総裁記者会見(2021年10月13日)要旨(G7)
全文
§1Haruhiko Kuroda
本日開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、デジタル決済や中央銀行デジタル通貨に加え、気候変動、低所得国支援、経済回復の状況について議論を行いました。中央銀行デジタル通貨については、6月のG7財務大臣・中央銀行総裁コミュニケを踏まえて、今般リテールCBDCについての公共政策上の原則を含む報告書を作成し、加えて、デジタル決済やCBDCに関する声明を取りまとめました。次に、気候変動については、経済に対する影響や政策対応について議論が行われました。私からは日本銀行が金融機関による多様な気候変動対応の投融資をバックファイナンスする気候変動対応オペを年内に開始することを説明したほか、金融庁と連携しながら大手金融機関との間で共通シナリオを用いたシナリオ分析の試行的な実施に向けた検討を進めていることを説明しました。
§2Question
中銀デジタル通貨のことで伺いたいのですが、デジタル通貨の原則、設計ということをG7の中で共有したということですが、なぜこのタイミングで打ち出したのか、その意義を教えて頂きたいと思います。関連してですが、既に色々なモバイルのデジタルマネーなどが世の中にあり、利用者の目線でみると、なぜ中央銀行がコストをかけてまでお札やコインをデジタルにしていく必要があるのかということが少し分かりにくく、もちろんまだやると決めたわけではないと思いますが、今検討を加速させている意味を少し説明頂けないでしょうか。今勢いのあるステーブルコインなどへの警戒などもあるのか、その辺りについてもご説明頂ければと思います。
§3Haruhiko Kuroda
G7もG20のFSBも、いわゆるクロスボーダーの資金決済、送金などについて、より効率的にしていく必要があるということを議論してきましたが、そうしたことについて合意ができ、今後数年かけて更に効率を良くしていくことになるわけです。そうした中、ステーブルコインは、いわゆるビットコインなどの仮想通貨、暗号資産と異なり、一国の通貨にリンクしたもので価値も安定しているため既にいくつか現れていますが、これがビッグテックなどを中心に幅広く発行されるようになると金融システムに対する影響もあり得ます。そこで、まずステーブルコインについてはきちっとした規制やルールを守ってもらえるようにし、そういうことができるまではグローバル・ステーブルコインはサービスを開始すべきでないということです。そのうえで、資金決済等について、ご指摘のように色々とデジタルなものが出ていますが、通貨という意味では、グローバルに発行されようとしているステーブルコインに匹敵するようなものとしては、やはりCBDCのようなものがあり得るのではないかという議論になっています。
§4Haruhiko Kuroda
要するに、仮想通貨、暗号資産の話、ステーブルコインの話、そしてCBDCの話と出てきているわけで、別にデジタル通貨を今発行しようと決めたわけではないのですが、決済システムをより効率的、迅速化していく中で、ステーブルコインにだけ頼ることになると、民間の通貨ですので十分な規制などがないといけませんが、そうしたものはまだできていませんし、仮にできたとしても、常時そういうものが金融システムの不安定化を招かないように監視していかなければなりません。そのうえで、決済などの効率化を図る一つの方策としてCBDCのようなものがあり得るということで、いくつかの中央銀行は具体的な検討も進めているわけで、日本銀行やECB、FRBではまだ具体的なことにはなっていませんが、そういうことも含めてG7として共通の認識を明らかにしたということだと思います。
§5Question
黒田総裁、神田財務官、お二方に伺いたいのですが、今の中央銀行のデジタル通貨の件で、やはり中国がかなりデジタル人民元で先行している部分があると思うのですが、その中国を含まないG7という形で、法の支配や健全な経済ガバナンスということを強く打ち出した声明を出したことの意味合いを少しお聞かせ頂ければと思います。
§6Haruhiko Kuroda
声明にありますように、仮にCBDCを発行するとなれば、透明性や法の支配など健全な経済ガバナンス、その他こうしたことが必要だということをG7として合意したわけですが、これは別に中国人民銀行が今検討しているデジタル人民元のことを具体的に考えて行ったということではなく、あくまでもG7国としてCBDCを発行するようなことがあるとすれば、このようにきちっとしなければならないということです。そのようにすることが金融システムの安定にも資するとともに、先ほど申し上げた決済や送金の効率性にも資するということだと思います。
§7Question
総裁に今の中銀デジタル通貨の関連で一点お伺いしたいと思います。 G7として発行するときにこういうことを守ることが大事だとおっしゃり、神田財務官は、そのほかの人たちにも守って参照してもらえるようにとおっしゃっていたのですが、中国が先行している中で、中国を含めて議論をしようといったご意向はないのでしょうか。
§8Haruhiko Kuroda
もちろんG20などでも色々な議論が行われていますが、先ほど申し上げたように、これはあくまでも、仮にG7国が発行する場合には、このようにきちっとしたことでなければならないということと、神田財務官から説明したように、仮にほかの国も発行するとしたら、このようなルールに従ってもらうと、その国の金融システムだけではなく、グローバルな金融システムにも問題は生じない、というもので、いわゆるベストプラクティスみたいなものです。G7国として実施するとしたらそういう形でしか行わないですが、ほかの国も、もし行うならばこのような形で実施することが好ましいということを表明しているものです。ですから、神田財務官が言われたように、IMFやBISなどの国際機関も巻き込んで議論をしてきたわけです。そういう意味ではグローバルな視野があることは事実ですが、これ自体はあくまでもG7として「仮に出すとしたらこういうことでなければならない」ということに合意したということです。以上