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日本銀行記者会見2024年11月18日植田和男, 総裁

総裁記者会見(2024年11月18日)

全文

§1Question

地元幹事社から大きく二点、まとめて伺います。まず一点目なんですが、午前中の金融経済懇談会についてであります。植田総裁のご挨拶の中で、特に力を置かれた部分についてお聞かせ頂きたいのと、地元代表者・出席者から出された意見に対する感想についてそれぞれお願いします。二点目なんですが、当地の経済についてのご認識をお願いします。足元の為替は対ドルで 150 円台半ばの円安水準で推移しておりまして、エネルギーコストの上昇なども企業業績の懸念材料にあります。一方で当地では、10月末にスタートアップ支援拠点のSTATION Aiが開業するなど、新しい産業を生み出そうとする動きも活発になっています。こうした中の当地区の経済の現状に対する評価、今後の見通しについてお聞かせ頂きたいと思います。

§2Kazuo Ueda

まず一点目ですけれども、本日の懇談会では、最新の私どもの展望レポートの内容を紹介致しました。その際、海外経済が本当に緩やかな成長経路を辿っていくかどうか、そして国内で賃金の上昇が続いて物価との好循環が引き続き強まっていくかという二点について、時間を割いてお話し致しました。また、日本銀行の政策運営の基本的な考え方についても、改めてですが説明させて頂きました。懇談会では当地の経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の動向、日本銀行の政策運営に対する貴重なご意見を承りました。大変有益かつ示唆に富む、かつ幅広い問題についてのご意見を伺えたことについて、感謝申し上げたいと思います。いろいろご意見頂きましたけれども、いくつか紹介させて頂きますと、まず二問目とちょっと重なってしまいますが、当地の景気については、総じてみれば緩やかに回復しているという見方が多く聞かれました。製造業ですが、主力の自動車関連における生産停止の影響が解消している点に加えまして、半導体需要も回復しているというご指摘がありました。非製造業ですが、こちらもインバウンドや人流の増加によって、そこそこ活発化しているという話が聞かれました。ということで、当地では、製造業、非製造業ともに回復の動きがみられることを改めて認識致しました。それから、賃上げの進展が個人消費の増加につながるというプラス面についてのご指摘もありました。

§3Kazuo Ueda

一方で、中小企業を中心に、価格転嫁が必ずしも容易ではなくて業況の改善が伴わない中でも、人材確保のため賃上げをしている先もあるというふうにも伺いました。今後こうした話を受けて、賃上げの動向については、業種や企業規模などの違いを含めて丹念に点検する必要があると改めて感じた次第です。それから、海外経済、アメリカや中国等、不透明感や、ウクライナや中東を巡る地政学的リスクの高まりが懸念材料という声も多かったかと思います。あと、リニア中央新幹線の開業に対する期待が示されましたし、東海 3 県の中小企業を対象に、企業間のノウハウ共有を促し、生産性を向上させるための取り組みを行っているというお話も頂きました。GXやDX投資、それから M&Aなど、企業の前向きな投資活動を後押しすることが当地の金融機関にとって重要とのご指摘も頂いています。様々な課題の解決に向けた関係者の方々のご尽力に対し、深く敬意を表するとともに、こうした取り組みが当地経済の発展につながることを期待しています。この問いへの答えの最後としまして、今後とも適切な金融政策運営を期待したいとの言葉を頂きました。私どもとしても、中央銀行としての立場から、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現していくことを通じて、当地経済に貢献してまいりたいと思っております。

§4Kazuo Ueda

それから二番目のご質問ですけれども、先ほども申し上げましたが、足元の当地景気については、緩やかに回復していると私どもも判断しております。生産・輸出が増加基調にあるほか、個人消費も、所得環境の改善もあって、サービスを中心に増加基調が緩やかながらもはっきりとしてきたとみています。それから、中長期的な視点からみますと、講演でも触れましたように、当地経済は、自動車関連を中心に、強固なサプライチェーンを有するものづくり産業の集積地として、これまで様々なイノベーションを通じてわが国をリードし続けてきたと認識しています。今日の話の中で、先ほどご指摘頂いたSTATION Aiに関する話もいろいろ出まして、その開設を通じて、スタートアップと既存産業・学術機関の協業によって、イノベーションの推進が加速するなど、スタートアップの成長が地域全体の生産性にプラスの影響を与える可能性を感じています。こうした産学官金の連携による取り組みで当地経済、あるいはわが国経済がますます発展することを期待しています。

§5Kazuo Ueda

更に今日お話をいろいろ伺ってみますと、当地でこのプロジェクトに直接、間接に関係していらっしゃる方々のある種本気度合いといいますか、そういうものがひしひしと感じられまして、私も期待感を強めたところですし、話ではパリにSTATION Fという同じような組織があるそうで、そこを参考に作られつつある、パリのこちらの組織STATION Fの方は非常に成功をしている、ということですので、ますます期待してみているところですし、私も時間があれば、現地を視察してみたいなと思った次第でございます。

§6Question

アメリカ経済の先行き、様々なリスクがあると、点検していく必要性があると説明されていますけれども、点検には一定の時間がかかるというご認識でしょうか。トランプ氏が大統領に着任するのは来年1月になりますが、経済・物価に及ぼす影響、どれぐらい時間をかけて見極めたいとお考えか教えてください。また、講演の中で、毎回のMPMで金融緩和の度合いを調整するか検討していくとおっしゃられてますが、来月にもMPMありますが、次回会合でも利上げの可能性はあるということか教えてください。

§7Kazuo Ueda

アメリカ経済を含めまして不確実な点とか、あるいは今後変動がいろいろ予想されるというような、変動を確かめたいというような点は、ある意味無数にありまして、それを全部待ってて、それから政策をするということではなくて、毎回の金融政策決定会合で、そこまでに入ってきましたデータ、それからその他の情報ですね、これを毎回毎回点検し、それに対応して適切な政策を行っていくという、これまでの基本姿勢に現在でも変わりはございませんとお答え致します。

§8Question

このところ為替市場で円安圧力が再び強まってます。最近の円安がですね、輸入インフレを上昇させて、国内物価を上振れさせるリスクは強まらないのか。特に 7月はですね、国内物価の上振れリスクが利上げの一因になったと思います。当時の状況と現状は違うのか、また似たようなところがあるのか。この辺りについてお願いします。

§9Kazuo Ueda

いつものことで申し訳ないですけど、為替レートの短期的な動向にはコメントしないことにしております。ただ、いずれにせよ、為替を動かしている背後の経済要因を含めて、私どもの物価・経済見通しにどういう影響があるか、あるいは中心的な見通しの周りのリスクにどういう影響があるかということを日々分析をし、毎回の決定会合でそれを積み重ねて、そのうえで、各会合で判断していくという姿勢でございます。

§10Question

今日午前の講演でですね、金融政策運営のところで、金融緩和の度合いを少しずつ調整していくことは、息の長い成長を支え、物価安定目標を持続的・安定的に実現することに資するとご発言されました。この息の長い成長というのはどういうものをイメージされているのか、もう少し具体的にご説明頂きたい。あと、金融緩和の度合いを判断する上で、その先行きの見通しというのは、海外経済と賃金と物価の好循環の二つがポイントというふうにおっしゃいましたが、この息の長い成長というのを実現するためには、これもですね、その判断時期ですとか、ポイントになってくるのか、その点について教えてください。

§11Kazuo Ueda

息の長い成長と申し上げたのは、足元金融緩和度合いが、例えば実質金利等でみて、かなり強いということとの関係で申し上げたわけですけれども、適宜その度合い、金融緩和度合いを私どもの見通しに応じて調整していかなかった場合には、場合によってはですけれども、どこかでインフレ率が急に加速するとかいうことが発生して、急速な金利の引き上げを迫られるという可能性もゼロではないわけです。そういうことがないような経済パス、あるいは政策運営を行うことによって、例えば、今 1%前後の成長が当面見込まれるという見通しを出していますが、これが長続きする可能性が出てくるというような意味合いで使っております。それから、後半のご質問はちょっと聞き取れなかったんですが。

§12Question

今の説明で何となく理解できたんですけれども、要するにタイミングを誤らずにやりたいということで、その判断の鍵となるその見通しというのは、海外経済と賃金物価の好循環、これを見極めていくということに変わりはないということでよろしいでしょうか。

§13Kazuo Ueda

はい。海外経済、賃金動向、そしてその他にもいろいろな要因がありますが、こういうことが物価・経済にどういう影響を及ぼしていくかという、そこの見通しを誤らないようにしたいということでございます。

§14Question

先ほどの金融緩和の継続によってですね、場合によってはインフレが加速する可能性もあるというふうにご発言されまして、日銀では経済・物価が見通しに沿って推移すれば、利上げによって緩和度合いを調整してくる話をされてるんですが、 9月、10月の会合ではオントラックとの判断を示されながらも、金融緩和を維持されました。先ほどのご発言に沿って考えると、やはりそれによって、ビハインド・ザ・カーブのリスクというのは高まっているのではないか、蓄積されているのではないか。国内の経済・物価は順調な一方で、海外経済というですね、外部要因の不確実性によって金利を抑えつけていると、先行き利上げのマグマがたまるという、そういうようなご認識でよろしいのか確認も含めてお願い致します。

§15Kazuo Ueda

そこは程度問題だと思いますけれども、7月に戻ってみますと、為替からくる物価上振れリスクもありましたけれども、基本的には、そこまでの経済に関する情報が、その前の時点での見通し対比大体オントラックであり、その少し先もそのままいきそうであるという中で、利上げをしたわけでございます。その後のデータは、やはり広い意味でオントラックであるわけですけれども、 7月の時点でみていた姿に比べて、どれくらいオントラックの度合いが上方修正されたのか、こういうような点を毎回の決定会合で確認しながら進んでいくということでありまして、オントラックであれば毎回利上げをしていくということではなくて、見通し通りに進んでいることによって、見通し期間後半の足元の見通しが見通し通りに進んでることによって、見通し期間後半の見通しが実現する蓋然性、確度がどれくらい高まったか、ある程度以上高まるということが自信が得られたときに次のステップに移るような、大まかなプロセスで考えております。そういう意味では、ビハインド・ザ・カーブには一方で陥らないように、適切に判断は続けていきたいというふうにはもちろん思っております。

§16Question

先ほどの質問とご回答にも関連するんですけれども、講演では、企業の中で賃上げの必要性が、必要についての認識が強まっているということと、あと 10月の価格改定期に、サービス価格にも上昇の動きがみられていると。こういった面からみますと、国内については少なくとも、再利上げできる環境が整っているように思うんですけれども、先ほどの物価が持続的・安定的に 2%に達成する蓋然性が高まってるかどうかの判断において、前進がみられているのか、おっしゃってたように 7月以降どうかっていうときに一層前進しているのか。国内の環境についての評価をお願いします。

§17Kazuo Ueda

もちろん、前進はみられていると思います。賃金は、どうでしょうか、3%、基本給、一般労働者のbase wage の前年比増加率でみて、2.5 から 3[%]の間でここのところ数か月安定していますし、それからサービス価格については、10月の改定期をひとつ注目していたんですけれども、まだ全国の CPIが、今週ですかね、今週後半に発表になりますので、それをみたいとは思いますけれども、東京について出た 10月のデータはある程度サービス価格への転嫁が進んでいる、進み始めている、というものであったと判断しています。ただ、そういうふうに、ある程度国内経済について良い方向でデータが少しずつ出ているわけですが、これをその他の全体のデータ、情報と合わせて、総合判断した場合にどうなるかということでございます。

§18Question

すいません。もう一点あるんですけれども、財界との懇談の中で過度の円安については、コスト高を招いて、非製だけでなく製造業にも悪影響を及ぼすので望ましくないという趣旨の発言がありました。この円安の及ぼす物価だけでなく経済への影響についての評価をお願いします。

§19Kazuo Ueda

これはずっと前から申し上げていることですけれども、円安がコスト高になって、消費者あるいは一部の企業にマイナスの影響を与える面ももちろん大きいわけですけれども、当然輸出企業にはプラスになる面もありますし、それからインバウンドの需要にはプラスの影響もあるということで、経済全体の評価はなかなか難しい、経済全体への円安の影響の評価はそう簡単ではないと思ってはおります。

§20Question

二点お願いします。一つ目がですね、午前の講演の中で、実質金利の水準がかなりマイナスにありますよねという話をされてらっしゃったと思うんですけれども、経済の成長に資するものだとは思うんですけれども、一方で金利が大幅にマイナスな水準にあることの弊害というものがあるのではないかと思うんですけれども、その辺りのご認識をお伺いしたいのと、それが今後の利上げの判断の材料になるのではないかというふうな印象もあるんですけれども、その辺りのお考えをお聞かせ頂きたいということが一つ目です。もう一点が、アメリカのトランプ大統領の当選が確実となった今ですね、議会の方もトリプルレッドというような状態になって、掲げている公約の実現の可能性が高まっているという状況だとは思うんですけれども、それが日本の経済・物価にどのような影響を与えるというふうに現時点でみていらっしゃるのかも併せて教えてください。

§21Kazuo Ueda

一点目は、先ほどご質問があった点とちょっと重なるとは思いますけれども、実質金利がすごい低いということからくる悪影響といいますか、弊害ですけれども、私どもの観点からしますと、やはりどこかでインフレ、特に基調的なインフレ率の上昇が加速してしまう、2[%]を超えて加速してしまうというリスクだと思っていますし、そうなってしまうと利上げのペースを思った以上に早めないといけない、そこからくるいろんな問題が出てくる。そうならないように適切に金融緩和度合いを調整していきたいというところで、ここの判断は、私どもにとっては本質的に重要なものだというふうに思っております。それから、トランプ新大統領誕生がほぼ確定的になっている中で、その公約ないし、新しい政策についてですけれども、これは午前中も懇談会で話に出ましたけれども、やはりまだ大統領の就任が来年1月ですので、そこから具体的な政策が決まっていくという段階ですので、現状ではそれをどうなりそうだ、こうなりそうだということを、私の立場で予想して申し上げるのは差し控えさせて頂きたいと思います。決まっていき次第、私どもの見通しには適切に織り込んでいきたいと思っています。

§22Question

不確実性というのは高いということなんですけれども、総裁、以前から不確実性がなくなることはないということも一方でおっしゃっていまして、今年のですね、7月の利上げの前には、総裁、6月の時点で7月に利上げをする可能性は十分あるということをおっしゃっていました。今、毎回の会合でデータ、マーケットの状況などをみながら決めていくということですが、それは 12月の利上げというのは十分可能性があるということなのか、それとも今リスクが高い、不確実性が大きいだけにそこまでは今言える状況ではないということなのか、お願いします。

§23Kazuo Ueda

毎回そこまで、例えば12月会合でしたら、10月会合から追加で得られたデータ、情報をベースに、見通しを修正しまして、必要があればですが、それからリスクに対する評価も修正しまして、それでその時点で適切な判断をするということでございます。

§24Question

総裁、挨拶で実質金利が非常に大きなマイナス圏にあるということで図表も示されているんですけれども、この実質金利のマイナス幅の大きさをみますと、次の利上げをしても引き続き実質金利というのは大幅なマイナス圏のままではないかなと思いまして、そう考えると、実質金利のこの大幅なマイナス圏というのを踏まえますと、追加利上げもハードルは相応に低いのではないかなと考えますが、この点についてはいかがでしょうか。あともう一つ、為替についてですけれども、投機筋にとってのこの円キャリー取引というのが、現状どういうふうな推移になっているというふうに総裁ご覧になっているかということと、今のマーケットではドル高っていう感じになってますけれども、結果的にドル円というのがなかなか下がらない現状において、日本の物価に対する影響をどういうふうにご覧になりますでしょうか。

§25Kazuo Ueda

仮に利上げをしたときに、実質金利がどうなるかですが、ちょっと教科書的で恐縮ですけれども、そのときにインフレ期待がどういうふうに動いているか次第かと思います。インフレ期待がある程度上がりつつある中で、少し利上げをしたという場合ですと、実質金利はほとんど上がらないという可能性もあるかと思います。それから、実質金利の水準をどう評価するかという点になりますと、ずっと前から議論させて頂いていますように、中立金利を実質でみた場合に、どれくらいかという議論との相対でそれを評価するということが、これもまた教科書的には考えられますし、中立金利の推計値の中には実質金利がマイナスだというものもあるので、それにも目を配りながら、実質金利の水準をみていくということになるかと思います。それから、円キャリートレードにつきましては、ちょっと出張が続いて足元のポジションを、そもそも足元のポジションはなかなか分からないんですけれども、完全には把握できておりませんが、私のみております限り、そんなに大きな片方向へのポジションの偏りは現状、例えば 7月初めにみられたようなポジションの偏りはないのではないかというふうにみております。為替の見通し、インフレ率等に与える影響については、先ほど来申し上げていますように、各会合において、その他の情報とともに点検していきたいと思います。以上