総裁記者会見(2015年10月9日)要旨
全文
§1Question
先程のIMFCのコミュニケの中で、世界経済のリスクが増大していると、新興国の経済の減速を懸念していると書かれている中身ですけれども、新興国経済の現状についての認識、世界経済の現状についての認識、それらが日本経済に与える影響についてどのようにとらえていらっしゃるでしょうか。
§2Haruhiko Kuroda
確かにIMFCのコミュニケでも、新興国では特に一次産品価格の下落もあって、成長が減速しているということが指摘されていますし、資本の流入が減るとか、あるいは通貨安の圧力に見舞われている国もあるということが指摘されています。もっとも、IMFCのコミュニケの中にもありますように、多くの国では経済のファンダメンタルズはしっかりしていると、さらには外貨準備も潤沢であって、アジア通貨危機の頃に比べると、厳しい環境に対する備えはできていると思います。その上で、日本を含む先進国の金融政策等の運営についても、既にG20等でもずっと共有されていましたし、 IMFCのコミュニケでも触れられておりますけれども、各国の中央銀行は物価の安定をはじめとする国内の政策目的のために金融政策運営を行うわけです。その際、マーケットにおける過度な変動や負の波及効果を抑制するために、政策のあり方について注意深く測定し、明確で効果的なコミュニケーションを行うことが重要だと考えています。これはG20でも重ねて言われていたことですけれども、今回のIMFCでもそのように言われているということでありまして、従来の考え方と変わっていないということだと思います。
§3Question
昨日、今日と全体の一連の会合を踏まえてお伺いします。今回のG20ではコミュニケは出されませんでしたけれども、米国、新興国、中国の減速懸念等の中、各国として協調していく姿勢、あるいはマーケットとコミュニケーションをとっていく姿勢というのを、どの程度明確に示せたと考えていらっしゃいますでしょうか。
§4Haruhiko Kuroda
今回、ご承知のようにG20はワーキングディナーであり、ほとんどBEPS(税源浸食と利益移転)の話でした。むしろIMFCにおいて、世界経済の話とか、先程申し上げたような新興国の経済の状況であるとか、先進国の政策運営についての議論が行われて、コミュニケが出ているわけです。その内容は先程ご紹介した通りでして、従来のG20やIMFCの考え方と整合的なものであり、特別に何か従来と違ったことは述べていないと思います。
§5Question
1 点目は、IMFCの声明の中で、先進国のインフレ率は総じて中央銀行の目標を下回ったままであるとありますが、その背景と日本の物価への影響について、教えてください。2 点目は、声明の2.なのですが、多くの先進国では主要なリスクとして、世界の需要が失速し、供給制約が取り除かれなかった場合の、成長率のさらなる下落というところなのですが、こうしたことが起こった場合の処方箋ですとか、適切な政策対応について、どうお考えかお願いします。
§6Haruhiko Kuroda
両者は相互に関係していると思いますけれども、1 点目については、最近の先進国における物価上昇率が、それぞれの中央銀行が目標にしている 2%――ほとんどの先進国の中央銀行が 2%の物価安定の目標を持っているわけですが――それに及んでいないということは事実です。そのかなり大きな理由は、原油をはじめとする一次産品の価格が、昨年の夏以来かなり大きく下落していることの影響だと思います。もちろん、IMFCのコミュニケにも示されている通り、米国の景気回復は非常にしっかりしており、ユーロ圏と日本の経済の回復はより緩やかでありますけれども、一番回復のしっかりしている米国も、それから、ユーロ圏も日本も消費者物価の上昇率が非常に低い、2%にはるかに及ばないゼロ近傍のところにいることは、やはりこの世界的なコモディティ価格の下落が大きく影響していると思います。世界的なコモディティ価格の下落がなぜ起こったのかというのは、色々な理由があると思いますけれども、供給側の理由もありますし、需要側としては中国をはじめとする新興国の成長がかなり減速してきたということも影響しているのではないかと思われます。
§7Haruhiko Kuroda
いずれにせよ、先進国の物価上昇率が物価安定目標に達していないということから、コミュニケでも緩和的な金融政策を継続するのは望ましいと言われていますし、日本銀行も、もちろん現在の「量的・質的金融緩和」を、2%の「物価安定の目標」を目指して、それが安定的に持続するようになるまで継続すると言っているわけです。2 点目については、当然ですけれども、需要を支えるような様々な政策を考えなくてはならないと思いますが、現在のメインシナリオは今回のIMFの見通しにあるように、今年の成長見通しは前の見通しよりも、0.2%ポイントくらい下がっていますけれども、来年にかけて成長が加速していく姿は変わっておりませんので、今の時点であわてて何かしなくてはならないということではないと思います。それぞれの経済の実情あるいは政策の余地というものを勘案して、必要に応じて適切な政策をとるということに尽きると思います。以上