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日本銀行記者会見2023年12月6日氷見野良三, 副総裁

氷見野副総裁記者会見(2023年12月6日)

全文

§1Question

副総裁、ようこそ大分へ。それでは、質問を二つほどさせて頂きたいんですけども、最初一つ目ですね、今日の金融経済懇談会ということで、どのような議論が行われましたか。それから、印象に残った話し合いとかですね、何かありましたら、よろしくお願い致します。

§2Ryozo Himino

今日の意見交換会では、大分県の経済の状況ですとか、あるいは企業経営のうえで、どんな課題に直面しておられて、どういう取り組みをされているかとか、あるいは日本銀行の政策についてのご意見とか、大変率直にいろいろお伺いすることができて、大変貴重な機会だったと感謝しているところであります。今日お伺いした印象では、全体としては大分県の経済もコロナ前の状況に戻りつつあるけれども、業種によって、あるいは企業規模によって直面しておられる状況には、かなりそれぞれ違いがあるというような印象を受けました。また多く経営者の方々から聞かれた、今、直面している課題みたいな話としては、一つは、原材料価格の上昇の影響とか、人手不足の問題とか、あるいは物価高が消費に与えている影響の話とか、そうした課題に苦労しながら取り組んでおられる様子をお伺いしたところです。日本銀行の政策につきましては、中小企業の状況、小規模企業の状況をよくみながら、柔軟に対応してほしい、というご意見ですとか、あるいは何か動くときにも一気に何かやるというよりは、段階的な対応を考えてほしいというご意見だったように記憶しております。

§3Question

それからあと二つですね、地元紙なもので、大分県内の金融それから経済情勢について、どういうふうにみられていらっしゃいますでしょうか。

§4Ryozo Himino

まず大分県の経済の方ですけれども、様々な特産品があって、製造業については、新産業都市指定以来、県内各地にいろんな工場の集積があって、更に観光業については、様々な観光資源に恵まれて、また[宿泊旅行に関する]アンケートでは、全国で総合満足度一位といったような結果も出ているということで、大変いろんな強みのある経済だというふうに受け止めております。今後につきましては、他の多くの地域と同じですけれども、人口減少が一つの課題ですが、いろいろ対応策も工夫されているというふうにお聞きしておりますし、また、新しい成長分野を作りだすような取り組みも進めておられるということですので、いろんなそうした取り組みが、経済の更なる発展につながっていくことを期待しております。金融情勢についてもということでしたけれども、特にコロナの間というのは、コロナに苦しんでおられる事業者の方を支えるということで、地域の金融機関もいろんな工夫をしながら、きめ細かな対応をしてこられたというふうに承知しております。そのうえで、ゼロゼロ融資の返済も本格化する中で、事業面の改善も含めて、伴走型支援というようなことも聞きましたけれども、お客様に寄り添った取り組みを進めて、そのうえで健全性と金融仲介機能の発揮の両立に努めておられるというのが現状かなというふうに理解しております。

§5Question

金懇での挨拶でですね、副総裁、「賃金と物価の好循環を良く見極めて、出口や進め方を適切に判断する」とおっしゃいましたが、その出口を判断できる時期を具体的にどうお考えなのか、好循環の実現を見通せるには来年の春闘が重要なポイントとなりますけども、連合が 5%以上の高い要求水準を掲げて、更に大企業の一部ではですね、積極的な賃上げを既に表明している企業もありますけども、この 3月中旬の集中回答まで待つ必要があるのか、また、3月の中旬の集中回答を状況をみてから判断するのか、または中小企業というのはその後になりますから、中小企業の状況が判明するのは、そうすると 4月以降になるのか、その辺のタイミングについてですね、伺えないでしょうか。それともう一つ、進め方も適切に判断するとおっしゃいましたが、出口の進め方についてですね、マイナス金利の解除とか YCCの撤廃、またマネタリーベースのオーバーシュート型コミットメントをどうするのかとか、その辺の進め方について想定されているものがあれば、伺えないでしょうか。

§6Ryozo Himino

タイミングと進め方について、ご質問頂きました。まずタイミングですけれども、結局、物価安定の目標を持続的・安定的に実現できると見通せるかどうか、ということになるわけですが、その見通すにあたってどういう要素が大事かということになりますと、今お話があったように賃金と物価の好循環の状況というものをよくみていく必要があると、それをみていくうえで、いろいろ考慮し得るポイントというのについては、今日いくつかご紹介させて頂いたわけですけれども、それに加えて、消費ですとか設備投資の状況、あるいは海外の経済の見通し、様々なものをみながら判断していく必要があります。ただ、いろんなものをみていくといったときに、全部青信号が灯るということも実際の経済ではないわけですし、全部赤信号という状態もないわけで、実際には経済の動きの中でいろんなシグナルが混じって観察される中で、どこかで判断していく必要があるということだというふうに思います。ですので、どこの段階でとか、これをみてからとか、何か予めスケジュールを決めてというよりは、何が起こっているかというのを本当に虚心坦懐にみていくということを続けるということではないかというふうに思います。あとは進め方ということで、現在の大規模な金融緩和にもいろいろな要素があるわけですけれども、それを例えばどういう順番で外していくのかとか、大変ご関心の強いところだというふうに思います。

§7Ryozo Himino

これについては、実は今年の 5月に金融研究所が国際コンファランスというのをやりまして、そこでオルファニデス先生が、海外の当局がある意味出口を経験したときのことをいろいろ比較して議論をされておられたんですけれども、まずこれをやってからその後これをやりますみたいなことを言った結果、タイミングが間違ってしまったみたいなこともあったというのがオルファニデス先生の見方で、可能な範囲で政策反応関数って言っておられましたけども、どういうふうな考え方かということを説明していくことは、大事なんだけれども、予めいろんな対応の順番とかを決め打ちすることは、マイナスが大きいということをおっしゃっておられまして、私もそうかなという感じを持っております。もちろん私どもも、物価安定の目標を持続的・安定的に達成できると見通せるまでは続けるということは、フォワードガイダンスをしているわけですけれども、ではその条件が満たされたときに、どれからどういう順番でということについては、むしろその時点できちんと判断していくということの方が望ましいのではないかというふうに考えております。

§8Question

質問は二点でして、一点目は、今の質問に関連するんですけども、好循環というお言葉、今日の挨拶でもありました。これからそこを見極めていくといったお話ですけども、今の時点でですね、統計のお話もいろいろご説明頂いてるんですけども、既に好循環は起きているという認識なのでしょうか。もう一つはですね、マイナス金利の解除について、マイナス金利といいますか、正常化に関して、した場合の影響の試算をお示しになられてますけども、実際そのマイナス金利が続くことの副作用というか、マイナス面についてはどのようにお考えでしょうか。

§9Ryozo Himino

好循環が起きているのかということについては、ゼロではもちろんないと思います。少しずつ起きているということではあると思いますし、今後それが更に強くなっていくことを期待しているわけですが、では現在の進み方の状況をこの程度まで来てると、何合目まで来てると言えるだけの自信があれば、今日申し上げたのですが、そこまでの判断ができていないので、いろんなことをみながら、こういうことを考えておりますということをご紹介させて頂きました。あと、出口の影響について、非常に狭い範囲の金利の受け払いの変化に着目して、多少その他のこともお話ししたわけですが、影響はそれだけにとどまるわけではなくて、おっしゃる通り、ある意味いわゆる副作用と言われてるものが、今度は逆に出口を経れば副作用が小っちゃくなっていくというようなこともあるだろうというところは、併せてみていく必要があることだろうというふうに思います。そうした副作用の面とかについては多角的レビューの中で、実は一昨日のワークショップでも、例えば金融市場の機能に与える影響ですとか、金融機関行動に与える影響とか、副作用も含めて、議論を行ったわけですけれども、ワークショップの議論の結果も踏まえて、ブラッシュアップしたうえで、私どもなりの効果と副作用両面の見方というのは、お示ししていきたいというふうに考えております。

§10Question

二点ありまして、一点目は午前の挨拶の中で、企業の価格・賃金設定行動に変化があるかどうかというところで、氷見野さんは 4 段階まで示されたんですけれども、4段階は植田総裁もおっしゃってないことで、新しい要素かと思うんですけれども、氷見野さんは物価目標を達成するかどうかの見極めの際には、この第1 段階から第4段階まできちんと変わってきてるってことまで見極めないと、物価目標達成という判断はできないとお考えなのか。そうした場合に、来年の春闘集中回答日過ぎてもやはり見極めには時間を要するということなのか、この点が一点目です。二点目は、同じく挨拶の中ですけれども、先ほど言及ありましたけれども、結構かなりのパートを出口戦略を取ったときの家計・企業・金融機関の影響の説明に割いてるわけなんですけれども、これはむしろ出口戦略を取るタイミングが近いので、この読み手の方には心の準備をしてくださいという意味で、氷見野副総裁としてはこの説明を入れたのか、この辺の真意はどこなのか、以上、二点お願い致します。

§11Ryozo Himino

まず、一つ目の企業行動の変化の 4 段階ということですが、何か新しいことを言ったかというと実はそうではありません。植田総裁の大阪や名古屋での講演を読んで頂くと、いくつかまとめて話しておられるんですが、詳しく読んで区分していくと同じことになると思いますので、はっきり言って正直言い方が変わってるだけで、中身はそんな変わってるというふうには自分では考えておりません。これはもう四つの条件を決めてハードルを上げたのかというご質問だったと思いますが、これは起きてることをなるべくうまく理解していくための道具として申し上げたわけで、さっきも申しましたが、全部青信号がつかないとって言ってると、そんなことというのは世の中は起きませんので、よく理解したうえで判断していくと、ですので何か春闘をみても、何か第 4 段階が確認できるまでは何もすべきでないとか、そういう主張をする意図は全くありません。

§12Ryozo Himino

あと、出口の話をいろいろしたのは何か意図があるのかというご質問だったかと思いますが、既に金融学会で植田総裁も仮に出口のような状態になったときに、日銀の財務にどういう影響があるかというのについては、大変詳しく講演をしているところでありまして、出口ということについては、物価安定の目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になれば、検討するということであって、そこは何ら変化がないわけですし、そこで何をするかというのについても、先ほど申し上げた通り、何か順番とか決め打ちできるわけではないということで、そこに何か変化があるということではなくて、仮に条件が満たされれば出口も考えていくということであれば、出口ということが起きた場合のことについても、日銀の財務に与える影響だけではなくて、考え得る点はそれなりに考えてみようということで、申し上げたわけです。

§13Question

私からも二点お願いします。まずですね、足元の物価高についてです。先ほど、氷見野さんのお話の中でも、地元の企業の方も物価高で原材料高に困ってらっしゃるという声もあったと思うんですけど、やっぱり国会でも、なかなか日銀の金融緩和的な姿勢もあって、円安が進んで、物価高が進んでるんじゃないか、という声も出ておりました。そのことに対する受け止めと、あと、今日の地元の企業さんとの懇談の中で、そういったご意見はなかったか。物価高に対するもう少し具体的な声などがあればお願いします。二点目がですね、賃上げと人手不足についてお願いします。日銀の過去のいろんな調査の中でも中小企業さんにとっては、なかなか今年度と同じような賃上げができるかどうか迷ってる企業が多いみたいな声もあったと思います。今日の大分の皆さんとの懇談の中で、そういった賃上げについてどんなご意見があったか、教えてください。そして人手不足という話もありましたけど、今、九州では熊本の半導体工場の関連で九州全域的に人手不足というのもありますけど、そういった影響など出ているのか、どのように分析されてるのか、お願いします。

§14Ryozo Himino

まず、懇談会で物価高についてお話があったかということですけれども、輸入物価、原材料価格の上昇で経営に影響があるというお話とか、あるいはその物価高が、個人消費にどういう影響が出ていくのか、気にしているといったお話とか、そうしたお話が出ておりました。そのうえで、足元、物価高なのになぜ緩和しているのか、というところは、おっしゃる通りいろんな方がなぜだろうというふうに思っておられる問題ではないかというふうに思いますし、私どもも足元の物価高、特に食料品とか日用品とかは、全体の上昇よりも更に大きいということがありますので、家計とか、あるいは中小企業の方とか、影響が大きいということは十分認識しているつもりであります。そのうえで、なぜそういった中で緩和を続けているのかということなんですけれども、私どもの分析では、足元の物価高は輸入物価の上昇の影響の波及という面が大きいというふうに考えておりまして、その輸入物価の上昇についてはかなり落ち着いたということで徐々にその影響が出て、輸入物価が原因となっているような物価高というのは落ち着いていくだろうと。だろう、だろう、と申し上げて、なかなかそうならないので、ちょっと申し訳ないんですけれども、火曜日に出ました東京都区部の 11月の速報でみますと(注)、少し輸入物価の影響というものが、減衰してきたようなしるしがみえてきたような感じも致します。

§15Ryozo Himino

ですので、足元の物価高を何とかしたいということと、経済の緩やかな回復を守っていきたいということと、来年の賃上げがきちんと行われるような環境を整えていきたいということと、もう一度デフレに戻ってしまうことは避けたいということをいくつか悩んだうえで、金融政策というのは効果が完全に出るまでは 1年以上かかるといったようなこともありますので、現時点では粘り強い緩和を続けていくことが、そういったいろいろなところを考えたうえで、ギリギリ一番良い対応ではないかと思って、こういうことを行ってきたわけであります。もう一つは賃上げ、あるいは人手不足の状況、それで次、賃上げどの程度やっていくのかという点についてですけれども、今日お伺いした話は、来年度どうするかというお話はあまりお聞きできませんでした。ただ人手不足には、大変直面しておられて、人件費を上げなければならないということも、経営には圧迫要因になってるといったところは、お伺いしたところであります。来年度どうなっていくかというところについては、なかなか見通しがたいところがありますし、多くの経営者の方はまだ迷っておられる方も多いんだと思います。

§16Ryozo Himino

私どもとしては、いろんな今日行ったようなヒアリング、あるいはいろんな経済団体、労働団体の方のご発言、更にはその企業収益の状況とか人手不足の状況とかをみながら、どうなっていきそうかっていうところをよくみていくということだと思いますけれども、今の時点で予想を言うのはちょっと早いんだと思うんですが、企業収益の状況とか、あるいは、足元までの物価上昇の状況とか、あるいは人手不足の状況とかからすれば、それなりにしっかりした賃上げが来年度も続く可能性というのは、それなりにあるんではないかというふうに考えております。

§17Question

先ほどのお話の中で、四つの条件について、春闘みてもその条件が確認できるまでは、というつもりはないというふうにおっしゃっていましたけれども、逆に賃金と物価の好循環が、年内もしくは年明けに確認できる可能性はあるのか、ある場合はどの程度と現時点でお考えかお伺いできればと思います。

§18Ryozo Himino

四つの条件とおっしゃいましたが四つの条件というつもりはありませんで、四つの段階という区別の仕方をして、起きてることを理解しようということで、条件というつもりはございません。そのうえで、じゃあ一体いつ頃見極められるのか、年内なのか、年明けなのかというご質問だったと思いますが、いつ見極められるだろうというふうに特定の予想は、私は現在持っておりませんで、非常に賃金と物価の好循環だけでも複雑な現象ですので、今日、講演で申し上げたかったことは、引き続きしっかり見極める努力を続けていくことが大事だということを申し上げたところにとどまるわけで、それ以上の洞察は現在持っておりません。

§19Question

先ほど大分の経済情勢についてもお話がありましたけれども、今回の懇談会の中では、原材料価格の高騰であったりとか人手不足の課題ってものが地元の経営者にはあるっていうところで、それに対して、具体的にどういった対応が求められるのかっていうことのお考えをお聞きしたいのがまず一つ。あともう一つが TSMC、これ熊本ですけれども、 TSMCの中で大分も含めて九州への波及効果としてどういったことが考えられるのかってこと、そこについてのお考えをちょっとお伺いしたいです。

§20Ryozo Himino

原材料価格の上昇ですとか、人手不足に企業としてどう対応していったらいいかというのについては、なかなかこれをやればいいんだというアドバイスができるほどの知見はないんですけれども、今日出席された経営者の方からお聞きした話で申し上げますと、原材料価格の面については、一つは政府の対応に期待するという声がありました。転嫁について公正取引委員会とか中小企業庁とかも始め、いろいろ企業への働きかけとか、モニタリングを進めているわけですけれども、そうしたことをもっとしっかりやってほしいといったようなお話がありました。また人手不足につきましては、いろいろ工夫をされていて、例えば今まで、あんまり言うとどなたがおっしゃったかわかってしまっちゃうんですが、こういう範囲で人集めをしていたけれども、これまで必ずしもお願いしてこなかったような人材、年齢とか性別とか、そういった採用のスコープを広げることで工夫してます、といったようなお話もあったところであります。九州全体、半導体関係の工場の新設などを含めて人手不足が厳しくなるという面もあるわけですけれども、全体としては経済活況を呈する方向にあるということかと思います。

§21Ryozo Himino

昔から、私も古い世代なんで、格言では「景気は西から」というふうに言っておりまして、九州で起きてることが日本全体に伝わっていって、景気が西からで広がっていくということになっていったらいいなというふうに考えております。(注)会見では「月曜日」と発言しましたが、正しくは「火曜日」です。以上