【講演】「経済・物価見通しと金融政策運営」(内外情勢調査会)
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p2022年5月13日 日本銀行 日本銀行総裁黒田東彦経済・物価見通しと金融政策運営―― 内外情勢調査会における講演 ―― 1
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1.はじめに日本銀行の黒田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話する機会を頂き、ありがとうございます。わが国経済は、2年前の感染症による大きな落ち込みからの回復プロセスにあります。感染症の影響については、サービス消費の下振れやサプライチェーン障害等による輸出・生産の抑制などに引き続き注意が必要ですが、この間のワクチンの普及などもあって、経済活動への下押し圧力は徐々に和らいでいます。しかしながら、本年2月に、ロシアによるウクライナ侵攻という、今後の展開が見通し難い新たな地政学上のショックが加わりました。これは、世界的な資源・穀物価格の大幅な上昇に繋がるとともに、貿易活動やコンフィデンスへの直接・間接の影響から海外経済に減速圧力をもたらすなど、日本経済を巡る不確実性を高めています。こうした中、日本銀行は、先月末の金融政策決定会合において、2024年度までの経済・物価見通しを「展望レポート」として取りまとめ、公表しました。併せて、日本銀行は、金融市場の不確実性を減らす観点から、イールドカーブ・コントロールを通じた現在の強力な金融緩和スタンスを明確に示しました。本日は、「展望レポート」を踏まえつつ、日本銀行の経済・物価に対する見方をご説明するとともに、先日の決定を含め、金融政策運営の考え方についてお話したいと思います。
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2.経済情勢(海外経済の見通し)まず、海外経済から話を始めます。海外経済は、2020年に感染症の影響から前年比-3.1%とリーマン・ショック時を超える大幅な落ち込みを経験しましたが、2021年には力強い回復に転じ、+6.1%とかなり高い成長率となりました(図表1)。先行きは、資源・穀物価格の高騰などウクライナ情勢の経済面への波及から、海外経済は、昨年対比減速するとみていますが、感染症 2
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の影響が和らいでいくもとで、回復傾向を維持すると予想しています。この点、IMF(国際通貨基金)が先月公表した最新の見通しによれば、世界経済成長率は、2022年が+3.6%、2023年も+3.6%と、1990年以降の長期平均並みの成長率を維持することが見込まれています。このように、海外経済が減速しつつも底堅い成長を続けるもとで、わが国の輸出と生産は、供給制約の緩和が見込まれる自動車関連や、グローバル需要が拡大しているデジタル関連を中心に、増加を続けると予想しています。(わが国経済の中心的な見通し)次に、わが国経済の動向です。わが国経済は、相次ぐ感染拡大の波を受けて、行きつ戻りつを繰り返しながらも、基調としては持ち直しを続けています。昨年10~12月は、感染の落ち着きにより、前期比年率+4.6%とかなり高い成長となりましたが、本年1~3月は、半導体や部品などの供給制約の影響が長引く中で、オミクロン株流行によるサービス消費への下押し圧力が強まったことから、はっきりと減速しました。春先以降は、ウクライナ情勢を受けた資源価格の上昇の悪影響が、企業の業況感などにみられ始めていますが、3月下旬のまん延防止等重点措置の解除に伴い、個人消費は再び持ち直しつつあります。
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そうした現状を踏まえたうえでのわが国経済の先行きですが、今回の「展望レポート」では、2024年度までの3年間の見通し期間を、2つのフェーズに分けて説明しています(図表2)。最初のフェーズは、見通し期間の序盤から中盤にかけてです。この局面では、資源価格上昇による海外への所得流出が下押しに作用するものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境等にも支えられて、ペントアップ需要の顕在化の動きが続くことから、高めの成長率になると見込んでいます。もう少し詳しく申し上げますと、原油や天然ガス、石炭等の資源価格や小麦等の穀物価格は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた供給不安の高まりを背景に、振れを伴いながらも、大幅に上昇しています(図表3)。資源や穀物の価格上昇は、これらの大部分を輸入に頼るわが国において、海外への所得流出、つまり交易利得の悪
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化に繋がります。このことは、エネルギーや食料品の価格上昇を通じて、家計の実質所得や企業収益に対する下押し要因として作用します。通常であれば、こうした所得への下押し圧力は、国内需要を抑制する方向に働きますが、今次局面では、そうした中にあっても、国内需要は比較的しっかりとした回復を続けると予想しています。その理由として、第1に、感染状況が改善し、ワクチンや治療薬の普及などにより感染抑制と消費活動の両立が進むもとで、外食や旅行といったサービス消費分野では、行動制限下で積み上がった貯蓄の取り崩しを伴いながら、相応の規模でペントアップ需要が発生すると想定しています(図表4)。足もとの外食や旅行は、依然として、コロナ前の7割程度という低水準にとどまっていますが、このことは、逆にサービス消費には比較的大きな「伸びしろ」が残っていることを意味します。第2に、政府による「総合緊急対策」も、ガソリン補助金や低所得世帯への給付金を通じて、家計の実質所得への下押し圧力を和らげる効果を持つと考えられます。第3に、サプライチェーンの正常化や部品不足の緩和も、抑制されてきた生産の増加を通じて、自動車などの耐久財消費の回復や、進捗が遅れていた設備投資の増加に繋がると予想しています。次のフェーズは、見通し期間の中盤以降です。
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この局面では、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力は和らいでいくため、成長ペースは鈍化することが予想されます。もっとも、資源高に伴う所得流出には歯止めがかかり、緩和的な金融環境が維持されるもとで、所得から支出への前向きの循環が徐々に強まっていくことから、潜在成長率を上回る成長が続くとみています。すなわち、家計部門では、雇用者所得の改善が、個人消費の増加を支えます。雇用者所得は、対面型サービスの回復に伴う非正規雇用の増加に加え、労働需給の引き締まりを背景とした賃金上昇率の高まりを背景に、緩やかな増加を続けると予想しています。こうした雇用者所得の増加に加え、エネルギー価格上昇による実質所得への下押し圧力の緩和にも支えられて、個人消費は、ペントアップ需要の鈍化を伴いつつも、着実な増加を続けると想定しています。企業部門でも、原材料コストの上昇圧力が徐々に和らぐこと
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から、収益は改善基調に復していくとみています。こうした企業収益の増加は、緩和的な金融環境とも相俟って、人手不足対応投資やデジタル関連投資、成長分野や脱炭素化関連の研究開発投資を後押ししていくと考えています。以上の見通しを、政策委員見通しの中央値で申し上げますと、2022年度は+2.9%と高い成長率となったあと、2023年度は+1.9%、2024年度は+1.1%と、ペースを鈍化させつつも、潜在成長率を上回る成長を続けると見込んでいます(前掲図表2)。前回1月時点の見通しと比べますと、2022年度は、資源価格の上昇や海外経済の減速の影響から下振れていますが、2023年度は、その反動もあって上振れています。(当面のリスク要因)ただし、こうした中心的な見通しを巡っては、感染症やウクライナ情勢を主因に、当面は下振れリスクが大きいと考えています。まず、感染症に対するわが国家計の警戒感は、高齢者を中心に根強く続いています。実際、年始以降のオミクロン株の流行局面について、クレジットカードの決済データから作成した年齢別のサービス消費の動向をみますと、若年層はコロナ前と同程度の水準で底堅く推移する一方、年齢が高い層ほどコロナ前対比、弱めの動きとなっています(前掲図表4)。
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こうした中、仮に感染状況の改善が遅れると、行動制限のもとで蓄積した、所謂「強制貯蓄」の一部が、先行きの不確実性に備えるための「予備的貯蓄」に変質し、貯蓄の取り崩しが順調には進まない可能性も考えられます。また、内外における感染再拡大や、それに伴う一部の国・地域における厳格な行動制限によって、サプライチェーンの混乱などが生じ、わが国企業の直面する供給制約が長期化・拡大するリスクもあります。この点では、中国の上海等でのロックダウンに伴う物流網の混乱が、わが国で裾野の広い自動車関連を中心に、輸出・生産を供給面から制約し始めている点には注意が必要です。さらに、ウクライナ情勢を巡る不確実性もきわめて高く、事態の展開次第では、先行きの海外経済が下振れるリスクに加え、資源価格の大幅な変動が生じる可能性もあります。また、インフレの高進が続く先進国を中心に、金
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5 融緩和の縮小ペースの加速が意識されるもとで、為替市場も含めた国際金融資本市場が不安定化するリスクも考えられます。この点、為替相場の急激な変動は、先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定困難化や設備投資の先送りなどを通じて、経済にマイナスの影響を及ぼすことに留意が必要です。日本銀行としては、国際金融資本市場の変動がわが国の経済・物価に与える影響を、十分注意してみていきます。
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3.物価情勢(消費者物価の中心的な見通し)続いて、物価の見通しです(図表5)。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の下落の影響が剥落し始める4月以降、エネルギー価格の大幅な上昇を反映して、はっきりとプラス幅を拡大する見込みです。実際、全国に先行して公表される東京都区部の消費者物価をみると、生鮮食品を除いたベースの前年比は、3月の+0.8%からプラス幅を拡大し、 4月には+1.9%となりました。こうしたもとで、2022年度の消費者物価の前年比は、政策委員の中央値で+1.9%と、1月時点から大幅に上振れ、2%近い上昇率になる見通しです。もっとも、当面の物価上昇の主因は、原油等の資源価格の動きが、政府の補助金分を除き、ほぼ機械的に反映されるガソリンや電気代・ガス代などのエネルギー価格の上昇です。原油等の資源価格については、海外中銀や国際機関と同様、先行き同じペースで上昇を続けるとは見込んでいませんので、前年比でみたエネルギー価格の押し上げ寄与は、徐々に減衰していきます。このため、2023年度の物価上昇率は+1.1%と、プラス幅をはっきりと縮小する見通しです。このように、2022年度の消費者物価は、エネルギー価格の上昇が牽引する形で前年比こそ2%程度へと高まりますが、品目間の拡がりには乏しい上昇になると考えています。
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この点、消費者物価指数を構成する品目別に価格変動率を並べた分布を描いてみますと、足もとでは、ガソリンや電気代等のエネルギー関連品目が突出してかなり高い上昇率を示していますが、それ以外
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の大半の品目はゼロ%程度の変化率に集中しています(図表6)。こうしたゼロ%近傍に分布のピークがくる姿、つまり「値札」を変えない品目のウエイトが最も多い姿は、コロナ前から大きく変化していません。一方、米国についてみると、分布自体が、より大きなプラス方向へとシフトしていることが分かります。最近の米国におけるインフレ高進は、エネルギーなど一部品目だけに牽引されたものというよりは、幅広い品目の価格上昇を反映したものであると言えます。(エネルギーを除くベースでみた消費者物価の見通し)もっとも、一時的な攪乱要因を除いた基調的な上昇率でみれば、わが国の消費者物価は、見通し期間を通じて、緩やかながらも着実に前年比プラス幅を拡大していく、と予想しています。もとより、日本銀行の「物価安定の目標」は、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーしている消費者物価の「総合」ベースで、2%と定義しています。しかし、わが国の生鮮食品の価格は、天候要因等により一時的に大きな変動を示すため、日本銀行の「展望レポート」では、従来から、生鮮食品を除くベースで、消費者物価の見通しを公表しています。最近では、エネルギーの価格も、ウクライナ情勢に伴う国際商品市況の上昇を受けて、わが国の景気実勢から乖離する形で、大幅に上昇しています。
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こうした状況で、物価の「基調」に関する日本銀行の見通しを定量的に分かりやすく説明するためには、生鮮食品だけでなくエネルギーも除いたベースについても、消費者物価の見通しを「展望レポート」で公表することが適当であると判断しました(図表7)1。この「除く生鮮食品・エネルギー」のベースで、日本銀行
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1 基調的な物価変動を的確に把握するうえでは、「除く生鮮食品」や「除く生鮮食品・エネルギー」といった特定のコア指標だけでなく、様々なコア指標を総合的にみていくことが重要です。こうした観点から、日本銀行は、毎月の全国消費者物価指数の公表に合わせて、上昇・下落品目比率、刈込平均値、最頻値、加重中央値といった指標も試算・公表しています。様々なコア指標の作成方法やその特性などについては、以下の日銀レビューを参照して下さい。川本卓司・中浜萌・法眼吉彦(2015)、「消費者物価コア指標とその特性――景気変動との関係を中心に――」日銀レビュー、2015-J-11、白塚重典(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー、2015-J-12 7
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の消費者物価の見通しをご覧頂きますと、2022年度は+0.9%、2023年度は+1.2%、2024年度は+1.5%と、緩やかに上昇率を高めていく姿となっています。このように、一時的に大きく変動しているエネルギー価格の影響を除いたベースでみれば、基調的な物価上昇率は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、見通し期間を通じてプラス幅を緩やかに拡大していくとみています。(中長期のインフレ予想と賃金)基調的な物価上昇率が高まっていくためには、エネルギー価格が主導する物価上昇から、企業収益の増加や賃金の上昇を伴った「拡がり」と「持続性」のある物価上昇へと移行する必要があります。この点、家計や企業、市場参加者等の短期のインフレ予想は、エネルギー価格等の上昇を反映した適合的期待形成のメカニズムを通じて、このところ、はっきりと上昇しています(図表8)。先行きは、こうした動きが、中長期のインフレ予想へと波及し、ひいては賃金上昇率も高まっていくかどうかに注目しています。賃金は、企業にとって「コスト」ではありますが、家計にとっては同時に「所得」になるという二面性を持っています。これは、単なるコストに過ぎない輸入原材料との大きな違いです。すなわち、賃金は、あらゆる財やサービスの生産に必要となる労働力の対価です。
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このため、賃金の上昇は、人件費の上昇を通じて、幅広い財やサービスの販売価格の上昇圧力に繋がっていきます。この点、わが国のサービス価格は、頻繁に改定されることがなく、景気感応的な財価格と比べて、上昇しにくい状態が長らく続いてきました。しかし、賃金がしっかりと上昇していけば、労働コストの割合が高いサービス価格についても、上昇圧力が強まり、物価の上昇にも「拡がり」が伴ってくると考えられます。同時に、賃金は、家計の所得の源泉でもあるため、その上昇は、家計の値上げ許容度の改善にも繋がります。すなわち、賃上げによって家計の実質購買力が高まり、値上げが受け容れやすくなれば、物価上昇の「持続性」も増していくことになります。こうした形で実現する物価の上昇は、企業にとって販売価格の上昇を通じた収益の押し上げ要因となり、
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8 さらなる賃上げの原資を生み出します。このような賃金と物価の相互依存関係を踏まえると、賃金と物価は、ともに上昇する必要があります(図表9)。やや長い目でみると、日本の時間当たり労働生産性は、平均して年率1%程度のペースで上昇しています2。また、日本銀行が目指している消費者物価の上昇率は2%です。したがって、生産性と物価の上昇率と整合的で、持続可能な名目賃金の上昇率は3%程度ということになります。日本銀行としては、2%目標を持続的・安定的に実現する観点から、単に物価が上昇するだけでなく、実質賃金や実質所得が増加する中で物価も上昇するという好循環が形成される必要があると考えています。
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4.日本銀行の金融政策運営ここからは、日本銀行の金融政策運営についてお話します。(持続的・安定的な2%目標実現のための金融緩和)米欧での金融緩和縮小の動きや、わが国の消費者物価の上昇率も当面2%程度で推移すると見込まれることを受けて、日本銀行も金融緩和を縮小すべきではないか、という声も聞かれます。しかし、日本銀行は、現在の経済・物価情勢を踏まえると、強力な金融緩和により、感染症の影響からの景気回復を支えることが必要であると考えています。すなわち、わが国のGDPは、既にコロナ前の水準を回復した米国やユーロ圏と異なり、コロナ前の水準をなお2%強下回っています(図表 10)。経済全体の生産要素の稼働状況を表す需給ギャップの推計値をみても、依然としてマイナスです。加えて、先ほど詳しく説明したとおり、最近の資源価格の上昇により、相応の規模で海外への所得流出が起こっています。つまり、感染症からの回復力が米欧対比弱い中で、所得面からの下押し圧力に直面しています。さらに、目先の物価上昇は、エネルギー主導の持続性に乏しいものであり、中長期のインフレ予想が急激に上昇している訳でもありません。 2 この点については、黒田東彦「日本における物価変動と金融政策の役割――米国・コロンビア大学における講演の邦訳――」(2022年4月)を参照して下さい。 9
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こうした状況における金融政策の役割は、緩和的な金融環境の提供を通じて、総需要の回復をしっかりとサポートすることです。そのもとで、労働需給が引き締まり、賃金が上昇しやすいマクロ経済環境を創り出すことで、実質所得が増加する好循環の中での持続的・安定的な2%目標の実現を目指していきます。(明確な金融緩和スタンス)こうした金融緩和の具体的な手段として、日本銀行は、イールドカーブ・コントロールのもと、「10年物国債金利でゼロ%程度」という現在の金融市場調節方針を維持することが適切であると考えています。また、金利コントロールと市場機能の維持のバランスを図る観点から、長期金利の変動幅は「上下に±0.25%程度」が適当であると判断しています。こうしたもとで、10年物国債金利が「ゼロ%±0.25%」のレンジ内で推移するよう、必要な金額の長期国債の買入れを行っています。最近は、米欧の長期金利上昇の影響から、わが国の長期金利にも上昇圧力が波及する場面もみられました(図表 11)。こうした場合でも、10年物国債金利が0.25%という上限を上回ることがないよう、日本銀行は、従来より行っている、予め指定した金利で金額の制限無しに国債の買入れを行う「指値オペ」や、これを複数日に亘って連続して行う「連続指値オペ」などを実施してきました。
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先月末の決定会合では、この日本銀行のスタンスを明確にするため、10年物国債金利について0.25%の利回りでの「指値オペ」を、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することを決定しました。市場の一部では、これまで「指値オペ」の実施の有無から、日本銀行の先行きの政策スタンスを推し量ろうとする動きもみられていましたが、指値オペを基本的に毎営業日実施することを予めアナウンスすることにより、市場の安定性が確保されるのではないかと考えています。5.おわりに以上、経済・物価情勢について、「展望レポート」に沿って、中心的な見通
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しとリスク要因をご説明するとともに、金融政策運営の考え方についてお話しました。わが国経済は、感染症による大きな落ち込みからの回復途上にあり、感染症は、依然として経済の下押し要因として作用しています。また、このところの資源価格の上昇は、実質所得の減少を通じて、国内需要にマイナスの影響を与えます。そして、目先、2%程度まで物価上昇率が高まるとはいえ、それは、エネルギー主導であり、持続力を欠くものです。したがって、日本銀行は、現在の金融緩和を縮小することが適当とは考えていません。この点、経済がコロナ前の水準を既に回復し、物価上昇率が8%程度まで高まっている米欧とは、全く異なる状況にあることは改めて強調しておきたいと思います。そのうえで、近年、頻発する自然災害や、感染症、さらにはロシアによるウクライナ侵攻など、経済以外の要因により、経済の不確実性は大きく高まっています。これらのショックは、先行きの事態の展開自体が予測し難いだけでなく、経済への波及に関する十分なデータや知見の蓄積が乏しい点も否定できません。このように不確実性の高い状況では、中央銀行は、その時々に判明する様々なデータを、予断を持つことなく幅広く点検して、金融政策運営に当たっていく必要があります。
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日本銀行としては、今後とも、経済物価情勢の的確な判断に努めるとともに、政策判断の根拠や決定内容について丁寧で分かりやすい情報発信を行う努力を積み重ねていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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以上 2022年5月13日日本銀行総裁黒田東彦経済・物価見通しと金融政策運営― 内外情勢調査会における講演 ―1.はじめに2.経済情勢3.物価情勢4.日本銀行の金融政策運営5.おわりに
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図表1わが国の輸出・生産世界経済成長率(IMF4月見通し)(注)右図の○は、4、5月の予測指数を用いて算出。(出所)IMF、財務省、経済産業省、日本銀行1海外経済と輸出・生産-6-5-4-3-2-101234567000204060810121416182022(前年比、%)1990~2019年平均:+3.6%年2020年:-3.1%2021年:+6.1%IMF見通し2022年:+3.6%2023年:+3.6%2.経済情勢5060708090100110120000204060810121416182022鉱工業生産実質輸出(季節調整済、2015年=100)年48049050051052053054055056057058006070809101112131415161718192021222324年度(季節調整済年率換算、兆円)24年度平均22年度平均23年度平均21年度平均図表2(注)見通しは、日本銀行政策委員見通しの中央値。(出所)内閣府、日本銀行2実質GDP見通し2.経済情勢(%)21年度 22年度 23年度 24年度4月時点:+2.1 +2.9 +1.9 +1.1(1月時点:+2.8 +3.8 +1.1 ― )
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-7-6-5-4-3-2-1012050709111315171921日本米国ユーロ圏(季節調整済、対名目GDP比率、%)年図表3商品市況と資源貿易収支鉱物性燃料の貿易収支商品市況3(注)右図の2022/1Qの値は、日本は2021/4Qの名目GDPを用いて算出、ユーロ圏は2022/1~2月の貿易収支と2021/4Qの名目GDPを用いて算出。(出所)Bloomberg、財務省、内閣府、Haver2.経済情勢024681012020406080100120140050709111315171921ドバイ原油(左目盛)小麦(右目盛)(ドル/ブッシェル)(ドル/バレル)年3040506070809010011019/119/720/120/721/121/722/1宿泊・飲食娯楽非製造業(除く宿泊・飲食、娯楽)(季節調整済、2019年=100)月-50-40-30-20-10010203019/720/120/721/121/722/120~39歳40~64歳65~84歳月前半(ベースライン対比、%)図表4サービス消費年齢別のサービス消費サービス業の経済活動水準4(注)右図は、支出者数の変化を考慮に入れた参考系列。年齢5歳階級別の単純平均。ベースラインは、2016~2018年の当該半月の平均。(出所)経済産業省、JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」2.経済情勢
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-2-101239193959799010305070911131517192123除く生鮮食品除く生鮮食品・エネルギー(前年比、%)年度図表5(注) 1997/4月と2014/4月の消費税率引き上げの直接的影響を除いたベース。見通しは、日本銀行政策委員見通しの中央値。(出所)総務省、日本銀行5消費者物価見通し3.物価情勢(%)21年度(実績)22年度 23年度 24年度除く生鮮食品+0.1 +1.9 +1.1 +1.1除く生鮮食品・エネルギー-0.8 +0.9 +1.2 +1.50102030405060-10 -8 -6 -4 -202468101214161820~~2022/3月(前年比、%)(ウエイト構成比、%)図表6消費者物価の品目別分布(注)日本は、生鮮食品を除く。
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(出所)総務省、BLS 6コロナ前(米国)コロナ前(日本)直近(米国)直近(日本)3.物価情勢0102030405060-10 -8 -6 -4 -202468101214161820~~2022/3月(前年比、%)(ウエイト構成比、%)0102030405060-10 -8 -6 -4 -202468101214161820~~2019/9月(前年比、%)(ウエイト構成比、%)0102030405060- 10 - 8 - 6 - 4 - 202468101214161820財サービスエネルギー~~2019/9月(前年比、%)(ウエイト構成比、%)電気代、ガス代ガソリン等携帯電話通信料等
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-4-3-2-101234-8-6-4-20246885878991939597990103050709111315171921需給ギャップ(左目盛)消費者物価(除く生鮮食品、右目盛)消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー、右目盛)(前年比、%)(%)年図表7(注)消費者物価は、消費税率引き上げ・教育無償化政策、Go To トラベル、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値。需給ギャップは、日本銀行スタッフによる推計値。(出所)総務省、日本銀行7需給ギャップと物価上昇率3.物価情勢-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0040608101214161820今後1年間1年先2年後2年先10年後(前年比、%)年予想物価上昇率家計(生活意識アンケート)企業(短観)市場参加者(QUICK)(注)1. 左図は、定量的な設問に対する回答の中央値。2. 中央図は、全産業全規模ベースの物価全般の見通し(平均値)。(出所)日本銀行、QUICK「QUICK月次調査<債券>」8図表83.物価情勢-2024680709111315171921今後1年間今後5年間(前年比、%)年-0.50.00.51.01.52.02.53.014/316/318/320/322/31年後3年後5年後(前年比、%)月
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図表9(注)1. 時間当たり所定内給与の各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。一般労働者(ただし、1993年度以前はパートタイム労働者を含む)。2. 消費者物価は、消費税率引き上げ・教育無償化政策、Go To トラベル、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値。(出所)総務省、厚生労働省9物価と賃金3.物価情勢-4-3-2-10123456785878991939597990103050709111315171921消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)時間当たり所定内給与年度(前年比、%)図表10日米欧の実質GDP米国(注)日本の民間予測は、ESPフォーキャスト(回答期間:3月31日~4月7日)。(出所)Haver、日本経済研究センター、内閣府10ユーロ圏日本4.日本銀行の金融政策運営22/1Q:103.78590951001051819202122(季節調整済、2019年=100)年22/1Q:100.58590951001051819202122(季節調整済、2019年=100)年8590951001051819202122(季節調整済、2019年=100)年22/1Q:97.5(民間予測)
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図表11(出所)Bloomberg11日米欧の長期金利4.日本銀行の金融政策運営-10123413141516171819202122日本米国ドイツ年(%)