総裁記者会見(2011年4月15日)要旨
全文
§1Masaaki Shirakawa
今回のG20では、世界経済の回復は拡がりをみせており、民間需要が力強さを増す中で、より自律的なものになっているとの認識で一致しました。もっとも、世界経済の先行きを巡る下方リスクは依然残っており、各国は、景気回復を強固にし、リスクを軽減するために必要な措置を講じていくことについて確認しました。中東・北アフリカ情勢や日本の震災が、実体経済の不確実性とエネルギー価格の不安定な動きに繋がっているという認識も示されました。私からは、震災の影響を始め、わが国の金融・経済情勢を中心に説明を行いました。まず、わが国の金融システムや金融資本市場が、震災後も高い頑健性を維持していることについて説明しました。そのうえで、日本経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続くものの、政府・民間における復旧・復興に向けた取り組みが進み、供給面での制約が和らいでいくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとみられることも説明しました。金融政策面では、日本銀行が、震災後、金融市場の安定に向けた潤沢な資金供給や金融緩和の強化、さらには被災地金融機関への支援措置といった様々な措置を講じてきており、今後とも、日本の金融市場と実体経済を強力に支援していく方針であることを申し上げました。
§2Masaaki Shirakawa
このほか、日本銀行の中曽理事が議長を務める「コモディティに関するスタディ・グループ」について、これまでの議論の内容を報告するとともに、引き続き、7月の最終報告に向けて、関係者の間で作業が進められていることを説明しました。なお、コミュニケの冒頭にもあるとおり、今回の会合、あるいは、会合外での意見交換も含めて、 G20各国から、震災により様々な困難に直面している日本の人々との連帯意識や、必要な支援を提供する用意があること、さらには、日本の経済や金融システムの強靭さに対する信認が表明されました。こうした各国の支援と理解に対し、私自身、深く感謝するとともに非常に勇気づけられたことを最後に付け加えたいと思います。
§3Question
この2日間を振り返って、今回の会議について、大臣と総裁はそれぞれ、ご自身でどのように評価されているでしょうか。
§4Masaaki Shirakawa
所期の目的を基本的に達成したという、ただ今の大臣のご発言と全く同じ感想です。今回G20あるいはG7に先立ち、非常に慌しい日程でしたが、ニューヨークで外交評議会(Council on Foreign Relations)という会合に出席し、そこでも震災後の日本経済の状況や日本の取り組みについて説明しました。そうした一連の会合・意見交換を通じての私の印象について申し上げます。日本銀行に近い世界からお話しすると、まず、こうした危機、震災の直後として一番大事なことは、金融、決済のインフラがしっかり維持されるということですが、こうした点について、日本の強さを評価する声が多かったと感じました。それから、経済についても、現在直面している厳しい供給制約を、状況としてはもちろん認識する一方で、その供給制約が和らぐにつれて経済が緩やかな回復軌道に復していくという日本の説明に対しては、大筋理解が得られていると感じました。ひとつひとつの論点について議論するわけではありませんが、全体としての経済の道筋について、認識の共有が図れたと思っています。そうしたことにも増して、会合に出席された方々から、日本の取り組み、あるいは日本の社会の強靭さ、復活力ともいうべきものについて、非常にご理解をいただいたと感じました。それだけに、我々としてはしっかりと復旧・復興に取り組んでいく必要があることを改めて感じました。
§5Question
IMFは、この間発表した世界の経済見通しで、2011年の日本の経済成長率を0.2%ポイント引き下げて1.4%にしています。この比較的小幅の修正は、日本における電力の供給不足と原発の問題があと2~3か月ぐらいで解決する、との前提に基づいています。しかし、電力供給についてもまだ先が見えない感じがしていますし、原発も2~3か月で問題が解決されるとは多くの人は思っていないのではないかと思います。世界の見ている日本経済のリスクと、今日本が抱えているリスクには少し落差があるのではないでしょうか。
§6Masaaki Shirakawa
IMFの見通しに限らず、経済見通しというものは、結果的に上にも下にも乖離し得るものです。振り返ると、2010年の日本経済の成長率は、IMFの年初の見通しに比べ、結果的には大幅に上振れました。見通しにあたって大事なことは、ある一本の数字について考えるのではなくて、様々な不確実性を意識して、そのうえで経済がどのように展開していくかを点検していくことであり、そのための出発点として数字があるということだと思います。そう考えた場合、不確実性の発生する原因として、サプライチェーン、あるいは電力、原子力発電所の状況を意識したうえで経済の先行きについて見通しを立てていくという点においては、 IMFも、日本における民間の見通しも、それほど大きな違いがあるとは思いません。いずれにせよ、数字の小さな違いを議論するよりは、大きな経済の流れをみていくことが大事だと思います。以上