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日本銀行講演2022年3月24日片岡剛士, 審議委員

【挨拶】「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(青森県金融経済懇談会)

全文

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日本銀行政策委員会審議委員片岡剛士わが国の経済・物価情勢と金融政策 ── 青森県金融経済懇談会における挨拶要旨 ── 日本銀行 2022年3月24日 1

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1.はじめに日本銀行の片岡でございます。本日は青森県の行政、財界、金融界を代表する皆様とオンライン形式で懇談させて頂く貴重な機会を賜り、誠にありがとうございます。あわせて、皆様には、日頃から日本銀行青森支店の業務運営に対し、ご支援、ご協力を頂いておりますことを、この場をお借りして改めて厚く御礼申し上げます。本日は、わが国の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営につきまして、私の考えを交えつつお話しします。その後、皆様から、青森県経済の動向や日本銀行の業務・金融政策に対する率直なご意見をお聞かせ頂ければと存じます。青森県を訪問することがかなわず大変残念ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。2.経済・物価情勢(1)経済・物価の現状最初に経済・物価の現状についてご説明します。まず、海外経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が進んだ2020年4~6月期に大幅に落ち込んだものの、その後は国・地域によりばらつきを伴いつつ回復を続けてきました(図表1)。主要国・地域別に敷衍しますと、米国経済は、オミクロン変異株による感染再拡大や供給制約といった逆風はあるものの、個人消費を中心に回復を続けています。また、欧州経済は、新規感染者数の増加を受けて一部の国々で公衆衛生上の措置が一時的に再強化されましたが、全体としては回復しています。

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中国経済は、基調としては回復しているものの、規制強化に伴う不動産やインフラ投資の弱含み、感染症の拡大に伴う一部地域における公衆衛生上の措置などを

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2 背景に成長ペースが鈍化しています。中国以外の新興国や資源国経済は、このところ新規感染者数が増加しているものの、持ち直しています。図表1 世界経済見通し(IMF)

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(出所)IMF, "World Economic Outlook (October 2021, January 2022)"しかしながら、2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことや、それに伴う各国のロシアへの経済制裁などの動きは、先行きの世界経済への下押し要因となると予想しています。ウクライナ情勢の悪化が経済・物価動向に与える影響として、大きく、ロシアへの経済制裁を背景とした供給懸念に伴う原油・天然ガス・小麦などの資源・穀物価格の上昇、ロシア関連の貿易活動の停滞、そして国際金融市場の変動の3つを挙げることができます。資源・穀物の価格上昇は、インフレ圧力の一層の高まりや長期化を通じて、企業や家計の購買力を悪化させます。またロシア関連の貿易活動の停滞は、ロシア経済の下押しはもとより、グローバルな供給制約の長期化という形で、世界経済の下押しにつながる懸念もあります。さらに国際金融市場では、資産価格が大きく変動するなど神経質な展-8-6-4-20246810121416000102030405060708091011121314151617181920212223世界全体米国ユーロ圏中国新興国(前年比、%)2000年見通し 3

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開が続いています。ウクライナ情勢の帰趨は極めて不確実性が大きく、指摘した3つの変化が海外経済に与える二次的な波及効果や、経済制裁を含む主要国の政策運営が各国経済に与える影響も含め、状況をしっかりと把握していく必要があると考えています。こうしたもとで、わが国の経済は、基調としては持ち直しの過程にありますが、本年入り後は、下押し圧力が増していると私自身はみています。図表2左図では、実質GDP成長率を折れ線、民間消費や民間設備投資といったGDPを構成する需要項目の寄与度を棒グラフで示しています。2021年10~12月期の成長率は、前期比+1.1%、年率では+4.6%となりました。デルタ変異株による感染拡大が昨年9月にかけて収束し、公衆衛生上の措置が解除されたことで、民間消費や民間設備投資が持ち直したことが寄与しています。また、企業業績も海外経済の回復に沿って製造業を中心に改善し、生産や輸出は拡大しました。もっとも、図表2右図が示すとおり、実質GDPの水準がコロナ禍前を上回るには、まだ時間が必要な状況です。そして 2022年入り後は、オミクロン変異株による感染拡大に伴う公衆衛生上の措置の影響により、民間消費を中心に、わが国経済は持ち直しの動きが一服しているとみています。 4 図表2 実質GDP実質GDP成長率と需要項目別寄与度実質GDPの推移

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(出所)内閣府「2021年10~12月期四半期別GDP速報(2次速報値)」わが国の物価についてみると、図表3に示したとおり、本年2月の消費者物価は、生鮮食品を除く総合で前年比+0.6%となりました1。また試算値ではありますが、携帯電話通信料に加えてエネルギー価格などの一時的な要因を除いた消費者物価は、前年比0%台後半のプラスで推移しています。図表4では消費者物価の基調的な変動を示す指標の動きをまとめています。物価の基調を示すこれらの指標は、感染症の影響が深刻化した2020年以降は緩やかに低下しましたが、2021年以降は上昇に転じ、足もとでは感染症拡大前の水準まで戻っている状況です。 1 生鮮食品およびエネルギーを除く総合では、前年比-1.0%となりました。-35-30-25-20-15-10-505101520253018192021民間消費民間設備投資等政府支出輸出輸入在庫等実質GDP成長率(季節調整済、前期比年率、%)2018年48049050051052053054055056057058018192021(季節調整済年率換算、兆円)2018年 5 図表3 消費者物価

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(注)1. エネルギーは、石油製品・電気代・都市ガス代。2. 2020/4月以降の消費税・教育無償化の影響は、高等教育無償化等の影響も加味した日本銀行スタッフによる試算値。(出所)総務省「消費者物価指数」図表4 消費者物価の基調的変動 (出所)日本銀行「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.516171819202122携帯電話通信料Go To トラベルの影響消費税・教育無償化の影響エネルギー上記の要因を除くベースCPI(除く生鮮)(前年比、%)2016年-50-2502550-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.0111213141516171819202122刈込平均値加重中央値上昇品目比率-下落品目比率(右目盛)(前年比、%)(%ポイント)2011年 6

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(2)経済・物価の先行き続いて、わが国の経済・物価の先行きについて、政策委員の中心的な見方をご説明します。図表5は、本年1月に公表した日本銀行の展望レポートにおける経済・物価見通しの中央値を示していますが、実質GDP成長率については、2021年度+2.8%、2022年度+3.8%、2023年度+1.1%と予想しています。昨年10月時点の見通しと比べると 2021年度は下振れ、2022年度は上振れとなっていますが、これは、2021年度半ばから後半にかけて、供給制約の影響を受けた自動車部門などの生産落ち込みによる成長率の押し下げと、2022年度以降の政府の経済対策や挽回生産などによる成長率の押し上げを踏まえたものであって、基本的なシナリオに変化はありません。すなわち、日本経済は、感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らいでいくもとで、外需の拡大や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果が下支えとなって回復基調を辿ることが予想されます。また感染症の影響が収束すれば、成長はさらに強まることが期待できます。わが国の物価の先行きについては、図表5のとおり、展望レポートにおいて2021年度ゼロ%、2022年度+1.1%、2023年度+1.1%と予想しています。

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2022年度にかけて、エネルギー価格や原材料コストが上昇するもとで携帯電話通信料の下落といった特殊要因も剥落することから、物価上昇率は、プラス幅を拡大していくと見込んでいます。その後は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどによる基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて前年比1%程度の上昇率が続くと考えています。

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7 図表5 経済・物価見通し(2022年1月展望レポート)対前年度比、%、政策委員見通しの中央値。実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品)2021年度+2.80.010月時点の見通し+3.40.02022年度+3.8 +1.110月時点の見通し+2.9 +0.92023年度+1.1 +1.110月時点の見通し+1.3 +1.0(出所)日本銀行「経済・物価情勢の展望(2022年1月)」(3)先行きのリスク要因以上、経済・物価の先行きについて政策委員の中心的な見方を説明しました。もっとも、こうした見方はロシアのウクライナ侵攻の影響を踏まえていないことに留意する必要があり、特に当面は、感染症拡大に伴う影響や地政学的リスクを中心に経済は下振れリスク、物価は資源価格上昇に伴う上振れリスクに注意が必要と考えています。以下では、先行きのリスク要因について、私が注目しているポイントを3点お話ししたいと存じます。1点目は、感染症の拡大が繰り返されることによる経済成長への影響です。昨年11月後半にアフリカ南部で確認されたオミクロン変異株は、世界各地で猛威をふるいました。図表6は世界における新規感染者数の推移を示していますが、直近のピークをみると、デルタ変異株による感染が拡大した昨年後半の数倍の 8

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規模となっており、オミクロン変異株の感染力が非常に強いことが分かります2。図表6 新型コロナウイルス新規感染者数 (注)1. 後方7日移動平均。直近値は、3/16日。2. 米国は CDC 公表値、ユーロ圏と米欧中以外は WHO公表値。中国は、20/2/17~19日について、他の期間とベースが異なるため段差が生じているほか、20/3/16日から当局公表値(20/3/15日まで WHO公表値)。(出所)CEIC感染症の拡大は、総需要および総供給の減少を通じて経済に影響します。すなわち、感染者数の拡大に伴う医療負荷を抑えるための外出や移動制限、一部産業に対する営業制限といった公衆衛生上の措置や、感染症への警戒感を受けた人々の自発的な外出の抑制は、家計消費をはじめとする総需要を減少させるとともに、労働力供給の減少を通じて総供給の減少にもつながります。2020年春

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2 わが国でも、オミクロン変異株の流行が始まった本年1月以降、感染者数が急増しました。オミクロン変異株は、デルタ変異株に比べて重症化率が低いとみられるものの、この間、ピークでみると重症者数は昨年秋の約7割に達し、一部地域では医療提供体制の逼迫につながりました。012345678020040060080010001200140016001800200014710147101米国ユーロ圏米欧中以外中国(右目盛)(千人)(千人)2020年1月2021年1月2022年1月 9

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の感染拡大期には世界中で厳しい行動制限が導入され、経済成長率は、需給両面の落ち込みを伴いながら大幅なマイナスとなりました。その後は、米欧ではブースター接種を含むワクチンの普及などにより感染抑制と経済活動再開の両立の動きが進み、感染症の拡大が総需要に与える影響は弱まってきています。とはいえ、新たな変異株による感染拡大が総需要の回復を後ずれさせ、ひいては、供給面の落ち込みを伴いながら経済の成長力そのものを停滞させるリスクには引き続き留意する必要があります。2点目は、供給制約が長期化する可能性と、それが各国経済に及ぼす影響です。2020年以降、供給制約が強く意識されるようになった理由は、感染症が長期化するなかで、特に財に関して、総需要の拡大に総供給が十分に追いつけない状況が続いたためです。総需要については、感染症による経済の落ち込みを最小限にするべく各国政府や中央銀行が大規模な財政・金融政策を講じるなかで、経済活動の再開が進むにつれて感染症下で抑えられていた総需要の巻き戻しが生じました。こうした巻き戻しはペントアップ需要という形で、感染抑制と経済活動再開の両立を早いタイミングで進めた米国や欧州で顕在化しました。

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一方で総供給については、感染を避けるなどの理由で労働市場から退出していた人々が期待ほど市場に戻らなかったために労働供給の回復が遅れたこと、またサプライチェーンの毀損や物流のボトルネックの長期化もあって、自国のみならず他国の生産力の回復の遅れにもつながっています。図表7では、左側にエネルギーや食品の価格も含めた物価上昇率、右側に入荷遅延の状況を示しています。遅延の度合いが物価上昇率の高止まりに影響していること、そして、遅延の度合いには各国で差があるものの深刻な納期の長期化が続いており、当面の間は、納期の長期化が容易に解消されない蓋然性が高いことがわかります3。

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3 たとえば日本貿易振興機構(2022)「供給制約、輸送の混乱と企業の対応状況」(下記UR 10 図表7日米欧の物価と供給のボトルネック物価のヘッドライン(総合)入荷遅延(PMI)

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(注)日本は生鮮食品を除く。(出所)総務省「消費者物価指数」、U.S.Bureau of Economic Analysis,"Personal Income and Outlays",Eurostat, "Harmonised Index ofConsumer Prices."(注)入荷遅延指数=100-サプライヤー納期指数。米国、ユーロ圏は、製造業PMI。日本は、au じぶん銀行日本製造業PMI。(出所)Copyright © 2022 by S&P GlobalMarket Intelligence, a divisionof S&P Global Inc. All rightsreserved.供給制約は、大きく言えば、生産の下振れに伴う企業の機会損失に加え、インフレ圧力の高まりに伴う家計の購買力低下や交易条件の悪化による企業収益の下押しといった経路を通じてわが国経済にも影響を及ぼします。このうち、インフレ圧力の高まりに伴う家計の購買力低下については、主としてエネルギーや食料品といった必需財の価格が上昇しており、特に、購買力低下の影響を受けやすい低所得者層への影響が懸念されます。また交易条件の変化について図表8をみると、2013年以降では、交易条件の悪化局面が 2013年から 2014年10月、2017年から 2019年5月、そして2021年

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L)によると、少なくとも年内は物流の混乱が続くとの声が多いことがわかります。https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/covid-19/info/logistics0217r.pdf-2-10123456719202122日本(CPI)米国(PCEデフレーター)ユーロ圏(HICP)(前年比、%)2019年354045505560657075808519202122日本米国ユーロ圏(季節調整済、DI)2019年納期が長期化 11 3月以降の3度にわたって生じていることがわかります。また、今次局面の特徴として、悪化度合いの大きさに加え、輸入価格の上昇が大きく影響していることが挙げられます。さらに、原油輸入価格の上昇が交易条件の悪化の主因であった2017年から 2019年の状況とも異なり、今次局面では、原油価格だけではなく、供給制約を反映して金属製品や木材など幅広い財の輸入価格も上昇していることが特徴です。こうした原材料コストの高止まりが続くもとで販売価格へのコストの転嫁が進まない状況が続く場合、企業が資本や労働に利益を分配する流れを頓挫させるリスクが高まります4。図表8 交易条件の変化

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(注)1.交易条件=輸出物価指数/輸入物価指数。2.「為替レート」は交易条件(円ベース)前年比と同(契約通貨ベース)前年比の差。「その他」は、交易条件(円ベース)前年比から「為替レート」、「原油輸入価格(契約通貨ベース)」、「その他輸入価格(契約通貨ベース)」および「輸出価格(契約通貨ベース)」の寄与を除いた残差。(出所)日本銀行「企業物価指数」をもとに筆者が算出。 4 なお、為替レートは、円ベースでみた輸出価格と輸入価格の両面に影響するため、全体として、交易条件に与える影響は大きくないことに注意が必要です。3.77.5-19.6-6.1-1.4-15.9-40-30-20-1001020302013141516171819202122為替レート原油輸入価格(契約通貨ベース)その他輸入価格(契約通貨ベース)輸出価格(契約通貨ベース)その他交易条件(円ベース)(前年比、%)改善悪化年 12

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3点目は、各国のマクロ経済政策の今後の影響5、特に米国の金融政策が資産市場と国際金融市場に及ぼす影響です。米国の利上げは、米国経済のみならずコロナ禍からの回復途上にある新興国市場にも、国際金融市場の資本フローの変化を通じて影響を及ぼします。また、中国経済についても、不動産部門などの調整が成長率を下押しすることで世界経済に負の影響を及ぼすリスクが懸念されます。あわせて、先ほども申し上げたとおり、最近のウクライナ情勢などの地政学的リスクが資源・穀物価格、世界経済や国際金融市場に及ぼす影響についても十分に注視していくことが必要です。3.金融政策運営以上の経済・物価見通しを踏まえつつ、現在の金融政策の概要と最近の政策決定についてご説明します。そのうえで、金融政策運営に対する私の考えを申し上げたいと存じます。(1)金融政策の概要と最近の政策決定日本銀行は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という枠組みに基づき、2%の「物価安定の目標」の達成に向けて金融政策を運営しています。この枠組みは、「長短金利操作」、「リスク資産の買入れ」、そして、先行きの政策運営についての対外的な約束である「コミットメント」の3つから構成されます。これらに加えて、日本銀行は2020年3月以降、感染症に伴う経済・金融的影響への対応策を実施してきました。これは大きく、 ①企業等の資金繰りを支援す

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5 世界的なインフレ圧力の強まりに伴い、2021年10~12月期に利上げに踏み切った中央銀行は31と7~9月期の23から増加しています。 13 る「特別プログラム」、②円貨および外貨の潤沢かつ弾力的な供給、③ETFとJ-REITの買入れ、の3つの柱から成っています。昨年12月の金融政策決定会合では、感染症への対応策のうち、本年3月末が期限であった「特別プログラム」について中小企業向けの資金繰り支援を9月末まで半年間延長する一方で、大企業向けについては期限通り終了することを決定しました。図表9では概要を示していますが、こうした判断に至った理由は、企業の資金繰りは全体として改善しているものの、対面型サービス業および中小企業を中心になお厳しさが残っているためです。「特別プログラム」の修正は、感染症への対応策の終わりを意味するものではありません。日本銀行としましては、引き続き、感染症の影響を注視しつつ、必要があれば、適切な措置を講じていく方針に変わりがないことを強調しておきたいと存じます。図表9 中小企業等向け資金繰り支援の延長

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大企業:CP・社債市場は良好な発行環境。貸出では予備的な流動性資金需要に落ち着き中小企業:資金繰りは、総じて改善傾向だが、対面型サービス業など一部になお厳しさ金融環境:全体として改善CP・社債等買入れ新型コロナ対応特別オペ民間債務担保分制度融資分プロパー融資分平常化感染症拡大前の買入れペースに戻して継続終了バックファイナンス措置の半年間延長付利金利+ 0% 、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額へと見直し半年間延長付利金利+0.2% 、マクロ加算残高への算入は 2 倍加算を継続「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の一部延長(2022年3月末→9月末)大企業向け・住宅ローン中心中小企業等向け当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる 14

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また、気候変動問題に関しては、中長期的に経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を及ぼすとの認識から、気候変動分野での金融機関の多様な取り組みを支援するための資金供給を行っています。昨年11月に対象先として 43 先を選定し、12月の初回オペでは約2兆円の資金供給を行いました。日本銀行としましては、引き続き、気候変動対応に資する民間の取り組みをサポートしていきたいと考えています。(2)金融政策運営に対する私自身の考え以上ご説明した金融政策のうち、私は、感染症や気候変動への対応策については賛成しましたが、長短金利操作とコミットメントについては反対を続けました。資金繰り支援策、流動性供給や気候変動対応だけではなく、2%の「物価安定の目標」を早期に達成し、日本経済が力強い成長軌道に復することを支援するため、より金融緩和姿勢を強める必要があると引き続き考えているためです。順を追って説明したいと存じます。金融政策の判断の基礎となるのは物価動向の判断です。足もとの状況を判断する際には、次の2つの点に留意すべきです。第1に、物価動向の判断にあたっては、消費者物価のみならず、企業物価やGDPデフレーターも含めた幅広い指標の動きをみる必要があるということです。

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特に、GDPに関する物価指数であるGDPデフレーターは、2021年4~6月期以降、図表8でみた交易条件の悪化を反映して、図表 10 のとおり前年比で下落を続けています。これは、足もとの物価上昇は海外からの輸入品価格上昇に依る所が大きく、国内における需要の拡大や賃金上昇が主な要因ではないことを意味しています。

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15 図表 10 GDPデフレーター (注)各需要項目の寄与度は、名目GDPの寄与度と実質GDPの寄与度の差。「在庫等」は残差を含む。(出所)内閣府「2021年10~12月期四半期別GDP速報(2次速報値)」第2に、消費者物価の動きを判断する際には、一時的な要因等を除いた基調的な動きをみることが重要だということです。図表4から改めて消費者物価の基調的変動を示す各指標の動きを確認すると、足もとでは、石油製品、食料工業製品や被服といった財価格を中心に、各指標は緩やかに上昇しています。もっとも、消費者物価の上昇率が2%を上回った時期を含む、基調的変動を示す各指標の動きを示した図表 11 をみると、1990年半ばから 1992年半ばまでは加重中央値および刈込平均、1991年半ばから1992年半ばまではすべての指標が、消費者物価と同じく2%を上回る上昇率に達しており、足もとの刈込平均、加重中央値や最頻値の水準と比較すると差があります。以上から、価格上昇の「広がり」といった観点から足もとの消費者物価を取り巻く環境を評価すると、基調的変動を示す各指標は、一時的に消費者物価の上昇率が高まった 2008年や 2014年頃と同-5-4-3-2-101234518192021民間消費民間設備投資等政府支出輸出輸入在庫等GDPデフレーター(前年比、%)2018年 16

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程度の水準に達しているものの、2%の「物価安定の目標」を安定的に達成できる環境からは距離があると言えます。図表 11 分布情報に基づくコア指標 (注)1. 最頻値は推計された分布の値。2. 加重中央値は、消費者物価指数(総合)の各基準年の個別品目の前年比、ウエイトから計算。2005年以前は小・中分類の前年比を使用。3. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)川本卓司・中浜萌・法眼吉彦、「消費者物価コア指標とその特性――景気変動との関係を中心に――」、日銀レビュー、No.2015-J-11、2015年11月。https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j11.pdf(参考)消費者物価(除く生鮮)

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(注)1991年1月以降は、消費税調整済指数の前年比。(出所)総務省「消費者物価指数」さらに図表 12 のとおり、物価の基調的な変動に影響する需給ギャップや予想インフレ率の動きをみても、需給ギャップは依然として供給超過の状態が続いていますし、予想インフレ率も上昇傾向にあるとはいえ、まだ2014年頃の直近ピークには達していません。-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.585878991939597990103050709111315最頻値加重中央値刈込平均値(前年比、%)1985年-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.585878991939597990103050709111315(前年比、%)1985年 17

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消費者物価の動きについては、これまで述べた物価の基調的な変動や、それに影響を与える変数の動きに着目することに加え、物価上昇の「勢い」がどの程度であれば目標に到達しうるのか、という観点からも検討可能です。図表 13 は、統計的手法を用いて「2年後までに物価上昇率が2%に到達する確率6」を試算したものです。過去1年間の物価上昇率の平均的なトレンドが先行きも続くとの前提で試算した2%到達確率は、昨年7月以降上昇しているものの、その多くがエネルギー価格の上昇によるものであったことがわかります。特殊要因を除いた物価上昇率から計算した確率も上昇していることから、物価上昇の勢いが 6 確率過程がある閾値に初めて到達する時点がワルド分布に従うことを前提に、閾値を2%、2年後を基準として、それまでに物価上昇率が2%に到達する確率を試算したもの。1991年から2012年までの推計結果については、片岡剛士(2018)「わが国の経済・物価情勢と金融政策―神奈川県金融経済懇談会での挨拶―」(下記URL)の図表9をご覧ください。https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180906a.htm/図表 12 需給ギャップと予想インフレ率需給ギャップ合成予想物価上昇率

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(注)各主体のインフレ予想として、企業は短観(販売価格DI)、家計は生活意識アンケート(-5%超+5%未満の回答を集計)、専門家はQUICK調査、コンセンサス・フォーキャスト、インフレ・スワップ・レートをそれぞれ使用。(出所)Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、QUICK「QUICK 月次調査<債券>」、Bloomberg、日本銀行-6-4-2024685889194970003060912151821労働投入ギャップ資本投入ギャップ需給ギャップ(%)1985年0.00.51.01.52.0101112131415161718192021企業・家計・専門家(QUICK調査)の予想物価上昇率を合成企業・家計・専門家(コンセンサス・フォーキャスト)の予想物価上昇率を合成企業・家計・専門家(インフレ・スワップ・レート)の予想物価上昇率を合成2010年(前年比、%) 18

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エネルギー価格に留まらず様々な財に先行き広がっていく可能性はありますが、到達確率の観点からは十分とは言えません。消費者物価は、2022年度入り後、これまで物価を押し下げていた特殊要因が剥落するため、一時的にせよ1%台半ばを上回る上昇率で推移する蓋然性が高いと思いますし、原油価格の動向次第ではその動きがさらに強まる可能性もあります。しかしながら、消費者物価の基調的な動きをみる限り、こうした物価上昇は長続きせず、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムはみられないというのが現時点での私の判断です。このような判断を前提とすると、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投図表13 物価上昇の勢い(2年後までに物価上昇率が2%に到達する確率)

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(注)1.確率過程がある閾値に初めて到達する時点がワルド分布に従うことを前提に、閾値を2%、2年後を基準として、それまでに物価上昇率が2%に到達する確率を試算。物価上昇率が、過去1年間の平均的な上昇ペースと同じペースで今後も上昇すると仮定した場合の2%到達確率によって、物価上昇の勢いを評価した。2.消費税、幼児教育・保育無償化の影響を除く。(出所)総務省「消費者物価指数」をもとに筆者が算出。0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.013141516171819202122生鮮食品を除く総合生鮮食品及びエネルギーを除く総合(試算値)生鮮食品・エネルギー・高等教育無償化・GoToトラベル・携帯電話通信料の影響を除く2013年 19

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資を後押しすることで企業の高水準の貯蓄の解消を進め、所得と需要の拡大を伴った持続的な物価上昇につなげるためにも、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢をより強めることで、経済の回復と物価安定目標の達成を早期に実現していく必要があると考えています。具体的には、需給ギャップの拡大に働きかけるべく、長短金利操作において、長短金利の低下を明示したうえで、積極的な国債買入れを行うことが適当です。また、予想インフレ率を高めるためのコミットメントの強化については、政策金利のフォワードガイダンスを物価目標と関連付け、具体的な条件下で行動することが約束されている強力な内容に修正することが適当と考えます。これは、2%の「物価安定の目標」を安定的に達成・維持できる状況を満たさない限り、引き締め方向への金融政策の変更はないことをより明確に表明することにつながりますし、金融政策において重要な、期待をコントロールするという観点からも意味があると考えます。さらに財政・金融政策の連携を強化し、ポリシーミックスを着実に実行していくこともあわせて重要です。引き続き、日本銀行政策委員会の一員として、「物価安定の目標」の達成・維持に向けて最大限の努力をして参りたいと存じます。4.青森県経済について最後に、青森県経済について、日本銀行青森支店の調査を参考にしつつお話しいたします。

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青森県は、三方を海に囲まれ、世界遺産である白神山地をはじめとする豊かな自然に恵まれた地域です。歴史を振り返ると、江戸時代には陸路と海路の整備が進められ、交易を通じて商業が発達しました。また、豊富な資源を背景に農林水

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産業や観光業が発展したほか、製造業の集積も進んできました。こうしたなか、日本銀行青森支店は、1946年に戦後第1号支店として開設され、現在に至っております7。足もとの県内景気は、オミクロン変異株による感染拡大の影響により宿泊・飲食といった対面型サービス消費を中心に厳しい状態にあるなか、供給制約の影響もあり、弱含んでいます。また、構造的には、人口減少や少子高齢化が全国に先駆けて進んでいます。しかしながら、コロナ禍において、地方移住への関心の高まりが追い風となったこともあり青森県の転出超過数が縮小するなど、明るい兆しもみられています。先行きを展望しますと、コロナ後の中長期的な成長に向けて、青森県は3つの大きなポテンシャルを有していると考えています。1点目は、青森県は、再生可能エネルギーの一大供給地であることです。特に風力発電事業では、津軽地域や下北半島が好立地として注目されており、2020年度の風力発電実績は全国トップとなっています。脱炭素化の流れが急速に進むなか、今後も風力発電施設の建設が計画されており、当地でもメンテナンス産業への参画などを通じた雇用機会の創出や域外からの収入獲得が期待されます。2点目は、昨年7月に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されるなど、豊富な観光資源を有していることです。

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1万年にもわたり続いた縄文文化に触れることのできる縄文遺跡群は、悠久の歴史に思いを馳せることのできる大変魅力的なコンテンツであり、ウィズ・アフターコロナにおいて交流人口の増加につながることが期待されます。

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71965年から 68年にかけて、「戦艦大和ノ最期」という著作で作家としても有名だった吉田満が支店長として勤務しました。吉田は、その著書「青森讃歌」における「青森県経済の診断書」という章で、青森は「未来県」、「持てる可能性をすべて引き出すことができれば、前途はまさに洋々たるものであろう」、「青森県の持つ第一の宝庫は、何といっても天然資源であろう」と著し、青森県の持つ可能性に大きな期待を見出していました。 21 3点目は、食糧供給基地としての優位性です。青森県の食料自給率は全国トップクラスで、農業産出額の伸び率も全国1位となっています。りんごをはじめとする一次産品の輸出額は東アジアを中心に増加しています。また、最近では高度なAI・IoT技術を駆使することで減農薬栽培を実現するなど、生産性の向上や高付加価値化に取り組む動きもあると聞いています。日本銀行としても、青森支店を中心に、青森県経済の発展に少しでも貢献できるよう努めてまいります。ご清聴ありがとうございました。以上