、そうした中心的な考えの中のリスクでお示しさせて頂いていますし、先週の金融政策決定会合でも、そうしたことを懸念していると公表文でもお示しさせて頂いた、ということになると思います。私自身も、そうした危機感、先行きに対する見通しの不確実性の高まりは共有していますし、今後ともそういったものを予断をもたずにみていくということが極めて重要なところに来ていると思います。私自身は、物価のモメンタムが再び強まる兆しが出てきている中で、これを大切に育てていく、こうした非常に不確実性の高い状況にあるもとで、このモメンタムが消えないかどうかに一層注意を払いつつ、次回の政策決定会合でしっかりと検討していきたいと思っています。以上