若田部副総裁記者会見(2022年6月1日)要旨
全文
§1Question
まず、午前中の金融経済懇談会においての内容ですが、地元の経済界の方々からどのような意見や声があったのかを教えてください。二点目は、岡山県についての印象、ならびに岡山県経済の発展策というところもお伺いしたいのですが、午前中のご挨拶の中でもちょっと重複するところもあるかもしれませんが、改めて教えてください。
§2Masazumi Wakatabe
最初の、本日の金融経済懇談会でどのような意見交換があったのかということについては、本日の懇談会、これは私にとっては2年4 か月ぶりの対面での会合になりましたが、大変有意義なご意見を頂いたと考えています。本日の懇談会では、岡山県の行政や金融・経済界を代表する方々から、当地の金融・経済情勢や地域経済が直面する課題等について、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望もお伺いし、大変有意義な意見交換だったと考えています。ご多忙の中、本日ご出席頂いた皆さまに、本席をお借りして改めて御礼申し上げます。懇談会での話題ですが、これは大変多岐にわたるものでしたので、本席で全てを明らかにすることはできませんが、席上で伺った話を私なりに整理して申し上げたいと思います。足許の岡山県の景気については日本経済全体とほぼ同じような動きを辿っており、新型コロナウイルス感染症の影響や、半導体不足等の供給制約による生産活動への影響等が残っているほか、業種・企業規模によって景況感にばらつきがあるものの、全体としては持ち直し基調にあるとの意見・見方が多く聞かれました。先行きについては、特に多くの中小企業から、原材料価格の高騰に対する懸念が聞かれており、価格転嫁の成否等に留意が必要との認識が示されました。
§3Masazumi Wakatabe
こうした中、行政や金融界、経済界においては、地域活性化や雇用維持など様々な形での支援策を講じているとのお話を伺いました。また、やや長い目でみてSDGsや脱炭素化への取り組み、企業誘致の推進等、地域の持続的な発展につながる施策を関係者一丸となって進めているとのお話も伺いました。こうした取り組みにより、岡山県の魅力を高め、それを全国に発信し、住民のエンゲージメントを高めることが人口減少・少子高齢化への対応にもつながっていくとのお話を皆さまから伺い、大変心強く感じたところです。金融界の方からは、感染症の影響が長引く中で、取引先企業への資金繰り支援に引き続き取り組みつつ、ポストコロナ・ウィズコロナにおけるビジネスモデルの再構築や、事業承継、人材確保、脱炭素化やデジタル化への対応といった、中小企業が抱える各種の課題に対して、サステナブルファイナンスの提供も含めてしっかり支援していきたいとのお話が聞かれました。日本銀行に対しては、感染症やウクライナ情勢の動向等により、先行きの不確実性が高まっている中、政府と連携して持続的・安定的な経済環境の確保に努めてほしいとのお話がありました。また、業種に応じた適切な支援の内容や、企業の生産性引き上げに向けたアドバイスなど、地域経済に関する調査・分析の提供を一層お願いしたいとのご要望も頂きました。
§4Masazumi Wakatabe
このほか、為替レートの安定には一層の目配りをお願いしたいとのご意見も伺ったところです。日本銀行としては、本日頂きましたご意見等も踏まえて、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくとともに、金融システムの安定性を確保することを通じて、当地関係者のご努力が、より大きな実りへとつながっていくようなサポートをしてまいりたいと考えています。二点目の岡山県経済の印象と発展の方法についてですが、これは私の講演でもだいぶ論じましたので、ポイントだけ申し上げたいと思います。足許の岡山県経済については、先ほど参加者の方々からの懇談でも聞かれましたように、感染症によるサービス消費への下押し圧力や半導体不足など供給制約の影響はみられていますが、社会経済活動が継続するもとで持ち直し基調にあると認識しています。当面は、感染症の影響が緩和するもとで、回復が続くとみていますが、引き続き各種の下振れリスクには留意が必要であると考えています。中長期的には、岡山県も他の地方経済と同様に、人口減少や少子高齢化への対応が大きな課題となります。そのもとで経済成長を実現するためには、岡山県の住みやすさ、暮らしやすさといった地域の魅力の向上が重要だと考えています。本日の金融経済懇談会でも、そうした観点から、岡山県の持つ強みや今後の期待についてお話しさせて頂いたところです。
§5Masazumi Wakatabe
例えば、文化的価値がもたらす豊かさが挙げられます。岡山県には倉敷美観地区や岡山市のカルチャーゾーン、現代アートの舞台となっている瀬戸内海の島々、県内各地で地域住民の生活エリアの一部として保存されている古い町並みなど、身近なところで文化的な価値に触れられる環境が充実しています。このことは、居住者や移住希望者が暮らしの豊かさを実感することにつながり、観光資源としての競争力を高めれば、交流人口を増やす効果も期待されるところです。また、少子高齢化社会では、教育や医療の充実は経済の面でも強みになります。産学連携の強化や医療ネットワークの活用を通じて、地域での企業人材の育成・確保や健康寿命の延伸に結び付けていくことが期待されます。吉備中央町では、「デジタル田園健康特区」に指定されたとのことですが、医療分野でデジタル技術を活用する取り組みが始まっていると伺っています。このほか、水島臨海工業地帯を抱える岡山県では、製造業が経済の牽引役ですが、住みやすさの大前提となる持続可能な地域社会の実現に向けて脱炭素化への取り組みも進めていく必要があります。これを経済成長に対する制約ではなく、イノベーションや新たな事業創出の機会ととらえ、産学官金の連携のもと、地域ぐるみの取り組みにより、岡山県経済の活性化につなげることを期待しています。
§6Question
今日、意見交換をされて、先ほどのお話の中にもあったかと思うのですが、特に印象に残られたことというのは何になりますでしょうか。
§7Masazumi Wakatabe
特に印象に残ったという意味では、やはり地元のリーダーの方々が、岡山県の現状に対して危機感を抱いているということだと思います。このことは私も大変大事だと思っており、ここから先、岡山県が更に発展するにはどうすればいいのかということを大変真剣に考えていらっしゃるということを伺い、一番強く印象に受けたところです。具体的には、少子高齢化のもとで、例えば生産性を上げていくには、具体的にはどういうことが必要なのかということについて、岡山県として何ができるのかということを非常に真剣に考えておられたなという印象があります。
§8Question
先日、内田理事が国会で長期金利の変動許容幅の拡大について、これは事実上の利上げであるというような趣旨の発言をされたと思います。若田部副総裁も同様な考えなのかという点について教えてください。もし仮に同様であるとするのであれば、18年7月に、長期金利の変動幅を 0.1%からその倍程度に拡大したこと、これも事実上の利上げという解釈になるのではないかと思うのですが、その辺のことも合わせてお願いします。
§9Masazumi Wakatabe
まず、長期金利の変動幅を拡大するということは、やはり事実上確かに金利を上げるということにつながるだろうと思います。これは二番目の質問にも関わりますが、18年7月に明確化というところで言ったのは上下 0.1%の倍程度ということですが、その後これをかなり明確に 25bps と言ったので、0.1%の倍程度というようなところに比べると、かなり踏み込んで数値も明らかにしたということですので、それが0.25%から0.3%になるとなってくると、「それではこれまで明確にしたことは何だったのか」ということが問われますので、事実上の金利引き上げということになると思います。
§10Question
足許、資源価格の上昇を主因に交易条件が悪化していると思います。日銀は、コモディティ高が実質所得を押し下げて二次的波及が起きていない場合には、引締めよりむしろ緩和すべきだという情報発信をかつてされていたと思うのですけれども、現状、追加緩和の必要性については、副総裁、どのようにみていらっしゃいますでしょうか。
§11Masazumi Wakatabe
追加緩和を考えるか考えないかということは、当然金融政策決定会合で決めていく事項ですので、この時点で、私がどのように考えているかをあまり申し上げるのも適当ではないと思います。ただ、蓋然性として、これ以上、例えば追加緩和をすることがどの程度必要なのかということについては、それほど高くないのではないか、というのが現時点での印象です。もっとも、経済状況は下振れリスクも相応にあり、物価に関しては上振れリスクもあります。そうしたある種の不確実性を踏まえたうえで、当然、追加緩和の手段は残しておかなければいけないとは考えていますし、そのことの検討はいつもしていないといけないと思いますが、現段階において、すぐに追加緩和というようなことが必要なのかはやや懐疑的であるということです。現状で、例えば、海外に対して所得が流出しているのでその流出を打ち返すような政策がとられるべきだということだとは思うのですが、ただ、それは政府の対策もありますので、政府の対策と相俟っての総合的な政策効果というのが期待されるところではないかと思います。金融政策だけでそれを行っているというわけではなく、政府側の対策とも相俟って、そうした下振れリスクあるいは交易所得の流出に対して対抗策を打つということが行われていくと期待したいところです。
§12Question
簡単な確認なのですけれども、そういう意味で言うと、追加緩和の蓋然性が低いというのは、政府で対策をすれば現状は事足りるというか政府が対策すべきだという観点から、という理解でよろしいでしょうか。
§13Masazumi Wakatabe
対策すべきかどうかということはともかく、私は政府と中央銀行との適切な政策の分業といつも申し上げています。現状で起きていることは、講演でも申し上げたように、やはり低インフレが持続しており、それに対して一部の価格が急騰しているということですので、二つ政策目標があるときに、二つの政策手段が必要であろうということは原則としては考えるわけです。ですから、政府が今般打ち出したような対策は、私が理解するところでは、まさに今起きているエネルギー価格の急騰への対策であり、その意味では政府と日銀との連携は十分図られているといえると思います。
§14Question
午前の講演ですが、2%の物価上昇率が半年から 1年程度しか続かないのであれば、2%の物価安定目標が持続的・安定的に達成されたとは言えないと、そういうふうに発言されておられました。副総裁は、持続的な物価上昇とは 2%程度の水準がどの程度続く必要があるとお考えなのか、また、そもそもコストプッシュの物価上昇であっても、それが 1年以上続いたり、または 2%を大きく上回るなど、期間や水準次第では金融政策で対応する必要が出てくるとお考えなのか、この二点、お伺いします。
§15Masazumi Wakatabe
まず、カレンダーベースで例えば何年続けばということはなかなか言いにくいと思います。現状の、例えばコストプッシュを前提としたときに、コストプッシュによる物価の押し上げ、一部価格が押し上げられるということによって統計上の消費者物価指数が高くみえるということが続くと、それが半年から1年くらい経ったとしても、二番目の質問とも関わりますが、メカニズム的には、それは実質所得を押し下げることにより、他の価格が下がってしまうということが起きるので、インフレ率は低くなっていくだろうと思います。その限りにおいて、大事なのは、どれぐらいの期間続けばこれが持続的であるとか安定的であるかということを、何か先に決め打ちすることではなく、データを見つつ、例えば、実際の価格の分布、あるいは講演では物価の基調と呼んだ刈込平均値ですとか最頻値ですとか、どこの価格が動いているのかということです。そして、なんといってもサービス価格が大きく動くかどうかというのがインフレになるかどうかの要ですので、サービス価格と密接な関連があると思われる賃金が上がっていくかどうか、中長期の予想インフレ率がしっかりと2%程度でアンカーされていくことになるかどうか、です。
§16Masazumi Wakatabe
ですから、見るべき指標は多く、大事なのは、メカニズムの問題として、コストプッシュであるならば、仮に例えばそれが1年以上続くとしても――それでそんなに続くのか少し私自身は疑問なところがありますが、仮に1年以上続くとしても──、それがもたらす物価上昇というものは、言ってみれば持続的・安定的ではないと判断せざるを得ないのではないかと思います。ですから、その場合、これもカレンダーベースで1年以上続いたときに金融政策で対応する必要があるのかないのかといわれると、そのもとで、賃金はあまり上がっていない、中期・長期の予想インフレ率もあまり上がっていない、最頻値などもあまり上がっていない、分布も 2%に到底近づいていない、ということであるならば、金融政策として対応するのは望ましくないと考えています。コストプッシュへの対応については、前回の講演でも申し上げましたが、金融政策での対応はなかなか難しいと思います。先ほどのご質問にも関わりますが、コストプッシュに対しては、中央銀行が持っている道具以外の政策手段を使う必要があるということになりますので、中央銀行が対応すべき問題ではないと考えています。
§17Question
二点お伺いさせてください。一点目は、講演の中で若田部副総裁は物の値段を大きく二つに分類されて、エネルギーや食品といった大幅に値上がりしているグループと、それ以外の一般価格は 0 というか、殆ど上がっていないというご指摘をされて、そのうえで政策対応を分けるといったお話をされましたけれども、今後、見た目のいわゆるコアCPIで 2%付近の上昇率が続いた場合に、予想インフレ率が上がってきて、より広くこの二分法が通用しないような、いわゆる一般物価が広く値上がりしてくるという状況が出てくる可能性はないのかというのが一つです。二点目は、先ほど岡山県での金懇での意見の中で為替の影響について目配りをお願いしたいというお声が出たようなのですけれども、若田部副総裁の、こういった意見を受けてのご印象ですとか日銀としてのスタンスですとかそういったところをお聞かせください。
§18Masazumi Wakatabe
一点目については、物価の基調をみたときに、分布がこれまで 0%のところだったのが少し 2%の方に寄ってくる、あるいは米国や欧州で起きていたようなもう少し分布が平たい形になってくるということが起きてくるのであれば、それにより 2%が達成されるときには、当然のことながら、その背後で賃金が上昇しているとか、予想インフレ率が上がっているということになるので、確かに 2%が持続的・安定的に実現される可能性は高まってくるというふうになると思います。ただ、コストプッシュから始まったものが、そういうところにいくかについてはやや難しいところで、言ってみれば、全体の名目所得の額が決まっているところで、一部の価格が上がってくると、名目所得をそちらに振り向けた分だけ他のところに対する振り向け分が小さくなるはずなので、そこに関してはインフレ的というよりはデフレ的な圧力、価格が下がってくる圧力が働くはずです。短期的には、もう少しインフレ予想全体が上がることで家計の支出そのものが上がってくると、その経路も、今、待機資金あるいは強制貯蓄と呼んでいるものがありそれなりの支出のポテンシャルがあるので、その部分に火がついて、例えば、賃金が上がってくる、あるいは支出が増えてくるということが起きれば、ひょっとしたら 2%の持続的・安定的な経路への道筋になっていくかもしれません。
§19Masazumi Wakatabe
その可能性は否定しないですし、むしろ何らかの形でその方向にいくことを期待したいところではありますが、コストプッシュだけでとどまるならば、やはり少し力不足ではないかと考えています。二点目の為替レートの動向への影響に対する配慮をしてほしいという要望についてですが、為替については私から特に申し上げることはなく、これは基本的にはファンダメンタルズの要因で決まることが望ましいですし、やはり急激に為替が変動すると企業が事業計画を立てるうえで不確実性が増すので望ましくないと考えています。ただ、前回の講演でも申し上げたように、金融政策が目標とするのは国内における物価の安定であるとの観点から、為替レートを目標として何か政策を発動することが望ましいわけではないと考えていることは変わっていないということです。
§20Question
今の質問の回答の中にも言及がありましたけれども、強制貯蓄が今の輸入物価の上昇などを吸収しているのか、あるいはする見通しがあるというふうにお考えなのか、あるいは予備的貯蓄に移っていくとみていらっしゃるのか、若田部副総裁のご見解を伺えますでしょうか。
§21Masazumi Wakatabe
正直、どうなっていくかについて決め打ちするのは危険だとは思っていますが、基調的なシナリオとしては、ここから先、行動制限が緩和されていくこともあり ──こちら現地に来て多少そういう形で街の状況ですとか宿泊施設の状況なども伺うところがありますが──、戻ってきているのは事実だと思います。ですから、これまではひどく下押しされていた対面型サービスが、行動制限の緩和などによって徐々にではあるとは思いますが持ち直してきているということは事実だということです。そこに待機資金があるということを踏まえるならば全体として経済を下支えしていくだろうということがメインシナリオではありますが、一方で色々な形で下押し圧力もあることは講演で言及したところですので、その両方のせめぎ合いが今起きているということです。では、これは五分五分の勝負なのかというと、私としては、下支えの方が大きいということを期待したいとは思っていますが、今後更に経済の不確実性が増すようなことになってくると、強制貯蓄が予備的貯蓄へと転化していく、つまり家計の 50 兆円が使われずにそのまま貯蓄になっていく危険性はあると思います。ただ、その危険性はいくつか挙げた下振れリスクの一つであり、それがメインシナリオというほど私は強く下振れリスクを警戒しているというわけではないです。
§22Question
世界的にちょっとインフレの波が来ている状況で、先ほどの朝の講演でも、日本でのインフレ時代が来るのか懐疑的という発言もありましたけれども、この米欧でのインフレについて、抑える動きが失敗する、あるいは景気を冷やし過ぎるという懸念があると思います。この辺りの動きが、今後日本経済にどのような悪影響として出てくるか、この辺りの影響をどのように分析されていて、どう見ていらっしゃるのか教えてもらえればと思います。
§23Masazumi Wakatabe
米欧がとっている政策対応そのものについてコメントをする立場にはないわけですが、これまでの、大きなインフレを経験した後の金融政策運営というのは、インフレ目標を掲げ、経済が過熱してそれを上回ったならば抑え込み、経済が下振れして冷え込み物価安定目標よりも下がってくるならば金融緩和で下支えするという形で、ある種、室温を調整するような形で金融政策を行って来ました。その調節がいまひとつ、例えば欧州の場合でも 2%に届かないところだったので、ずっと金融緩和をしていたわけですが、ここに来て、言ってみれば、その上振れの局面に達したわけです。ですから、これまでのインフレ目標の考え方とそれに基づく金融政策のある種の実績を踏まえて言うならば、米欧の金融政策当局はこのインフレを何らかの形で抑え込むことはできるだろうと思っています。その場合、もう一つの質問として、オーバーキルのように経済が冷え込み過ぎるのではないかとの懸念は短期的には当然あり得ると思います。これだけ上がったインフレを下げるにはよりドラスティックなことをやらなくてはいけないと言う人がいるのも承知していますが、講演でも申し上げたように、そのリスクは、感染症、ロシア・ウクライナ情勢と並び、国際金融市場の変動という中で考えなければいけないことであると思います。
§24Masazumi Wakatabe
ただ、そうなったらそうなったで、今度は冷え込んできたところ、室温調整で言えば少し温度が低くなり過ぎたということなので、今度はまた緩和の方に転じてくるのではないかと思います。その意味では、これまで 30年以上、1990年代の初めくらいから始まったインフレ目標体制がそれなりに金融政策に良好な成果をもたらしてきたと思います。そのもとでリーマンショックやコロナショックがあり、そこで迎えたこのインフレにどう対応するのかということが問われてはいるのですが、私自身はそんなにインフレを抑え込めないということはないのではないかと思っています。むしろ抑え込んだとき、例えばオーバーキルのようなものに対してどうするかというときも、今度はまた緩和をすればいいという形で対応できるので、この枠組みで金融政策を運営していくことができると考えています。
§25Question
今日の講演の中でも触れられていたと思うのですけれども、中国のゼロコロナ政策とそれに伴う中国の景気失速が日本経済に与える影響についてどのように分析されているのか改めて教えてください。
§26Masazumi Wakatabe
ゼロコロナ政策自体は、中国でも日々変わっていて、例えば上海のロックダウンも感染地区を除いて解除する方向にあるということですので、色々と行きつ戻りつありつつもマネージしていくのではないかと思います。中国経済を考えるうえで重要な点は、まず、中長期的な意味での潜在成長率の低下傾向が続いており、トレンドとしてはかつてのような高度成長というよりは 5%、場合によっては更に下がっていくというシナリオが人口動態等によってあることです。そのもとで、今注意しなければいけないのが、もう少し短期的に経済をどのように運営するかという部分で、トレンドとしては下がってくるとしてもそこから更に下振れするリスクがないかということです。ゼロコロナ政策の帰趨もそうですが、それ以外に、規制のあり方ですとか、あるいは不動産セクターの問題ですとか、各種課題を抱えていることは事実だと思います。ただ、それがどのように影響を及ぼすのかは、メインシナリオとしてトレンドとして下がっていくということはあるうえで下振れする可能性もあるとは思います。もっとも、今のところそれは下振れリスクの一つとして十分に認識しているとはいえ、メインシナリオを覆すほど大きなものかについてはまだそこまで深刻なものとは考えていません。ただ、リスクであることは事実で、そこについての不確実性は今後よくよく点検していかないといけないと考えています。
§27Question
先ほどからの質問と被ってしまう事があるかと思うのですけれども、ウクライナ情勢、先行きが見えない中で、岡山県の経済状況、今後の見通しをいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
§28Masazumi Wakatabe
まずコロナそのものの影響は、日本経済、日本中どこでも起きていることなので、ここから先、例えばまた新たな変異株が登場して、更に強力な行動制限緩和、行動制限措置などがとられれば別のシナリオではありますが、その場合でも全国並みの少なくとも基調としては同じようなことは岡山でも起きるのではないかと思います。そのうえで、岡山の場合は、製造業が比較的シェアが高いこともあり、世界経済の影響は他の地域対比では受けやすいのかと思います。これは一方では、先ほど中国の話もあり、リスクもあることはありますが、世界経済全体が、講演の中でもありましたように、落ち込んだところから今度は回復するところで、回復する後の姿でよほど大きく下振れしない限りは世界経済の恩恵を岡山県経済も享受できるのではないかと思います。それ以上に、今度は国内における観光客の招聘や企業の誘致、あるいは地域の事業承継の問題など、各種の問題はありますが、これはある種どこの地域も抱えている問題で、岡山県だけが持っているわけではないですが、本日伺ったところでは、リーダーの方々は十分な危機感を持ってそれに対応しようとされているとの印象を受けました。以上