【挨拶】「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(京都府金融経済懇談会)
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2018年8月2日日本銀行日本銀行副総裁雨宮正佳最近の金融経済情勢と金融政策運営 ── 京都府金融経済懇談会における挨拶 ── 1 1.はじめに日本銀行の雨宮でございます。話しを始める前に、先月の豪雨の犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。当地においても、今なお京都府北部を中心に大きな影響が残っていると伺っており、ご心配は尽きないと存じます。そうした中、本日はこのように、京都府各界を代表する皆様とお話しする機会を賜り、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃より、日本銀行京都支店の様々な業務運営にご協力頂いております。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。日本銀行は、2日前の金融政策決定会合において、2020年度までの経済・物価見通しと物価動向に関する詳細な分析を、四半期に一度の「展望レポート」として取りまとめ、公表しました。また、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策の枠組みを強化しました。本日は、「展望レポート」の内容をご紹介しながら、日本銀行の経済・物価に対する見方と、今回の新たな政策対応について、ご説明したいと思います。
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2.わが国経済の動向初めに、わが国の経済情勢からお話しします。この5年間で、日本経済は、大きく改善しました。2012年12月に始まった今回の景気回復局面は、この5月で連続66 か月に達し、来年1月までこうした回復が続けば、戦後最長の73 か月を追い抜くところまできています。企業収益は、過去最高水準で推移し、労働市場では、失業率が約 25年ぶりの低水準となる2%台前半となるなど、ほぼ完全雇用の状態が続いています(図表1)。こうした状況を、資本や労働の稼働率を示す「需給ギャップ」で確認すると、2013年頃に長期的な平均であるゼロ%を超えた後、2016年後半から、はっきりとしたプラスに転じ、その後も、プラス幅が拡大しています(図表2)。賃金・物価面では、ベアが5年連続で実現しました。また、エネルギーと生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、2013年秋以降、 4年半以上にわたってプラス基調を続けており、 2 既にわが国は、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなっています。
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3.物価情勢このように、この5年間で、わが国の経済・物価は着実に改善しました。しかしながら、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて、わが国の物価は弱めの動きを続けており、日本銀行が目標としている、前年比+2%の物価上昇率は達成できていません。このため、日本銀行では、今回の「展望レポート」を取りまとめるにあたり、こうした物価の伸び悩みの背景や今後の見通しについて、集中的に分析しました。以下では、その内容をご紹介しながら、わが国の物価情勢について、やや詳しくお話ししたいと思います。(1)なぜ、2%の物価上昇を目指すのか?物価が弱めの動きを続けている背景等をご説明する前に、まずは、日本銀行がなぜ「物価安定の目標」として2%を目指しているのかについて、お話しします。と言いますのも、「そもそも2%は高過ぎる目標であり、無理に目指す必要はないのではないか」とか、「景気さえよければ、物価は上がらない方がよいのではないか」といったご質問をいただくことが少なくないからです。中央銀行の金融政策運営の基本的な使命は、「物価の安定」を実現することです。「物価の安定」とは、デフレでもインフレでもない状況、つまり物価が上がりも下がりもしない状況ですから、それをそのまま数字にすれば、前年比でプラス・マイナスゼロ%ということになるかもしれません。
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しかし、現在、先進国では共通して、物価安定の具体的な定義としては、厳密にゼロ%でなく若干のプラスが望ましいと考えられています(図表3)。その第1の理由は、物価統計、例えば、多くの中央銀行が参照している消費者物価指数は、実際の物価よりも少し高めの数字を示しがちという「くせ」があるということです。この点についてはやや技術的になりますので、詳しく説明することはしませんが、こうした統計上の「くせ」、つまり「上方バイ
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アス」を踏まえると、消費者物価指数で表す「物価の安定」の数字は、若干のプラスが適当ということになります。第2の理由は、金融政策の「のりしろ」の必要性です。中央銀行は、通常、金利の上げ下げによってインフレやデフレに対応します。仮にインフレとなった場合、これを鎮めるために必要であれば、中央銀行は、幾らでも金利を引き上げることができます。理屈上、金利に天井はないからです。一方、デフレに直面した場合、金利の引き下げには限界があります。近年、マイナス金利という新たな手法が開発されましたが、それでも、際限なく引き下げることは不可能です。中央銀行の政策対応力が限られるという意味で、インフレよりもデフレの方が、より厄介な現象です。したがって、金融政策の「余裕」を持っておく、つまり、デフレ方向に向かった場合に金融緩和で適切に対応できるよう、あらかじめ、プラスの物価上昇率とプラスの金利という一定の「のりしろ」を確保しておくのが望ましい、ということになります。以上2つの理由からわかることは、目標とすべき物価上昇率は、若干のプラスがよいということです。ただし、それが1%なのか、2%か、3%かについては、自動的に答えが出てくるわけではありません。ここで重要なことは、主要な先進国の中央銀行が、物価安定の定義として、2%をほぼ共有しているということです。
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もちろん、「決め手がないので、相手に合わせておけ」という乱暴な議論ではありません。関係国が同じ物価目標を共有し、同じような物価情勢を実現することは、長い目でみた為替相場の安定に繋がるからです。為替は、短期的には様々な要因で変動しますが、5年、10年という長い期間でみると、関係国の物価の差に応じてトレンドが決まってきます。いわゆる「購買力平価」という考え方です。したがって、グローバル・スタンダードである2%を目指すことは、為替の安定を通じて、企業経営や経済全体の安定を実現するうえで非常に重要なことだと考えています。以上、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を目指している3つの理由をお話ししました。もっとも、日本銀行は2%の物価上昇さえ達成できればよいと考えているわけではないこともご理解いただきたいと思います。物価だ
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けが上昇すれば、実質賃金が下がり、経済活動は停滞してしまいます。日本銀行法にはっきりと定められているように、日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ために金融政策を実施しています。つまり、企業の売上や設備投資の増加、家計における雇用・賃金の改善と消費の増加によって経済活動が活発化するもとで、物価も緩やかに上昇する経済を目指しています。物価と賃金、景気の好循環が作動し続ける経済、これこそが、2%の「物価安定の目標」が実現している世界であると考えています。(2)なぜ、物価は伸び悩んでいるのか?もっとも、こうした2%の物価安定目標の実現までには、なお道半ばの状況です。経済が大きく改善しているにも関わらず、なぜ物価が伸び悩んでいるのか、今回の「展望レポート」では、その要因についてかなり詳しく分析しています。本日は、そのエッセンスをご紹介したいと思います。物価の改善ペースが緩やかなものにとどまっている背景としては、大きく2つの要因があると考えています。1つは、長期にわたる低成長やデフレの経験から、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が、企業や家計に根強く残っていることです。もう1つは、生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩などにより、企業が値上げを極力抑える取り組みが可能となっていることです。
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これらの要因を、家計や企業の行動面から整理して、具体的にご説明したいと思います。第1に、人手不足という割には、本格的な賃金上昇の実現に時間がかかっています。特に、労働者の大宗を占める正規雇用者の所定内給与は伸び悩んでいます。この1年間の伸びは、前年比 0.5%程度にとどまりました(図表4)。相対的に賃金水準が高い正規雇用者は、賃上げよりも、雇用の安定を優先する傾向が強いと言われていますが、長期にわたる低成長の下で、厳しい雇用調整を経験したことで、こうした傾向が、今なお根強く続いているのだと考えています。このほか、働き手の多様化も賃金の動きに影響しています。近年の女性や高齢者の労働参加の高まりは、長い目で見れば、生産年齢人口
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の減少というわが国が抱える課題を解決するために不可欠な動きですが、短期的にみれば、人手不足の状況を緩和し、その分、賃金の上昇を抑制する方向に働くことになります。第2に、家計の値上げに対する許容度が明確には高まっていないことが、物価上昇を抑制する要因として作用しています。日本銀行のアンケート調査によれば、家計の値上げに対する許容度は、2013年の「量的・質的金融緩和」の導入以降、以前よりも一段切り上がりましたが、その後、さらに高まるといった状況にはなっていません(図表5)。その背景には、先ほど述べた第1の理由、すなわち、本格的な賃金上昇の実現に時間がかかっていることなどが影響しているとみられます。第3に、企業の価格設定スタンスがなお慎重であることも、物価の上昇を抑制しています。緩やかとはいえ、賃金は上昇しており、原油などの商品価格も上昇傾向にありますが、価格引き上げに伴う顧客離れを警戒する企業は、こうしたコスト上昇圧力を、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しによって吸収しようとしています。建設や小売、宿泊・飲食といった人手不足が深刻な業種ほど、ソフトウェア投資に熱心ですし、セルフレジや自動注文システムの導入などによって、人件費の上昇をカバーする企業も少なくありません(図表6)。近年のIT技術の進歩が、こうした取り組みを可能にしている面もあります。
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以上、企業における慎重な賃金・価格設定スタンスや、値上げに対する家計の慎重な見方について、ご説明してきました。こうした考え方や慣行は、長期にわたる低成長やデフレの経験によって醸成されたある種の社会的モードともいえるものであり、その解消にはなお時間がかかっているのだと考えています。このほか、企業の競争環境が厳しさを増していることの影響も、無視できないと考えています。例えば、スーパーなどの小売業では、インターネット通販の拡大等を背景に、慎重な価格設定スタンスが続いています(図表7)。いわゆる「アマゾン効果」と呼ばれるものであり、IT技術の急速な進歩は、
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ここでも物価上昇の抑制要因として作用しています。(3)なぜ、先行き物価は上昇していくのか?このように、物価の上昇には時間を要していますが、先ほど申し上げたように、経済・雇用情勢が持続的に改善するもとで、変化の動きも出ています。例えば、このところ、外食などのサービス業を中心に、幅広い企業で販売価格の引き上げに向けた動きがみられ始めています(図表8)。また、私どもの短観のアンケート調査では、販売価格が上昇していると答える企業数が、下落していると答える企業数を、久しぶりに上回り始めています。いわゆる団塊世代が70 歳代に達しつつあることなどから、この先、労働需給はさらにタイト化し、パート雇用者を中心に賃金の上昇率は加速するとみられます。こうした賃金上昇の動きが、先行き、正規雇用者に波及していけば、家計の値上げ許容度の高まりにも繋がります。そうなれば、企業による値上げはより受け入れられやすくなるでしょう。物価動向には、先ほどからご説明しているような様々な要因が影響を与えますが、その基調を規定する要因は、やはり経済全体としての需給バランスです。景気の拡大により、需給ギャップがプラスの状態、つまり需要超過の状態を長く続けることができれば、先ほど述べたような物価抑制要因の多くも、次第に解消していく可能性が高いと考えられます。
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そうなれば、物価の基調を形成するもう一つの大事な要因である人々の物価観、つまり家計の値上げ許容度や企業の価格設定戦略などを含む、広い意味での予想物価上昇率も変わっていくでしょう。このような物価の基調を規定する要因について、日本銀行では「モメンタム」という言葉を使って評価しています。「モメンタム」という言葉を辞書で引くと、「勢い」とか「はずみ」といった、短い時間をイメージさせる意味が並んでいますが、金融政策の目的は長い目でみた物価の安定ですから、私どもにとっての「モメンタム」は、少し長い時間軸で評価することになります。具体的には、物価の基調や趨勢を規定する主な要因、すなわち「マクロ的な需給ギャップ」や「中長期的な予想物価上昇率」などの動向を様々な指標や
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7 情報を活用しながら点検し、モメンタムが維持されているかどうかを総合的に判断することになります。日本銀行では、今回の展望レポートにおいて、2018年度から 2020年度にかけての消費者物価の前年比を、それぞれ+1.1%、+1.5%、+1.6%と予想しています(図表9)。これまでの想定よりも時間がかかり、2020年度までに2%を実現することは難しい状況ですが、それでも、需給ギャップの改善を起点として、現実の物価の上昇が予想物価上昇率の高まりに繋がるモメンタムは維持されています。需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く持続して、こうした前向きのモメンタムを維持していくことが何よりも重要であり、2%の実現に向けた最も確実なルートであると考えています。
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4.日本銀行の金融政策運営続いて、先日の政策決定を含めた、日本銀行の金融政策運営についてご説明したいと思います。現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策枠組みのもと、強力な金融緩和を推進しています(図表 10)。この「長短金利操作」は、別名、「イールドカーブ・コントロール」と呼んでいますが、日本銀行は、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」と定め、これと整合的なイールドカーブの形成を促すよう、国債市場で大規模な国債買入れを実施しています。これにより、長短の市場金利は低水準で安定し、それに一定の金利を上乗せした企業向け貸出金利や社債の発行金利も、きわめて低い水準で推移しています。銀行の貸出残高もしっかりと増加しています。このように、「イールドカーブ・コントロール」によって生み出された現在のきわめて緩和的な金融環境は、企業や家計の支出活動を刺激し、需給ギャップの改善に大きく貢献しています。これに加えて、日本銀行は、株式市場におけるリスク・プレミアムに働きかけることを通じて、経済・物価にプラスの影響を及ぼしていく観点から、ETF(指数連動型上場投資信 8
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託)とJ-REIT(不動産投資法人投資口)の買入れも実施しています。先ほどお話ししたように、日本銀行は、今回の金融政策決定会合での議論を経て、2%の「物価安定の目標」の実現には、これまでの想定よりも時間がかかるとの見通しを示しました。もっとも、時間はかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されています。従って、金融政策運営面では、その動きを確かなものにしていくために、現在の強力な金融緩和を粘り強く続け、需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続けていくことが、適当と判断しました。その際、私どもとしては、2つの問題に対応する必要があると考えました。ひとつは、2%の物価安定目標の実現に向けた政策運営スタンスに対する信認をしっかりと確保していくことです。もうひとつは、金融緩和の継続が見込まれる中にあっては、金融市場への影響などにも配慮しつつ、金融緩和効果を低減させない形で、現在の金融緩和措置の持続性を強化する必要がある、ということです。これら2つの問題に対応するべく、日本銀行は、新たに、強力な金融緩和の枠組みを強化する幾つかの措置を決定しました。時間も限られていますので、本日は、その中でも、特に重要なものに絞ってご紹介したいと思います(図表11)。第1に、日本銀行は、2%の実現を目指す姿勢に揺るぎがないことを示すため、政策金利の「フォワードガイダンス」を導入しました。
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耳慣れない言葉だと思いますが、「フォワードガイダンス」とは、金融政策に対する市場の信認や期待を高めるために、将来の政策運営方針をあらかじめ示すという方法です。今回、日本銀行は、「2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」ことを、対外的に約束しました。2%の実現見通しが後ずれしたからといって、金融緩和の手を緩めることはないということを、改めて申し上げておきたいと思います。第2に、日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を
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強化するため、各種の施策を実施することとしました。例えば、先ほど、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」と申し上げましたが、そのもとで金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうることを改めて示しました。ある意味では、強力な金融緩和の帰結とも言えるのですが、このところ、わが国の国債市場では、長期金利が幾分硬直的となっているほか、取引高も減少傾向を辿るなど、市場機能の低下に対する懸念が徐々に強まっています。この先、金融緩和を続けていくことを踏まえると、こうした懸念がさらに強まることがないよう、経済・物価の見方などを反映して長期金利がある程度変動することを許容し、市場機能を維持することが必要と判断しました。ただし、長期金利の操作目標は「ゼロ%程度」から変えていません。金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する方針であり、金利水準が切り上がっていくことを想定しているものではありません。また、同じく政策の持続性を強化する観点などから、ETFの買入れについて、年間「約6兆円」という買入れ目標を維持しつつ、市場の状況に応じて買入れ額は上下に変動しうることを明らかにしました。このような一連の措置の狙いは、緩和の副作用にも目配りしつつ、強力な金融緩和を持続させることです。
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この持続性という観点を踏まえれば、全体として金融緩和効果は強化されることになると考えています。もちろん、こうした強力な金融緩和を続けていけば、貸出利鞘の縮小などによる収益力低下を通じて、金融機関の経営体力に累積的に影響を及ぼし、金融仲介機能が停滞方向に向かうリスクがあることも認識しています。現状、金融機関は充実した資本基盤を備えているほか、貸出スタンスは引き続き積極的であるなど、金融仲介機能に大きな問題は生じていませんが、日本銀行としては、金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて、しっかりと点検していく考えに変わりはありません。今後とも、2%に向けた前向きなモメンタムが維持され、景気の改善と物価の安定が両立するバランスのとれた経済が実現していくよう、経済・物価・金融情勢を踏まえ、中央銀行として適切な金融政策運営を行っていく方針です。
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5.おわりに最後に、京都府経済についてお話ししたいと思います。まず、京都府の景気は、一部に先日の豪雨の影響がみられるものの、「拡大している」と判断しています。京都府は、電子部品・デバイスや産業用機械の分野において、わが国を代表するグローバル製造業が多数集積しているほか、1,200 有余年の歴史を誇る国際観光都市としても世界各国から注目を集めています。このため、海外経済の成長を着実に取り込みながら、生産・輸出が増加基調にあるほか、訪日外国人観光客の増加を背景に、インバウンド需要も堅調です。また、設備投資をみると、製造業では能力増強や研究開発を目的とした投資が、非製造業ではホテルなど宿泊施設の増設等を目的とした投資が、一段と活発になっています。雇用者所得も緩やかに増加しています。こうした中、当地でも、全国と同様に人手不足が進んでいます。女性や高齢者の積極的な労働参加がみられるほか、各種の省力化投資も活発化しています。例えば、業種を問わず幅広い企業から、ダイバーシティを推進する専門部署の設置や、短時間勤務やフレックスタイム制など多様な勤務形態の制度化に取り組んだ結果、女性や高齢者の就業者増加に繋がったとの声が聞かれています。また、インバウンド需要の下支えが続く飲食業や宿泊業では、タブレット端末の導入やIoTの活用などによって生産性を高め、人手不足を補っている企業も少なくありません。
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本日お話ししたように、こうした動きは、短期的には賃金や価格の上昇圧力を弱める方向に作用する可能性がありますが、より長い目でみれば、経済の生産性を高め、成長力の強化に繋がります。経済全体の成長力が高まれば、企業の支出行動や家計の消費は積極化し、いずれ、物価の押し上げ要因として寄与してくるでしょう。京都府経済に端的に表れてきているこうした前向きな動きも、2%の「物価安定の目標」の安定的な実現をサポートするものと考えています。最後になりましたが、京都府各界の皆様が、「伝統と先進」を融合しながら京都の魅力をさらに高められ、今後ますます発展されることを祈念いたし
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11 まして、私からのご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。 以上 2018年8月2日日本銀行副総裁雨宮正佳最近の金融経済情勢と金融政策運営― 京都府金融経済懇談会での挨拶 ―わが国経済の動向図表1(注)企業収益は、法人季報ベース。金融業、保険業を除く。(出所)内閣府、財務省、総務省1景気回復期間の比較失業率企業収益順位時期期間12002年2月~2008年2月73か月22012年12月~ 66か月(18/5月時点)31965年11月~1970年7月(いざなぎ景気)57か月41986年12月~1991年2月(バブル景気)51か月51993年11月~1997年5月43か月012345678689929598010407101316売上高経常利益率(全産業・全規模)(季節調整済、%)年01234568689929598010407101316年(季節調整済、%)
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需給ギャップと消費者物価需給ギャップ図表2消費者物価(注)1. 需給ギャップは、日本銀行による推計値。2. 消費者物価は、消費税調整済み。(出所)日本銀行、総務省 2-7-6-5-4-3-2-1012300010203040506070809101112131415161718(%)年-4-3-2-1012300010203040506070809101112131415161718総合(除く生鮮食品)総合(除く生鮮食品及びエネルギー)年(前年比、%)なぜ、2%の物価上昇を目指すのか?図表33消費者物価指数の「上方バイアス」金融政策の「のりしろ」2%は「グローバル・スタンダード」3つの理由先進各国・地域の物価安定の定義国・地域名称指標数値(前年比)米国(FRB)Longer-runGoalPCEデフレータ総合2%ユーロ圏(ECB)QuantitativeDefinitionHICP総合2%未満かつ2%近傍英国(BOE) TargetCPI総合2%日本(日本銀行)物価安定の目標CPI総合2%
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慎重な賃金設定スタンス賃金上昇率図表4(注)1. 賃金上昇率の各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。毎月勤労統計の2018/1月以降の調査対象抽出方法の見直しに伴い、2017/1Q以降は継続標本ベース。2. 女性・高齢者の人口・労働力人口の2018年は、1~5月の平均値。(出所)厚生労働省、総務省 4女性・高齢者の労働供給女性(15~64歳) 高齢者(65歳以上)-2-1012340809101112131415161718所定内給与(一般労働者)時間当たり所定内給与(パート労働者)(前年比、%)年-202468101214160004081216人口労働力人口年(2000年対比変化幅、百万人)-6-5-4-3-2-10120004081216人口労働力人口年(2000年対比変化幅、百万人)家計の値上げ許容度図表5(注)物価上昇についての感想は、「どちらかと言えば、好ましいことだ」、「どちらとも言えない」、「どちらかと言えば、困ったことだ」の3種類から選択。(出所)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」5-95-90-85-80-75-70070809101112131415161718(「好ましいこと」―「困ったこと」、DI、%ポイント)値上げを許容年
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慎重な価格設定スタンス図表6(注)ソフトウェア投資の2018年度は、6月調査時点の計画値。(出所)日本銀行 6ソフトウェア投資(短観)雇用人員判断DI(短観)人手不足の深刻な業種における省力化投資の動き-70-60-50-40-30-20-1001020300506070809101112131415161718全産業建設小売宿泊・飲食サービス年(「過剰」-「不足」、%ポイント、逆目盛)不足501001502002503000506070809101112131415161718全産業建設小売宿泊・飲食サービス(2005年度=100)年度厳しさを増す競争環境図表7(注)インターネット購買比率は、家計消費状況調査の「インターネットを利用した支出総額」と家計調査の「消費支出」を用いて算出。(出所)総務省、日本銀行 7厳しさを増す小売業の競争環境を指摘する声―さくらレポート 18年7月―インターネット購買比率消費者の根強い節約志向を背景に、ドラッグストアやeコマースなどの低価格業態に顧客を奪われている。(京都支店 [業態:スーパー])競合他社が最近になって値下げ攻勢を強めているため、今後は当社も値下げ販売を強化する可能性がある。(仙台支店 [業態:スーパー])採算度外視で値下げ攻勢を強める他業態に脅威を感じ、PB商品を中心に数百品目の値下げに踏み切った。
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(広島支店 [業態:スーパー])0.00.51.01.52.02.53.03.502030405060708091011121314151617(%)年
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価格引き上げの動き図表8(注)消費者物価は、消費税調整済み。販売価格判断DIの2003年12月調査には、調査の枠組み見直しによる不連続が生じている。(出所)総務省、日本銀行 8賃金上昇の物価への波及販売価格判断DI(短観)-0.50.00.51.01.52.012131415161718外食家事関連サービス年(前年比、%)-50-40-30-20-100102000010203040506070809101112131415161718大企業中小企業年(「上昇」―「下落」、DI、%ポイント)経済・物価見通し(2018年7月展望レポート)図表9(注)消費者物価指数(除く生鮮食品)は、消費税率引き上げの影響を除いたベース。(出所)日本銀行9―― 日本銀行政策委員見通しの中央値、対前年度比、% 実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品) 2018年度+1.5 +1.1(4月の見通し)+1.6 +1.3 2019年度+0.8 +1.5(4月の見通し)+0.8 +1.8 2020年度+0.8 +1.6(4月の見通し)+0.8 +1.8
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イールドカーブ・コントロール図表10(出所)Bloomberg10-0.6-0.4-0.20.00.20.40.60.81.01.21.401234567891015203040直近10年物国債金利のボトム(2016年7月27日)(%)年(残存期間)短期政策金利「▲0.1%」長期金利操作目標「ゼロ%程度」図表1111(了)強力な金融緩和継続のための枠組み強化強力な金融緩和を粘り強く続けていく政策金利に関するフォワードガイダンス「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」⇒ 「物価安定の目標」実現に対するコミットメントの強化2%の「物価安定の目標」の実現には、時間がかかる需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続けることが適当「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性強化長期金利:「ゼロ%程度」の操作目標を維持。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる。ETF買入れ:「約6兆円」の残高増加目標を維持。その際、買入れ額は、市場の状況に応じて上下に変動しうる。等経済や金融情勢の安定を確保しつつ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現