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日本銀行記者会見2013年2月16日白川方明, 総裁

総裁記者会見(2013年2月16日)要旨

全文

§1Masaaki Shirakawa

私からは、日本銀行が先月の金融政策決定会合で行った 3 つの決定、すなわち、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組みの進展に伴い、持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくという認識に立った上で、2%の「物価安定の目標」を導入したこと、また、資産買入等の基金について「期限を定めない資産買入れ方式」を導入したこと、さらに、政府と日本銀行がそれぞれの役割を明らかにした政府との共同声明を公表したことを説明しました。最近の為替相場の動きについては、欧州債務問題への対応の進捗、米国の「財政の崖」の回避、中国経済の安定化の兆しなど、世界経済を巡る悪化シナリオの実現可能性が低下したことを背景に、投資家のリスク回避姿勢がかなり後退しているもとで生じていることを説明しました。こうした悪化シナリオの後退は、日本を含め、自国経済の安定を目的として講じた各国の政策対応によってもたらされているものです。これに加えて、外貨の需給面でも、東日本大震災の発生以降、わが国の貿易収支の赤字が続いていることや、日本企業による海外投資が増加していることが、円安方向に作用していることを説明しました。

§2Masaaki Shirakawa

金融規制改革については、既に合意されていることについて、G20や金融安定理事会(FSB)に対する信認を確保していく上でも、バーゼルⅢ等の金融規制改革を各国が合意に従って適時適切に実施していく必要があること、また、そのためにも定量的影響度調査等を活用しつつ、金融市場の機能への意図せざる形での悪影響を回避するよう、丁寧に議論をしていく必要があることを強調しました。

§3Question

今回の声明の中で、「競争力のために為替レートを目的とせず」という文言が入りました。これは今までになかったと思いますが、これが入ったことについての受止めと、これが入ったことによって、日本が今まで採ってきた「強力な金融緩和政策・経済政策でデフレを脱却する」ということに何らかの影響があるのかどうかについて、お願いします。

§4Masaaki Shirakawa

競争的切下げについては、ただ今、麻生財務大臣がお答えされた通りです。それから、日本銀行の金融政策への影響については、従来もそうですし、今後もそうですが、あくまでも日本銀行の金融政策は、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するという、まさにG7声明に謳われたように、国内経済の安定を目的として実行しているものです。したがって、私どもが従来から行っている金融政策運営の考え方と全く同じものであると思っています。

§5Question

今回のG20を前に、ドイツや一部報道で、日銀と政府の共同文書が、為替というよりは、日銀、中央銀行の独立性に何か変化をもたらしてしまうのではないかという懸念がかなり示されたと思いますが、このG20において、この点の理解についてどのように説明できたのか、お伺いしたいと思います。

§6Masaaki Shirakawa

東京での記者会見でもたびたび申し上げていることですが、共同声明は、政府と日本銀行がそれぞれ果たすべき役割について書いてあるものです。それぞれの役割を明確に認識した上で、それぞれの政策をしっかりやっていこうということです。そうした文書であるということを、今回のG20の場でも私から説明しました。それから、中央銀行の独立性は非常に重要であって、世界的に確立された原則です。したがって、そのこと自体をG20で議論することはありませんでした。それは当然の大前提です。

§7Question

白川総裁は今回が最後のG20ということになりますが、あらためて任期中のG20を振り返ってみて、今回の位置付け等を含めて、どのような役割があったかという点について、感想を頂ければと思います。

§8Masaaki Shirakawa

実は一昨日も東京の記者会見で、「最後のG20なので感想如何」というご質問がありました。私自身は 3月19日まで職責をしっかり全うしたいと思っていますので、何か過去を振り返ってということではなくて、一般論として、世界経済が直面している課題に対して各国がどのように取り組んできたかということについて、お話をしたいと思います。あらためて 2000年代の半ばを振り返ってみると、未曾有の信用バブルが拡大し、それが崩壊する形で、現在の厳しい世界経済の調整局面を迎えています。そのことから、様々な教訓が引き出されます。適切な金融政策の運営、適切な規制・監督、マクロプルーデンス政策の重要性など、様々な教訓が引き出されてきました。現在、そうした教訓に従って、各国がそれぞれの国において改革に取り組んでいます。これはまだ完成しているわけではありません。まだ途上でありますし、何が望ましい政策であるかについても引き続き議論が進んでいます。したがって、私ども自身は、そうした現実の動きを丹念に見て、謙虚に色々な意見に耳を傾けて、望ましい姿をこれからも模索していく必要があると考えています。

§9Question

今回のG20で最大の成果は何であったかということと、会合に出席して課題が見つかったということがあれば、教えて下さい。

§10Masaaki Shirakawa

ただ今、麻生大臣からもご説明がありましたが、今回のG20では、現状を「通貨戦争」というような言葉で表現するのは適当ではなくて、そうした表現は誇張されている―─overblown という言葉がよく使われていましたが―─といった発言が、IMFを含め多くの出席者から聞かれました。先般のG7声明もそうですし、今回のG20もそうですが、各国が自国の経済の安定に向けてしっかり取り組んでいくということが、結局は世界経済全体の安定につながっていくのであるという認識が、当然ではありますが、あらためて共有されたということだと思います。その上で、世界経済あるいは世界の金融全体に影響を及ぼす様々な規制や監督について、こういったG20あるいはFSBというフォーラムを通じて議論していくという、世界全体を見た共通のスピリットも確認されたと思います。課題については、もちろん経済の局面の変化に応じて様々な課題が出てきますが、今回新たに従来考えてもいなかったような課題が出てきたということはありません。これまでも認識していた課題をしっかり取り組んでいく必要があるということだったと思います。以上