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日本銀行記者会見2023年11月29日安達誠司, 審議委員

安達審議委員記者会見(2023年11月29日)

全文

§1Question

二点お願いします。まず一点、懇談会では出席者からどのような話やまた日銀に対する要望などが出たか、印象などを含めて教えてください。

§2Seiji Adachi

本日は愛媛県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域経済が直面する課題などについて、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に対する率直なご意見・ご要望もお伺いして、大変有意義な意見交換ができたというふうに考えております。この場をお借りしまして、本日ご出席頂いた皆様に改めて御礼申し上げます。懇談会での話題は非常に多岐にわたるものでしたので、全てを網羅することはできませんけれども、私が印象深かった話等を整理して申し上げたいと思います。まず足元の愛媛県の景気についてですけれども、コロナ禍からの経済活動の回復などにより、緩やかに持ち直しているという趣旨のお話を頂きました。一方で原材料価格の高騰が企業収益に与える影響のほか、海外経済などに不透明感があることから、先行きについては慎重な見方をされているご意見も聞かれました。あと印象的でありましたのは、多くの方がやはり人手不足を課題として挙げられておられます。人口減少に加えて、感染症禍における人員整理の影響、都市部への労働力の流出、という声が聞かれました。こうした中、多くの企業がデジタル技術の活用のほか、外国人労働者を雇用することなどで人手不足の対応を行っているという話が聞かれました。

§3Seiji Adachi

もう一点、価格転嫁については、ある程度規模が大きい先では進捗していますけれども、規模の小さい先では十分に進められていないという声が聞かれました。こうした先では収益環境が引き続き厳しいほか、賃上げにも苦慮しているという声が聞かれました。金融面では、ゼロゼロ融資に関する企業の返済負担、これが非常に大きいという話が聞かれました。金融機関からは、経営改善支援などによりサポートしていきたいという前向きな取り組みに関する声が聞かれました。また、金利上昇が中小企業に及ぼす影響、これにも配慮しつつ今後の政策運営を行ってほしいという意見が寄せられました。以上でございます。

§4Question

重なるかもしれないんですけど、日銀に対する要望としては、先ほどの金利の面で、よろしいでしょうか。

§5Seiji Adachi

そうですね。はい。

§6Question

あともう一点、今回の懇談会の挨拶でも触れられてたと思うんですけども、改めて今回の意見交換を踏まえて、愛媛県経済の現状と先行きの見通しについてはどのようにみていらっしゃいますでしょうか。

§7Seiji Adachi

現状につきましては、まず物価上昇とか海外経済の回復ペース鈍化の影響が一部にはみられますけれども、全体としては持ち直していると。その大きな要因と致しましては、これはコロナ禍で特に落ち込みが大きかった部分の反動というのもあるのかもしれないですけれども、サービス消費と観光需要の回復というのが非常に大きいという状況です。サービス消費につきましては、ペントアップ需要と人流の増加が最近みられるとのことで、それではっきり回復しているという状況です。また、愛媛県内を訪れる観光客や宿泊客の数というのは、これは国内客を中心にコロナ禍前の水準まで回復していて、インバウンド客につきましても、道後エリアとかしまなみ海道エリアを中心に着実に持ち直しています。先行きにつきましては、引き続き持ち直していくと思います。物価高の中で家計の生活防衛的な動きとか、原材料価格の上昇が企業収益とか投資行動に及ぼす影響にも注意が必要だというふうに考えてますので、松山支店を通じて丁寧にみていきたいというふうに考えております。また、より長い視点でみますと、愛媛県経済が持続的に成長・発展を続けていくためには、人口減少とか少子高齢化といった構造的な問題に対処する必要があるということで、そのために何が行われる必要があるかということで、これは行政の方々とも連携するかたちで地域の魅力や活力を向上させていくというような動きがあるようです。

§8Seiji Adachi

特にデジタル技術の活用による省力化と働き方の見直しといったものがあるようです。

§9Question

午前の講演でですね、長期金利が 1%を大きく上回る上昇をした場合、実質金利の上昇を通じて金融緩和の効果を低下させてしまうと、そういうお話をされたんですが、これ実質長期金利のお話だと思うんですけども、講演の資料をみるとですね、予想物価上昇率、中長期の部分なんですが、1%前半ぐらいにだんだん収斂しているような感じに見えます。やはりそういう意味では緩和効果という観点からですね、長期金利はやっぱり 1%前半ぐらい、その辺りが一つの緩和効果というか実質長期金利がプラスかマイナスになる分岐点になり得るのかどうか、その辺ちょっと実質長期金利どのように考えてるのかということも含めてお願いします。

§10Seiji Adachi

足元も含めてですね、長期金利の動きというのは日々変動してますので、こちらから何かその水準を具体的に申し上げるといろいろ影響ありますので具体的には申し上げませんけれども、より長い視点でみるとマクロ経済的に、やはりその実質金利が、今マイナスというのが非常に経済をサポートしてると思いますので、現状やはりプラスの領域に入ってくるというのは、ちょっとまだ時期としてはですね、悪影響の方が大きいのかなというふうに考えています。

§11Question

金融政策、特にマイナス金利政策について伺います。午前のご挨拶の方で賃金と物価の好循環はまだ十分に達成したと言える段階にはないっていうことだったんですけれども、マイナス金利の解除について、いつ頃どういった条件が整えば判断できると安達委員は考えてらっしゃるでしょうか。

§12Seiji Adachi

一つは、非常に定性的な言い方で申し訳ないんですけども、賃金と物価の好循環というのをずっと繰り返し申し上げておりまして、基本的にはですね、それが実現するという状況になるまでは、やはりなかなかベースとしてのマイナス金利の解除っていうのは難しいのかなというのは、個人的な考えです。だから今のところそこまでまだ行ってないのと、あとやはり来年の春闘を中心とした来年度の賃上げについてのいろんな情報がポツポツ入ってきてはいるんですけども、大企業は割と前向きだという印象があるんですけども、中小企業はですね、やはり今年度並みの賃上げをするかどうかということに対しては、かなり厳しいという声がございますので、そういう面ではいつ頃それを解除するかというような話というのは、まだちょっとできるような状況ではないかなというふうに思ってます。

§13Question

先ほどの質問に関連してですけれども、中小企業の方で今年度並みの賃上げを続けると事業に支障を来すということを指摘されたかと思うんですけれども、まあそういう声があるということを紹介されてたかと思うんですけど、例年大企業に比べると中小企業の賃上げっていうのは時期が後になると思うんですけれども、大体春以降だと思うんですけど、そうするとその趨勢を見極めるタイミングってのはですね、安達さんの中では春以降ということになるんでしょうか。どのぐらいの時期だとお考えでしょうか。

§14Seiji Adachi

そうですね。今年度もそうだったんですけども、やはり年度が明けないと実際の春闘でどれぐらい上がったかっていうのは中小企業も含めてですね、分かりませんので、そこはやはり非常に重要な政策決定をする可能性がそれでありますので、そこは慎重に私は考えた方がいいんじゃないかなというふうに思ってます。なので、年度明け以降ということになるのかなというふうに考えてます。

§15Question

新年度っていうことですね。

§16Seiji Adachi

新年度、はい。

§17Question

ちょっと前提の質問が、マイナス金利政策がいずれかのタイミングで解除されてですね、ゼロ金利に戻った場合にですね、ゼロ金利政策の状態っていうのは、審議委員の中では、それは大規模な金融緩和を継続しているというふうにお考えでしょうか。その状態についてはどういう認識をされてますでしょうか。

§18Seiji Adachi

それについては多分、解除をもし仮にしたときのですね、その経済状況、これ物価の方は 2%[の物価安定目標]というのはクリアしてるっていうのは、それはもちろんその通りなんですけども、まず、実体経済の状況がどうなってるかっていうところで、多分いろいろ変わってくると思います。私自身が今それについて何かイメージがあるかと言われると、いろいろ考えてる最中ですので、ちょっとこの場で何か言うことはできない状況です。

§19Question

賃金と物価の好循環について、今日の安達さんの講演からですと、春闘で高い賃上げが確認できれば、その賃上げの波及、サービス価格への波及というのは割とスムーズにいくのかなという印象を持ちまして、そうすると賃金・物価の好循環の確認というのは、あとは、来年度の賃上げの持続性、これを見極めれば、2%物価目標達成って判断が可能かどうかっていうのを教えてください。

§20Seiji Adachi

私は講演の中でも、特に粘着的な消費者物価っていうところに注目してまして、結局賃上げの物価への波及っていろいろあるんですけども、私個人的にはですね、やはり粘着的な物価というのがある程度全体の物価を下支えするぐらいの上昇率になるというのが一つのメルクマールだと思っています。その数字のイメージ感としてはですね、なかなかその通りいくかどうかっていうのはまだ分からないんですけども、やはりデフレになる前の状況を一応参考に考えております。

§21Question

数字ってどのぐらいですか。

§22Seiji Adachi

だから一応 2%の消費者物価指数上昇率と言ってますので、私の大体のイメージだと、粘着的な物価の上昇の寄与度がまあ多分 1.3~1.5[%]ぐらいというイメージで考えてます。現状はですね、まだ 1[%]割るぐらいだと、私の計算ではそういう感じなので、まだまだ道半ばですという話をしているということです。

§23Question

これまでの質問とちょっと重なる部分ありますが、午前の挨拶の中で出口の政策の議論を行う段階にないと言及されてますけれども、この議論を行える状況との距離感をちょっと改めて今の現状のご認識を伺えないでしょうか。

§24Seiji Adachi

今のところはですね、賃金と物価の好循環が 2%のインフレ目標実現に向けてきちんと回り始めるかどうなのか、現状はようやくちょっと回り始めるかもしれないなというようなイメージですので、それが回り始めるという確率が上がってきた段階で、ある程度高まった段階で出口の話をし始めるということです。実際はまだそこまでは行きついていない状況です。

§25Question

実質賃金の関係なんですけれども、先日植田総裁が国会で、緩和の解除を決める際に、実質賃金のプラス転換は必ずしも必要ないということをおっしゃっていたんですけれども、安達さんはその点についてどのようなご認識をお持ちでしょうか。

§26Seiji Adachi

なかなか難しい質問なんですけども、過去のデフレ局面においては、やはり物価の上昇が先に来ることが多くてですね、実質金利は暫くマイナスという状況の中、景気が回復してきてそれで実質賃金もキャッチアップするということが、過去としては多かったというかありましたので、そういう意味で必要条件ではないという意味だと思います。ただ、状況として今回コロナ禍明けでですね、いろいろ想定しない動きを内外経済みせていますので、そういう意味ではですね、実質賃金は先にプラスになる可能性もありますので、実質賃金プラスになればそれはもちろん非常に良いことですけども、そこは必ずしも必要条件ではないという意味だと思います。

§27Question

物価の上振れリスクを講演で話されていたと思うんですけれども、安達さんの見通しとしてはどのくらいを考えていらっしゃいますでしょうか。来年度、再来年度ですね。

§28Seiji Adachi

自分の[見通し]がどこの位置にいるかっていうのは [はっきりとは]ちょっと言えない話だと思うんですけども、大雑把に言って私は基本的に中心値ぐらいに今いるイメージです。私自身の見通しはそれほどずっと変わってないので、要するに、展望レポートで結構上振れてますけど、私の見通し自体はそんなに上振れていない感じですね。全体として[私の見通しは]高かったんだけども、今、中心値ぐらいにいますということです。イメージとしては 2%に、例えば 25年度では、やっぱりちょっとぎりぎり届かないのかなと。もちろん月次でどういうふうなパスを描くかっていうので、平均値は変わってくるんですけども、今のところはやはり、輸入物価の下落の影響はこれから出てくるっていうそのストーリーとしては、多分、全体の政策委員見通しも私の見通しも間違ってはないと思いますので、これから減速していくと思ってますので、そこがどういうふうになるかで変わってくるということだと思います。

§29Question

ちょっとアバウトな質問で恐縮なんですけれども、県経済の今後というところで、全体の概況はお話し頂いた通りだと思うんですけれども、今後、愛媛の経済が成長していくに当たってのポイントとか着目してる点、こういった懇談会とかの中を通して感じられたところがあればお伺いしたいと思います。

§30Seiji Adachi

なかなか私も不勉強なところがあってですね、それほど気の利いたことを言えるか分からないんですけども、非常に強みとしてあるのは、やはり観光資源だというふうに思ってまして、そこをどういうふうに生かしていくかということで非常に皆さんご尽力頂いてるというところです。観光業界というのも、お客様に対してのサービスですので、非常にノウハウというか実は結構難しいとこもある代わりに、高い付加価値を付けることができる産業ではないかというのを感じてましてですね、その付加価値をどういうふうに、人材も含めて付けていくかというところにかかっているというふうに思います。そういう意味で、非常に人手不足とかですね、どうしてもやはりサービス業っていうのは賃金はこれまであまり高くなかったですし、その割には非常にご苦労が多いということで、新しく入ってくるよりも流出していく方が大きいという、それをどういうふうにしてその流れを止めて、サービス業の方に向かってもらうかというような、そういう雇用の入口のところからの努力っていうのをかなりされているような印象を受けましたので、そこがやっぱり一つの活力というかポイントになるのかなというのは感じました。

§31Question

マイナス金利に関連して質問があります。午前の挨拶の中で、YCCの運用柔軟化に関して物価の上振れリスクに配慮するという、リスクマネジメントの観点が重要との説明がありましたが、この考え方というのはこのマイナス金利にも適用できるんでしょうか。つまり 2%の物価目標の達成には距離があるということで出口政策の議論とは切り離したうえでですね、リスクマネジメントの観点でマイナス金利を解除すると、このような考え方についてご見解を伺えればと思います。

§32Seiji Adachi

多分YCCで一つ目標としていた 10年物の国債利回りと、政策金利であるマイナス金利の部分とは、ちょっと性格が違うのかなというふうに思っています。一つはリスクマネジメントということで 10年物の国債の利回りの変動をより柔軟化してきたわけなんですけど、これはリスクマネジメントの一つとしてやはりイールドカーブが歪むということの副作用が、あまり二、三年前は意識していなかったんですけれども、意外と大きいということで、それがしかも企業の資金調達に影響を及ぼすという、そういうことが去年の後半くらいからだんだん分かってきましたので、それに対して一応措置をする必要がでてきたというのが主なポイントだと思います。長期金利は、結局その時の物価とか見通しとかにも影響を受けて動きますので、あまり現状のインフレ率とかけ離れた、当時、10年債利回りをもう思いっきりゼロに固定する、ゼロ近傍に固定するっていうのは、その現状のインフレ率との兼ね合いではやや不整合といいますか、言ってみればものすごいデフレの時に行われた政策を、ものすごいデフレでない時にも同じように適用していたっていうところの副作用みたいなのが出てきていましたので、それをより物価が上振れた時のために柔軟化しましたと言って、その向こう側というかその先には、企業の資金調達がイールドカーブが歪むことによって支障を来すということがありましたのでやったわけですね。

§33Seiji Adachi

ただマイナス金利の解除っていうのはそれとちょっと性格は違っていて、ここはマイナスにしてること自体は一応非伝統的というか通常とは違うんですけども、政策金利として短期金利を操作するっていうのは、それはオーソドックスな金融政策の一面もありますので、そこは多分非常に根幹ではないかなというふうに思ってますので、私は一応区別はしてます。

§34Question

先ほど懇談会中の出席者からのお話の中で、金利上昇による中小企業への影響を配慮して政策を決めてほしいみたいな要望があったとお話がありましたけど、改めてその要望を受けた受け止めとかですね、どう考えていきたいかっていうのは、何かあったらお願いします。

§35Seiji Adachi

今現在ではですね、金融政策についていろんな見方がありまして、これはもちろん現在の物価上昇というのが、どちらかというと輸入物価の上昇、コストプッシュみたいなところがあるので、それが剥落してしまうと実はそんなに日本経済も強くないので、現状の緩和を維持すべきだっていう考えの方もいらっしゃれば、もうデフレという時代は終わったのだから、正常化してもいいんじゃないかという意見もあるということで、その中でどうするかってことが問われているわけです。今回特に地域の中小企業の方のお立場ということで限定はされているんですけども、将来の金利上昇に対するリスクというのはかなり思ったよりも大きいかもしれないという割と切実な訴えみたいなところもございましたので、そこは考えていかなければならないなと思います。これが、例えばよく俗に言う、言い方は悪いですがゾンビ企業みたいな話ですと、それはある意味、資本主義の社会ですから、自己責任というところもあるんでしょうけれども、そういうところでやはり単純に割り切れない部分で、過去のコロナ禍での状況とかもあってですね、なかなか状況は複雑でありますので、その辺は十分考慮しなければならないなというような印象は受けました。

§36Question

挨拶の中で、コロナ禍を経て日本経済の実力が問われている段階に入りつつあるというお話があったかと思うんですけども、これもう少し細かく言うと各都道府県、各地域の経済の実力が今後問われていくという受け止めをしてもいいものでしょうか。

§37Seiji Adachi

それは、よりミクロの方に引き付けるとそういう話になってくるのかなと思います。特にコロナ禍明けてみると、これはどの地域もそうなんですけども、人手不足っていうのがよりはっきり表れてきていて、しかも例えば交通とか運輸とかですね、基礎的なインフラに近いところでより深刻化してるっていうのも、これ全国でもそうなってますので、そういう意味ではいろんなところでですね、真剣に考えなきゃいけないなっていうところは出てきてるとは思います。以上