【挨拶】「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(福島県金融経済懇談会)
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日本銀行政策委員会審議委員中川順子わが国の経済・物価情勢と金融政策 ── 福島県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──日本銀行2023年3月1日 11.はじめに日本銀行の中川です。本日は、福島県の行政および金融・経済界を代表される皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。皆様には日頃より、福島支店の円滑な業務運営に多大なご協力を頂いておりますこと、この場をお借りして御礼申し上げます。本日は、最初に私から、経済・物価の現状と先行き、日本銀行の金融政策運営などについてご説明させて頂き、その後、皆様から当地の実情に即したお話や、日本銀行の政策・業務運営に対するご意見をお伺いできればと存じます。
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2.経済・物価の現状(1)海外経済はじめに海外経済の現状についてお話しします。海外経済は、昨年から続いている各国中央銀行のハイペースな利上げの効果が徐々に実体経済へ表れ始め、回復ペースは鈍化しています。IMFの世界の経済成長率見通しは、2022年の+3.4%から 2023年は+2.9%に鈍化することが予測されています。企業の景況感も改善・悪化の分岐点となる 50 を下回る水準で推移しています(図表1)。海外の主要地域別の状況を確認します。米国は、個人消費や雇用環境は底堅く推移しています。一方、住宅着工件数が減少するなど住宅投資に利上げの影響がはっきりと表れており、生産活動も横ばい圏内の動きとなっています。欧州は、新型コロナウイルス感染症からの経済活動再開の動きが一巡するなか、ウクライナ情勢の影響が続くもとでインフレ圧力は高く、減速感が強まっています。中国は、感染症が昨年末に大幅に拡大したこともあって、個人消費や生産活動に弱さがみられているものの、足もとでは経済活動の正 2常化に向けた動きもみられています。このように、各地域でばらつきはありますが、海外経済は、総じて減速感が強まっています。
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(2)国内経済続いて、国内経済の現状についてご説明します。全体感としては、わが国経済は、感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、設備投資や個人消費を中心に持ち直していると考えています。以下では、企業部門と家計部門に分けて国内経済の状況をお話しします。(企業部門)まず、企業部門から確認します。企業収益をみると、2022年7~9月期は小幅の減益となりましたが、供給制約の緩和などを背景に、全体として高水準で推移しています(図表2)。企業の景況感は、全体として横ばい圏内の動きとなっています。昨年12月に公表した日銀短観の結果をみますと、非製造業の景況感は、飲食・宿泊サービスや小売などの個人消費関連を中心に改善しましたが、製造業は原材料コスト高やIT関連の生産調整の影響から横ばい圏内で推移しました。企業収益が高水準で推移するなか、設備投資は、引き続き緩やかに増加しています。デジタル・省力化のほか、Eコマースの拡大を背景とした物流施設、都市再開発案件などへの投資がドライバーとなっているとの声が聞かれます。生産活動および輸出の状況をみても、供給制約が緩和するもとで、振れを伴いつつも、基調として増加が続いています(図表3)。鉱工業生産について、業種別にみますと、「輸送用機械」は世界的な半導体不足の影響が徐々に緩和するもとで緩やかな増加基調に復しています。
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「電気・情報通信機械」は自動車向けが増加しているほか、パソコンOSのサポート切れに伴う更新需要も
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3あって、パソコンや周辺機器向けが増加しています。一方、「電子部品・デバイス」はスマートフォンやパソコン向けメモリを中心に在庫調整圧力が強まっています。輸出については、先進国向けは自動車関連や資本財を中心に基調として増加しています。一方、新興国向けについては、中間財や情報関連が中国やNIEs・ASEAN向けで弱めの動きとなっています。(家計部門)次に、家計部門の状況について、個人消費と雇用・所得環境の観点から確認します。個人消費は、感染抑制と消費活動の両立が進展するもとで、緩やかに増加しています(図表4)。家計の消費活動をサービスの消費と財の消費に分けてみますと、サービス消費は、旅行や外食などが持ち直しつつあり、全体でも増加しています。すなわち、海外旅行は低水準に止まっていますが、国内旅行は、全国旅行支援による下支え効果もあって、近距離旅行に加えて、遠距離旅行も増加しています。外食については、少人数利用中心ではありますが、コロナ禍で大きく落ち込んでいたところから持ち直しの動きがみられています(図表5)。財消費のうち耐久財消費については、新車販売が供給制約の緩和に伴う生産活動の持ち直しを背景に増加している一方、家電販売は、季節家電などが減少していますが、11月に気温が平年比で高めであった影響も受けたようです。
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非耐久財消費は、食料品で物価高の影響が窺われるものの、衣料品などを中心に均してみれば増加しています。雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善しています。労働需給の状況を示す様々な指標をみると、感染症拡大前や 1980年代末のバブル期に近い水準となっており、相当タイトです(図表6)。こうした状況で、就業者数は、正規雇用は人手不足感の強い医療・福祉や情報通信等、非正規雇用も医療・福祉や対面型サービスを中心に緩やかに増加しています(図表7)。雇用者全体の所得は、雇用者数と一人当たり賃金がそれぞれ緩やかに増加しているこ
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4とから、名目ベースでは増加を続けています。
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(3)国内物価続いて、国内の物価情勢についてお話ししたいと思います。まず、企業間取引の価格動向を確認します。財の価格を調査している企業物価指数は、既往の原材料コスト高を反映して、1月は前年比で+9.5%と高い伸びを続けています(図表8)。企業間のサービス価格を調査している企業向けサービス価格指数は、財の価格ほど急ではありませんが、こちらも緩やかな上昇が続いています。サプライチェーンの川上から川下の各段階に分けた価格指数をみますと、既往の原材料コスト高を販売価格に転嫁する動きがサプライチェーンの川中から川下にかけて継続しています。こうしたもとで、消費者物価指数は、原材料コスト上昇を転嫁する動きが続いています。直近の1月の結果をみますと、エネルギーや食料品、耐久財などの値上がりにより、生鮮食品を除いたベースで前年比+4.2%となっています(図表9)。振れの大きなエネルギーのほか、全国旅行支援など一時的な要因の影響を除いたベースでみても、財では食料品、日用品、耐久財、サービスでは外食など、幅広い品目での価格転嫁がみられています。以下では、最近の物価上昇の背景について、企業の価格設定スタンスの変化、そして物価の基調的な動きという観点から詳しくご説明したいと思います。(企業の価格設定スタンス)まず、企業の価格設定スタンスです。企業がコスト上昇を販売価格に転嫁する動きが広がっています。
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日本銀行が調査している短観の結果を基にした分析によると、過去、価格改定を行っていなかった企業も値上げに舵を切っていることが確認されます。
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5こうした企業の中には、実に 30年以上振りに販売価格の判断を「上昇」に変更した先が相応に多いことが確認できます(図表 10)。企業の価格設定スタンスが変化している背景には、原材料価格の上昇幅の大きさがあります。従来は、相対的に小幅な原材料価格上昇のもとで、値上げによる客離れを懸念して、価格変更を行わず、効率化や経費削減でなんとか耐えてきた企業が多かったということだと思います。しかし、昨年からは原材料価格が大幅に上昇し、競合他社を含め幅広い企業が値上げに踏み切る中で、値上げを決断したということかと思います。(物価の基調的な動き)次に、日本銀行が公表している様々な指標をもとに、消費者物価の基調的な動きを確認したいと思います。まず、企業の価格設定スタンスが変化するもと、値上がりしている品目が広範に及んでいることが指摘できます。消費者物価指数の調査対象品目のうち、前年対比で値上がりしている品目の割合は本年1月時点で8割超、逆に値下がりしている品目の割合は1割程度となっています(図表 11)。原油など、輸入物価の上昇を起点に消費者物価が上昇した 2008年頃と比べても値上がりは広がっています。さらに、価格変動率の分布の情報を勘案した別の指標も確認します。
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価格上昇率が高い品目と低い品目のそれぞれ 10%を除いて算出する「刈込平均値」は前年比で+3%程度、価格変動率の分布で最も頻度が高い変動率を示す「最頻値」は+1%台半ばとなっており、いずれも上昇しています(図表 11)。しかし、ヘッドラインの+4.3%ほどには上昇していません。これらの指標からわかることのひとつは、価格転嫁は幅広い品目に広がりつつも、一部の品目――典型的にはエネルギー――により全体の価格上昇率が大きく押し上げられているということです。後程、物価見通しでもご説明させていただきますが、こうした消費者物価上昇を牽引してきた品目の寄与は、輸入物価の上昇
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6が落ち着くなかで、先行きはっきりと小さくなる見通しです。これに伴い、消費者物価全体の上昇率も縮小していくと予想しています。引き続き、日本銀行はこうした指標も活用しながら、物価の基調を見極めてまいります。
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3.経済・物価の先行き見通しとリスク(1)経済・物価の先行き見通し続いて、国内の経済・物価の先行き見通しについてお話しします。国内経済は、海外経済の減速や資源高の影響を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで回復を続けると考えています。中長期的には、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、国内経済は潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。日本銀行が1月の金融政策決定会合で決定した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)をみますと、実質GDP成長率の見通しは、政策委員の中央値で 2023年度は+1.7%、2024年度は+1.1%となっています(図表 12)。消費者物価については、これまで物価を押し上げてきた輸入品価格の上昇が資源価格の下落などもあって減衰していくうえ、政府の経済対策もあって、当面上昇ペースがはっきりと鈍化していくと予想しています。こうしたもとで、生鮮食品を除いたベースの消費者物価の見通しは、政策委員の中央値で、2023年度は+1.6%、2024年度は+1.8%であり、2022年度見通しの+3.0%から縮小する見込みです(図表12)。 (2)経済・物価のリスク要因こうした経済・物価の先行きの見通しについては、様々な不確実性が存在します。以下では、私が特に注目しているリスク要因をお話しします。
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71点目は、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向です。昨年以降、各国の中央銀行は強いインフレ圧力に対処するため、急速なペースで利上げを実施しました。この効果もあって、グローバルなインフレ圧力には緩和の兆しがみられ始めています。メインシナリオとしては、金融引き締めのペースが今後緩やかになると予想され、実体経済への影響も比較的マイルドなものに止まるとみています。もっとも、リスクシナリオとしては、一部の先進国でサービス価格が高い伸びを続けており、どこまで金融引き締めを行えばインフレを抑制できるかはなお未知数です。想定以上の引き締めが必要となる場合には、その分実体経済へも強い負の影響が及ぶことになります。その際には、金融市場における急な価格変動や新興国からの資本流出などを通じて影響が増幅され、海外経済が下振れるおそれがあります。2点目は、地政学的リスクと資源・穀物価格の動向です。ロシアによるウクライナ侵攻から 1年を超え、事態は長期化しています。先行きを見通すことは困難ですが、ウクライナ情勢の帰趨によっては、欧州を中心に経済が一段と下押しされる可能性があります。また、ひと頃に比べ安定している資源・穀物価格にも影響が及ぶ可能性があります。3点目は、企業・家計の中長期的な成長期待です。
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足元では、企業はポストコロナやデジタル化、脱炭素化に向けた投資を積極化しており、長い目でみて成長力が高まることが期待されます。一方、ウクライナ情勢や米中貿易摩擦などを受けた地政学的リスクへの意識の高まりや、コロナ禍での供給制約の経験などを踏まえて、サプライチェーン戦略を見直す動きもみられます。この際、「フレンド・ショアリング」と呼ばれる、同盟国や友好国などを中心としたサプライチェーンの見直しの動きもみられています。こうした取り組みは、効率性を多少犠牲にしても、安定性を優先するものですので、物価の上昇圧力になりうると考えています。これまで、世界経済の成長を支えてきたグローバル化の流れが変化することがあれば、企業や家計の中長期的な成長期待に変化が生じ、先行きの経済や物価に影響が及ぶ可能性があります。
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8最後に、物価に対する影響が特に大きなリスク要因として、企業の価格・賃金設定行動を指摘したいと思います。先ほども述べました通り、これまで価格改定を行ってこなかった企業も、急激な原材料価格上昇を受けて、値上げを決断しています。今後、企業のインフレ予想の上振れが起これば、価格転嫁がさらに進む可能性があります。他方で、賃金については、先行き、景気の改善に伴って上昇すると想定していますが、どの程度上昇するかは不確実性が強いと思っています。仮に賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残る場合は、賃上げの動きが想定ほど強まらず、物価への下押し圧力となる可能性があります。現時点でインフレ率を超える賃上げを実施するとの声は、主に大企業から聞かれているところです。こうした動きが中小・零細企業までどの程度広がるかを注視しています。
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4.日本銀行の金融政策続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。日本銀行では、2013年4月以来、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、大規模な金融緩和を粘り強く続けてきました。しかし、ご承知の通り、「物価安定の目標」の実現には時間がかかることとなりました。長期にわたる金融緩和を進める過程では、副作用にも配慮しています。副作用としては、例えば、低金利のもとで金融機関の収益が圧迫され、金融仲介機能に悪影響を与える可能性がありますが、現在、わが国では、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると判断しています。また、債券市場の流動性や機能度が低下していることから、そうした副作用を抑制するための施策を講じながら、金融緩和を継続しています。例えば、2021年3月に、持続的な形で金融緩和を継続していくための点検を実施し、10年物国債金利が「ゼロ%程度」で推移するように運営していたイールドカーブ・コントロールについて、その変動幅は「±0.25%程度」で
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9あることを明確化しました。株式ETFやJ-REITの買入れについても、市場が大きく不安定化した場合に大規模に買い入れるのが効果的であるとの点検結果を踏まえ、メリハリを付けて買入れを行うこととしました。加えまして、昨年12月の金融政策決定会合では、国債買入れ額を大幅に増額しつつ、10年物国債金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大することとしました。あわせて、機動的に、買入れ額のさらなる増額や指値オペを実施することを決定しました(図表 13)。この対応は、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくことで、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じてより円滑に波及するようにするものです。10年物国債金利は「±0.25%程度」の範囲で推移していましたが、10年物以外の年限との相対関係に歪みが生じたり、先物と現物市場の価格に大きな乖離が生じる、といったことが起こりました。こうした歪みが生じたことで、例えば、社債発行時の値決めが難しくなりました。こうした状態が継続すると、企業の起債など資金調達環境に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、日本銀行は、緩和的な金融環境は維持しつつも、市場機能の改善を図るため、イールドカーブ・コントロールの運用面の見直しを行うことにしました。
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これらの措置によって、変動幅を拡大した分、長期金利は上昇していますが、イールドカーブ・コントロールの枠組みによる金融緩和を続けていくうえでは、債券市場の機能度が改善することにより、金融緩和の効果がより円滑に波及していくメリットの方が大きいと考えています。これまでご説明した通り、わが国経済は、企業収益は全体として高水準で、賃金上昇の動きがみられるなど、好循環の兆しが出てきています。もっとも、「物価安定の目標」が達成されたと判断するまでは至っていません。従いまして、当面の金融政策に関しては、金融緩和を維持し、経済をサポートすることが必要であると考えています。
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105.福島県経済について最後に、福島県の経済について、福島支店を通じて得た情報も踏まえつつお話ししたいと思います。まず、東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故からの復興状況についてです。今月で震災から12年を迎えます。この間、避難指示の解除が順次進み、昨年8月には、避難地域全 12 市町村への帰還が可能となりました。また、多くの国で福島県産食品の輸入規制が解除され、2021年度には福島県産の農産物の輸出量が過去最高を記録しました。今年、全国新酒鑑評会で金賞受賞数 10 連覇を狙う日本酒も、海外で人気が高まり、福島県の輸出を牽引しています。漁業関係では、2021年3月で福島県沖での試験操業が終わり、本格操業に向けて漁獲量が増加傾向にあるほか、トラフグなどの近年漁獲量が増えている魚種のブランド化にも取り組まれています。このように、復興に向けた動きは着実に進んでいると認識しています。一方、いまだに2万7千人を超える方々が避難生活を余儀なくされているほか、廃炉までの長い年月を踏まえると、復興は道半ばともいえると思います。福島県は、2019年の東日本台風に加え、昨年、一昨年と2年連続で最大震度6強という大きな地震に見舞われ、甚大な被害を受けました。度重なる災害からの復興に向けた福島県の皆様方のご尽力に心から敬意を表します。
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続いて、福島県経済の現状と将来の展望についてお話しします。福島県の景気の現状ですが、全国と同様、感染症の影響を受けつつも、半導体などの供給制約の影響が和らぎつつあり、緩やかに持ち直しています。先行きについては、回復基調を続けていくとみられますが、引き続き、感染症の動向や物価上昇の影響、また世界経済の動向に留意が必要です。福島県経済の将来を展望しますと、全国平均を上回るペースでの人口減少が進む中で、働く場所の創出と人材確保への対応が重要になっています。この点に関し、福島県では既に前向きな取り組みが行われています。その一つ
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11が、来月に「創造的復興の中核拠点」として浪江町に設立される予定の「福島国際研究教育機構(通称:F-REI〈エフレイ〉)」です。「F-REI」では、ロボット、農林水産業、エネルギーなどのテーマについて、市町村や企業、住民等と様々な形で連携し、研究開発、産業化、人材育成の推進を目指しています。この効果が県内各地に波及することが期待されます。また、福島県では地球温暖化対策として、「福島県地球温暖化対策推進計画」を定め、2050年のカーボンニュートラルに向け各種施策を講じています。特に、再生可能エネルギーの利用推進に力を入れており、太陽光発電では最大出力全国1位となっているほか、風力や地熱発電にも取り組んでいます。新たなエネルギー源として注目される水素については、製造・貯蔵・供給から燃料電池自動車(FCV)を活用した実証実験まで、水素エネルギーの普及に向けた先進的な取り組みを行っています。金融面では、県内の金融機関など 22 機関がお互いに地域や業態の垣根を越えて連携協定を締結し、感染症拡大の影響を受けた中小企業の経営支援に取り組んでおられるとのお話を伺い、大変心強く感じています。これらの前向きな取り組みが結実し、福島県経済がますます発展していくことを祈念しています。日本銀行としても、中央銀行の立場から地域経済の活性化に向けた取り組みに貢献できるよう努めてまいります。
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ご清聴ありがとうございました。以上
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わが国の経済・物価情勢と金融政策2023年3月1日日本銀行政策委員会審議委員中川順子― 福島県金融経済懇談会における挨拶 ―海外経済(図表1)<世界経済見通し><グローバルPMI>202530354045505560070911131517192123製造業サービス業(季節調整済、DI)(注)製造業は、J.P.Morganグローバル製造業PMI。サービス業は、J.P.Morganグローバルサービス業PMI事業活動指数。(出所)Copyright © 2023 by S&P Global Market Intelligence, a divisionof S&P Global Inc. All rights reserved.年-4-20246890950005101520世界全体(前年比、%)(出所)IMF年IMF予測
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国内経済(企業部門)(図表2)<企業収益><業況判断>05101520252803003203403603804000709111315171921売上高(左目盛)経常利益(右目盛)(季節調整済、兆円)年(注)1. 法人季報ベース。金融業、保険業を除く。2. 2009/2Q以降は、純粋持株会社を除く。3. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)財務省(季節調整済、兆円)-60-40-20020406090950005101520全産業製造業非製造業(「良い」-「悪い」、DI、%ポイント)年(注)1. 短観の業況判断DI(全規模ベース)。2003/12月調査には、調査の枠組み見直しによる不連続が生じている。2. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)日本銀行良い悪い国内経済(企業部門)(図表3)<鉱工業生産><実質輸出>8090100110120070911131517192123生産(季節調整済、2015年=100)(注)1. シャドー部分は、景気後退局面。2. ○は、1~2月の予測指数を用いて算出。(出所)経済産業省年60708090100110120070911131517192123実質輸出(季節調整済、2015年=100)年(注)1. シャドー部分は、景気後退局面。2.日本銀行スタッフ算出。2023/1Qは、1月の値。(出所)日本銀行、財務省
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国内経済(家計部門)(図表4)<個人消費><消費活動指数(実質)>808590951001051101213141516171819202122消費活動指数(旅行収支調整済、実質)(季節調整済、2015年=100)(注)消費活動指数(旅行収支調整済)は、除くインバウンド消費・含むアウトバウンド消費(日本銀行スタッフ算出)。(出所)日本銀行年707580859095100105171819202122サービス<50.7>(注)1. 日本銀行スタッフ算出。<>内は、消費活動指数におけるウエイト。2. 非耐久財は、GDP統計において半耐久財に分類される品目を含む。
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(出所)日本銀行等(季節調整済、2017/1Q=100)年7580859095100105110115171819202122耐久財<8.9>非耐久財<40.5>(季節調整済、2017/1Q=100)年国内経済(家計部門)(図表5)<サービス消費><耐久財消費>0204060801001201401213141516171819202122国内延べ宿泊者数(除くインバウンド)外食産業売上高(季節調整済、2015年=100)(出所)観光庁、日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」年60708090100110120130140150160200300400500600121314151617181920212223新車登録台数(乗用車含む軽、左目盛)家電販売額(実質、右目盛)(季節調整済年率換算、万台)(季節調整済、2015年=100)(注)家電販売額の実質値は、商業動態統計の機械器具小売業販売額指数と各種家電関連商品のCPIを用いて日本銀行スタッフが算出。(出所)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会、経済産業省、総務省年
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国内経済(雇用・所得環境)(図表6)<労働需給関連指標>-4-3-2-10123808590950005101520有効求人倍率雇用人員判断DI(短観)労働投入ギャップ(1990~2019年平均=0、標準偏差)人手不足年-4-3-2-1012808590950005101520就業率ギャップ失業率短期失業率長期失業率(1990~2019年平均=0、標準偏差)人手不足年(注)1. 労働需給関連指標は、1990~2019年の標準偏差を用いて基準化。2. 有効求人倍率と失業率の2022/4Qは、10~11月の値。3. 労働投入ギャップと就業率ギャップは、日本銀行スタッフによる推計値。4. 短期失業率と長期失業率の2001年以前は、半期データおよび年次データを使用。(出所)厚生労働省、日本銀行、総務省等国内経済(雇用・所得環境)(図表7)<就業者数><雇用者所得>758085909510010561626364656667680709111315171921就業者(左目盛)正規(右目盛)非正規(右目盛)(注)2012年以前の正規、非正規は、詳細集計ベース。
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(出所)総務省年(季節調整済、百万人)(季節調整済、2019年=100)-4-20241213141516171819202122名目賃金雇用者数雇用者所得(前年比、%)(注)1. 各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。2022/4Qは、12月の値。2. 雇用者所得=名目賃金(毎月勤労統計)×雇用者数(労働力調査)3. 毎月勤労統計の2016/1Q以降は、共通事業所ベース。(出所)厚生労働省、総務省年
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企業物価(図表8)<財・サービス価格><FD-ID指数(総合)>-6-4-2024681012151617181920212223国内企業物価指数企業向けサービス価格指数(前年比、%)(注)消費税を除くベース。(出所)日本銀行年708090100110120130140150160170151617181920212223ID指数(ステージ1)ID指数(ステージ2)ID指数(ステージ3)ID指数(ステージ4)FD指数(除く輸出)(注)FD-ID指数は、産業連関表をもとに、需要段階を最終需要(FinalDemand、FD)と4つのステージから成る中間需要(Intermediate Demand、ID)に分類し、各段階で需要される財・サービスの価格を、FD指数と川上から川下にかけてID指数(ステージ1)、ID指数(ステージ2)、ID指数(ステージ3)、ID指数(ステージ4)として集計したもの。
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(出所)日本銀行年(2015年=100)消費者物価(図表9)<CPI(除く生鮮)><CPI(一時的な要因を除く)>-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.517181920212223携帯電話通信料旅行支援策の影響消費税・教育無償化の影響エネルギー上記の要因を除くベースCPI(除く生鮮)(前年比、%)(注)1. エネルギーは、石油製品・電気代・都市ガス代。2. 2020/4月以降の消費税・教育無償化の影響は、高等教育無償化等の影響も加味した日本銀行スタッフによる試算値。(出所)総務省年-0.50.00.51.01.52.02.53.03.517181920212223公共料金一般サービス財(除く食料品)食料品CPI(除く生鮮・エネルギー)(前年比、%)(注)1. 食料品=「食料工業製品」+「農水畜産物」2. 公共料金(除くエネルギー)=「公共サービス」+「水道料」3. CPIは、消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値。(出所)総務省年
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消費者物価(図表10)<販売価格設定スタンスの変化><直近の販売価格引き上げ時期>-40-30-20-10010203040500709111315171921販売価格判断の変更に慎重な企業(20%)その他の企業(80%)(販売価格判断DI、%ポイント)年(注)全産業全規模ベース。「販売価格判断の変更に慎重な企業」は、1991~2019年の約95%以上の期間において、販売価格判断を「もちあい」と回答した先。点線は、2022/9月調査における予測値。(出所)池田周一郎・倉知善行・近藤卓司・松田太一・八木智之(2022)「短観からみた最近の企業の価格設定スタンス」日銀レビュー・シリーズ、22-J-170102030401年未満1~4年5~9年10~14年15~19年20~24年25~29年30年以上(社数構成比、%)(注)1991~2019年の約95%以上の期間において、販売価格判断を「もちあい」と回答した「販売価格判断の変更に慎重な企業」のうち、2021/9月調査以降に販売価格判断を「上昇」に引き上げた先について、いつ以来の「上昇」か計測(2021/9月調査以降の最初の判断引き上げを集計)。
§33
(出所)池田周一郎・倉知善行・近藤卓司・松田太一・八木智之(2022)「短観からみた最近の企業の価格設定スタンス」日銀レビュー・シリーズ、22-J-17消費者物価(図表11)<上昇・下落品目比率><コアインフレ指標>-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.5070911131517192123刈込平均値加重中央値最頻値(前年比、%)(注)CPI(消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策の影響を除く)を用いて日本銀行スタッフが算出。2020/4月以降のCPIは、高等教育無償化等の影響も除いた日本銀行スタッフによる試算値。(出所)日本銀行、総務省年102030405060708090-80-70-60-50-40-30-20-1001020304050607080070911131517192123上昇品目比率-下落品目比率(左目盛)上昇品目比率(右目盛)下落品目比率(右目盛)(%ポイント)(%)(注)上昇・下落品目比率は、前年比上昇・下落した品目の割合(CPI除く生鮮、消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策の影響を除く)。日本銀行スタッフ算出。2020/4月以降のCPIは、高等教育無償化等の影響も除いた日本銀行スタッフによる試算値。(出所)日本銀行、総務省年
§34
国内経済・物価見通し(図表12)<展望レポートの経済・物価見通し(2023年1月)>(出所)日本銀行(対前年比、%、<>内は政策委員見通しの中央値)実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品)(参考)消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)2022年度 +1.9 ~ +2.0<+1.9>+3.0 ~ +3.0<+3.0>+2.1 ~ +2.1<+2.1>10月時点の見通し +1.8 ~ +2.1<+2.0>+2.8 ~ +2.9<+2.9>+1.8 ~ +1.9<+1.8>2023年度 +1.5 ~ +1.9<+1.7>+1.6 ~ +1.8<+1.6>+1.7 ~ +1.9<+1.8>10月時点の見通し +1.5 ~ +2.0<+1.9>+1.5 ~ +1.8<+1.6>+1.5 ~ +1.8<+1.6>2024年度 +0.9 ~ +1.3<+1.1>+1.8 ~ +1.9<+1.8>+1.5 ~ +1.8<+1.6>10月時点の見通し +1.3 ~ +1.6<+1.5>+1.5 ~ +1.9<+1.6>+1.5 ~ +1.8<+1.6>イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直し海外市場のボラティリティ上昇の影響金融環境に悪影響を及ぼすおそれわが国債券市場の機能度の低下各年限間の金利の相対関係現物と先物の裁定国債金利は、社債や貸出等の金利の基準となるもの日本銀行の対応YCCの運用より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していく国債買入れ額の大幅増額:月間7.3兆円⇒9兆円程度長期金利の変動幅拡大: ±0.25%程度⇒±0.5%程度各年限における機動的な対応:10年物の指値オペを「0.5%」で毎営業日実施各年限で更なる買入れ増額や指値オペを機動的に実施国債のイールドカーブ(12月決定会合前)YCCを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じて、より円滑に波及社債の発行環境に十分配慮して、社債買入れ残高の調整を進める金融緩和の持続性を高めることで、「物価安定の目標」の実現を目指していく-0.20.00.20.40.60.81.01.21.41.6125102030(%)(残存年限)(出所)Bloomberg(図表13)