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日本銀行記者会見2022年8月31日中川順子, 審議委員

中川審議委員記者会見(2022年8月31日)要旨

全文

§1Question

午前中の函館市の金融経済懇談会の中で、地元の函館市ですとか経済界の皆さまと懇談されたかと思います。その中の主なやり取りについて教えてください。もう一点、ロシアによるウクライナ侵攻など国際情勢を背景にした物価高が深刻化しています。道南経済への影響の見通しと打開策についてご見解があれば教えてください。

§2Junko Nakagawa

今日の懇談会では、当地の行政や経済・金融界を代表する方々と本当に有意義な意見交換やご意見を伺うことができました。また、日本銀行の今の金融政策につきましても、色々なご意見を頂きまして、非常に有難く思った次第です。ご多忙な中、またお足元の悪い中、本日ご出席頂いた皆さまには改めてこの席上ではございますが、感謝申し上げたいと思います。議論につきまして全てをご紹介することはできませんけれども、私なりに席上で伺ったことを、印象に残った点を中心にお話ししたいと思います。まず、当地の景気についてですが、3年ぶりに行動制限のない夏休みとはなりました。去年の夏を大底にしたということでは持ち直しの動きが続いている、ただしコロナ前と比べるとそこまでには達していないということ、それから足元の感染の再拡大から不透明感が高まっているとのご意見が聞かれました。また、ウクライナ情勢や円安などを背景にした原材料や燃料の価格の上昇、あるいは一段の人手不足感――これも業種によっては強弱があるようですけれども――の高まりを懸念する声も聞かれました。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景にして借入金を増やしている企業もありますので、そのモニタリング、それから金融支援だけではない本業にかかる支援も重要であるという声も聞かれました。

§3Junko Nakagawa

こうした中で、行政、経済界、金融機関によって、地元企業への資金繰りのサポートのみならず、先ほど申し上げたような事業の再構築への支援も行われているほか、地域の企業におきましては、先行きを見据えた新たな需要の掘り起こしへの非常に前向きな取り組みをされていると伺いました。こうしたことが今後の道南地域の発展に向けた心強い動きだと思いました。本行の政策に関しましては、物価上昇と金融政策の関係のほか、今後の金融政策の在り方に関するご意見も頂きました。原材料コストの上昇の影響を受ける取引先から日本銀行の政策修正に関する関心が高まっているというお話も頂いた一方、借入金利の上昇に対する不安の声もあるというお話が印象的でございました。日本銀行としましては、今後とも、函館支店を通じてこの地の金融経済情勢を丹念に分析しつつ、中央銀行の立場から地域経済の活性化に向けた取り組みをサポートしてまいりたいと思いました。二つ目のご質問が、ロシア・ウクライナ情勢に関する物価高とその影響、それから打開策があれば、というご質問でした。先ほど申し上げました道南経済につきましては、函館支店の調査も踏まえた形で、これまでのところ行動制限の緩和による人流の回復、それから需要の若干の持ち直しというものが背景にはあるということでした。

§4Junko Nakagawa

ただ、昨年の夏を大底にした緩やかな持ち直しですけれども、繰り返しになりますがやはりコロナ前に比べると引き続き下押しされた状態であるという判断です。もっとも、今日の金融経済懇談会で話題になりましたけれども、最近の感染者数の増加の影響には、やはり非常に注意が必要であるということ、それから物価上昇に関しては、今度は実質所得の下押しや消費者マインドの悪化が個人消費への下押し圧力となると考えています。特に、北海道は全国の中では光熱費の支出割合が高いと記憶しています。物価上昇率も相対的にその分高くなるということですので、最近の物価上昇下におきましては家計の消費活動に与える影響について引き続き注意が必要と理解しています。加えて、当地の主要産業である水産加工業、それから飲食・宿泊業を含めて、コロナの影響と価格上昇による企業の収益への下押し圧力も小さくないと考えられます。このように、繰り返しになりますが、物価上昇というのが当地の経済に与える影響については、個人消費や企業収益といった面を中心に、引き続き丹念に確認するべきものだと認識しております。打開策というのは私の口からなかなか申し上げることは難しいと思いますが、実は今日の席上でも、また函館支店からも、企業の皆さまは既に様々な対応策、それから新たな取り組みを検討したり実行されている旨をお伺いしています。

§5Junko Nakagawa

ですので、私の方から申し上げるというよりも、その中で私の印象として、この地の強みと、それを活かした取り組みの一部についてご紹介できればと思います。強みは何と言いましても、海産物に代表される食材の宝庫であること、それから日本有数の観光資源です。これは世界的にも非常に有名な地であることは間違いありません。金融経済懇談会でも申し上げたところになりますけれども、やはり北海道新幹線、函館港、函館空港と、陸・海・空の3つのインフラがここに集積しているということは非常に大きな利点であると思います。この強みを活かして高い付加価値のある製品や商品・サービスの開発、交流人口の増加、販路の拡大などに取り組まれるということが、域内だけではなく域外・国外からの需要の取り込みにもつながるのみならず、ブランド力の向上に伴って価格への転嫁につなげられるのではないかと期待されています。また、函館支店におけるヒアリングから、前向きな働き方改革と言いますか、働き方の見直しにも取り組んでおられるというところもあると伺っています。コロナ禍とか人手不足というところでネガティブなニュースと捉えがちですけれども、それを前向きに取り組んでいらっしゃる企業の話を聞いて非常に心強く思った次第であります。こうした当地企業の皆さまの努力が功を奏して、強靭で魅力的な道南地域の経済につながることを期待しています。

§6Question

道南のお話を今お伺いしたのですが、ちょっと範囲を広げまして、現在の道内の経済についてのご認識と、円安の影響ですとか今後の先行きについてお教えください。

§7Junko Nakagawa

北海道に話を広げますと、やはり多少地域によって差があるように思いますけれども、感染症の影響と物価高の影響に関しましては、先ほど申し上げたこちらの道南地域と非常に似た形になっているかと思います。今回は道南地域のお話を中心にお伺いしましたけれども、各地でそれぞれの特性に応じた取り組みをされているというところではございます。北海道と捉えたときに、もう一つやはり残念なこととしては、コロナ禍において、非常に人気の地域でありました観光、特に海外の方の訪問がほぼ閉ざされていると言いますか、それに近い状況がいまだ続いているということです。これに関しましては今日、政府の方から新たな緩和策の発表があったと聞いておりますけれども、そちらにしましても、振り返れば何百万人という方をお迎えになられていたこの地からすれば、まだ緒に就いたばかり、ないしはその前という状況と理解しております。海外含めた観光客の方が来られれば、物品販売ですとか、宿泊・飲食など非常に幅広い影響を及ぼす産業になっていることは重々承知しております。したがって、この回復がもう一つの大きなカギになるという点では、やはりこれからのコロナ禍の落ち着きというのが、私自身もこの地のために期待したいと思っております。

§8Question

物価動向でお伺いします。足元で食品などへの価格転嫁の積極化や再び円安が進行していることもありまして、物価は7月に日銀が示した見通しよりも既に上振れて推移している可能性が高いように思われるのですが、先行きの見通しも含めて現在の委員の見方を教えてください。加えて、消費者物価が先行き 3%程度まで上昇する可能性も指摘されているわけですけれども、そうした場合でも、むしろ現在では消費への影響が懸念されるということを委員おっしゃっておられますけど、そういう状況でも緩和を継続すべきということでよろしいのか、その辺の確認も含めてお願いします。

§9Junko Nakagawa

まず物価に対する見方ということですが、7月の委員の中央値に関しましては発表させて頂いている通りです。足元で+2.6%という数字も出てきていますが、やはりウクライナ情勢の緊迫の継続、それに伴う物流関係の滞留、こういった非効率さも相まって、非常に高い水準で、海外、特に欧米において高いインフレ率がみられ、それが時間差を生じて日本にも波及しているという見方ではあります。ここに関しては 7月に出しました想定を、次回9月を迎える中で、色々な面から点検していきたいと思っています。物価指数は、皆さまにとってはご承知のことばかりですけども、多くの方があらゆる検討を重ねたうえで作られているわけですが、その内容を子細にみていくと、非常に動きやすいものであると思いますので、その辺りは日々の動きというよりは少し長い目線でデータをみながら判断をしていきたいということで、一部にはたしかに3%という声もあると聞いておりますが、今の時点では 7月の見通し以上の情報というのはここではお伝えすることはありません。ただ、環境としては物価が上昇基調にあるということは、他の指標──例えば刈込平均値ですとか最頻値──をみても、傾向としてはその通りであると思います。

§10Junko Nakagawa

ただ、今後中期的にみたときにどうかということに関しては、今のご質問から外れているかもしれませんが、やはりエネルギー価格などが前年比といったときに、多少影響が緩和されてくるということを想定しているのが今のシナリオということです。もちろん、やはりその不確実性が項目としては非常に大きいので、今後引き続き慎重にみてまいりたいと思います。この環境下で緩和策についてどうかというご質問を頂いたのが2 つ目だったと思います。こちらは繰り返しになるかもしれませんが、物価 2%の安定的な目標ということに関しては、2%に達することでもって到達したということではないというのは繰り返しお伝えしている通りです。賃金も含めた形で好循環が生まれているというのが、1 つの目標とするところであります。今日の席上でもやはり為替への影響があるのではないか、金融政策の各国の差によって、ということの反面、利上げの可能性に対する不安の声も頂きましたので、この辺りは十分に私自身で消化をしていきたいと思いますが、今の状態ですと、前回7月の決定会合の内容以上の形では、お伝えするべき変化というのはないと思います。

§11Question

コロナオペについて伺います。現時点で 9月まで中小企業の資金繰り支援を延長するとなっておりまして、次回の会合の方で今後の継続の必要性を含めて判断されていくと思うのですけれども、今回は地方の函館という都市で中小企業の方とも会ったと思うのですけれども、そういったお話を伺う中で必要性についての現状認識、または足元のまだコロナ感染者が収まらない中で企業からの継続を求める声があったかどうかというのも含めてお伺いできればと思います。

§12Junko Nakagawa

席上での細かい具体的なお話に関しては控えさせて頂きたいと思いますが、もちろん感染症の拡大とその影響が残っているという声を頂いています。これはこの地に限らないわけですが、引き続きこの影響というのが──第7 波と言われているものが──まだ収束しきらない中で、非常に留意が必要であるという点は認識しています。また、企業の資金繰りに関しましても、いわゆるゼロゼロ融資の元本の返済が迫っている、ないしは迎えているという企業もある中、中小企業中心に感染症の影響を受けている対面型サービスでは、総じて回復基調にあるというところも増えてまいりました。ただ、もちろん、第7 波による影響が今、読み切れない中にあっては、安易な判断はできないと思っております。コロナオペに関しては、一定の利用がまだみられていまして、ご活用頂いているようですが、ご承知のとおり残高自体は減ってきています。10月以降のコロナオペの扱いに関しては、引き続き今後の感染状況とそのもとでの中小企業などの資金繰りの動向を引き続き情報収集しながら、9月の決定会合で判断したいと考えています。

§13Question

先ほどのコロナオペの扱いについての質問の続きということになりますけれども、今、日銀として、金融政策の先行きについて、「当面コロナの影響を注視し」という文言で始まるのですけれども、9月会合でコロナオペの扱いについて決めた際に、この文言「当面コロナの影響を注視し」というところも、連動して変えてくる必要があるのかどうかというのが一つと、先日、中村審議委員の会見でも出ていましたけれども、その先の政策金利のバイアスのところ、利下げバイアスが今あるわけですけれども、この扱いについて、利下げバイアスを取って中立にするべきかどうか、中川委員のお考えを聞かせてください。

§14Junko Nakagawa

冒頭の「コロナの状況を注視し」という部分に関しては、その先行きの政策運営とかその方向性ということも含めて、決定会合で議論していくことになるのであろうと思います。必ずしも、コロナオペと直接連動させるべき、もしくは連動しているものではないと理解しております。それから今、中村審議委員のお名前を頂きましたけれども、他の委員の方のご発言に関しては、具体的にコメントするのは差し控えさせて頂きたいと思います。先行きの政策運営の方向性に関して、どのような表現、また情報発信を行うか、という点ですけれども、これも繰り返しになって申し訳ありませんが、毎回の決定会合で議論しますので、次回9月の決定会合で経済・物価情勢を丹念に点検したうえで、判断していくことになると思います。こちらに関しては、先ほど冒頭のところでお話ししましたとおり──皆さんのご認識も同じだと思いますが──依然として新型コロナ感染症による下押しの圧力を受けているというところで、引き続き注意が必要であるという状況ではあると思います。ですので、今、フォワードガイダンスを含みで言って頂いたと思いますので、これも含んで、7月の決定会合において決定したとおり、今の時点では、この緩和バイアスというのは維持するのだろうと思いますが、この先、今後の出てくるデータや情報、ヒアリング等々で、9月にまたきちんと議論したいと思っております。以上