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日本銀行記者会見2012年4月20日白川方明, 総裁

総裁記者会見(2012年4月20日)要旨

全文

§1Masaaki Shirakawa

日本経済については、第1 に、堅調な個人消費や復興需要の強まりなどを背景に、なお横ばい圏内ではあるが、持ち直しに向かう動きがみられていること、第2 に、先行きについては、緩やかな回復経路に復していくと考えられることを説明しました。次に、欧州情勢について、私からは、第1 に、欧州でのファイアー・ウォールの強化やIMFの資金基盤拡充は、世界の金融市場の安定維持という観点から有効な手立てであること、第2 に、こうした策はあくまで時間を買う措置に過ぎず、問題の根本的な解決はできないこと、第3 に、従って、こうした策によって買われた時間を有効に使って、問題国の財政赤字削減やユーロ圏の域内不均衡を改善するための構造改革をしっかりと進めることが極めて重要であることを申し上げました。世界経済全体については、米国経済の改善の動きなどを受けて、持ち直しの動きもみられつつあるものの、欧州情勢と原油価格の動向については、リスク要因として、引き続き注視すべきであることを申し述べました。金融規制改革に関しては、3 点申し上げました。

§2Masaaki Shirakawa

まず、現在議論されているFSB(金融安定理事会)のガバナンスの見直しについては、引き続きBISとの緊密な関係を大事にする必要があること、第2 に、システミックに重要な国内銀行への対応については、各国固有の事情に十分に配慮した枠組みが必要であること、第3 に、いわゆるシャドーバンキングの議論に関しては、国債レポ市場など主要な金融市場も含まれる中、規制強化といった側面だけでなく、健全な市場の発展を促していく必要があることを、それぞれ指摘しました。

§3Question

今回の対策で、先ほど白川総裁は時間を買う政策とおっしゃっていましたが、昨年以来ECBの3年物の低利融資や色々な措置も含めて時間を買う政策で、いったいどこまで時間を買えたのか、どれくらいの猶予ができたのか、あるいはこの政策を採ることによる副作用の指摘、例えば抜本的な解決策がこの間に採られない場合、ますます金融機関をゾンビ銀行にしてしまうといった指摘について、どのようにお考えになっていますか。

§4Masaaki Shirakawa

ご質問が何年時間を買ったのかという具体的なことであるとすれば、「何年」と定量化できるものではないと思います。今、記者の方がおっしゃったように、また、今回の会合あるいは様々な場で欧州の当局者自身も言っているように、定性的には、こうやって時間を買っている間に抜本的な経済・財政に関する構造改革を進めていくことが大事だということは、認識されていると思います。ただ、そう申し上げた上で、そのような抜本的な改革が効果を発揮するには時間が掛かるのも事実です。その間にマーケットの心理が不安方向に傾くと、そのこと自体がまた自己増殖的にマーケットの混乱を生みますから、そういう意味では、時間を買うことは、時間を買うに過ぎないとも言えますが、時間を買うことの意味も大きいと思います。そういう意味では、私自身は、欧州の文脈でもそうですし、日本の文脈でもそうですが、両方の努力、すなわち、しっかりした改革努力と金融の面から支えていくことの両方が必要だと思います。

§5Question

中国の経済成長率7.5%は他の各国にとってハードランディングになると思いますか。また、現状、中国に対して、より緩和的な金融政策を行うようにアドバイスされますか。

§6Masaaki Shirakawa

中国の金融政策に関するご質問ですが、日本の中央銀行の総裁として、他国の金融政策についてコメントすることは差し控えたいと思います。周総裁とは、 BISの場でも、今回の会合の場でも、常日頃から密接な意見交換をしていますが、今のご質問に対しては、お答えを差し控えたいと思います。

§7Question

日本の潜在成長率に関して、「失われた20年」以降のトレンドについての見解を伺います。また、人民元の国際化に向けて、中国はどのような教訓や経験を日本から学ぶことができるか教えて下さい。

§8Masaaki Shirakawa

日本の潜在成長率には、色々な計算手法があります。日本銀行が展望レポートで示している潜在成長率は、ゼロ%台の半ばと表現しています。別の角度からは、例えば潜在成長率は働いている人の数と働いている人の生み出す付加価値・生産性の両方の伸びの和で決まると言えます。向こう10年間の労働人口の減少率は0.7%です。過去20年間の労働生産性の伸び率は1%、金融危機の時などを除くと1.5%。従って、大体、労働生産性の伸びは1~1.5%です。そこから先ほどの労働人口の減少率0.7%を引くと、1%以下になります。従って、色々な計算手法がありますが、大体ゼロ%台の半ばというのが日本の潜在成長率です。この潜在成長率の数字をもう少し高めていく努力が必要であることを、私や日本銀行は色々な場面で強調しています。それから、人民元の国際化について、私自身がアドバイスする立場にあるかどうか分かりませんが、日本の経験から、1 つの重要な条件は、規制・監督をしっかり整えていくということだと思います。資本が自由に移動する中で、規制・監督が十分に整っていないと、バブルを生んだり、最終的に金融危機を生んでいきます。従って、人民元の国際化と、国内における規制・監督の整備は、平仄を取って進めていく必要があると思っています。以上